第1話 脱獄者、ヤイバ その1
文字数 3,978文字
深山ヤイバはこの病棟に来てから、死んだような生活をずっと続けてきた。ただ黙って、差し出された食事を食べ、寝るだけの生活だ。外の空気は吸えないし、体を十分に動かすことすら許可されない。
だからなのか、復讐したいという願望が誰よりも強かった。きっと外の世界に戻れたら、平然と誰かの命を奪うだろう。それを踏まえるとある意味彼がこの第二病棟にいるのは正しい判断なのかもしれない。
そして、北部屋なので日の出入りも見れないまま一日が終わる。
動きがあったのはその数日後だ。なんとヤイバに面会者が現れたのである。
「出ろ、ヤイバ!」
まず移動の前に、手錠をかけられる。扉の小窓から両手首を出すと、看守がかけた。それから開錠し扉が開かれた。おそらく、ヤイバがこの病棟に来てから二度目の開門だ。
(誰だ、オレに会いに来る奴……?)
身内がもうこの世にいないヤイバには、まるで心当たりがない。一瞬だけ、かつて彼が仲間と呼んだ存在かと思ったが、
(アイツらが今のオレの姿を拝みにくるわけがない)
否定した。
面会室に入る。アクリル板の向こう側には、ヤイバよりも若そうな女性が一人、いた。
「誰だオマエは?」
人と接する機会を数年にわたって奪われてきたヤイバだ、礼儀の概念など完全に忘れてしまっている。だから挨拶もなしに、尋ねた。
「こんにちは、深山ヤイバ。私は、天城 照 」
返って来た自己紹介でも、やはり思い当たる人物はヤイバの中にはない。
「赤の他人がオレに、何の用だ?」
ひょっとすると、あの女たちから差し向けられた人物かもしれない。そう考えたヤイバは、何を聞かれても答えないことに決めた。
「ねえあなたは……復讐したい人、いるよね?」
「……」
「でも、できない。ここにいるから。四六時中見張られてるし、そもそも誰かがこうして訪ねてこないと部屋から出ることすらできない」
照はヤイバの右後ろに座っている看守を見てそう言った。
「………」
無言を貫くヤイバ。対する照は、構わずにしゃべり続ける。
「あの女こそ、ここに入るべき存在だと私も思う。でも、そうするにはまず罪を暴かないといけない。私にはそれができない」
(だから、オレに任せようとでも? さっきオマエ言ったろ、オレはここから出られないんだぞ! 舐めやがって!)
返事はしないが、心の中で怒りが募る。照が手出しのできないヤイバに好き放題言っているようにも見えるからだ。
「………」
最終的に、目を合わせることすらやめたヤイバ。
「時間です」
看守がそれを告げる。すると照は一言、
「今日はいい花火が見れるよ、九十九里浜で」
そう残し、面会室から出た。
「何だったんだアレは?」
看守すらも首を傾げる出来事だった。
「まあいい、終わったんだ。ヤイバ! すぐに部屋に戻るぞ!」
面会時間は十五分ほどだった。あっという間に過ぎたので、ヤイバはまた檻の中に放り込まれた。
この晩のことだ。ジリリリと非常ベルが第二病棟に鳴り響いた。
「火事だ!」
出火したのである。
「火の手が強い!」
駆け付けた消防隊は放水をしながらそう呟いた。建物自体が古いこともあってか、火の手の回りも速いのだ。
だがそれよりも火事を大きなものにしている要因がある。
それは、散霊 だ。誰かが病棟内に解き放ったのだ。それが鬼火を起こしまくって火を強めている。病棟は結界に守られているのだが、それは外部からの霊の侵入を防ぐためでもある。言い換えれば、内部に生じると簡単に崩壊してしまう。さらに散霊は、結界を破壊するように動いた。
「熱いな……」
火の手が迫る中、ヤイバはまだ牢屋の中にいた。看守が我先にと逃げてしまったので、ドアはどんなに押しても開かない。だからもう諦めムードである。
「もしオレの霊能力がここで使えれば、窓の向こうの鉄格子を操って窓を割り、そこから外に逃げられるんだが……」
ついに炎が彼の部屋まで達した。その時彼はそう呟いた。
その時である。ヤイバが言った通りのことが起きた……つまり鉄格子が動いて窓ガラスを割り、逃げ道を作ったのである。
「……!」
結界が崩壊したので、霊能力が使えるようになったのだ。
「今がチャンスか!」
その割れた窓に駆け寄る。窓枠に残った破片を手で砕き、自分が通れる道を確保するとヤイバはそこから、脱出した。
「うぐぐ!」
その時、ガラスや鉄格子が彼の腕を引っ掻いた。しかも炎に熱せられて、少し火傷も負ってしまう。地面への着地こそ上手く行えたものの、左腕は無事ではない。
目の前に救急車が停まっていた。あれに駆け込めば、傷は治せる。だがその後は? 治療が終わったら、また病棟に戻されるのだ。
(チャンスを逃すか! この機会に、ここからおさらばしてやる!)
