第6話 暴走×報復 その3
文字数 3,747文字
「でもどうやって出る、ここから!」
朔那が壊した壁は、教室側だった。だからそこから外には行けない。後ろは瓦礫で塞がれているし、天井が崩れても三階の廊下が見えるだけ。
「ガオオオオ!」
犠霊が攻撃に出た。腕を振って、二人に挑む。
「うおおおお! 来るぞ!」
多少の怪我なら慰療で治せると病射は思う。しかしあの大きな手に押し潰されたら、命が危うい。そうなると慰療は無意味だ。二人は身をかがめて避けた。
(いやあれは、利用できる!)
ここで朔那は考える。犠霊の攻撃を利用して壁を破壊させれば、外に出ることができる。危険だがやらなければならない。
「お、おい!」
立ち上がる朔那。それに釣られて病射も立つ。
「おい、お前! 私たちの命が欲しくないのか? もっと強く出なければ、私たちは殺せないぞ?」
挑発をした。
「ガル?」
だが犠霊には通じていない様子である。もう片方の大きな手が動いた。
「こっちだ!」
それを誘導する朔那。木綿を駆使し成長させた植物の茎の上を動き、何とか壁に攻撃を向けさせる。
「ガオオオオオオ!」
鋭い攻撃が、壁に炸裂した。一撃でコンクリートが崩壊し、外の景色が見える。
「よし! 外に出れるぞ病射! 今だ!」
「おう!」
嫌害霹靂を撃ち出して目晦ましをする病射。
「ギギ!」
犠霊が怯んだその隙に、外に出る。
「あ、痛!」
どういうわけか、外に出られない。
「何だ何だ? 何がある? おれには何も見えねーぞ?」
二人は、見えない壁のようなものにぶつかったのだ。それが邪魔で、この校舎から脱出できていない。
これが犠霊の習性の内の一つだ。自身がいる空間を、結界を繰り出して隔離する。この廃校は犠霊のテリトリーであり、勝手に出ることはできないのだ。
「あの幽霊を倒す以外には、道はないってことかよ……」
これにまず焦りを抱いたのは、病射である。さっきから電霊放が、通じていない。病射の電霊放は拡散するタイプであり、威力よりも命中率を重視している。その低い殺傷能力を毒厄を混ぜることで補っているのだ。
「嫌害霹靂もあまり通じてねーみたいだしよ……。どうすればいいんだ、これは?」
「私に聞いてどうするんだ?」
朔那も少し、焦っている。今逃げ出せればすぐさま、奥の手を使って解決するつもりだったのだ。それができなかったのだから、混乱するのも無理はない。
「焦るな、病射! まだ負けてない! 負けてないなら、いくらでも手の施しようがあるってことだ」
「そりゃそうだが……」
こうして悩んでいる間にも、犠霊は距離を詰めて来る。二階の廊下を破壊しながら前進している。二人の後ろは瓦礫で塞がれているので、足場がどんどん減っていく。
「マズい…!」
犠霊の力は強い。手を挙げて二階の天井を崩した。三階の廊下や壁の瓦礫が音を立てて崩れ雨のように落ちてくる。
「ぬお!」
さらに奥に追い詰められていく。
「病射、私に乗れるか?」
「は?」
「これは賭けだ! あの幽霊を倒さなければ、復讐どころか私たちの命も保証できない! ならば、ここで勝負に出る!」
「その内容は!」
朔那は病射に語る。
自分の奥の手を使うなら、建物の中にはいられない。しかし今、ここから離れることが不可能。そんな状況で、それを実行する。
「運が良ければ、生き残れるはずだ」
「運だと?」
かなり信憑性が薄い話。しかし病射は、
「乗ってやろうじゃねーか! それしかねーんだろう? おめーとおれは運命共同体! おめーが思いついたモノは何でもやってやる!」
自分たちの運勢に全てをかけることにした。
「それはありがたい! 礼を言うぞ、病射!」
「気にすんな」
了解を得た朔那は、霊障合体を使う。その前に豆鉄砲から種を一つ取り出し成長させ、コンクリートを突き破らせて地面に伸ばした。
「これでいい! では行くぞ、病射!」
「ああ!」
手を合わせてから床に下ろす。
「霊障合体・大地 讃頌 !」
そう彼女が叫んだ瞬間、地面があり得ないほどに動いた。
「ぬおおおお!」
病射が瞬時に膝を崩したほどだ。
「病射! ちゃんと私に掴まっていろ!」
朔那もしゃがんで病射の腕を掴む。
(何が起きているんだ、これは?)
