第5話 万雷の一閃 その2
文字数 2,306文字
(何かは知らねえが、見逃せねえ。ささっと解決してやるぜ!)
迷霊は橋の対岸まで逃げる。それ以上奥に逃げられると一般人に何かしら被害が出るかもしれないと判断した紫電は、
(この橋からは逃さねえ!)
ダウジングロッドを取り出し、その先端部分から電霊放を撃ち出した。青白い稲妻が瞬き、迷霊の足を直撃して転ばせた。
「どうだ!」
だがすぐに立ち上がる迷霊。同時に、拳銃を手に持っている。
「お、おい……。まさか、本物…?」
銃口を紫電に向け、躊躇うことなくトリガーを引いた。拳銃も幽霊の一部なためか、発砲音は大きくなかった。だが立派な一発の弾丸が撃ち出されたのも事実。
「ぬお!」
瞬時に反応し、電磁波のバリアで弾丸を弾くことができた。足元に転がったその弾は、空気に溶けて消える。
「機傀みたいなものか! 拳銃はモデルガンか偽物だろうが、弾丸自体は機傀で作った本物! それを撃ち出している!」
迷霊は、二丁目の拳銃を懐から取り出し紫電に向ける。
「そう来るのならな、俺にも考えがあるぜ?」
紫電も二つ目のダウジングロッドを取り出し構えた。
「速さになら、俺にだって自信があるぜ!」
迷霊が再びトリガーを引く前に、紫電はその拳銃に向けて電霊放を発射。直撃した拳銃は向きが明後日の方になり、紫電に弾丸は届かない。
速さは紫電の方が上だ。しかし迷霊もこんな始まったばかりで勝負を投げ捨てたりはしない。拳銃を構え直した。
「来るか……!」
彼は考える。
(このまま、威力の低い電霊放を撃ち続けるのはあまりよろしくねえぜ! アイツは本物の銃を持っているのと同じ状態だ。それが一般人に向けられたら、かなり危険! 早々に潰して除霊させる必要がある。が!)
電霊放を集束させればいい。そうすれば一発で、除霊できるだろう。紫電もそう確信している。しかしこの状況が、それをさせてくれない。
(集束電霊放はためないと威力が出ねえ……! その隙に撃ち込まれたら、俺の方がヤバくなる。それに……)
それに、周囲の環境も駄目だ。紫電はチラリと左右を見た。観光客が大勢いる。もしこの人混みに、紫電の電霊放が飛んだら……。
(死人が出るぞ、それは! 俺がお尋ね者になってしまう!)
トドメの手段としては、集束電霊放が確実に必要となる。だが相手が自由に動ける状況では、まず当たらない。集束電霊放は威力を重視する代わりに、命中率を捨てているからだ。
(拡散させてみるのは、どうだ……?)
ここで彼は思った。自分の電霊放を拡散させれば、迷霊の体に何発もの電霊放を当てられるかもしれない。だがここで彼の首を絞めることが一つある。
(拡散電霊放は、まだ使ったことがないが……)
紫電がメインに使ってきたのは、普通の電霊放だ。拡散もしなければ集束もさせないで、電極部分から電気を放つ。命中率には前から自信があったし、威力も必要とされる場面が少なかった。
今、彼が悩んでいる最中に迷霊が発砲した。
「くっ!」
ダウジングロッドを広げて電磁波のバリアで弾丸を防ぐ紫電。銃口の向きから弾丸の軌道を推測して避けようと思えばできないこともない。
(いや、駄目だ。ここで俺が避けたら、後ろにいる人たちに当たる……!)
