第8話 緑色の稲妻 その4
文字数 2,322文字
対策を考えればどうにかできそうだが、ここで問題がある。
(アレは、何と何の霊障合体なんだろう? それがわからないと、対処ができない!)
例えば鬼火が混ざっているのなら、電霊放が有効だ。電霊放が何かと合体してるなら、礫岩で遮ることができる。
しかし、岬はこれが霊障合体であることしか言わなかった。おまけに緑祁の経験上のどの霊障とも重ならない現象だ。
「鬼火ならどう!」
もう一度火炎放射をする。
(電霊放は……来ない!)
手を擦ってない。片手を突き出したままだ。そのまま、また、
「闘撃波弾!」
繰り出された。炎を貫いてその波弾が飛ぶ。しかし炎のせいでよく見えなかったのか、緑祁の方には来ない。電信柱に直撃し、砕いた。
「そっちだったわね?」
火をかき消されたので、居場所がバレた。もちろん岬は手のひらを緑祁に向けている。
「く、来る!」
謎の光弾。
(もしかして……精霊光みたいなものなのか! だとしたら…!)
精霊光は空気を熱すれば曲げることができた。あの破壊力も精霊光なら頷ける。
(でも精霊光をこの世界で使えるのは、[ライトニング]だけのはず! いや霊障合体を駆使すれば話は違うのかな?)
試してみる価値はある。自分の周りを鬼火で熱し、十分陽炎を生じさせる程度になる。
(あとはこっちから仕掛ければ……)
今度は火災旋風だ。それをけしかけるともちろん岬は、闘撃波弾を使った。
「ひいぃい! で、でも!」
曲がるはず。少なくとも緑祁の頭の中では岬に跳ね返せるはずだった。
しかし現実は違った。陽炎を無視して波弾が飛んだ。
「な、何だって!」
腕を前に出して交差したが、直撃してしまう。
「うわああああ………!」
たったの一発で、かなりの距離を吹っ飛ばされた。
「緑祁ぇ! だ、大丈夫か!」
全然大丈夫ではない。
「さて、どうしようかしらね? 紫電……とか言ってたっけ? もうあなた一人だけになっちゃったわよ?」
「うぐ……」
「今までに見た感じ、あなたは電霊放しか使えないのよね。なら私の霊錆の方が速いわ。覚悟、できてる?」
両手を前に出し、闘撃波弾を撃ち出そうとしたその時だ。
「うおおおおおおおお!」
緑祁が岬の背後に現れ、彼女のことを羽交い絞めにしたのだ。
「な? 何であなた、まだ動けるのよ?」
無事ではない。かなりのダメージを負った。幸いにも吹っ飛ばされた先に、茂みがあったのだ。足や腕には枝が突き刺さっているが、抜いている暇も痛みを感じている暇もない。
「紫電! 岬の両腕は封じた! 撃て、電霊放を!」
闘撃波弾についてわかったことがある。それはどの霊障を組み合わせているのか、精霊光とはどう違うのか……ではない。使う際、対象に向けて手のひらを向けなければいけないということ。今、羽交い絞めにしたついでに手首を押さえたのでもう撃たせない。
「こ、この! 放しなさいよ、あなた!」
「やれ、紫電! そっちが最後まで残ればいいんだ! 一人だけでもゴールすれば、僕たちの勝ちだ! 岬を脱落させるなら、僕だって落ちてやる!」
「黙りなさい!」
岬は頭を後ろに振った。後頭部が緑祁の額にぶつかり、出血。それでも放しはしない。
(紫電は僕のライバルだ! 僕ごと電霊放で撃ち抜くなんて、わけない! 迷わず選んでくれるはずだ!)
それは紫電も同じ認識で、
(こんな形で、緑祁を撃ちたくはなかったが! 仕方がない!)
覚悟を決める。
「行くぞぉおおおおおおおおおおお!」
(ど、どうすれば!)
