第9話 金色の導き その2
文字数 3,825文字
「念のために皇の四つ子と、紫電と私も同行することになった」
「そうか、わかった!」
辻神は走りながら、雪女の電話に出ていた。
「なら後は、朔那を捕まえるだけだ」
「どこで合流すればいいの?」
「確か港の方に水族館があっただろう? そこまで来てくれ! 私も朔那を捕えたら、すぐに向かう。時間的に開いてないだろうが、駐車場でいい。そこで落ち合おう」
「了解。香恵と緑祁にも同じこと教えた? 病射は同席させなくていい?」
「いや、一緒の方が良いだろうし、病射がどうして朔那に力を貸したのかも実は知りたい」
「今さ、走ってるんだよね、きみは? 私が香恵に連絡入れておくから、きみは朔那の確保に全力を注いで」
「それは助かる! 頼んだぞ!」
電話はここで切れる。辻神はスマートフォンをしまってドライバーをまた持った。
(少し、不安ではある……)
自分の実力と朔那の力の差が、不明瞭だ。それ以上に今の彼には、できないことがある。辻神はポケットを叩いた。しかし中身はない。
(あの鬼型の迷霊を除霊した後、補充するべきだったか……)
朔那の追跡を優先したせいで、ばら撒いた電池を拾うことができなかったし新たにコンビニなどで購入する暇もなかった。だから彼の霊障合体・風神雷神は使えないのだ。
だが、これはこれでいいと辻神は前向きに考える。風神雷神は下手をすれば、人を殺めることができてしまう威力が出せる。戦いがヒートアップしてしまった場合に判断が狂うと、朔那に致命傷を負わせることになりかねない。辻神は慰療や薬束を使えないため、大きな怪我を負わせることができないのである。
(まあいい。私の電霊放で、朔那を気絶させてしまえばいいだけのことだ。今考えるべきことはただ一つ……朔那に勝つこと!)
蜃気楼を使っているので、絶対に追尾はバレないはず。だが先ほどは何故か見抜かれてしまったために、過信は禁物。
だが一番の問題は、朔那の霊障である。さっき遭遇した際に彼女は確かに、
「私の礫岩が反応できた」
と言った。その発言から、朔那の霊障の内の一つは礫岩と考えていいだろう。電霊放との相性は最悪である。だが朔那もまた、辻神が使える霊障=電霊放と、見ていたために考えているはずだ。
町中で礫岩は、使おうと思えば使える。だがその本領を発揮できる場所は、アスファルトの上ではない。
「遠くに逃げるフリをして、近くに潜んでいるかもな……」
通りかかった公園に辻神は入った。
(ゲッ! 来やがったぞ! しかも大量だ……!)
その公園こそ、朔那が隠れている場所だった。遊具の陰に隠れて彼女は、様子を伺う。ぞろぞろと大勢が、この公園に入り込んでくるのだ。もちろんそのビジョンは、辻神の蜃気楼である。実際には彼一人しか来ていない。
(ん? んんん?)
それを、朔那は感じ取った。目では大勢見えるのに、地面を伝う振動は一人分だけ。
(そうか! さっき、アイツらが見えなかったのと同じだ! これは、蜃気楼……偽りの風景なんだな!)
相手が一人だけなら、返り討ちにできるかもしれない。
(いいや! する! 退ける!)
豆鉄砲を構え、遊具の影から身を乗り出した。相手の足が生み出す振動を礫岩で探知し、その方に銃口を向ける。
(ここで動きを止めてやる! わざわざ蜃気楼で大人数を偽造したってことは、【神代】はそこまでここに人員を集められてないな? 逃げ切れば、病射の意志も無駄にはならない!)
