第9話 怒りの矛先 その1
文字数 3,843文字
「は? 何でお前、成田にいるんだよ?」
「それは私が聞きたいよ」
雪女は昨日、朝一の便で帰ってくると言っていた。だが彼女から電話はあまりにも早すぎで、紫電も不思議に思っていたほどだ。その答えが、
「きみに言われた通り、真似してチケット買ったんだよ。そしたらここに……」
長距離移動の初心者である雪女でも、紫電のことを真似れば飛行機には乗れた。だが、青森から成田に行く時のを完璧に真似してしまったために目的地を変更することを忘れ、成田に到着してしまったのである。
「……わかった。俺がそっちに行く…」
紫電は思った。この海神寺は多分安全だし、これ以上自分が居座る必要はないのでは、と。寧ろ【神代】の本店に戻ってみるのもありか、とも。それに際し、彼個人の意思で勝手に決めるわけにはいかないので、重之助に連絡を入れてみる。
「そうだな。【UON】からの攻撃も下火になっている。紫電、一度戻って来てくれないか?」
「それはいいし俺も賛成なんだがよ、万が一ここが【UON】に襲われた時のこと考えるとがら空きになるのは怖いぜ……」
「ならば、こうしよう。私の仲間に鬼越長治郎という人物がいる、競戦の時に顔を合わせているはずだが覚えているか? ソイツの直属の部下が今確か、壇ノ浦の方に巡礼しに行っているんだ。そのまま四国に行く予定なんだが、ルートを変更させて彼女を海神寺に向かわせる。今日の夕方ごろには着くだろう」
それに広島には、紫電たち以外にも一組の霊能力者が待機しているのだ。だから元々の防衛隊と、追加する巡礼者で守備は大丈夫だろうと重之助は言う。
「ああ、いいぜ。ソイツの強さが嘘じゃなければな」
許可は得た。
「待ちなはれ、紫電!」
すぐに出発するつもりだったが、勇悦に呼び止められる。
「これを持って行ってや!」
「……?」
その風呂敷を広げてみると、中には、
「ボタン電池を仕込んだメリケンサックや! これで殴ると同時に電霊放を流し込むことが可能! それにこっちのバックパックコイルは背負うだけで、体に流される電気を吸収できるんや」
紫電のために勇悦が作った物が入っていた。
「ありがとうな! お前のこと、女の顔と胸と尻しか見てねえヤツと思ったが、訂正しておくぜ!」
これから【UON】と戦うわけではない。だが勇悦としては、守ってくれたお礼をしたいのだ。それにこれから先の何かしらの事件の時のためでもある。
荷造りを済ませると紫電はすぐに飛行機に飛び乗った。
雪女には、成田空港で待機していろと伝えた。ちょうどカフェで暇をつぶしていたらしく、
「早かったね」
「広島と千葉の間じゃ、すぐだぜ」
難なく合流。
「さてと! これから【神代】の本店までバスと電車を駆使していくわけだが……。その前に雪女、怪我はないか?」
「うん。大丈夫だよ」
「なら良かった」
「きみも、無事?」
「見ての通りだぜ」
バス停に行く。運悪く出発してしまった後だ。次のバスを待つことに。その時、
「おい」
知らない人に声をかけられた。イントネーションからすると日本人ではないのだが、身なりからすると観光客でもない。
「誰だお前?」
紫電と雪女は身構える。この男から、ただならぬ気配を感じたためだ。
「ワタシは、ディス・ラウージャ。キサマらに散々、苦渋を味あわされ続けた者だ」
その一言で、ディスが何者かを察する二人。
「………ギルたちの親玉か! 一体、何の用だ?」
「そうだな……。しいて言うなら、ここでキサマらを叩きたいと思っている。だがこんな人の目がある場所でそれは危険だな」
「言うべきことが違うんじゃねえのか?」
【UON】は【神代】に屈した、だからもう撤退する、とディスは言うべきだ。しかし飛び出たのは挑戦状である。