岬は焦った。手を動かして闘撃波弾を使えば緑祁どころか紫電も吹き飛ばせる。だがその手が今、封じられている。
「神はまだ、私を見捨ててないわね。全くもう、焦ったわ!」
突然、何かを呟いた岬。手首を掴まれているこの状態が、いいのだ。
「乱舞のこと、忘れてない?」
力を込め、腕をグイっと動かした。
「あああっ!」
ガッチリと手首を掴んでいた緑祁はその動きに釣られ、引っ張られる。
「せい、やあああ!」
逆に腕を掴まれて背負い投げされた。地面にズドーンと叩きつけられ、
「ぶっが!」
吐血。だが緑祁も勝負を諦めてはいない。この時、岬の腕を掴んでいた。さらに逆に彼女のことをぶん投げる。これは乱舞ではなく、火事場の馬鹿力だ。
「えっ!」
この予想外の一手に岬は対応できなかった。緑祁の足元ら辺に彼女は叩きつけられ、
「コイツ……! 二度と動けなくしてやるわ!」
すぐに立ち上がり、闘撃波弾を使うために手を向けた。
「今だ!」
彼女の背後で紫電が叫んだ。
「何……?」
振り返ると、既に遅かった。強大な電霊放が紫電のロッドから放たれていたのだ。
「し、しまっ……!」
緑祁は地面に倒れたままだ。今立っているのは岬だけ。完璧なタイミングである。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!」
その電霊放が、岬に直撃した。凄まじい光が彼女を襲い、サイレンよりも大きな断末魔が上がる。
「くたばれっ! ぬおおおおおお!」
紫電は自分の霊力を全て振り絞り、電霊放を撃ち続ける。十秒は放てただろうか。
「……がっ」
岬は倒れた。
「や、やった!」
ついに勝利した緑祁と紫電。この時には雪女も意識を回復しており上半身を起こして、
「勝ったんだね、紫電、緑祁。あの岬に」
「ああ、そうだぜ! コイツは倒した! でも雪女に香恵が脱落させられた……。ダメージが大き過ぎる!」
「一先ず紫電、手を貸してくれない? 一人じゃ立てないよ」
「わかってるぜ。緑祁、よく頑張った! さあ一旦香恵の方に行こう。脱落した人が霊障を使っていいのかを【神代】に聞いてみるか。多分無理だと思うんだが……」
そうなると、緑祁の怪我の回復にかなり時間を割くことになるだろう。
(アレは、何と何の霊障合体なんだろう? それがわからないと、対処ができない!)
例えば鬼火が混ざっているのなら、電霊放が有効だ。電霊放が何かと合体してるなら、礫岩で遮ることができる。
しかし、岬はこれが霊障合体であることしか言わなかった。おまけに緑祁の経験上のどの霊障とも重ならない現象だ。
「鬼火ならどう!」
もう一度火炎放射をする。
(電霊放は……来ない!)
手を擦ってない。片手を突き出したままだ。そのまま、また、
「闘撃波弾!」
繰り出された。炎を貫いてその波弾が飛ぶ。しかし炎のせいでよく見えなかったのか、緑祁の方には来ない。電信柱に直撃し、砕いた。
「そっちだったわね?」
火をかき消されたので、居場所がバレた。もちろん岬は手のひらを緑祁に向けている。
「く、来る!」
謎の光弾。
(もしかして……精霊光みたいなものなのか! だとしたら…!)
精霊光は空気を熱すれば曲げることができた。あの破壊力も精霊光なら頷ける。
(でも精霊光をこの世界で使えるのは、[ライトニング]だけのはず! いや霊障合体を駆使すれば話は違うのかな?)