地震が起き地面に揺れていることだけはわかっている。だがそれ以上のことが不明だ。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
しかし朔那には、現状がわかっている。大地の力を借りて、地震を起こしている。それだけではない。植物の力も借りて、この廃校を押し潰そうとしているのだ。
(これが、大地讃頌なのか! おれにはよくわからねーが……!)
にわかには信じがたいことだが、この廃校がある地面が移動している。平らな場所なのに、土砂崩れが起きている。それも、上の方向にだ。
「しっかり掴まってろよ、病射いいいいい!」
校舎が土や草木と共に、少し上に持ち上げられた。その際に力強い地面の移動が、廃校を潰すように動く。
「グギャアアアアアア!」
壁や床、天井が崩れて犠霊を飲み込む。だが同時に、朔那と病射もそれに飲み込まれている。
(耐えろ! ここを凌げば、明日を掴める……! 何としてもこの窮地を脱出してやるんだ! その先の目的のために!)
上に持ち上げると今度は、完全に犠霊を倒すために一旦下に移動させる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
気づけば朔那の手や肩に、鉄筋が刺さっている。それを病射が何とか、霊障合体・魔酔で痛みを和らげつつ治療しているのだ。また彼も瓦礫にぶつかり血を流しながらも、何とか耐え凌いでいる。
(これで終わりだ! 完全に消えてしまえ!)
下方向への土砂崩れで、校舎を一気に崩す。地面に落ちた衝撃で犠霊は自分のテリトリーである廃校を破壊され、
「ギシャアアアア………」
バラバラに砕け散っていく。
「お、おお!」
しかし瓦礫と共に落ちていくのだから、病射たちも無事ではない。ここからが朔那が言った、運が試される部分だ。
(まさに絶滅と生存の境界線! ここから先が、朔那とおれが生き残れるかどうかが決まる!)
瓦礫の下敷きになりながらも、二人は意識があった。
「……い、生きてるか?」
「ああ、もちろんだ……」
でもかなり消耗している。体はボロボロで、動かすと痛い部分すらある。幸いにも四肢の欠損はなさそうだ。
「運が、良かったな私たち……」
「ああ……。死んでいてもおかしくなかったぜ。これが朔那、おめーの奥の手……必殺の一撃なのか。これが霊障合体・大地讃頌なのか?」
「そうだ……。地面と植物の力を使って、好きな方向に土砂崩れを引き起こす! だが本来、室内では使ってはいけない。自分もこのように巻き込まれるから……」
ポケットの種を成長させて瓦礫を退け、抜け出す。朔那の右足は言うことを聞かない。病射はもっと悲惨で、鉄筋が背中に刺さりまくっている。
「今、助け出すぞ、病射……」
木綿さえあれば、瓦礫をどかすのは問題ない。つたを使って持ち上げればいいからだ。そうやって病射の体を外に移動させる。
「抜いたほうがいいのか?」
「っぐ!」
鉄筋を引き抜いた。血が噴き出す病射の背中。
「何の! 生きてさえいれば……電心帯!」
「おお! 怪我が治っていく! 流石は慰療だな……」
「朔那、おめーの怪我をおれに見せな。今すぐに治してやっからよー!」
病射が患部を撫でると、元通りの血色を取り戻した。
二人は、本当に運が良かった。瓦礫の中から抜け出せる朔那、怪我を治せる病射。二人の内どちらかが欠けていたら……死んでいたら、二人は文字通りもう片方と運命を共にしていただろう。
「はふー!」
疲れ切って大の字に寝転がる病射。朔那も尻を地面に付けて座った。
「校舎、どうなってる?」
「もうぐちゃぐちゃだ。瓦礫が地面と植物と混じってしまっているよ」
用意していた提灯は、その瓦礫の山の中。本来の目的を二人は失ってしまった。
「さっきの幽霊は?」
「いないみたいだ」
「そうか」
「はあ、疲れた……」
ため息を吐くと、朔那も背中から地面に倒れた。
疲労感は甚大で、すぐには立つことができない。しかし疲れ以外にも二人は何かを感じていた。
(何だ? 気分が高ぶっているな……? 興奮しすぎたか?)