受ける意味は、ない。でも、
「やってやろうじゃねえかよ! お前がそれで済むって言うんなら、とことんな! それに俺も、ギルたちのボスが健在で任務終了の報告ができるとは思わねえし!」
あえて受けて立つ。それが彼の性分だ。
「いい心構えだ、上っ面だけだが。ではここで待つ」
ディスはメモ用紙を一枚渡すと、タクシーを拾ってこの場から去った。
「うむ、そう遠くはねえ場所だぜ。雪女、行くぞ! 準備はいいか?」
「バッチリだよ」
二人もバス停から移動してタクシーを確保し、向かう。
到着したのは、空港近くのゴルフ場だ。今日は休業日らしく、コースには誰もいない。
「来ないと思っていたぞ、シデン! ユキメ!」
「誰がすっぽかすかよ? 俺がお前たち【UON】の諦めの悪い根性、叩き直してやるぜ!」
それを聞いたディスは、紫電のことを鼻で笑った。
「何がおかしい?」
「キサマ、ダンジュウ・キクチを知っているか?」
「名前だけは……」
「宵闇宮の神主さんだよ。かなりの実力者って聞いてるけど…」
雪女は実際に会ったことがあるらしく、詳しかった。
「そのダンジュウは、ワタシに敗れたのだ」
つまり何が言いたいのかと言うと、このディスは彼以上の強さの持ち主であり、
「キサマらには負けない、と言っておこうか!」
ということでもある。
「それがどうかしたのか?」
だが臆することはなく紫電はそう言った。
「俺はライバルとの戦いを通じて、感じたぜ。ハッキリ白黒つけることは難しいことだ、ってな。確かに強さの比べ合いは面白いことだ。でも、結果が出ない時だってある」
「ほほう」
「しかし重要なのは、誰に勝利したかじゃない。昨日までの自分に勝てるかどうかだ!」
だから、誰かに勝ったから自分は強いという感情は自惚れに過ぎないと紫電は断言する。
「戯言か。口だけでなら何でも立派にものを言える」
その宣言を嘲笑うかのようにディスは言った。
それもそのはずだ。彼は怒っている。当然だ、チームメンバーは全員、紫電と雪女を突破できなかったのである。それは言い換えれば、二人に負けたのと同じ。彼自身の昇進の話もなかったことになるだろう。だからなおさら二人が許せない。
「八つ当たりかよ?」
今度は紫電が嘲笑する番だ。確かに勝負こそあったが、元をたどればそれは【UON】が仕掛けたバトル。それに失敗したから紫電たちに当たり散らすというのは、幼稚。
「私もそう思う。でもきみ、やめる気ないでしょ? ならさ紫電、わからせてあげようよ。【UON】では【神代】に勝てない、【UON】は【神代】の代わりを務めることができないってことを」
二人は決めた。ここでディスと戦うのだ。それが今回生じた【UON】との因縁への決着。
「キサマらに、ワタシが倒せるか?」
「話は聞いているぜ? 霊魂がお前の霊障だろ? たった一発の弾丸が、無限に敵を貫く! それにさえ気をつければ、俺たちにだって勝機はある!」
大事なのはその情報だと二人は考えている。だがその発想は愚かなものだった。
もっと重要なことを一つ、二人は忘れていた。
特に合図はなく勝負は始まる。その前に紫電は勇悦からもらったものを装備。
「行くぞ、雪女!」
「任せてよ」
先制攻撃を仕掛けるのは雪女。雪の氷柱を素早く生成し、ディスに撃ち込む。狙うは両方の胸ポケット。そこに仕舞われているおもちゃの拳銃を破壊すれば二人の勝利は確実。
「ヌンッ!」
だがこれをディスは防いだ。反転し、自分の背中を盾にすることで。当然氷柱は背中に突き刺さり、流れ出た血が服に滲む。
「なるほど、結構鋭いアイスニードルではないか。だが!」
片手を背中に回し、手で叩いた。すると氷柱が勝手に抜け落ちたのだ。服が邪魔で見えないが、傷も治っている。
