第7話 轟く雷鳴 その3
文字数 1,809文字
「す、すごい……!」
紫電の戦いっぷりを見て、骸は一言だけこぼした。それ以上の単語は口から出なかったのだ。
「あとはあの六脚竜のヤツだけだな」
しかも[メガロペント]の片顎はもう折れている。
「さあ、降りて来い! そして俺と戦え! お前は逃げることはもうできないんだぜ?」
だが、[メガロペント]は向きを変えて飛んで行ってしまった。
「………できてしまったな…」
あの速さには、人間は誰も追いつけない。だから骸は、
「一旦お前も七草神社に戻って、それから対策を考えよう!」
提案する。しかし、
「そこには緑祁もいるんだろう? 言っておくがな、アイツと協力するぐらいなら、閻魔大王に舌を抜かれた方がマシだぜ!」
紫電はその案を秒速で蹴った。そしてダウジングロッドを持ち直し、
「これがあれば、あの式神……それに二人の場所を探れる! そしてこっちの世界にいるヤツじゃないアイツが逃げる先は一つしかねえ」
花織と久実子のところだ。
「さっきも言っただろう? あの二人を捕まえるのは俺だ! お前は神社で待ってな!」
そう言うと、一人で進んでしまった。しかし彼のダウジングロッドは、隣接世界の存在には反応できない。それを紫電は知らないので、行き先は不安定だ。
雛臥と共に七草神社に戻った骸は、先ほどのことを報告する。
「そうか……」
増幸の返事は暗い。逃げられてしまったのだから当然か。しかしそれ以上に、花織が言っていたことが非常に気がかりなのだ。
「こちらの世界は科学に汚染されている、か……。二人の世界はそうではなかったということだな?」
「らしいぜ」
言葉でしか聞いてないので本当かどうかわからないが、二人の発言を信じるならそうなる。
「でも、待ってよ。科学のせいで死にかけたって、どういうこと?」
緑祁が質問した。
「う~ん、俺に聞かれてもわかんねえぞ……。あのマブい二人がどういう経緯で科学を恨んでるのかは、知らん……」
「きっと、こうだろう」
増幸が想像する。
「科学のせいで戦争が始まったんだ。前に私が、隣接世界がこちらの世界と同じ歴史を歩んでいるとは限らない、と言ったのを覚えているかい? だがこれに関しては同じだったようだな」
「どういう意味です?」
「私たちの世界も、科学が発展すると人類はそれを戦いに用いたくなる。同じことが彼女らの世界でも起きたんだよ。広がる戦火が二人…だけじゃない、多くの人の命を脅かしたとなれば、憎んで当然だろう?」
その言葉には説得力があった。だから香恵も、
「なるほど、です。原爆に家族を殺された人がそれを恨むのと同じなんですね」
「そうだ」
「でも増幸さん。もしそうなら、二人を元いた世界に送り返すのは不可能なことでは?」
ここで疑問に思う緑祁。それも当たり前だ。二人は命の危険を察したから、元の世界から飛び出たのである。
しかし、
「いいや、大丈夫だ」
と。曰く、その戦争が終わるまでこちらの世界に待機させ、終息し次第送り返せばいいだけとのこと。
(でも、そう簡単に上手くいくのかな…?)
納得のいかない緑祁だったが、反論しても増幸以上の答えが出せそうにないのでやめた。
「では、作戦を考えよう……」
普通は、どう対処するかみんなで話し合って決める。
けれども緑祁は、
「僕、行きます」
と言った。
「待ってくれ緑祁君。今ここを出発したって、二人のところにたどり着けるはずがない。意味のない行動は慎んでくれ」
当然その意思は否定されるのだが、
「私も緑祁の考えに賛成だわ」
香恵が支持する。
「今、例の二人は戦力を大幅に落としている。叩くなら今がチャンスよ。グズグズしてたら二人が落ち着きを取り戻して、こちらの世界に攻撃をしかねないわ」
加えて緑祁は、紫電よりも先に二人を捕まえたいと思っていた。だから意思を折り曲げることを嫌った。
「……仕方がない。なら今晩だけ許可しよう。見つからなかったら素直に戻って来るんだぞ?」
説得できないと判断した増幸がそう言うと、緑祁と香恵は、
「わかりました。その時は増幸さんの指示に従います」
と言って七草神社を出た。
「大丈夫かいな、増幸はん?」
道雄が言う。
「ワテは香恵ちゃんが傷つかないか心配やで。デートの約束したんや、無事やないと困る!」
勇悦も心配そうな表情を浮かべる。
「なあに問題はない。見つけ出すことはできないのだから、必ず戻って来るさ。さて、こちらはこちらで作戦会議を続けよう……」