理論上はできるだけで、してはいけない選択肢なのだ。迷霊はそのまま、何発も紫電に撃ち込む。その撃ち込まれた弾丸を全て、紫電はバリアで防がなければいけず、両方のロッドで電磁波を広げる。これでは攻めることができない。
(マズい状況だ……)
観光客も段々集まって来て、いよいよ被害が出かねない状態になってきた。
(ダウジングロッドさえ濡れなければ、電霊放が俺に逆流することはない……)
紫電はあることを決めた。それは、戦いの舞台をこの橋から別の場所に移すことである。
「ついて来な!」
紫電は柵を飛び越えた。目の前には川が広がっている。
「うわっ! 男性が……橋から落ちた!」
観光客が騒ぎ出す。迷霊も紫電の後を追って、橋からジャンプした。
「くうう! まあ、痛えっちゃ痛えが……。ブロックの上に降りれた! 濡れずに済んだぜ!」
足が痛み、すぐには動けない状態だ。だがそれでもいい。何よりこの川の方に迷霊を誘導できたおかげで、周囲への被害を気にする必要がなくなった。迷霊の方は足にダメージはなさそうで、川の中だろうが動ける様子。
「勝負だ、お前!」
お互いに…紫電はダウジングロッドを、迷霊は拳銃を、相手に向ける。先に撃ち出したのは迷霊だった。
「防ぐ必要はもうねえぜ!」
だが、見切った紫電はその弾丸を避ける。そして逆に電霊放を撃ち込んだ。首に直撃し、痺れる迷霊。それでもまだ、除霊には至らない。
ここで迷霊は、とある行動に出た。上に向けて大量に、発砲したのだ。
「何だ?」
戸惑う紫電。橋の上の人たちを狙っているようではない。しかしその目的はすぐにわかる。撃ち出された弾丸が軌道を曲げ、紫電に向かって来ているのだ。
「そういうことか! 機傀に霊魂を混ぜたな? 確か、霊障合体・烈化 弾丸 ! 霊魂を機傀で生み出した金属に変えて放つ!」
これで迷霊は勝負を決めようとしているのだ。
「だがな! 俺だって戦いの中で進化してやるぜ! くらえ! 電霊放を広げる……拡散電霊放だ!」
ぶっつけ本番で、拡散電霊放を撃つ紫電。様々な方向に撃ち出された電霊放が、彼に向かって迫る烈化弾丸に命中し破壊。さらに迷霊にも電霊放が当たる。
「どうだ、お前!」
胴体に数発直撃して痺れた迷霊は足元が崩れて川……水の中に落ちた。すると、体全身に電気が流れてしまい、黒焦げになる。
「やった、みてえだな……」
数秒もすれば、その体が消滅してしまった。
迷霊は橋の対岸まで逃げる。それ以上奥に逃げられると一般人に何かしら被害が出るかもしれないと判断した紫電は、
(この橋からは逃さねえ!)
ダウジングロッドを取り出し、その先端部分から電霊放を撃ち出した。青白い稲妻が瞬き、迷霊の足を直撃して転ばせた。
「どうだ!」
だがすぐに立ち上がる迷霊。同時に、拳銃を手に持っている。
「お、おい……。まさか、本物…?」
銃口を紫電に向け、躊躇うことなくトリガーを引いた。拳銃も幽霊の一部なためか、発砲音は大きくなかった。だが立派な一発の弾丸が撃ち出されたのも事実。
「ぬお!」
瞬時に反応し、電磁波のバリアで弾丸を弾くことができた。足元に転がったその弾は、空気に溶けて消える。
「機傀みたいなものか! 拳銃はモデルガンか偽物だろうが、弾丸自体は機傀で作った本物! それを撃ち出している!」
迷霊は、二丁目の拳銃を懐から取り出し紫電に向ける。
「そう来るのならな、俺にも考えがあるぜ?」
紫電も二つ目のダウジングロッドを取り出し構えた。
「速さになら、俺にだって自信があるぜ!」
迷霊が再びトリガーを引く前に、紫電はその拳銃に向けて電霊放を発射。直撃した拳銃は向きが明後日の方になり、紫電に弾丸は届かない。
速さは紫電の方が上だ。しかし迷霊もこんな始まったばかりで勝負を投げ捨てたりはしない。拳銃を構え直した。
「来るか……!」
彼は考える。
(このまま、威力の低い電霊放を撃ち続けるのはあまりよろしくねえぜ! アイツは本物の銃を持っているのと同じ状態だ。それが一般人に向けられたら、かなり危険! 早々に潰して除霊させる必要がある。が!)
