第2話 誕生した悪霊 その2
文字数 3,863文字
雪女の傷と体調は治した。再会を祝して会話もした。だから本来ならもう紫電たちは後、帰ることしか残っていない。だがそこで緑祁が、
「紫電! 屍亡者に遭遇したのは本当なんだね?」
「ああ、そうだが。何を改まって……」
「何か、虫の知らせかな? 嫌な予感がするんだ」
もはや緑祁の勘でしかないのだが、何か、ある気がする。
「馬鹿な? ちゃんと俺たちがあの屍亡者を倒した。それに病院のお祓いも済ませた。もう心配することは何もねえだろ?」
屍亡者はしょっちゅう遭遇する幽霊ではないが、同時に珍しい幽霊でもない。霊能力者ではない一般人にもその存在が、都市伝説レベルだが認知されているくらいだ。それが出てきただけなのだから、不安要素はあるわけがない。
「そうだと、いいんだけど……」
しかし、何か腑に落ちない緑祁。
「何なら、来てみるか?」
納得させるために紫電は、そう誘った。実際に見てもらえればその不安をかき消せるだろう。
「わかった。そうしてみる」
緑祁も、何もなければそれでいいと思っている。
「じゃ、行くか! 金は俺が払っておくから、外で待ってろ」
「え、でもそれは流石に申し訳ないわ。私たちが食べた分くらいは……」
「気にすんなって」
カフェの外で会計を待つ。香恵は、雪女に、
「そっちはどう? 看護学校に進んだんだよね、雪女は」
彼女が『月見の会』出身であることは、以前教えてもらった。あの集落にいては学べないことや見れないこと聞けないことが、今、彼女は知れる。自分の人生をやっと歩み出せたということだ。
「面白いね。友達も多くできたし、勉強にも困ってないよ」
「それなら良かったわ!」
そして雪女はそれを受け入れている。
「待たせたな、ちょっと食べ過ぎちまったぜ…!」
レシートを財布に仕舞いながら紫電が出てきた。
「八戸までは新幹線で移動か……」
「いいや? 車で来てるぞ? 執事が駐車場で待ってる。さ、行くぞ」
映画の中でしか見たことがないような高級車に乗せてもらい、八戸にある紫電の親族が経営している病院へ。
「遅くなりそうだね。でも、それでいいのか!」
目的は霊安室と、屍亡者がいた場所だ。それに夜の方が怪しい雰囲気を感じやすいし、人の目も気にならない。
到着したころには、もう日が落ちていた。
「今日中に帰れるかな……」
「泊まれよ、俺ん家に! 急に客人が一人二人増える程度、なんてことねえぜ?」
「ならその言葉に甘えようかしら?」
時間は気にしなくていい。じっくりたっぷり調べられる。
まずは霊安室だ。
「病霊……ま、普通の幽霊がいた場所だな。ついでに屍亡者はここの遺体を既に漁っていた」
霊視してみる緑祁。確かに、邪悪な雰囲気を感じる。でも同時に、温かい感覚もある。これは紫電のお祓いの結果、聖なる念だ。
「どうだ? 何か、感じるか?」
「何も。スッキリって感覚だよ」
「だろうな」
院内教室の近くにも行ってみた。そこで屍亡者を倒したことを紫電は説明。そこでも緑祁は、何も感じなかった。
「確かに、もういない……。邪悪な幽霊の形跡すらも薄い。紫電の腕は確かだし、ここでちゃんと消えている……」
事実そうなのだから、それ以上の感想はない。
「ん?」
しかし、ある場所に違和感が走る。だが、
「小さいな。この程度はよくある幽霊だ。気にする必要性はないね」
一瞬だけ、何かが逃げて行く感じがした。しかしそれは小さな幽霊ならありふれたことなので、留意点にすらならない。
「何もねえだろ? な?」
「うん。どうやら僕の妄想だったみたいだ……」
「そこまで気にすんなよ。危険性がないってわかっただけでも収穫だろう?」
病院を出て、四人はそのまま小岩井家の豪邸に。
「うわっ! デカい! 何だこの豪邸! こんなところに紫電は住んでいるのか! 何なら生まれた時から過ごしているのか!」
その大きさに驚かされる緑祁。彼と香恵は客室に案内された。そこも、緑祁の一人暮らししているマンションの一室よりも広い空間だ。
「香恵、ちょっと手伝ってくれねえか? 屍亡者のこと、【神代】にまだ報告してねえんだ。その報告書の制作!」
「わかったわ」
こうして何事もないかのように、八戸に来て病院も見終わった。
(安心、していいんだよ……?)