(強引だが、あの幽霊を倒せた。まだ復讐はしていないが、気分が良いぞ……)
それは、達成感だ。犠霊と対峙し、そして倒したことで二人は何かを成し遂げる喜びと満足感を味わっていたのだ。
「でも、まだ始まってすらない! いいか病射、私たちは何としてでも、上杉左門を殺さないといけないんだ!」
「それはちゃんとわかってるぜ。でも今はよ、勝利の余韻に浸らせてくれ。慰療でも薬束でも、エネルギーの消費……疲労は治せないんだからよ」
ただ、二人はその達成感を理性で否定した。これから先に、やらなければいけないことがあるのだから、ここで満足して立ち止まるわけにはいかないのだ。
病射は狂うところまで狂い暴走し、朔那もそれに加わった。
朔那は復讐のために病射を巻き込み、そして病射もその道を行く。
二時間くらい経った後、二人は立ち上がる。
「でも今日は、休もうぜ……」
「そうだな。今の疲れ切った状態では左門に逃げられる」
とりあえず体を休ませるためにもホテルに戻った。
朔那が壊した壁は、教室側だった。だからそこから外には行けない。後ろは瓦礫で塞がれているし、天井が崩れても三階の廊下が見えるだけ。
「ガオオオオ!」
犠霊が攻撃に出た。腕を振って、二人に挑む。
「うおおおお! 来るぞ!」
多少の怪我なら慰療で治せると病射は思う。しかしあの大きな手に押し潰されたら、命が危うい。そうなると慰療は無意味だ。二人は身をかがめて避けた。
(いやあれは、利用できる!)
ここで朔那は考える。犠霊の攻撃を利用して壁を破壊させれば、外に出ることができる。危険だがやらなければならない。
「お、おい!」
立ち上がる朔那。それに釣られて病射も立つ。
「おい、お前! 私たちの命が欲しくないのか? もっと強く出なければ、私たちは殺せないぞ?」
挑発をした。
「ガル?」
だが犠霊には通じていない様子である。もう片方の大きな手が動いた。
「こっちだ!」
それを誘導する朔那。木綿を駆使し成長させた植物の茎の上を動き、何とか壁に攻撃を向けさせる。
「ガオオオオオオ!」
鋭い攻撃が、壁に炸裂した。一撃でコンクリートが崩壊し、外の景色が見える。
「よし! 外に出れるぞ病射! 今だ!」
「おう!」
嫌害霹靂を撃ち出して目晦ましをする病射。
「ギギ!」
犠霊が怯んだその隙に、外に出る。
「あ、痛!」
どういうわけか、外に出られない。
「何だ何だ? 何がある? おれには何も見えねーぞ?」
二人は、見えない壁のようなものにぶつかったのだ。それが邪魔で、この校舎から脱出できていない。
これが犠霊の習性の内の一つだ。自身がいる空間を、結界を繰り出して隔離する。この廃校は犠霊のテリトリーであり、勝手に出ることはできないのだ。
「あの幽霊を倒す以外には、道はないってことかよ……」
これにまず焦りを抱いたのは、病射である。さっきから電霊放が、通じていない。病射の電霊放は拡散するタイプであり、威力よりも命中率を重視している。その低い殺傷能力を毒厄を混ぜることで補っているのだ。
「嫌害霹靂もあまり通じてねーみたいだしよ……。どうすればいいんだ、これは?」
「私に聞いてどうするんだ?」
朔那も少し、焦っている。今逃げ出せればすぐさま、奥の手を使って解決するつもりだったのだ。それができなかったのだから、混乱するのも無理はない。