火事の混乱に乗じて、ヤイバは逃げることを決意。消防隊や救急隊員を避け、野次馬に紛れ、素早く物陰から物陰へと移動し、とにかくこの場から離れた。
この時のヤイバには、ある考えが。それは、
(普通の火事じゃないだろう。誰かが起こした? その誰かは多分、人間じゃねえ)
詳しい情報を知っているのではない。ただ、彼の中に存在する霊的な勘が、そう告げている。いつも通りにしていれば火の粉すら生じないはずだ。
では、いつもと違ったことは何か? それは照の訪問である。
「やはりあの女の手先だったか!」
自分がこの世に生きていることすら気に食わなくなったのか、あの女はヤイバを始末するために刺客を放った、解釈した。
しかし、あの面会を思い出してみると変だ。
「照とか名乗ってたな……? だが確か、あの女の方こそ病棟に入るべきだとか……」
ほとんど聞いていなかった彼女の発言の最初の方で、そんなことを言っていたのを思い出す。
「もう一つ」
まるで落ち合う場所を決めるかのように、照はある場所を指定していた。九十九里浜だ。
「それも罠の可能性もあるが……」
しかし、真偽を確かめるには照に会うしかない。だからヤイバは浜辺を目指した。
季節は夏、それも八月。だが夜であるために、海水浴客の姿はない。あるのは、海の方を向いて立っている、一人の女性の姿のみ。
「オマエが、照だったな?」
周囲に他の人物がいないことを確認したヤイバは、彼女に話しかけた。
「何のつもりだ、オマエ!」
すると照は振り向いて、
「やっぱり来たね。あなたなら絶対にそうするって思ってた」
「おいオマエ! ちゃんとキャッチボールをしろ! 今ボールを投げてるのはオレだ! オレの質問に答えるのが先だ!」
どうして火事を起こしたのか、それを聞いてみると、
「それはさ、あなたを脱獄させるために決まってるよ。他に収監されている人は多分無事。だってちゃんと指示したから」
照は面会の時、病棟に散霊を封じた札を持ち込んでいたのだ。それは時間差で散霊を解き放ち、彼女が出した条件……ヤイバ以外の部屋には火をつけないこと、できるだけ火事を大げさに見せること、人の命は奪わないこと……に従って、鬼火をばら撒いたのである。
「どうしてオレを選んだ?」
「あの女のこと、私よりも知ってるでしょう?」
この質問返しには、ヤイバはキレない。確かにそうだと頷いた。
「じゃあ、オマエはあの女の、何だ?」
答えによっては今ここで殺害するつもりだ。
照の返事は、
「私は、あなたと同じ立場」
というもの。
「オレと立場が同じ、だと?」
それはつまり、
「あの女が憎い」
ことを意味している。
「面会でも言ったでしょう? あなたは興味なさそうだったけど、私もあの女が憎い。でも、私自身アイツに復讐できるほどの力はない。だからあなたを病棟から脱獄させて、一緒に天誅を!」
「それはいい考えではあるな……」
共通の敵がいるのなら、手を組むことがいい。少なくともヤイバは長年病棟にいたので、外の世界がどのようになっているのかわからない浦島太郎状態。誰かの手助けが必要だ。
「だが、オマエはここで死ね!」
普通に考えれば、ヤイバは照の考えに乗って復讐対象を抹殺するべきだ。しかし、この時のヤイバにとって照は信頼度皆無の相手。腕の負傷もあり、良い気が全くしない。
「死なないよ」
一方の照は、ヤイバのことをきちんと調べたうえで行動に移している。殺意を向き出した彼に自ら立ち寄って、その左腕を撫でた。すると、傷が回復していくのだ。