だが緑祁は、自分の胸に手を当てると、その心臓の鼓動がどこか早まっていることに気づく。実際に見て確かめたのに、どうしてか不安が消えず、それが心拍数を急かしているのだ。
(何を心配しているんだ、僕は………)
わからない。とにかく忘れようと、ソファーに腰かけた。
緑祁の虫の知らせは、外れてはいなかった。彼は幼怪の存在に気づけそうだったのだ。それができなかったのは、幼怪がもう既にあの病院内にいなかったからである。それどころか、青森県内にすらいない。
「ギギリギギ、ギリギリ」
幼怪は町中の誰か……近くにいた一般人に取り憑いた。そしてその人の移動に合わせて青森どころか東北を出て、関西にまで到達。付近の病院に忍び込み、霊安室に移って同胞の亡骸に触れた。
「ギギギギ」
産声を上げられなかった無念を吸収すると、幼怪は赤子程度の大きさにまで成長。
「ギギ、ギリギギギギギ」
この病院を抜け出すと、自力で少し離れた病院に向かい、そこでも霊安室を暴くのだった。ただし、他の遺体には手を出さない。屍亡者ではないので必要がないからである。つまりこの時点でもう明確に、屍亡者とは異なるタイプの幽霊となっていたのだ。言わば、怨成 と呼ぶべき幽霊の誕生だ。人相の悪い子供のような見た目だが、これでも立派な悪霊である。
「ギギ、リリリリギ」
怨成には、知能が少しあった。もっと自分を大きくしないと、すぐに祓われてしまう。だが大きく動けばそれだけ、霊能力者との遭遇率が高くなる。その危険性を避けつつ成長する方法を考える。編み出した方法は、人気のない場所で霊気を吸収することだった。
「リギリギ」
夜、学校や病院に忍び込む。そこで自分よりも弱い幽霊を自身の体に取り入れる。こうやって少しずつ大きくなっていく。
さらに欲が出た怨成は、心霊スポットにまで足を運ぶ。弱い幽霊は片っ端から吸収した。だがそこには、怨成よりも強い幽霊がいた。敵わない相手には喧嘩は売らず、その場を去った。そして別の場所で自分をパワーアップさせると戻って来て、その相手を吸収。
「ギギギ!」
複数の魂を取り込んだために、より深く考える能力を得た。一番興味のあることは、己の存在意義だ。どうして自分はこの世に残っているのか。それを解明したい。怨成の恨みの根源は、生まれて来れなかったことだ。それを認識すると、
「ギ!」
復讐心が生まれた。自分を拒み、受け入れなかった人間が憎い。生ませてくれなかった人間に腹が立つ。
怨成の今後が決まった。それは人間への復讐である。それを決めた怨成は心霊スポットを出て夜道を進む。ちょうど、自動車が道路を走っている。
「ギリ……」
睨んだだけで、その車のエンジンが故障してガードレールにぶつかった。ただ運転手は無事だったらしく、車から出てスマートフォンで電話をしている。
「………」
その運転手に危害を加えようとしたが、思いとどまった。今の状態では、勝てないかもしれない。危険な綱渡りはしない。その場を去り、また次なる餌を求めて幽霊が潜んでいそうな場所に向かう。しかしそうなると、自然と人里に降りて行かなければいけない。幼怪の時は小さく人に取り憑けばそれで移動できたし気づかれなかったが、今怨成となってしまっている状態では、一般人にも目撃されるかもしれない。
「ギギギ、ギリギリ! ギギギリリリ」
怨んでいる人間が大勢いる町に来ることは、かなり苦痛だった。その分また怨みが大きくなる。
人目を避けて移動していると、墓場にたどり着いた。ここは怨成にとって、かなり都合の良い場所だ。何せ、幽霊の方から勝手に集まってくるのだから。それに昼間でも人が寄り付かないので、居心地もいい。