「焦るな、病射! まだ負けてない! 負けてないなら、いくらでも手の施しようがあるってことだ」
「そりゃそうだが……」
こうして悩んでいる間にも、犠霊は距離を詰めて来る。二階の廊下を破壊しながら前進している。二人の後ろは瓦礫で塞がれているので、足場がどんどん減っていく。
「マズい…!」
犠霊の力は強い。手を挙げて二階の天井を崩した。三階の廊下や壁の瓦礫が音を立てて崩れ雨のように落ちてくる。
「ぬお!」
さらに奥に追い詰められていく。
「病射、私に乗れるか?」
「は?」
「これは賭けだ! あの幽霊を倒さなければ、復讐どころか私たちの命も保証できない! ならば、ここで勝負に出る!」
「その内容は!」
朔那は病射に語る。
自分の奥の手を使うなら、建物の中にはいられない。しかし今、ここから離れることが不可能。そんな状況で、それを実行する。
「運が良ければ、生き残れるはずだ」
「運だと?」
かなり信憑性が薄い話。しかし病射は、
「乗ってやろうじゃねーか! それしかねーんだろう? おめーとおれは運命共同体! おめーが思いついたモノは何でもやってやる!」
自分たちの運勢に全てをかけることにした。
「それはありがたい! 礼を言うぞ、病射!」
「気にすんな」
了解を得た朔那は、霊障合体を使う。その前に豆鉄砲から種を一つ取り出し成長させ、コンクリートを突き破らせて地面に伸ばした。
「これでいい! では行くぞ、病射!」
「ああ!」
手を合わせてから床に下ろす。
「霊障合体・
そう彼女が叫んだ瞬間、地面があり得ないほどに動いた。
「ぬおおおお!」
病射が瞬時に膝を崩したほどだ。
「病射! ちゃんと私に掴まっていろ!」
朔那もしゃがんで病射の腕を掴む。
(何が起きているんだ、これは?)
地震が起き地面に揺れていることだけはわかっている。だがそれ以上のことが不明だ。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
しかし朔那には、現状がわかっている。大地の力を借りて、地震を起こしている。それだけではない。植物の力も借りて、この廃校を押し潰そうとしているのだ。
(これが、大地讃頌なのか! おれにはよくわからねーが……!)
にわかには信じがたいことだが、この廃校がある地面が移動している。平らな場所なのに、土砂崩れが起きている。それも、上の方向にだ。
「しっかり掴まってろよ、病射いいいいい!」
校舎が土や草木と共に、少し上に持ち上げられた。その際に力強い地面の移動が、廃校を潰すように動く。
「グギャアアアアアア!」
壁や床、天井が崩れて犠霊を飲み込む。だが同時に、朔那と病射もそれに飲み込まれている。
(耐えろ! ここを凌げば、明日を掴める……! 何としてもこの窮地を脱出してやるんだ! その先の目的のために!)
上に持ち上げると今度は、完全に犠霊を倒すために一旦下に移動させる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
気づけば朔那の手や肩に、鉄筋が刺さっている。それを病射が何とか、霊障合体・魔酔で痛みを和らげつつ治療しているのだ。また彼も瓦礫にぶつかり血を流しながらも、何とか耐え凌いでいる。
(これで終わりだ! 完全に消えてしまえ!)