「一回では駄目。だから何度も何度も撫でる必要がある。私は霊障ではこれしかできない。でも、治せない傷はないよ」
十数回も撫でれば、ヤイバ腕は負傷が嘘であるかのように治った。これは照なりの、ヤイバへの誠意の見せ方。同時に自分が敵でないことの証明だ。
「……殺すのはやめておいてやろう。だが、オレはオマエを完全に信頼したわけじゃない! 寝首を掻かれないよう用心しておくんだな」
照はヤイバのことを、自分のアパートに招いた。
「親は?」
「いないよ」
だが、家の中の様子は一人暮らしのそれではない。一つの家庭がそこにあるような感覚をヤイバは味わった。
「いきなり復讐に行くのは正直難しいと思う」
まずはヤイバのことを、外の環境に慣らせる必要がある。必要な時間を、照は一週間とみた。その間は普通に生活するとともに、情報を集める。
「あの女、それにその仲間が今どうしているのか! 全員調べて血祭だ」
実は照が怨んでいるのは、件の女一人。だが、彼女はヤイバの周りで起こったことを調べ知っているので、
「そうだね。全員、地獄に送ってしまおう」
賛同する。
照は冷蔵庫からワインを取り出し、二つのグラスに注いだ。
「今夜はもう遅いから、寝よう。明日以降、作戦を練りつつ世の中がどう変化したのかを学んで」
「わかった」
グラスを受け取ったヤイバ。照のそれと合わせ、カチンと鳴らし、飲む。
「今のオレの願いはただ一つ!」
それは、
「日影 皐 に、死を!」
だからなのか、復讐したいという願望が誰よりも強かった。きっと外の世界に戻れたら、平然と誰かの命を奪うだろう。それを踏まえるとある意味彼がこの第二病棟にいるのは正しい判断なのかもしれない。
そして、北部屋なので日の出入りも見れないまま一日が終わる。
動きがあったのはその数日後だ。なんとヤイバに面会者が現れたのである。
「出ろ、ヤイバ!」
まず移動の前に、手錠をかけられる。扉の小窓から両手首を出すと、看守がかけた。それから開錠し扉が開かれた。おそらく、ヤイバがこの病棟に来てから二度目の開門だ。
(誰だ、オレに会いに来る奴……?)
身内がもうこの世にいないヤイバには、まるで心当たりがない。一瞬だけ、かつて彼が仲間と呼んだ存在かと思ったが、
(アイツらが今のオレの姿を拝みにくるわけがない)
否定した。
面会室に入る。アクリル板の向こう側には、ヤイバよりも若そうな女性が一人、いた。
「誰だオマエは?」
人と接する機会を数年にわたって奪われてきたヤイバだ、礼儀の概念など完全に忘れてしまっている。だから挨拶もなしに、尋ねた。
「こんにちは、深山ヤイバ。私は、
返って来た自己紹介でも、やはり思い当たる人物はヤイバの中にはない。
「赤の他人がオレに、何の用だ?」
ひょっとすると、あの女たちから差し向けられた人物かもしれない。そう考えたヤイバは、何を聞かれても答えないことに決めた。
「ねえあなたは……復讐したい人、いるよね?」
「……」
「でも、できない。ここにいるから。四六時中見張られてるし、そもそも誰かがこうして訪ねてこないと部屋から出ることすらできない」
照はヤイバの右後ろに座っている看守を見てそう言った。
「………」
無言を貫くヤイバ。対する照は、構わずにしゃべり続ける。
「あの女こそ、ここに入るべき存在だと私も思う。でも、そうするにはまず罪を暴かないといけない。私にはそれができない」
(だから、オレに任せようとでも? さっきオマエ言ったろ、オレはここから出られないんだぞ! 舐めやがって!)
