第6話 この世ならざる場所 その1
文字数 3,856文字
翌日、すぐに東京に呼び戻された。【神代】の本部である予備校の講義室に招集された十人は、幹部である凱輝に、
「確か、なのか?」
再確認される。
「はい、この目で見ました。それは俺以外の九人も同じ。皇の四つ子ですら目撃しているのです」
「だとすると、非常に、マズいことになった……」
慰霊碑の破壊の一件も大変な出来事なのだが、これはそれ以上だ。
「まさか、禁霊術が、行われていたとは………」
「容疑者の特定はまだです。ですが、ここにいる絵美たち四人ではないことは確か、です。あれには重要なアイテムが必要ですが、彼女たちはそれすら知らないのですから」
「しかし、だ、範造。慰霊碑を壊したことには、代わりはない」
「それが仕組まれた陰謀だったとしたら?」
「なるほど。一理ある」
話を進める範造と凱輝。
「殺しましょうか? これ以上の禁忌を犯させないためにも……」
「やめておけ。富嶽様は、殺生が嫌いだ。事実であっても、許可は下りない」
「ですが!」
「勝手に動くな、範造。お前には、そういうところがある」
ここで骸が、
「…俺たちにもわかるように、解説してくれませんか…?」
と頼んだ。
「するべきです、凱輝さん。彼らは巻き込まれ、真犯人に利用された可能性が高い」
「そうだな。では、パソコンを取ってくる。お前は、プロジェクターを、温めておけ」
凱輝は一旦席を外した。
「禁霊術…の話は聞いたことはあるわ。でも、本当なの?」
絵美が雛菊に聞く。
「ホントウ。ワタシはミたことないけど、範造はイチドタイケンしてる」
「死者を蘇らせること、だよね?」
「そう。キノウのあのヒトみたいなバアイもあるらしいわ」
「解説を入れるか……」
範造は黒板の前に立ち、チョークを握った。
「禁じられた霊術、それが禁霊術だ。何故禁止されているか? それはここでは省く。あまり関係なさそうだからな。ではそれが何なのか? 特に『帰』とは? それを教えよう」
「ふん! そなたに教わるまでもない!」
皇の四つ子は当然知っており、そういう態度をとった。それを範造は無視し、板書を進める。
「人は死んだ時、魂だけの形で残ることがある。これが幽霊だ。黄泉の国…あの世に向かわなかった魂ってことだな。では、そうでない場合……つまりは成仏した場合はどうか? それは降霊術で呼び出すことができる。イタコなんかがそうだ」
しかしそれらはあくまでも、死者の魂に関与すること。
だが禁霊術『帰』は違う。
「よく耳にする、死んだ人が生き変える儀式……俗に言う死者蘇生を行うのが、禁霊術だ」
純粋に人を蘇らせることを指す。それを行うには、死返の石と呼ばれる品物が必要で、いくら強力な霊能力者でも手ぶらではできない。
禁霊術は、魂がどうのこうのという次元ではない。肉体レベルで蘇るのだ。何もない空間から、体を構成させることすら可能である。そしてその蘇った者は、生者として二度目の人生を歩めるわけだが……。
「それは、生き物の命は一度きりという自然界のルールに反しておる」
朱雀の指摘通りの理由で、禁じられている。
「その通り。俺もそれ以上のことは詳しく知らないが、魂の穢れにも関わっているはずだ」
「魂が穢れる? それがどう関係してるのよ?」
「知らないのか、貴様ら? 霊能力者は人を殺すと魂が呪われる。そのことを穢れと言うんだ。ま、普通じゃあ人殺しなんてしないから知らなくて当然か」
原理は不明だが、魂が穢れ呪われると目に異常が出る。事実今の範造には、赤と緑のチョークの区別がついていない。また雛菊の見る世界は全てがモノクロだ。
「殺人は魂の穢れに直接結びつく事象だ。だから【神代】の中でも選ばれた人間しか処刑人にはなれない」