下方向への土砂崩れで、校舎を一気に崩す。地面に落ちた衝撃で犠霊は自分のテリトリーである廃校を破壊され、
「ギシャアアアア………」
バラバラに砕け散っていく。
「お、おお!」
しかし瓦礫と共に落ちていくのだから、病射たちも無事ではない。ここからが朔那が言った、運が試される部分だ。
(まさに絶滅と生存の境界線! ここから先が、朔那とおれが生き残れるかどうかが決まる!)
瓦礫の下敷きになりながらも、二人は意識があった。
「……い、生きてるか?」
「ああ、もちろんだ……」
でもかなり消耗している。体はボロボロで、動かすと痛い部分すらある。幸いにも四肢の欠損はなさそうだ。
「運が、良かったな私たち……」
「ああ……。死んでいてもおかしくなかったぜ。これが朔那、おめーの奥の手……必殺の一撃なのか。これが霊障合体・大地讃頌なのか?」
「そうだ……。地面と植物の力を使って、好きな方向に土砂崩れを引き起こす! だが本来、室内では使ってはいけない。自分もこのように巻き込まれるから……」
ポケットの種を成長させて瓦礫を退け、抜け出す。朔那の右足は言うことを聞かない。病射はもっと悲惨で、鉄筋が背中に刺さりまくっている。
「今、助け出すぞ、病射……」
木綿さえあれば、瓦礫をどかすのは問題ない。つたを使って持ち上げればいいからだ。そうやって病射の体を外に移動させる。
「抜いたほうがいいのか?」
「っぐ!」
鉄筋を引き抜いた。血が噴き出す病射の背中。
「何の! 生きてさえいれば……電心帯!」
「おお! 怪我が治っていく! 流石は慰療だな……」
「朔那、おめーの怪我をおれに見せな。今すぐに治してやっからよー!」
病射が患部を撫でると、元通りの血色を取り戻した。
二人は、本当に運が良かった。瓦礫の中から抜け出せる朔那、怪我を治せる病射。二人の内どちらかが欠けていたら……死んでいたら、二人は文字通りもう片方と運命を共にしていただろう。
「はふー!」
疲れ切って大の字に寝転がる病射。朔那も尻を地面に付けて座った。
「校舎、どうなってる?」
「もうぐちゃぐちゃだ。瓦礫が地面と植物と混じってしまっているよ」
用意していた提灯は、その瓦礫の山の中。本来の目的を二人は失ってしまった。
「さっきの幽霊は?」
「いないみたいだ」
「そうか」
「はあ、疲れた……」
ため息を吐くと、朔那も背中から地面に倒れた。
疲労感は甚大で、すぐには立つことができない。しかし疲れ以外にも二人は何かを感じていた。
(何だ? 気分が高ぶっているな……? 興奮しすぎたか?)
(強引だが、あの幽霊を倒せた。まだ復讐はしていないが、気分が良いぞ……)
それは、達成感だ。犠霊と対峙し、そして倒したことで二人は何かを成し遂げる喜びと満足感を味わっていたのだ。
「でも、まだ始まってすらない! いいか病射、私たちは何としてでも、上杉左門を殺さないといけないんだ!」
「それはちゃんとわかってるぜ。でも今はよ、勝利の余韻に浸らせてくれ。慰療でも薬束でも、エネルギーの消費……疲労は治せないんだからよ」
ただ、二人はその達成感を理性で否定した。これから先に、やらなければいけないことがあるのだから、ここで満足して立ち止まるわけにはいかないのだ。
病射は狂うところまで狂い暴走し、朔那もそれに加わった。
朔那は復讐のために病射を巻き込み、そして病射もその道を行く。
二時間くらい経った後、二人は立ち上がる。
「でも今日は、休もうぜ……」
「そうだな。今の疲れ切った状態では左門に逃げられる」
とりあえず体を休ませるためにもホテルに戻った。