豆を確実に当てられる間合いだ。朔那は命中を確信し、引き金を引いた。だがその時に音がして、
「そこか!」
辻神にバレてしまった。彼は目の前に迫る豆を、ドライバーで弾く。
「何っ!」
まだ姿が見えていない朔那だったが、当たらなかったことはわかる。豆が成長する前に、真っ二つに切り裂かれたのだ。
「ここで終わりにしてやろう……。おまえの復讐劇、成立させない!」
辻神は蜃気楼を解き、姿を現した。別に禍々しくもなければ、勇気もあるわけではない。
彼の中にあるのは、たった一つのことだ。その一つに、ここまで突き動かされている。
「やはり、同じだ……。かつての私と、同じ目をしている。あの、復讐のことしか考えることができなかった私と同じ、暗黒な瞳の輝きだ……」
それは、使命だ。辻神は朔那の顔を見ていると、まるで鏡を見ている気分に陥る。しかし映っているのは、半年以上前までの自分。【神代】に対し、先祖が受けた屈辱を晴らしたいと思っていた、過去に囚われていた自分。同じ志を持った仲間はいたものの、歩んできた道はとても暗かったし、その先も辛いだけだった。
辻神は朔那のことは、弥和の通報があって初めて知った。だから本来、二人は赤の他人同士なのだ。しかし彼は朔那のために今、動いている。
「解放してやりたい。助けてやりたい」
全てはそのために。復讐がいかに空しく無意味な行為であるかは、実際に行おうとした辻神がよくわかっている。
(きっと成功しても、明るい未来はなかっただろう。寧ろ山姫と彭侯を不幸に巻き込むことになるから、なおさらたちが悪いことだったか……)
緑祁と出会って、それから復讐には失敗することになった。本来、【神代】への背信行為をした辻神たちは裁かれるはずだったのだが、何と緑祁が庇ってくれたのである。その結果、一応は仕事をこなす形で【神代】への貢献を命じられただけで済んだ。
今、朔那は前の辻神と同じ道を歩もうとしている。いや、ここで止まればまだマシな結末となるだろう。
「復讐なんてしても、亡くなった人は浮かばれない。暗い過去に惑わされずに今を生きることこそが、生きている人に課された使命なんだ」
自分の正義を押し付けたいのではない。ただ辻神は、自分と同じ思いをして欲しくないのである。
過去からの脱却。それを朔那にさせたい。暗い過去から救い出したい。それが辻神がここまで来た目的なのだ。そのためにも、ここで朔那を倒し、止める。
「朔那! 今ならまだ間に合う! 復讐なんてやめろ」
「やめられるか、バカタレ! 私は、受けた傷を忘れない!」
「確かに痛いだろう、苦しいだろう……。だがその傷に、私は塩を塗る気はない。逆だ、治癒させるつもりでここに来た!」
「はっははは! 言うだけ言ってろ! どうせお前には何もわからない! 傷ついたことのない人間だから、そんな綺麗ごとが言えるんだ!」
朔那は新しい豆を装填し、再び銃口を辻神に向けた。
「私を説得できると思うなよ、バカナス! もう戻れないところまで来てんだよ! ここでお前を倒して……」
「倒して、どうするんだ?」
「逃げるのさ! 必ず左門を殺す!」
「殺したら、どうするんだ? 満足して終わりか? おまえ自身の履歴書に、殺人鬼って肩書きを入れてお終いか?」
「……! 言ってくれるじゃないか!」
言葉で説得できるとは、辻神も思っていない。
「うるさいうるさい! 勝てばいいんだ、勝てば! 死人がどうのこうのって喚いても、誰も聞き入れないんだ!」
「そうかな?」
「そうだ! だから私と弥和の両親が死んでも、左門は何もお咎めなしだった。だから私がアイツを殺しても、誰にも文句を言う権利はない!」
やはり説得は不可能のようだ。辻神もドライバーを構えた。
「では、こうしよう。ここでおまえが負けたら、復讐は諦めろ。逆に私に勝てたら、行け」
「勝てると思っているのかよ、私に? お前の霊障は電霊放だろう? 私の礫岩とは相性最悪だ」
しかも今の辻神には風神雷神を使用することもできない。対する朔那は、今いる公園はアスファルト舗装ではないので、礫岩の本領を十分に発揮できる。
「邪魔をするなら、左門の仲間だ。お前も死ね!」
先に動いたのは、朔那だった。礫岩を駆使して辻神の足元に穴を作った。
「……フンっ!」
だがそれに、辻神もすぐさま反応する、後ろに飛んで逃げる。
「それで避けたつもりか! うおおおお!」
次に豆鉄砲を撃つ。解き放たれた豆が辻神に迫った。しかし、
「植物の種か。軽いな」
「なっ!」
風が横から吹いて、その豆を吹き飛ばしてしまったのだ。
(こんな不自然にアイツの都合のいいように、風が吹くなんて! まさかこれは、旋風? アイツ、電霊放だけじゃないのか……!)