試してみる価値はある。自分の周りを鬼火で熱し、十分陽炎を生じさせる程度になる。
(あとはこっちから仕掛ければ……)
今度は火災旋風だ。それをけしかけるともちろん岬は、闘撃波弾を使った。
「ひいぃい! で、でも!」
曲がるはず。少なくとも緑祁の頭の中では岬に跳ね返せるはずだった。
しかし現実は違った。陽炎を無視して波弾が飛んだ。
「な、何だって!」
腕を前に出して交差したが、直撃してしまう。
「うわああああ………!」
たったの一発で、かなりの距離を吹っ飛ばされた。
「緑祁ぇ! だ、大丈夫か!」
全然大丈夫ではない。
「さて、どうしようかしらね? 紫電……とか言ってたっけ? もうあなた一人だけになっちゃったわよ?」
「うぐ……」
「今までに見た感じ、あなたは電霊放しか使えないのよね。なら私の霊錆の方が速いわ。覚悟、できてる?」
両手を前に出し、闘撃波弾を撃ち出そうとしたその時だ。
「うおおおおおおおお!」
緑祁が岬の背後に現れ、彼女のことを羽交い絞めにしたのだ。
「な? 何であなた、まだ動けるのよ?」
無事ではない。かなりのダメージを負った。幸いにも吹っ飛ばされた先に、茂みがあったのだ。足や腕には枝が突き刺さっているが、抜いている暇も痛みを感じている暇もない。
「紫電! 岬の両腕は封じた! 撃て、電霊放を!」
闘撃波弾についてわかったことがある。それはどの霊障を組み合わせているのか、精霊光とはどう違うのか……ではない。使う際、対象に向けて手のひらを向けなければいけないということ。今、羽交い絞めにしたついでに手首を押さえたのでもう撃たせない。
「こ、この! 放しなさいよ、あなた!」
「やれ、紫電! そっちが最後まで残ればいいんだ! 一人だけでもゴールすれば、僕たちの勝ちだ! 岬を脱落させるなら、僕だって落ちてやる!」
「黙りなさい!」
岬は頭を後ろに振った。後頭部が緑祁の額にぶつかり、出血。それでも放しはしない。
(紫電は僕のライバルだ! 僕ごと電霊放で撃ち抜くなんて、わけない! 迷わず選んでくれるはずだ!)
それは紫電も同じ認識で、
(こんな形で、緑祁を撃ちたくはなかったが! 仕方がない!)
覚悟を決める。
「行くぞぉおおおおおおおおおおお!」
(ど、どうすれば!)
岬は焦った。手を動かして闘撃波弾を使えば緑祁どころか紫電も吹き飛ばせる。だがその手が今、封じられている。
「神はまだ、私を見捨ててないわね。全くもう、焦ったわ!」
突然、何かを呟いた岬。手首を掴まれているこの状態が、いいのだ。
「乱舞のこと、忘れてない?」
力を込め、腕をグイっと動かした。
「あああっ!」
ガッチリと手首を掴んでいた緑祁はその動きに釣られ、引っ張られる。
「せい、やあああ!」
逆に腕を掴まれて背負い投げされた。地面にズドーンと叩きつけられ、
「ぶっが!」
吐血。だが緑祁も勝負を諦めてはいない。この時、岬の腕を掴んでいた。さらに逆に彼女のことをぶん投げる。これは乱舞ではなく、火事場の馬鹿力だ。
「えっ!」
この予想外の一手に岬は対応できなかった。緑祁の足元ら辺に彼女は叩きつけられ、
「コイツ……! 二度と動けなくしてやるわ!」
すぐに立ち上がり、闘撃波弾を使うために手を向けた。
「今だ!」
彼女の背後で紫電が叫んだ。
「何……?」
振り返ると、既に遅かった。強大な電霊放が紫電のロッドから放たれていたのだ。
「し、しまっ……!」
緑祁は地面に倒れたままだ。今立っているのは岬だけ。完璧なタイミングである。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!」
その電霊放が、岬に直撃した。凄まじい光が彼女を襲い、サイレンよりも大きな断末魔が上がる。
「くたばれっ! ぬおおおおおお!」
紫電は自分の霊力を全て振り絞り、電霊放を撃ち続ける。十秒は放てただろうか。
「……がっ」
岬は倒れた。
「や、やった!」
ついに勝利した緑祁と紫電。この時には雪女も意識を回復しており上半身を起こして、
「勝ったんだね、紫電、緑祁。あの岬に」
「ああ、そうだぜ! コイツは倒した! でも雪女に香恵が脱落させられた……。ダメージが大き過ぎる!」
「一先ず紫電、手を貸してくれない? 一人じゃ立てないよ」
「わかってるぜ。緑祁、よく頑張った! さあ一旦香恵の方に行こう。脱落した人が霊障を使っていいのかを【神代】に聞いてみるか。多分無理だと思うんだが……」
そうなると、緑祁の怪我の回復にかなり時間を割くことになるだろう。