「しまった! これが噂に聞く、霊障合体! 無病息災か!」
「怪我や病気を治せるんだよね? 霊魂だけじゃなくてそれもある。でも、それってあまり戦いには向いてないんじゃないの?」
それは呑気な考えだ。
「キサマらはバカか? どんな怪我や病も死ぬ前なら治せるのだぞ?」
言われてハッとなる二人。
それは言い換えれば、どんなダメージをディスに与えても無意味であるということ。唯一殺すほどの攻撃なら話は違うのだが、それをすれば【神代】に叱られるし、そこから【UON】と泥沼の関係になりかねないので、できない。
「つまりキサマらは……どんな攻撃をワタシに打ち込んでも、無意味! だがワタシはどうだ? 終わらないメンタルキャノンをキサマらに撃ち込める」
そうなると、これはもう先に音を上げた方が負けの根性勝負となる。いいや、霊魂で傷つくことを考慮すると紫電と雪女が不利だ。
「それでも、諦めないし逃げないよ、私たちは。でしょう、紫電?」
「よく言った雪女! もう【神代】も【UON】も関係ねえ! 売られた喧嘩は買ってやる! そして勝利で清算してやるぜ!」
しかしそれでもこの勝負を投げ出さない二人。
「態度だけは立派だな」
ディスもこれは褒めざるを得ない。
「だが問題なのは……」
背を向けたままの状態で、ディスはおもちゃの銃を二丁取り出し霊魂を撃った。それは百八十度曲がって紫電と雪女に向かう。
「これが例の無限の霊魂か……!」
紫電は電霊放の電磁波のバリアで、雪女は雪の結晶でそれを防ごうとした。しかし、突破された電磁波のバリアは何事もなく通過して、雪の結晶は砕いて貫いたのだ。
「ぐはっあ!」
紫電の右肩に着弾。
(マジで拳銃で撃たれたような痛みだぜ……! し、しかも……)
雪女の方を見た。彼女は手に握る雪の氷柱で霊魂を弾こうとしているが、それも上手くはいかない。
「くっ……」
足に被弾した様子。
「それは私が聞きたいよ」
雪女は昨日、朝一の便で帰ってくると言っていた。だが彼女から電話はあまりにも早すぎで、紫電も不思議に思っていたほどだ。その答えが、
「きみに言われた通り、真似してチケット買ったんだよ。そしたらここに……」
長距離移動の初心者である雪女でも、紫電のことを真似れば飛行機には乗れた。だが、青森から成田に行く時のを完璧に真似してしまったために目的地を変更することを忘れ、成田に到着してしまったのである。
「……わかった。俺がそっちに行く…」
紫電は思った。この海神寺は多分安全だし、これ以上自分が居座る必要はないのでは、と。寧ろ【神代】の本店に戻ってみるのもありか、とも。それに際し、彼個人の意思で勝手に決めるわけにはいかないので、重之助に連絡を入れてみる。
「そうだな。【UON】からの攻撃も下火になっている。紫電、一度戻って来てくれないか?」
「それはいいし俺も賛成なんだがよ、万が一ここが【UON】に襲われた時のこと考えるとがら空きになるのは怖いぜ……」
「ならば、こうしよう。私の仲間に鬼越長治郎という人物がいる、競戦の時に顔を合わせているはずだが覚えているか? ソイツの直属の部下が今確か、壇ノ浦の方に巡礼しに行っているんだ。そのまま四国に行く予定なんだが、ルートを変更させて彼女を海神寺に向かわせる。今日の夕方ごろには着くだろう」
それに広島には、紫電たち以外にも一組の霊能力者が待機しているのだ。だから元々の防衛隊と、追加する巡礼者で守備は大丈夫だろうと重之助は言う。
「ああ、いいぜ。ソイツの強さが嘘じゃなければな」
許可は得た。
「待ちなはれ、紫電!」
すぐに出発するつもりだったが、勇悦に呼び止められる。
「これを持って行ってや!」
「……?」
その風呂敷を広げてみると、中には、