返事はしないが、心の中で怒りが募る。照が手出しのできないヤイバに好き放題言っているようにも見えるからだ。
「………」
最終的に、目を合わせることすらやめたヤイバ。
「時間です」
看守がそれを告げる。すると照は一言、
「今日はいい花火が見れるよ、九十九里浜で」
そう残し、面会室から出た。
「何だったんだアレは?」
看守すらも首を傾げる出来事だった。
「まあいい、終わったんだ。ヤイバ! すぐに部屋に戻るぞ!」
面会時間は十五分ほどだった。あっという間に過ぎたので、ヤイバはまた檻の中に放り込まれた。
この晩のことだ。ジリリリと非常ベルが第二病棟に鳴り響いた。
「火事だ!」
出火したのである。
「火の手が強い!」
駆け付けた消防隊は放水をしながらそう呟いた。建物自体が古いこともあってか、火の手の回りも速いのだ。
だがそれよりも火事を大きなものにしている要因がある。
それは、
「熱いな……」
火の手が迫る中、ヤイバはまだ牢屋の中にいた。看守が我先にと逃げてしまったので、ドアはどんなに押しても開かない。だからもう諦めムードである。
「もしオレの霊能力がここで使えれば、窓の向こうの鉄格子を操って窓を割り、そこから外に逃げられるんだが……」
ついに炎が彼の部屋まで達した。その時彼はそう呟いた。
その時である。ヤイバが言った通りのことが起きた……つまり鉄格子が動いて窓ガラスを割り、逃げ道を作ったのである。
「……!」
結界が崩壊したので、霊能力が使えるようになったのだ。
「今がチャンスか!」
その割れた窓に駆け寄る。窓枠に残った破片を手で砕き、自分が通れる道を確保するとヤイバはそこから、脱出した。
「うぐぐ!」
その時、ガラスや鉄格子が彼の腕を引っ掻いた。しかも炎に熱せられて、少し火傷も負ってしまう。地面への着地こそ上手く行えたものの、左腕は無事ではない。
目の前に救急車が停まっていた。あれに駆け込めば、傷は治せる。だがその後は? 治療が終わったら、また病棟に戻されるのだ。
(チャンスを逃すか! この機会に、ここからおさらばしてやる!)
火事の混乱に乗じて、ヤイバは逃げることを決意。消防隊や救急隊員を避け、野次馬に紛れ、素早く物陰から物陰へと移動し、とにかくこの場から離れた。
この時のヤイバには、ある考えが。それは、
(普通の火事じゃないだろう。誰かが起こした? その誰かは多分、人間じゃねえ)
詳しい情報を知っているのではない。ただ、彼の中に存在する霊的な勘が、そう告げている。いつも通りにしていれば火の粉すら生じないはずだ。
では、いつもと違ったことは何か? それは照の訪問である。
「やはりあの女の手先だったか!」
自分がこの世に生きていることすら気に食わなくなったのか、あの女はヤイバを始末するために刺客を放った、解釈した。
しかし、あの面会を思い出してみると変だ。
「照とか名乗ってたな……? だが確か、あの女の方こそ病棟に入るべきだとか……」
ほとんど聞いていなかった彼女の発言の最初の方で、そんなことを言っていたのを思い出す。
「もう一つ」
まるで落ち合う場所を決めるかのように、照はある場所を指定していた。九十九里浜だ。
「それも罠の可能性もあるが……」
しかし、真偽を確かめるには照に会うしかない。だからヤイバは浜辺を目指した。
季節は夏、それも八月。だが夜であるために、海水浴客の姿はない。あるのは、海の方を向いて立っている、一人の女性の姿のみ。
「オマエが、照だったな?」
周囲に他の人物がいないことを確認したヤイバは、彼女に話しかけた。
