第6話 拠点強襲 その1

文字数 2,740文字

 午後三時になると、やっと新幹線から降りれた。

「ふああああ!」

 御門梅雨はあくびをしながら改札をくぐる。後ろに冠咲、土方範造、天川雛菊が続く。

「んで、何でどうして皇の四つ子と合流しないといけないんだ? 意味がわからない!」
「俺に聞くな! 俺だって嫌だが、上の命令じゃあ仕方ねえだろう?」
「サイアク」

 保護された寛輔が、豊雲の本拠地の場所を教えてくれた。また結も同じ場所を白状した。それは、猪苗代湖の東南付近だ。そこの地下に豊雲が鍾乳洞を作り、待機しているらしい。

「罠かもしれないが、調べないわけにもいかない。そこに豊雲と剣増がいるのだとしたら!」

【神代】は捜索を決め、霊能力者を派遣。そこまではいい、範造たちも納得して頷ける。しかし【神代】の上層部はどういうわけか、彼らに皇の四つ子と一緒に行動することを指示したのだ。

「仲の悪さは、知っているはずなんだがな……」

 仲直りさせたいのなら、余計なお世話だ。

「その皇の四つ子はどこにいるわけ?」

 郡山駅にはいなさそうである。

「仕方ねえか、電話する!」

 範造がスマートフォンを取り出し、かけた。電話の相手は皇緋寒。四つ子の長女である。

「もしもし、わちきじゃ。緋寒じゃ! そなたの方からかけてくるとは、珍しいな」
「んなことはどうでもいい! 今貴様ら、どこにいるんだ?」
「どこって、決まっておるじゃろう!」

 なんと緋寒たち皇の四つ子は、もう磐越西線に乗って上戸駅にいるらしい。

「んむむ。無人駅とは、悲しいモノじゃな……」
「何ノスタルジアに浸ってんだ! 勝手に行動すんじゃあねえよ! 相手を待ってやろうって思いやりは、学校で習わなかったのか?」
「だいたい今回の任務、そなたたちがおらんでもわちきらだけで十分じゃ! 足手まといを待つ意味はない、そうじゃろう?」

 同じ考えを持っている様子。

「……わかった。今から行くから、それまで動くなよ?」
「仕方ない。ならば来るまで待ってやろう!」
「ちっ!」

 電話を切った。

「行くぞ、磐越西線だ。そこからなら、三十分電車に乗ってれば着く!」
「また乗るの? 私、乗り物って結構嫌いなのよ?」
「じゃあ、歩いて行けと?」
「あんたの礫岩があるじゃない?」

 梅雨は提案する。ここから礫岩で穴を掘って移動しても、十分間に合うはずだ、と。寧ろそっちの方が速いかもしれない、とも。しかし範造は彼女の提案を却下。

「豊雲の霊障発展を忘れるな! この郡山は既に奴のフィールド! そこで地中移動はマズい!」

 地下を移動中に生き埋めにされかねない。だからここは時間をかけてでも陸路で行く。

「まあ、いいじゃないか、梅雨! 一緒にソシャゲしてようぜ」
「……咲が言うなら、いっか」

 四人は電車に乗り込んだ。
 三十分後、上戸駅に着いた四人。

「遅かったぞ! よくもまあのうのうと待たせるきじゃな?」
「短気は損気だ。忍耐は美徳だぜ?」

 軽く愚痴り合いながら合流し、一緒に目的地を目指して田園地帯を南下。そして林道の中を進む。

「現状については、どう認識している?」
「寛輔と結を捕まえた、と聞いておる」
「やはりそれだけか……。俺の方にもそれ以上の情報はねえ……」

 ということは、秀一郎と洋次がまだ自由な身であるということ。当然、警備に赴いている可能性も捨て切れない。

「梅雨、霊障じゃ! そなたの蜃気楼で、わっちらの姿を偽るんじゃ!」
「言われなくてもやってるわ、紅華!」
「ううぬ…」

 皇紅華の提案に怒鳴って返事する梅雨。皇赤実は、

「虹を使った方がいいのでは?」

 と聞く。霊障合体・虹なら、雨が降る範囲全てで蜃気楼を使えるからだ。

「でもそれだと、霊力のせいで接近がバレる?」

 しかし皇朱雀は否定的は返事。今日の天気は晴れ。なのに急に雨が降り始めたら、怪しまれるかもしれない。

「じゃが、背に腹は代えられぬじゃろう、ひょれ?」
「あんれ、発見される可能性が余計に高くなってしまうぞ!」
「後ろでごちゃごちゃうるさああいわ! 蜃気楼やってるんだから、黙ってなさい!」

 霊障は蜃気楼だけにして、とにかく林道を進んだ。途中から道が途切れており、その場合はGPSを頼りに歩く。だが、それらしいもの……洞窟の入り口が見つからない。

「本当にここなのか? 寛輔や結が嘘を吐いているのでは?」
「ありエなくはない…。フタリとも、ショウゲンがイッチしてる……。サイショから、クチウラをアわせていたのかも…?」
「でも、嘘は言っていないように見えるって聞いたぞ?」
「それがもう、トラップだったのよきっと!」

 一向に見つからないし手掛かりも掴めないので、イライラが積もり段々気性が荒れてきた。

「だいたい、皇の四つ子はいつも! いいとこばっかり取りやがって! どれだけの苦労が結果の下に立っていると思ってやがる!」
「なんじゃ! わちきらに文句があるのか! 四人が力を合わせても勝てなかった癖に、生意気じゃぞ!」
「んだとぉおおおお! 舐めやがって! 俺たちの実力はあんな程度の低い腕試しじゃあ測れねえだよ!」
「言うなあ。負けた癖に!」
「貴様らだって、敗退してるじゃあねえか!」
「あれは相手が悪すぎただけじゃ!」

 元々仲が悪いのだ、気が荒めば愚痴も出てくる。自分たちが置かれた状況すら忘れて、気が付けば四対四の口喧嘩に発展。言われれば言い返す罵詈雑言の嵐をお互いに生み出し相手に与える。
 見かねた雛菊が、

「ねえ、このモリはフカそうだし……。フタテにワカれない? そのホウがコウリツがヨさそうだし、ケンカもしないでスむわ」

 この森では普通に通信機器が使えるので、迷子になることもない。

「それだ!」

 範造と緋寒が同時に叫んだ。

「俺たちは! もうちょっと湖よりの方を探す! 貴様ら皇は、山の上の方を目指せ!」
「言われんでも、そうする!」

 意見が分かれなかったので、宣言通り二手に分かれることに。

「後悔しても知らんぞ? 果たして日付が変わる前に町に戻れるかな?」
「貴様らこそ、見つけられずに泣いて逃げるんじゃあねえのか!」

 悪態を吐きながらお互いに離れ、探索を続けることに。

「ホントウに、いいの……? 範造…?」
「仕方ねえだろう、あそこまで言われちゃあな。それに……」

 雛菊に聞かれた際、チラリと梅雨と咲の方を見た。

「あの二人だって、本当は皇なんかと組みたくないはずだ。それに一緒にいるよりも二手に分かれた方が、絶対に効率がいいはずだ」

 彼女は責任感を抱いているのだ。自分の発言のせいで分かれることになったので無理もない。しかし範造も、梅雨も咲も気にしていない。寧ろ邪魔がいなくなったとせいぜいしている。

「さあ、皇の奴らに先を越されるな! 俺たちが暴くぞ!」
「はい…」
「任せな!」
「見つけ出してやるわよ!」
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