そして、その殺人と同じレベルで魂が呪われ穢れるのが、禁霊術。
「禁止するほどに危険なのか? 疑問が湧く――」
「そうだな……」
刹那に質問されたので、範造は考えた。
(思えば、どうして禁じられてんだ? 危険があるのか? さっき皇の何とかが言ってたように、自然の摂理に反するから駄目……では、答えとして不十分だろうに)
その最中にドアが開き、
「もし、『帰』が許可されてしまったら……。おぞましい未来が、待っている。だから禁止されているんだ」
凱輝が戻って来た。
「想像してみろ? 生者しかいないはずのこの世界に、死者が蘇ったら? 阿鼻叫喚の地獄に、早変わりだ。それに、霊的なバランスも著しく崩れ、何が起きるかわからない。それこそ、この世の終わりかもしれない」
その、好ましくない未来を事前に防ぐためにも、禁止指定されているとのこと。
どうやら凱輝は範造の解説を一部廊下で聞いていたらしく、
「もっと詳しい話を、聞かせよう」
パソコンを機械に繋いでスクリーンにスライドを映し出す。
「『帰』は、死返の石さえあればできてしまう。それ以外に必要なのは、それこそ蘇らせたい者の、魂だけだ」
もし遺体があれば、もっと本格的に蘇生できるという。ない場合は不完全となり、温度や呼吸を再現できない。
「じゃああそこで私たちが遭遇したのって………」
「おそらく、『橋島霊軍』の一員が、蘇ったのだろう」
「では、誰が――?」
ここで疑問になるのが、それを誰が行ったのかということ。
「お前たちではない、んだな?」
そうだと言って頷く四人。
「だとしたら、【神代】に悪意を持った誰か、となる……」
【神代】は全ての霊能力者の思想を管理しているわけではないので、変なところで反感を買っているかもしれない。言い換えれば心当たりが多過ぎるのだ。
「まさか、蛭児?」
雛菊がそう小声で呟いたのを、凱輝は聞き逃さなかった。
「何故、そう思う? 雛菊?」
「だって、イレイヒのアトチにシニンがいたんです。ヨニンがイレイヒをコワすようにサしムけたのが、蛭児。カコにカミシロにホロぼされたヒトたちのムネンをヨミガエらせるためにも、イレイヒがジャマだった……としたら、どうです?」
「その、目的は?」
「それは……」
「蛭児本人を捕まえればいいだけ、でしょう?」
言葉に詰まった雛菊の代わりに範造が返事をした。
「だが、まだ蛭児が、犯人と決まったわけではない。ここでは、真犯人、とする。その者は、何かよからぬことを、企てている、ということか?」
それは本人にしかわからない野望だ。
「蛭児の確保は【神代】の方でできますか?」
「無理、だ」
証拠がないのでそんなことは不可能。来るように命じても断られるに決まっているし、仮に素直に来たとしても、どうやって『帰』を行ったことを証明するのかという壁にぶち当たる。
「今、重要参考人は絵美、刹那、雛臥、骸…お前たちだ。【神代】としては、お前たちが『帰』をしたと睨むだろう」
だが、そうではないはず。凱輝の本能が、そう告げている。
(【神代】の跡継ぎは、当事者間でしかわからない、と言った。ここは一つ、この者たちに、かけてみてもいいかもしれない……)
危険だが、監視役が二組いれば大丈夫とも思う。
「そうでないことを、真犯人を捕まえて、証明せよ」
凱輝は命令を下した。真犯人を特定し、ここに連れてくることを。
「ただし、思いあがらないことだ。【神代】はまだ、お前たちを疑っている。無実の証明は、真相を明らかにした時だけ。それを、肝に銘じよ」
一番いいのは、真犯人が『帰』を行っている現場を押さえることだ。しかし手筈がよくわかっていない状態では、どれがどれなのかの判別は難しいだろう。そう判断した凱輝はこの日の午後に、シミュレーションを四人の前で行う。