「ボタン電池を仕込んだメリケンサックや! これで殴ると同時に電霊放を流し込むことが可能! それにこっちのバックパックコイルは背負うだけで、体に流される電気を吸収できるんや」
紫電のために勇悦が作った物が入っていた。
「ありがとうな! お前のこと、女の顔と胸と尻しか見てねえヤツと思ったが、訂正しておくぜ!」
これから【UON】と戦うわけではない。だが勇悦としては、守ってくれたお礼をしたいのだ。それにこれから先の何かしらの事件の時のためでもある。
荷造りを済ませると紫電はすぐに飛行機に飛び乗った。
雪女には、成田空港で待機していろと伝えた。ちょうどカフェで暇をつぶしていたらしく、
「早かったね」
「広島と千葉の間じゃ、すぐだぜ」
難なく合流。
「さてと! これから【神代】の本店までバスと電車を駆使していくわけだが……。その前に雪女、怪我はないか?」
「うん。大丈夫だよ」
「なら良かった」
「きみも、無事?」
「見ての通りだぜ」
バス停に行く。運悪く出発してしまった後だ。次のバスを待つことに。その時、
「おい」
知らない人に声をかけられた。イントネーションからすると日本人ではないのだが、身なりからすると観光客でもない。
「誰だお前?」
紫電と雪女は身構える。この男から、ただならぬ気配を感じたためだ。
「ワタシは、ディス・ラウージャ。キサマらに散々、苦渋を味あわされ続けた者だ」
その一言で、ディスが何者かを察する二人。
「………ギルたちの親玉か! 一体、何の用だ?」
「そうだな……。しいて言うなら、ここでキサマらを叩きたいと思っている。だがこんな人の目がある場所でそれは危険だな」
「言うべきことが違うんじゃねえのか?」
【UON】は【神代】に屈した、だからもう撤退する、とディスは言うべきだ。しかし飛び出たのは挑戦状である。
受ける意味は、ない。でも、
「やってやろうじゃねえかよ! お前がそれで済むって言うんなら、とことんな! それに俺も、ギルたちのボスが健在で任務終了の報告ができるとは思わねえし!」
あえて受けて立つ。それが彼の性分だ。
「いい心構えだ、上っ面だけだが。ではここで待つ」
ディスはメモ用紙を一枚渡すと、タクシーを拾ってこの場から去った。
「うむ、そう遠くはねえ場所だぜ。雪女、行くぞ! 準備はいいか?」
「バッチリだよ」
二人もバス停から移動してタクシーを確保し、向かう。
到着したのは、空港近くのゴルフ場だ。今日は休業日らしく、コースには誰もいない。
「来ないと思っていたぞ、シデン! ユキメ!」
「誰がすっぽかすかよ? 俺がお前たち【UON】の諦めの悪い根性、叩き直してやるぜ!」
それを聞いたディスは、紫電のことを鼻で笑った。
「何がおかしい?」
「キサマ、ダンジュウ・キクチを知っているか?」
「名前だけは……」
「宵闇宮の神主さんだよ。かなりの実力者って聞いてるけど…」
雪女は実際に会ったことがあるらしく、詳しかった。
「そのダンジュウは、ワタシに敗れたのだ」
つまり何が言いたいのかと言うと、このディスは彼以上の強さの持ち主であり、
「キサマらには負けない、と言っておこうか!」
ということでもある。
「それがどうかしたのか?」
だが臆することはなく紫電はそう言った。
「俺はライバルとの戦いを通じて、感じたぜ。ハッキリ白黒つけることは難しいことだ、ってな。確かに強さの比べ合いは面白いことだ。でも、結果が出ない時だってある」
「ほほう」
「しかし重要なのは、誰に勝利したかじゃない。昨日までの自分に勝てるかどうかだ!」
だから、誰かに勝ったから自分は強いという感情は自惚れに過ぎないと紫電は断言する。
「戯言か。口だけでなら何でも立派にものを言える」