怨成はそこにいる地縛霊や浮遊霊、悪霊を吸い上げ、自分の成長の糧にする。
あの夜に偶然誕生した幽霊は悪霊となり、人間への報復の機会を伺っている。
「香恵、どうだったの?」
報告書を作り終えたらしく、香恵が客室に戻ってくる。
「余裕だわ。だって何度も書いたことがあるから。ちゃんと【神代】のデータベースにアップロードも済ませたから、もう何も心配することはないわよ」
メイドが二人の寝巻を用意してくれた。二人は風呂を済ませるとそれに着替える。どうやらこの夜の内に洗って乾かし、明日の朝には着れるようにしてくれるらしい。
「ちょっとデータベースを見せて」
「はい」
しかし心配性なことに緑祁は、香恵からタブレット端末を借りて情報を開いた。
「屍亡者の出没はすぐにわかる。何故なら遺体が無くなるから……。除霊は簡単で、札がよく効く。霊障での除霊報告もある。ただし、未成年者は遭遇したらすぐに逃げるべきである」
結構深く調べられてあるようで、何本か論文まで書かれている。しかしその情報の中にはどこにも、
「屍亡者を操る、ってことはないか……。人為的に生み出す手法も確率されていない……」
修練が行ったことは記載されていなかった。だから、紫電が遭遇したという屍亡者も自然発生した個体で間違いない。
「もう寝ましょ。疲れたわ」
「そうだね」
布団も二人分あり、そこで横になる。
(何もない。何も起きていないんだ! 安心しないといけない……!)
そう言い聞かせながら緑祁は目を閉じた。
「紫電! 屍亡者に遭遇したのは本当なんだね?」
「ああ、そうだが。何を改まって……」
「何か、虫の知らせかな? 嫌な予感がするんだ」
もはや緑祁の勘でしかないのだが、何か、ある気がする。
「馬鹿な? ちゃんと俺たちがあの屍亡者を倒した。それに病院のお祓いも済ませた。もう心配することは何もねえだろ?」
屍亡者はしょっちゅう遭遇する幽霊ではないが、同時に珍しい幽霊でもない。霊能力者ではない一般人にもその存在が、都市伝説レベルだが認知されているくらいだ。それが出てきただけなのだから、不安要素はあるわけがない。
「そうだと、いいんだけど……」
しかし、何か腑に落ちない緑祁。
「何なら、来てみるか?」
納得させるために紫電は、そう誘った。実際に見てもらえればその不安をかき消せるだろう。
「わかった。そうしてみる」
緑祁も、何もなければそれでいいと思っている。
「じゃ、行くか! 金は俺が払っておくから、外で待ってろ」
「え、でもそれは流石に申し訳ないわ。私たちが食べた分くらいは……」
「気にすんなって」
カフェの外で会計を待つ。香恵は、雪女に、
「そっちはどう? 看護学校に進んだんだよね、雪女は」
彼女が『月見の会』出身であることは、以前教えてもらった。あの集落にいては学べないことや見れないこと聞けないことが、今、彼女は知れる。自分の人生をやっと歩み出せたということだ。
「面白いね。友達も多くできたし、勉強にも困ってないよ」
「それなら良かったわ!」
そして雪女はそれを受け入れている。
「待たせたな、ちょっと食べ過ぎちまったぜ…!」
レシートを財布に仕舞いながら紫電が出てきた。
「八戸までは新幹線で移動か……」
「いいや? 車で来てるぞ? 執事が駐車場で待ってる。さ、行くぞ」
映画の中でしか見たことがないような高級車に乗せてもらい、八戸にある紫電の親族が経営している病院へ。
「遅くなりそうだね。でも、それでいいのか!」