「これは、コンピュータ上の、実験でしかないが……」
人が赤い石を持って霊気を放出する。すると地面を突き破って死者が蘇る。
「これだけ?」
絵美は驚いた。あまりにも手間がかからなさすぎるためだ。
「これは、遺体がない場合。ある場合は、こうなる」
次の映像は、遺体の近くで赤い石に念じるというもの。すると遺体が起き上がる。
『帰』は、難しい儀式ではない。地域によって手法は多少変わるが、どれも呆気ないと思える動作なのだ。
「だから、現場を押さえるのは、相当難しいと思われる」
簡単ということは、中断も楽であるということ。もしも人に見つかりそうになったら手を止めて、
「何も起きてないよ?」
と言えてしまう。
「そうなると、『帰』を行っている最中をバレずにビデオカメラなどで録画するか、カメラで撮影する。途中で押しかけるのはかえって悪手ですね……」
そのためのカメラは、もう用意されている。範造と雛菊がホームビデオを、緋寒、紅華、赤実、朱雀はデジタルカメラを支給された。
「一度、黙って全工程を見届ける必要があるというわけか……」
緋寒たち皇の四つ子としては、違反行為である禁霊術を見ているのはかなり苛立つことだ。でもそうしないと、心霊犯罪を立証できない。ここは作戦通りの行動を選ぶ。
「では、私からはこれで終わりだ。行け! 必ず犯人を特定せよ!」
「ちょっと待って!」
絵美が聞く。
「まだ、皇の四つ子や範造たちの監視はあるの?」
「当然だ。お前たちの無実は、まだ証明されてない。犯人を捕まえてくる、という約束だったはずだが?」
当然、見張りは継続だ。でもそれも、真犯人を捕えればいいだけの話。
「……わかったわよ!」
また十人で移動することになった。
「行き先はどこにしよう――?」
蛭児の方から動きがあれば、それが一番いい。だからまずは、待機する、ちょうど旅の疲れもあったので、焦燥感こそあるが束の間の休息を取ることに。
「確か、なのか?」
再確認される。
「はい、この目で見ました。それは俺以外の九人も同じ。皇の四つ子ですら目撃しているのです」
「だとすると、非常に、マズいことになった……」
慰霊碑の破壊の一件も大変な出来事なのだが、これはそれ以上だ。
「まさか、禁霊術が、行われていたとは………」
「容疑者の特定はまだです。ですが、ここにいる絵美たち四人ではないことは確か、です。あれには重要なアイテムが必要ですが、彼女たちはそれすら知らないのですから」
「しかし、だ、範造。慰霊碑を壊したことには、代わりはない」
「それが仕組まれた陰謀だったとしたら?」
「なるほど。一理ある」
話を進める範造と凱輝。
「殺しましょうか? これ以上の禁忌を犯させないためにも……」
「やめておけ。富嶽様は、殺生が嫌いだ。事実であっても、許可は下りない」
「ですが!」
「勝手に動くな、範造。お前には、そういうところがある」
ここで骸が、
「…俺たちにもわかるように、解説してくれませんか…?」
と頼んだ。
「するべきです、凱輝さん。彼らは巻き込まれ、真犯人に利用された可能性が高い」
「そうだな。では、パソコンを取ってくる。お前は、プロジェクターを、温めておけ」
凱輝は一旦席を外した。
「禁霊術…の話は聞いたことはあるわ。でも、本当なの?」
絵美が雛菊に聞く。
「ホントウ。ワタシはミたことないけど、範造はイチドタイケンしてる」
「死者を蘇らせること、だよね?」
「そう。キノウのあのヒトみたいなバアイもあるらしいわ」
「解説を入れるか……」
範造は黒板の前に立ち、チョークを握った。
「禁じられた霊術、それが禁霊術だ。何故禁止されているか? それはここでは省く。あまり関係なさそうだからな。ではそれが何なのか? 特に『帰』とは? それを教えよう」