この一瞬、朔那は動くことよりも考えることに集中していた。そのわずかな隙を突いて辻神が、
「電霊放だ!」
金色の雷を解き放った。
「しまった! ぐわあ!」
それが朔那に直撃。礫岩での防御が間に合わなかった。
「野郎! 痛みを何十倍にして返してやる!」
痛みを乗り越え、豆鉄砲を構えて植物の種を乱射する。
(何をしている、朔那? 私を狙っている様子はない……?)
辻神には、この行為の意味がわからない。
「一撃! 一撃でお前を消し飛ばしてやる! 覚悟でも決めておくんだな!」
既に周囲の地面には撃ち込まれた植物が芽吹いている。
(大技を使うつもりか。これはその、下準備……)
その霊障合体を予想する前に、辻神はその場から離れようと横にジャンプした。
「終わらせてやる! この大地の怒りを受けるがいい!」
対する朔那はしゃがみ、地面に手を当てる。
「霊障合体・大地讃頌!」
朔那の好きな方向に生じる土砂崩れ。それがこの公園で起きる。
「ばああああああああああ!」
かなりの衝撃だ。土が、石が、草木が重力を無視して上に動く。あと一歩逃げるのに遅れていたら、間違いなく巻き込まれていた。
(なんて破壊力だ……)
「そうか、わかった!」
辻神は走りながら、雪女の電話に出ていた。
「なら後は、朔那を捕まえるだけだ」
「どこで合流すればいいの?」
「確か港の方に水族館があっただろう? そこまで来てくれ! 私も朔那を捕えたら、すぐに向かう。時間的に開いてないだろうが、駐車場でいい。そこで落ち合おう」
「了解。香恵と緑祁にも同じこと教えた? 病射は同席させなくていい?」
「いや、一緒の方が良いだろうし、病射がどうして朔那に力を貸したのかも実は知りたい」
「今さ、走ってるんだよね、きみは? 私が香恵に連絡入れておくから、きみは朔那の確保に全力を注いで」
「それは助かる! 頼んだぞ!」
電話はここで切れる。辻神はスマートフォンをしまってドライバーをまた持った。
(少し、不安ではある……)
自分の実力と朔那の力の差が、不明瞭だ。それ以上に今の彼には、できないことがある。辻神はポケットを叩いた。しかし中身はない。
(あの鬼型の迷霊を除霊した後、補充するべきだったか……)
朔那の追跡を優先したせいで、ばら撒いた電池を拾うことができなかったし新たにコンビニなどで購入する暇もなかった。だから彼の霊障合体・風神雷神は使えないのだ。
だが、これはこれでいいと辻神は前向きに考える。風神雷神は下手をすれば、人を殺めることができてしまう威力が出せる。戦いがヒートアップしてしまった場合に判断が狂うと、朔那に致命傷を負わせることになりかねない。辻神は慰療や薬束を使えないため、大きな怪我を負わせることができないのである。
(まあいい。私の電霊放で、朔那を気絶させてしまえばいいだけのことだ。今考えるべきことはただ一つ……朔那に勝つこと!)