目的は霊安室と、屍亡者がいた場所だ。それに夜の方が怪しい雰囲気を感じやすいし、人の目も気にならない。
到着したころには、もう日が落ちていた。
「今日中に帰れるかな……」
「泊まれよ、俺ん家に! 急に客人が一人二人増える程度、なんてことねえぜ?」
「ならその言葉に甘えようかしら?」
時間は気にしなくていい。じっくりたっぷり調べられる。
まずは霊安室だ。
「病霊……ま、普通の幽霊がいた場所だな。ついでに屍亡者はここの遺体を既に漁っていた」
霊視してみる緑祁。確かに、邪悪な雰囲気を感じる。でも同時に、温かい感覚もある。これは紫電のお祓いの結果、聖なる念だ。
「どうだ? 何か、感じるか?」
「何も。スッキリって感覚だよ」
「だろうな」
院内教室の近くにも行ってみた。そこで屍亡者を倒したことを紫電は説明。そこでも緑祁は、何も感じなかった。
「確かに、もういない……。邪悪な幽霊の形跡すらも薄い。紫電の腕は確かだし、ここでちゃんと消えている……」
事実そうなのだから、それ以上の感想はない。
「ん?」
しかし、ある場所に違和感が走る。だが、
「小さいな。この程度はよくある幽霊だ。気にする必要性はないね」
一瞬だけ、何かが逃げて行く感じがした。しかしそれは小さな幽霊ならありふれたことなので、留意点にすらならない。
「何もねえだろ? な?」
「うん。どうやら僕の妄想だったみたいだ……」
「そこまで気にすんなよ。危険性がないってわかっただけでも収穫だろう?」
病院を出て、四人はそのまま小岩井家の豪邸に。
「うわっ! デカい! 何だこの豪邸! こんなところに紫電は住んでいるのか! 何なら生まれた時から過ごしているのか!」
その大きさに驚かされる緑祁。彼と香恵は客室に案内された。そこも、緑祁の一人暮らししているマンションの一室よりも広い空間だ。
「香恵、ちょっと手伝ってくれねえか? 屍亡者のこと、【神代】にまだ報告してねえんだ。その報告書の制作!」
「わかったわ」
こうして何事もないかのように、八戸に来て病院も見終わった。
(安心、していいんだよ……?)
だが緑祁は、自分の胸に手を当てると、その心臓の鼓動がどこか早まっていることに気づく。実際に見て確かめたのに、どうしてか不安が消えず、それが心拍数を急かしているのだ。
(何を心配しているんだ、僕は………)
わからない。とにかく忘れようと、ソファーに腰かけた。
緑祁の虫の知らせは、外れてはいなかった。彼は幼怪の存在に気づけそうだったのだ。それができなかったのは、幼怪がもう既にあの病院内にいなかったからである。それどころか、青森県内にすらいない。
「ギギリギギ、ギリギリ」
幼怪は町中の誰か……近くにいた一般人に取り憑いた。そしてその人の移動に合わせて青森どころか東北を出て、関西にまで到達。付近の病院に忍び込み、霊安室に移って同胞の亡骸に触れた。
「ギギギギ」
産声を上げられなかった無念を吸収すると、幼怪は赤子程度の大きさにまで成長。
「ギギ、ギリギギギギギ」
この病院を抜け出すと、自力で少し離れた病院に向かい、そこでも霊安室を暴くのだった。ただし、他の遺体には手を出さない。屍亡者ではないので必要がないからである。つまりこの時点でもう明確に、屍亡者とは異なるタイプの幽霊となっていたのだ。言わば、
「ギギ、リリリリギ」
怨成には、知能が少しあった。もっと自分を大きくしないと、すぐに祓われてしまう。だが大きく動けばそれだけ、霊能力者との遭遇率が高くなる。その危険性を避けつつ成長する方法を考える。編み出した方法は、人気のない場所で霊気を吸収することだった。