紫電の戦いっぷりを見て、骸は一言だけこぼした。それ以上の単語は口から出なかったのだ。
「あとはあの六脚竜のヤツだけだな」
しかも[メガロペント]の片顎はもう折れている。
「さあ、降りて来い! そして俺と戦え! お前は逃げることはもうできないんだぜ?」
だが、[メガロペント]は向きを変えて飛んで行ってしまった。
「………できてしまったな…」
あの速さには、人間は誰も追いつけない。だから骸は、
「一旦お前も七草神社に戻って、それから対策を考えよう!」
提案する。しかし、
「そこには緑祁もいるんだろう? 言っておくがな、アイツと協力するぐらいなら、閻魔大王に舌を抜かれた方がマシだぜ!」
紫電はその案を秒速で蹴った。そしてダウジングロッドを持ち直し、
「これがあれば、あの式神……それに二人の場所を探れる! そしてこっちの世界にいるヤツじゃないアイツが逃げる先は一つしかねえ」
花織と久実子のところだ。
「さっきも言っただろう? あの二人を捕まえるのは俺だ! お前は神社で待ってな!」
そう言うと、一人で進んでしまった。しかし彼のダウジングロッドは、隣接世界の存在には反応できない。それを紫電は知らないので、行き先は不安定だ。
雛臥と共に七草神社に戻った骸は、先ほどのことを報告する。
「そうか……」
増幸の返事は暗い。逃げられてしまったのだから当然か。しかしそれ以上に、花織が言っていたことが非常に気がかりなのだ。
「こちらの世界は科学に汚染されている、か……。二人の世界はそうではなかったということだな?」
「らしいぜ」
言葉でしか聞いてないので本当かどうかわからないが、二人の発言を信じるならそうなる。
「でも、待ってよ。科学のせいで死にかけたって、どういうこと?」
緑祁が質問した。
「う~ん、俺に聞かれてもわかんねえぞ……。あのマブい二人がどういう経緯で科学を恨んでるのかは、知らん……」
「きっと、こうだろう」
増幸が想像する。
「科学のせいで戦争が始まったんだ。前に私が、隣接世界がこちらの世界と同じ歴史を歩んでいるとは限らない、と言ったのを覚えているかい? だがこれに関しては同じだったようだな」
「どういう意味です?」
「私たちの世界も、科学が発展すると人類はそれを戦いに用いたくなる。同じことが彼女らの世界でも起きたんだよ。広がる戦火が二人…だけじゃない、多くの人の命を脅かしたとなれば、憎んで当然だろう?」
その言葉には説得力があった。だから香恵も、
「なるほど、です。原爆に家族を殺された人がそれを恨むのと同じなんですね」
「そうだ」
「でも増幸さん。もしそうなら、二人を元いた世界に送り返すのは不可能なことでは?」
ここで疑問に思う緑祁。それも当たり前だ。二人は命の危険を察したから、元の世界から飛び出たのである。
しかし、
「いいや、大丈夫だ」
と。曰く、その戦争が終わるまでこちらの世界に待機させ、終息し次第送り返せばいいだけとのこと。
(でも、そう簡単に上手くいくのかな…?)
納得のいかない緑祁だったが、反論しても増幸以上の答えが出せそうにないのでやめた。
「では、作戦を考えよう……」
普通は、どう対処するかみんなで話し合って決める。
けれども緑祁は、
「僕、行きます」
と言った。
「待ってくれ緑祁君。今ここを出発したって、二人のところにたどり着けるはずがない。意味のない行動は慎んでくれ」
当然その意思は否定されるのだが、
「私も緑祁の考えに賛成だわ」
香恵が支持する。
「今、例の二人は戦力を大幅に落としている。叩くなら今がチャンスよ。グズグズしてたら二人が落ち着きを取り戻して、こちらの世界に攻撃をしかねないわ」
加えて緑祁は、紫電よりも先に二人を捕まえたいと思っていた。だから意思を折り曲げることを嫌った。
「……仕方がない。なら今晩だけ許可しよう。見つからなかったら素直に戻って来るんだぞ?」
説得できないと判断した増幸がそう言うと、緑祁と香恵は、
「わかりました。その時は増幸さんの指示に従います」
と言って七草神社を出た。
「大丈夫かいな、増幸はん?」
道雄が言う。
「ワテは香恵ちゃんが傷つかないか心配やで。デートの約束したんや、無事やないと困る!」
勇悦も心配そうな表情を浮かべる。
「なあに問題はない。見つけ出すことはできないのだから、必ず戻って来るさ。さて、こちらはこちらで作戦会議を続けよう……」