蜃気楼を使っているので、絶対に追尾はバレないはず。だが先ほどは何故か見抜かれてしまったために、過信は禁物。
だが一番の問題は、朔那の霊障である。さっき遭遇した際に彼女は確かに、
「私の礫岩が反応できた」
と言った。その発言から、朔那の霊障の内の一つは礫岩と考えていいだろう。電霊放との相性は最悪である。だが朔那もまた、辻神が使える霊障=電霊放と、見ていたために考えているはずだ。
町中で礫岩は、使おうと思えば使える。だがその本領を発揮できる場所は、アスファルトの上ではない。
「遠くに逃げるフリをして、近くに潜んでいるかもな……」
通りかかった公園に辻神は入った。
(ゲッ! 来やがったぞ! しかも大量だ……!)
その公園こそ、朔那が隠れている場所だった。遊具の陰に隠れて彼女は、様子を伺う。ぞろぞろと大勢が、この公園に入り込んでくるのだ。もちろんそのビジョンは、辻神の蜃気楼である。実際には彼一人しか来ていない。
(ん? んんん?)
それを、朔那は感じ取った。目では大勢見えるのに、地面を伝う振動は一人分だけ。
(そうか! さっき、アイツらが見えなかったのと同じだ! これは、蜃気楼……偽りの風景なんだな!)
相手が一人だけなら、返り討ちにできるかもしれない。
(いいや! する! 退ける!)
豆鉄砲を構え、遊具の影から身を乗り出した。相手の足が生み出す振動を礫岩で探知し、その方に銃口を向ける。
(ここで動きを止めてやる! わざわざ蜃気楼で大人数を偽造したってことは、【神代】はそこまでここに人員を集められてないな? 逃げ切れば、病射の意志も無駄にはならない!)
豆を確実に当てられる間合いだ。朔那は命中を確信し、引き金を引いた。だがその時に音がして、
「そこか!」
辻神にバレてしまった。彼は目の前に迫る豆を、ドライバーで弾く。
「何っ!」
まだ姿が見えていない朔那だったが、当たらなかったことはわかる。豆が成長する前に、真っ二つに切り裂かれたのだ。
「ここで終わりにしてやろう……。おまえの復讐劇、成立させない!」
辻神は蜃気楼を解き、姿を現した。別に禍々しくもなければ、勇気もあるわけではない。
彼の中にあるのは、たった一つのことだ。その一つに、ここまで突き動かされている。
「やはり、同じだ……。かつての私と、同じ目をしている。あの、復讐のことしか考えることができなかった私と同じ、暗黒な瞳の輝きだ……」
それは、使命だ。辻神は朔那の顔を見ていると、まるで鏡を見ている気分に陥る。しかし映っているのは、半年以上前までの自分。【神代】に対し、先祖が受けた屈辱を晴らしたいと思っていた、過去に囚われていた自分。同じ志を持った仲間はいたものの、歩んできた道はとても暗かったし、その先も辛いだけだった。
辻神は朔那のことは、弥和の通報があって初めて知った。だから本来、二人は赤の他人同士なのだ。しかし彼は朔那のために今、動いている。
「解放してやりたい。助けてやりたい」
全てはそのために。復讐がいかに空しく無意味な行為であるかは、実際に行おうとした辻神がよくわかっている。
(きっと成功しても、明るい未来はなかっただろう。寧ろ山姫と彭侯を不幸に巻き込むことになるから、なおさらたちが悪いことだったか……)
緑祁と出会って、それから復讐には失敗することになった。本来、【神代】への背信行為をした辻神たちは裁かれるはずだったのだが、何と緑祁が庇ってくれたのである。その結果、一応は仕事をこなす形で【神代】への貢献を命じられただけで済んだ。
今、朔那は前の辻神と同じ道を歩もうとしている。いや、ここで止まればまだマシな結末となるだろう。
「復讐なんてしても、亡くなった人は浮かばれない。暗い過去に惑わされずに今を生きることこそが、生きている人に課された使命なんだ」