「ふん! そなたに教わるまでもない!」
皇の四つ子は当然知っており、そういう態度をとった。それを範造は無視し、板書を進める。
「人は死んだ時、魂だけの形で残ることがある。これが幽霊だ。黄泉の国…あの世に向かわなかった魂ってことだな。では、そうでない場合……つまりは成仏した場合はどうか? それは降霊術で呼び出すことができる。イタコなんかがそうだ」
しかしそれらはあくまでも、死者の魂に関与すること。
だが禁霊術『帰』は違う。
「よく耳にする、死んだ人が生き変える儀式……俗に言う死者蘇生を行うのが、禁霊術だ」
純粋に人を蘇らせることを指す。それを行うには、死返の石と呼ばれる品物が必要で、いくら強力な霊能力者でも手ぶらではできない。
禁霊術は、魂がどうのこうのという次元ではない。肉体レベルで蘇るのだ。何もない空間から、体を構成させることすら可能である。そしてその蘇った者は、生者として二度目の人生を歩めるわけだが……。
「それは、生き物の命は一度きりという自然界のルールに反しておる」
朱雀の指摘通りの理由で、禁じられている。
「その通り。俺もそれ以上のことは詳しく知らないが、魂の穢れにも関わっているはずだ」
「魂が穢れる? それがどう関係してるのよ?」
「知らないのか、貴様ら? 霊能力者は人を殺すと魂が呪われる。そのことを穢れと言うんだ。ま、普通じゃあ人殺しなんてしないから知らなくて当然か」
原理は不明だが、魂が穢れ呪われると目に異常が出る。事実今の範造には、赤と緑のチョークの区別がついていない。また雛菊の見る世界は全てがモノクロだ。
「殺人は魂の穢れに直接結びつく事象だ。だから【神代】の中でも選ばれた人間しか処刑人にはなれない」
そして、その殺人と同じレベルで魂が呪われ穢れるのが、禁霊術。
「禁止するほどに危険なのか? 疑問が湧く――」
「そうだな……」
刹那に質問されたので、範造は考えた。
(思えば、どうして禁じられてんだ? 危険があるのか? さっき皇の何とかが言ってたように、自然の摂理に反するから駄目……では、答えとして不十分だろうに)
その最中にドアが開き、
「もし、『帰』が許可されてしまったら……。おぞましい未来が、待っている。だから禁止されているんだ」
凱輝が戻って来た。
「想像してみろ? 生者しかいないはずのこの世界に、死者が蘇ったら? 阿鼻叫喚の地獄に、早変わりだ。それに、霊的なバランスも著しく崩れ、何が起きるかわからない。それこそ、この世の終わりかもしれない」
その、好ましくない未来を事前に防ぐためにも、禁止指定されているとのこと。
どうやら凱輝は範造の解説を一部廊下で聞いていたらしく、
「もっと詳しい話を、聞かせよう」
パソコンを機械に繋いでスクリーンにスライドを映し出す。
「『帰』は、死返の石さえあればできてしまう。それ以外に必要なのは、それこそ蘇らせたい者の、魂だけだ」
もし遺体があれば、もっと本格的に蘇生できるという。ない場合は不完全となり、温度や呼吸を再現できない。
「じゃああそこで私たちが遭遇したのって………」
「おそらく、『橋島霊軍』の一員が、蘇ったのだろう」
「では、誰が――?」
ここで疑問になるのが、それを誰が行ったのかということ。
「お前たちではない、んだな?」
そうだと言って頷く四人。
「だとしたら、【神代】に悪意を持った誰か、となる……」
【神代】は全ての霊能力者の思想を管理しているわけではないので、変なところで反感を買っているかもしれない。言い換えれば心当たりが多過ぎるのだ。
「まさか、蛭児?」
雛菊がそう小声で呟いたのを、凱輝は聞き逃さなかった。
「何故、そう思う? 雛菊?」