「何のつもりだ、オマエ!」
すると照は振り向いて、
「やっぱり来たね。あなたなら絶対にそうするって思ってた」
「おいオマエ! ちゃんとキャッチボールをしろ! 今ボールを投げてるのはオレだ! オレの質問に答えるのが先だ!」
どうして火事を起こしたのか、それを聞いてみると、
「それはさ、あなたを脱獄させるために決まってるよ。他に収監されている人は多分無事。だってちゃんと指示したから」
照は面会の時、病棟に散霊を封じた札を持ち込んでいたのだ。それは時間差で散霊を解き放ち、彼女が出した条件……ヤイバ以外の部屋には火をつけないこと、できるだけ火事を大げさに見せること、人の命は奪わないこと……に従って、鬼火をばら撒いたのである。
「どうしてオレを選んだ?」
「あの女のこと、私よりも知ってるでしょう?」
この質問返しには、ヤイバはキレない。確かにそうだと頷いた。
「じゃあ、オマエはあの女の、何だ?」
答えによっては今ここで殺害するつもりだ。
照の返事は、
「私は、あなたと同じ立場」
というもの。
「オレと立場が同じ、だと?」
それはつまり、
「あの女が憎い」
ことを意味している。
「面会でも言ったでしょう? あなたは興味なさそうだったけど、私もあの女が憎い。でも、私自身アイツに復讐できるほどの力はない。だからあなたを病棟から脱獄させて、一緒に天誅を!」
「それはいい考えではあるな……」
共通の敵がいるのなら、手を組むことがいい。少なくともヤイバは長年病棟にいたので、外の世界がどのようになっているのかわからない浦島太郎状態。誰かの手助けが必要だ。
「だが、オマエはここで死ね!」
普通に考えれば、ヤイバは照の考えに乗って復讐対象を抹殺するべきだ。しかし、この時のヤイバにとって照は信頼度皆無の相手。腕の負傷もあり、良い気が全くしない。
「死なないよ」
一方の照は、ヤイバのことをきちんと調べたうえで行動に移している。殺意を向き出した彼に自ら立ち寄って、その左腕を撫でた。すると、傷が回復していくのだ。
「一回では駄目。だから何度も何度も撫でる必要がある。私は霊障ではこれしかできない。でも、治せない傷はないよ」
十数回も撫でれば、ヤイバ腕は負傷が嘘であるかのように治った。これは照なりの、ヤイバへの誠意の見せ方。同時に自分が敵でないことの証明だ。
「……殺すのはやめておいてやろう。だが、オレはオマエを完全に信頼したわけじゃない! 寝首を掻かれないよう用心しておくんだな」
照はヤイバのことを、自分のアパートに招いた。
「親は?」
「いないよ」
だが、家の中の様子は一人暮らしのそれではない。一つの家庭がそこにあるような感覚をヤイバは味わった。
「いきなり復讐に行くのは正直難しいと思う」
まずはヤイバのことを、外の環境に慣らせる必要がある。必要な時間を、照は一週間とみた。その間は普通に生活するとともに、情報を集める。
「あの女、それにその仲間が今どうしているのか! 全員調べて血祭だ」
実は照が怨んでいるのは、件の女一人。だが、彼女はヤイバの周りで起こったことを調べ知っているので、
「そうだね。全員、地獄に送ってしまおう」
賛同する。
照は冷蔵庫からワインを取り出し、二つのグラスに注いだ。
「今夜はもう遅いから、寝よう。明日以降、作戦を練りつつ世の中がどう変化したのかを学んで」
「わかった」
グラスを受け取ったヤイバ。照のそれと合わせ、カチンと鳴らし、飲む。
「今のオレの願いはただ一つ!」
それは、
「