自分の正義を押し付けたいのではない。ただ辻神は、自分と同じ思いをして欲しくないのである。
過去からの脱却。それを朔那にさせたい。暗い過去から救い出したい。それが辻神がここまで来た目的なのだ。そのためにも、ここで朔那を倒し、止める。
「朔那! 今ならまだ間に合う! 復讐なんてやめろ」
「やめられるか、バカタレ! 私は、受けた傷を忘れない!」
「確かに痛いだろう、苦しいだろう……。だがその傷に、私は塩を塗る気はない。逆だ、治癒させるつもりでここに来た!」
「はっははは! 言うだけ言ってろ! どうせお前には何もわからない! 傷ついたことのない人間だから、そんな綺麗ごとが言えるんだ!」
朔那は新しい豆を装填し、再び銃口を辻神に向けた。
「私を説得できると思うなよ、バカナス! もう戻れないところまで来てんだよ! ここでお前を倒して……」
「倒して、どうするんだ?」
「逃げるのさ! 必ず左門を殺す!」
「殺したら、どうするんだ? 満足して終わりか? おまえ自身の履歴書に、殺人鬼って肩書きを入れてお終いか?」
「……! 言ってくれるじゃないか!」
言葉で説得できるとは、辻神も思っていない。
「うるさいうるさい! 勝てばいいんだ、勝てば! 死人がどうのこうのって喚いても、誰も聞き入れないんだ!」
「そうかな?」
「そうだ! だから私と弥和の両親が死んでも、左門は何もお咎めなしだった。だから私がアイツを殺しても、誰にも文句を言う権利はない!」
やはり説得は不可能のようだ。辻神もドライバーを構えた。
「では、こうしよう。ここでおまえが負けたら、復讐は諦めろ。逆に私に勝てたら、行け」
「勝てると思っているのかよ、私に? お前の霊障は電霊放だろう? 私の礫岩とは相性最悪だ」
しかも今の辻神には風神雷神を使用することもできない。対する朔那は、今いる公園はアスファルト舗装ではないので、礫岩の本領を十分に発揮できる。
「邪魔をするなら、左門の仲間だ。お前も死ね!」
先に動いたのは、朔那だった。礫岩を駆使して辻神の足元に穴を作った。
「……フンっ!」
だがそれに、辻神もすぐさま反応する、後ろに飛んで逃げる。
「それで避けたつもりか! うおおおお!」
次に豆鉄砲を撃つ。解き放たれた豆が辻神に迫った。しかし、
「植物の種か。軽いな」
「なっ!」
風が横から吹いて、その豆を吹き飛ばしてしまったのだ。
(こんな不自然にアイツの都合のいいように、風が吹くなんて! まさかこれは、旋風? アイツ、電霊放だけじゃないのか……!)
この一瞬、朔那は動くことよりも考えることに集中していた。そのわずかな隙を突いて辻神が、
「電霊放だ!」
金色の雷を解き放った。
「しまった! ぐわあ!」
それが朔那に直撃。礫岩での防御が間に合わなかった。
「野郎! 痛みを何十倍にして返してやる!」
痛みを乗り越え、豆鉄砲を構えて植物の種を乱射する。
(何をしている、朔那? 私を狙っている様子はない……?)
辻神には、この行為の意味がわからない。
「一撃! 一撃でお前を消し飛ばしてやる! 覚悟でも決めておくんだな!」
既に周囲の地面には撃ち込まれた植物が芽吹いている。
(大技を使うつもりか。これはその、下準備……)
その霊障合体を予想する前に、辻神はその場から離れようと横にジャンプした。
「終わらせてやる! この大地の怒りを受けるがいい!」
対する朔那はしゃがみ、地面に手を当てる。
「霊障合体・大地讃頌!」
朔那の好きな方向に生じる土砂崩れ。それがこの公園で起きる。
「ばああああああああああ!」
かなりの衝撃だ。土が、石が、草木が重力を無視して上に動く。あと一歩逃げるのに遅れていたら、間違いなく巻き込まれていた。
(なんて破壊力だ……)