その宣言を嘲笑うかのようにディスは言った。
それもそのはずだ。彼は怒っている。当然だ、チームメンバーは全員、紫電と雪女を突破できなかったのである。それは言い換えれば、二人に負けたのと同じ。彼自身の昇進の話もなかったことになるだろう。だからなおさら二人が許せない。
「八つ当たりかよ?」
今度は紫電が嘲笑する番だ。確かに勝負こそあったが、元をたどればそれは【UON】が仕掛けたバトル。それに失敗したから紫電たちに当たり散らすというのは、幼稚。
「私もそう思う。でもきみ、やめる気ないでしょ? ならさ紫電、わからせてあげようよ。【UON】では【神代】に勝てない、【UON】は【神代】の代わりを務めることができないってことを」
二人は決めた。ここでディスと戦うのだ。それが今回生じた【UON】との因縁への決着。
「キサマらに、ワタシが倒せるか?」
「話は聞いているぜ? 霊魂がお前の霊障だろ? たった一発の弾丸が、無限に敵を貫く! それにさえ気をつければ、俺たちにだって勝機はある!」
大事なのはその情報だと二人は考えている。だがその発想は愚かなものだった。
もっと重要なことを一つ、二人は忘れていた。
特に合図はなく勝負は始まる。その前に紫電は勇悦からもらったものを装備。
「行くぞ、雪女!」
「任せてよ」
先制攻撃を仕掛けるのは雪女。雪の氷柱を素早く生成し、ディスに撃ち込む。狙うは両方の胸ポケット。そこに仕舞われているおもちゃの拳銃を破壊すれば二人の勝利は確実。
「ヌンッ!」
だがこれをディスは防いだ。反転し、自分の背中を盾にすることで。当然氷柱は背中に突き刺さり、流れ出た血が服に滲む。
「なるほど、結構鋭いアイスニードルではないか。だが!」
片手を背中に回し、手で叩いた。すると氷柱が勝手に抜け落ちたのだ。服が邪魔で見えないが、傷も治っている。
「しまった! これが噂に聞く、霊障合体! 無病息災か!」
「怪我や病気を治せるんだよね? 霊魂だけじゃなくてそれもある。でも、それってあまり戦いには向いてないんじゃないの?」
それは呑気な考えだ。
「キサマらはバカか? どんな怪我や病も死ぬ前なら治せるのだぞ?」
言われてハッとなる二人。
それは言い換えれば、どんなダメージをディスに与えても無意味であるということ。唯一殺すほどの攻撃なら話は違うのだが、それをすれば【神代】に叱られるし、そこから【UON】と泥沼の関係になりかねないので、できない。
「つまりキサマらは……どんな攻撃をワタシに打ち込んでも、無意味! だがワタシはどうだ? 終わらないメンタルキャノンをキサマらに撃ち込める」
そうなると、これはもう先に音を上げた方が負けの根性勝負となる。いいや、霊魂で傷つくことを考慮すると紫電と雪女が不利だ。
「それでも、諦めないし逃げないよ、私たちは。でしょう、紫電?」
「よく言った雪女! もう【神代】も【UON】も関係ねえ! 売られた喧嘩は買ってやる! そして勝利で清算してやるぜ!」
しかしそれでもこの勝負を投げ出さない二人。
「態度だけは立派だな」
ディスもこれは褒めざるを得ない。
「だが問題なのは……」
背を向けたままの状態で、ディスはおもちゃの銃を二丁取り出し霊魂を撃った。それは百八十度曲がって紫電と雪女に向かう。
「これが例の無限の霊魂か……!」
紫電は電霊放の電磁波のバリアで、雪女は雪の結晶でそれを防ごうとした。しかし、突破された電磁波のバリアは何事もなく通過して、雪の結晶は砕いて貫いたのだ。
「ぐはっあ!」
紫電の右肩に着弾。
(マジで拳銃で撃たれたような痛みだぜ……! し、しかも……)
雪女の方を見た。彼女は手に握る雪の氷柱で霊魂を弾こうとしているが、それも上手くはいかない。
「くっ……」
足に被弾した様子。