「リギリギ」
夜、学校や病院に忍び込む。そこで自分よりも弱い幽霊を自身の体に取り入れる。こうやって少しずつ大きくなっていく。
さらに欲が出た怨成は、心霊スポットにまで足を運ぶ。弱い幽霊は片っ端から吸収した。だがそこには、怨成よりも強い幽霊がいた。敵わない相手には喧嘩は売らず、その場を去った。そして別の場所で自分をパワーアップさせると戻って来て、その相手を吸収。
「ギギギ!」
複数の魂を取り込んだために、より深く考える能力を得た。一番興味のあることは、己の存在意義だ。どうして自分はこの世に残っているのか。それを解明したい。怨成の恨みの根源は、生まれて来れなかったことだ。それを認識すると、
「ギ!」
復讐心が生まれた。自分を拒み、受け入れなかった人間が憎い。生ませてくれなかった人間に腹が立つ。
怨成の今後が決まった。それは人間への復讐である。それを決めた怨成は心霊スポットを出て夜道を進む。ちょうど、自動車が道路を走っている。
「ギリ……」
睨んだだけで、その車のエンジンが故障してガードレールにぶつかった。ただ運転手は無事だったらしく、車から出てスマートフォンで電話をしている。
「………」
その運転手に危害を加えようとしたが、思いとどまった。今の状態では、勝てないかもしれない。危険な綱渡りはしない。その場を去り、また次なる餌を求めて幽霊が潜んでいそうな場所に向かう。しかしそうなると、自然と人里に降りて行かなければいけない。幼怪の時は小さく人に取り憑けばそれで移動できたし気づかれなかったが、今怨成となってしまっている状態では、一般人にも目撃されるかもしれない。
「ギギギ、ギリギリ! ギギギリリリ」
怨んでいる人間が大勢いる町に来ることは、かなり苦痛だった。その分また怨みが大きくなる。
人目を避けて移動していると、墓場にたどり着いた。ここは怨成にとって、かなり都合の良い場所だ。何せ、幽霊の方から勝手に集まってくるのだから。それに昼間でも人が寄り付かないので、居心地もいい。
怨成はそこにいる地縛霊や浮遊霊、悪霊を吸い上げ、自分の成長の糧にする。
あの夜に偶然誕生した幽霊は悪霊となり、人間への報復の機会を伺っている。
「香恵、どうだったの?」
報告書を作り終えたらしく、香恵が客室に戻ってくる。
「余裕だわ。だって何度も書いたことがあるから。ちゃんと【神代】のデータベースにアップロードも済ませたから、もう何も心配することはないわよ」
メイドが二人の寝巻を用意してくれた。二人は風呂を済ませるとそれに着替える。どうやらこの夜の内に洗って乾かし、明日の朝には着れるようにしてくれるらしい。
「ちょっとデータベースを見せて」
「はい」
しかし心配性なことに緑祁は、香恵からタブレット端末を借りて情報を開いた。
「屍亡者の出没はすぐにわかる。何故なら遺体が無くなるから……。除霊は簡単で、札がよく効く。霊障での除霊報告もある。ただし、未成年者は遭遇したらすぐに逃げるべきである」
結構深く調べられてあるようで、何本か論文まで書かれている。しかしその情報の中にはどこにも、
「屍亡者を操る、ってことはないか……。人為的に生み出す手法も確率されていない……」
修練が行ったことは記載されていなかった。だから、紫電が遭遇したという屍亡者も自然発生した個体で間違いない。
「もう寝ましょ。疲れたわ」
「そうだね」
布団も二人分あり、そこで横になる。
(何もない。何も起きていないんだ! 安心しないといけない……!)
そう言い聞かせながら緑祁は目を閉じた。