「だって、イレイヒのアトチにシニンがいたんです。ヨニンがイレイヒをコワすようにサしムけたのが、蛭児。カコにカミシロにホロぼされたヒトたちのムネンをヨミガエらせるためにも、イレイヒがジャマだった……としたら、どうです?」
「その、目的は?」
「それは……」
「蛭児本人を捕まえればいいだけ、でしょう?」
言葉に詰まった雛菊の代わりに範造が返事をした。
「だが、まだ蛭児が、犯人と決まったわけではない。ここでは、真犯人、とする。その者は、何かよからぬことを、企てている、ということか?」
それは本人にしかわからない野望だ。
「蛭児の確保は【神代】の方でできますか?」
「無理、だ」
証拠がないのでそんなことは不可能。来るように命じても断られるに決まっているし、仮に素直に来たとしても、どうやって『帰』を行ったことを証明するのかという壁にぶち当たる。
「今、重要参考人は絵美、刹那、雛臥、骸…お前たちだ。【神代】としては、お前たちが『帰』をしたと睨むだろう」
だが、そうではないはず。凱輝の本能が、そう告げている。
(【神代】の跡継ぎは、当事者間でしかわからない、と言った。ここは一つ、この者たちに、かけてみてもいいかもしれない……)
危険だが、監視役が二組いれば大丈夫とも思う。
「そうでないことを、真犯人を捕まえて、証明せよ」
凱輝は命令を下した。真犯人を特定し、ここに連れてくることを。
「ただし、思いあがらないことだ。【神代】はまだ、お前たちを疑っている。無実の証明は、真相を明らかにした時だけ。それを、肝に銘じよ」
一番いいのは、真犯人が『帰』を行っている現場を押さえることだ。しかし手筈がよくわかっていない状態では、どれがどれなのかの判別は難しいだろう。そう判断した凱輝はこの日の午後に、シミュレーションを四人の前で行う。
「これは、コンピュータ上の、実験でしかないが……」
人が赤い石を持って霊気を放出する。すると地面を突き破って死者が蘇る。
「これだけ?」
絵美は驚いた。あまりにも手間がかからなさすぎるためだ。
「これは、遺体がない場合。ある場合は、こうなる」
次の映像は、遺体の近くで赤い石に念じるというもの。すると遺体が起き上がる。
『帰』は、難しい儀式ではない。地域によって手法は多少変わるが、どれも呆気ないと思える動作なのだ。
「だから、現場を押さえるのは、相当難しいと思われる」
簡単ということは、中断も楽であるということ。もしも人に見つかりそうになったら手を止めて、
「何も起きてないよ?」
と言えてしまう。
「そうなると、『帰』を行っている最中をバレずにビデオカメラなどで録画するか、カメラで撮影する。途中で押しかけるのはかえって悪手ですね……」
そのためのカメラは、もう用意されている。範造と雛菊がホームビデオを、緋寒、紅華、赤実、朱雀はデジタルカメラを支給された。
「一度、黙って全工程を見届ける必要があるというわけか……」
緋寒たち皇の四つ子としては、違反行為である禁霊術を見ているのはかなり苛立つことだ。でもそうしないと、心霊犯罪を立証できない。ここは作戦通りの行動を選ぶ。
「では、私からはこれで終わりだ。行け! 必ず犯人を特定せよ!」
「ちょっと待って!」
絵美が聞く。
「まだ、皇の四つ子や範造たちの監視はあるの?」
「当然だ。お前たちの無実は、まだ証明されてない。犯人を捕まえてくる、という約束だったはずだが?」
当然、見張りは継続だ。でもそれも、真犯人を捕えればいいだけの話。
「……わかったわよ!」
また十人で移動することになった。
「行き先はどこにしよう――?」
蛭児の方から動きがあれば、それが一番いい。だからまずは、待機する、ちょうど旅の疲れもあったので、焦燥感こそあるが束の間の休息を取ることに。