電霊放を集束させればいい。そうすれば一発で、除霊できるだろう。紫電もそう確信している。しかしこの状況が、それをさせてくれない。
(集束電霊放はためないと威力が出ねえ……! その隙に撃ち込まれたら、俺の方がヤバくなる。それに……)
それに、周囲の環境も駄目だ。紫電はチラリと左右を見た。観光客が大勢いる。もしこの人混みに、紫電の電霊放が飛んだら……。
(死人が出るぞ、それは! 俺がお尋ね者になってしまう!)
トドメの手段としては、集束電霊放が確実に必要となる。だが相手が自由に動ける状況では、まず当たらない。集束電霊放は威力を重視する代わりに、命中率を捨てているからだ。
(拡散させてみるのは、どうだ……?)
ここで彼は思った。自分の電霊放を拡散させれば、迷霊の体に何発もの電霊放を当てられるかもしれない。だがここで彼の首を絞めることが一つある。
(拡散電霊放は、まだ使ったことがないが……)
紫電がメインに使ってきたのは、普通の電霊放だ。拡散もしなければ集束もさせないで、電極部分から電気を放つ。命中率には前から自信があったし、威力も必要とされる場面が少なかった。
今、彼が悩んでいる最中に迷霊が発砲した。
「くっ!」
ダウジングロッドを広げて電磁波のバリアで弾丸を防ぐ紫電。銃口の向きから弾丸の軌道を推測して避けようと思えばできないこともない。
(いや、駄目だ。ここで俺が避けたら、後ろにいる人たちに当たる……!)
理論上はできるだけで、してはいけない選択肢なのだ。迷霊はそのまま、何発も紫電に撃ち込む。その撃ち込まれた弾丸を全て、紫電はバリアで防がなければいけず、両方のロッドで電磁波を広げる。これでは攻めることができない。
(マズい状況だ……)
観光客も段々集まって来て、いよいよ被害が出かねない状態になってきた。
(ダウジングロッドさえ濡れなければ、電霊放が俺に逆流することはない……)
紫電はあることを決めた。それは、戦いの舞台をこの橋から別の場所に移すことである。
「ついて来な!」
紫電は柵を飛び越えた。目の前には川が広がっている。
「うわっ! 男性が……橋から落ちた!」
観光客が騒ぎ出す。迷霊も紫電の後を追って、橋からジャンプした。
「くうう! まあ、痛えっちゃ痛えが……。ブロックの上に降りれた! 濡れずに済んだぜ!」
足が痛み、すぐには動けない状態だ。だがそれでもいい。何よりこの川の方に迷霊を誘導できたおかげで、周囲への被害を気にする必要がなくなった。迷霊の方は足にダメージはなさそうで、川の中だろうが動ける様子。
「勝負だ、お前!」
お互いに…紫電はダウジングロッドを、迷霊は拳銃を、相手に向ける。先に撃ち出したのは迷霊だった。
「防ぐ必要はもうねえぜ!」
だが、見切った紫電はその弾丸を避ける。そして逆に電霊放を撃ち込んだ。首に直撃し、痺れる迷霊。それでもまだ、除霊には至らない。
ここで迷霊は、とある行動に出た。上に向けて大量に、発砲したのだ。
「何だ?」
戸惑う紫電。橋の上の人たちを狙っているようではない。しかしその目的はすぐにわかる。撃ち出された弾丸が軌道を曲げ、紫電に向かって来ているのだ。
「そういうことか! 機傀に霊魂を混ぜたな? 確か、霊障合体・
これで迷霊は勝負を決めようとしているのだ。
「だがな! 俺だって戦いの中で進化してやるぜ! くらえ! 電霊放を広げる……拡散電霊放だ!」
ぶっつけ本番で、拡散電霊放を撃つ紫電。様々な方向に撃ち出された電霊放が、彼に向かって迫る烈化弾丸に命中し破壊。さらに迷霊にも電霊放が当たる。
「どうだ、お前!」
胴体に数発直撃して痺れた迷霊は足元が崩れて川……水の中に落ちた。すると、体全身に電気が流れてしまい、黒焦げになる。
「やった、みてえだな……」
数秒もすれば、その体が消滅してしまった。