第6話 邪霊討伐 その2
文字数 3,349文字
ここで、二人は感じる。今の幽霊たちは、他の人には目もくれずにこちらに迫ってきた。ということは、黒幕であろう人物が寄越したということだ。
「なるほどなるほど! つまりはワタシたちに向かって来る幽霊たちを倒していけば、ボスにたどり着けるというわけだな?」
「それでいこう!」
また、幽霊の群が出現した。
「ここは僕が、霊障合体で!」
緑祁が前に出て、火災旋風を起こした。その赤い風にさらわれた霊が、霧のようにこの世から消えていく。
「なるほどなるほどなるほど! それが噂に聞く、レイショウガッタイ! どんな対訳が当てはまるのかな?」
「僕が決めていいの?」
「いいわけないだろ! ワタシだって決められないのにキミに決定権があるもんか」
とにかく二人は、この奥に中心となる霊がいると信じ前に進む。すると新青森駅の周辺に差し掛かる。
「まさか、駅にいる……?」
あり得ない話ではない。霊界重合が阻止された途端に逃げるのには、交通手段が沢山整っている駅が一番良い。もしかしたら青森に来てすぐさま霊界重合を始めたのかもしれない。
「あ、あれを見ろリュウケ君!」
フレイムが指をさしたのは、先ほど緑祁が召喚した二体の式神だ。[ライトニング]と[ダークネス]は、ここにたどり着いていたのだ。唸り声を上げながら、精霊光と堕天闇を繰り出し攻撃をする式神。
その、[ライトニング]と[ダークネス]の二体と対面している幽霊……それが、怪神激だ。
「何だ、あの気持ち悪い幽霊は? おぞましいぞ、吐き気がする!」
「は、初めて見る……」
前に故神、害神、救神を見た時にも鳥肌が立つのを感じた。幽霊にしては歪過ぎる。
「屍亡者の亜種? でも、やっていることは全然違う……」
そして今二人の前にいる幽霊は、その三体よりも形容しがたい姿なのである。大きな頭から足が昆虫のように三対、背中に翅が二対生えている。その顔にある口から首が伸びており、首長竜のように先端にも頭があるのだ。
「リュウケ君! あれは除霊していいよな?」
「そもそもそうしないと、霊界重合が治まらないよ」
今、怪神激の口から黒い煙が吐き出された。その息に触れた[ライトニング]が苦しみだした。
「式神にもダメージがあるのか! フレイム、あれは受けちゃ駄目だ!」
「オーケーオーケー! リュウケ君、まずキミの式神を仕舞いな」
これ以上[ライトニング]たちを戦わせるのは難しい。既に結構傷ついているのだ。緑祁もフレイムの判断に賛成し、二体の式神を自分の側に呼んで札に戻した。式神がいなくなった怪神激は、緑祁とフレイムのことを睨んだ。
「ぶおおおおおおおおお!」
お前たちと敵と認識した、と言いたげな雄叫びだ。
「勝算はあるのかい、フレイム?」
「当たり前だ。あの口から伸びてる頭を見ろ! あれを潰せば、全部解決だろう?」
「そうなの……かなあ?」
半信半疑だが、緑祁もどうやれば相手を除霊できるか、その見当がつかない。ここはフレイムの手に乗るのがいいだろう。
「くらえ! シャドープラズマ!」
手を叩き、その静電気を電霊放に変えて解き放つ。見事に怪神激の頭部に命中した。
「流石は命中率重視の拡散型だね!」
「おい、おかしいぞ?」
頭を潰された怪神激は、その首を吐き捨てた。すると新しい首が、胴体の口の中から生える。
「再生した?」
そして、息を思いっ切り吸った。さっきの黒煙を吐き出すつもりなのだ。
「マズい! 逃げろ!」
「……旋風!」
緑祁が反射的に手を振り、風を起こした。その風のおかげで煙は横に流され二人を襲わない。
「助かった、ありがとう」
「今はそんなこと言ってる暇じゃないよ! アイツを早く倒さないと!」
「……だな。よし、キミは援護してくれ! ワタシがアイツの弱点を探る」
「りょうか……」
頷こうとしたその時だ、自分たちの周りに、幽霊が大量にいる。
「な、何で……?」
怪神激が呼び寄せたのだ。
「邪魔だ、退けろ!」
「霊障合体・台風!」
このままでは、動きに支障が出る。だがいくら除霊しても、キリがない。
「この世とあの世が合わさっているから、幽霊なんて無限に呼び出せてしまえるんだ……」
その群を操れるのが、この怪神激である。一体一体の幽霊では二人には勝てない。だったら数の暴力で攻めるだけだ。二人の動きを止めることができるのなら、それでいいからである。
「ふっしゃああああああああああ!」
また、息を大きく吸った。
「く、来る!」
しかし逃げている暇がない。囲んでいる幽霊が邪魔であり、後ろに下がれない。
「だったら! このキモいゴーストを排除するしかない!」
伸びている頭への攻撃は意味がない。それはさっきわかった。なのでフレイムは今度は、胴体へ電霊放を当てる。
「とりゃ!」
しかし、怪神激はなんと翅を動かし飛んだ。上方向への動きは流石のフレイムも予想しておらず、攻撃が外れた。
「何でもアリか、コイツは!」
その、飛んでいる状態で黒い息を吐き出したのだ。
(間違いない! あれをくらったら、死ぬ……!)
生きていない式神が苦しむレベルなのだ、生きている人が受けたら、あの世に落とされる。
(いいや今はこの世とあの世の境目がない。アイツの支配下に加えられるだけだ……)
何とかして防がなくては。
「フレイム! 僕が旋風であの煙を何とかしのぐ! そっちがあの幽霊を撃ち落としてくれ! 鬼火と電霊放が使えるなら、その二つを合体させれる!」
旋風を出せるだけ出し、とにかく煙が近づかないようにする緑祁。
「イエッサー!」
フレイムにとっては、ぶっつけ本番だ。鬼火と電霊放の合体は、極光だ。オーロラを繰り出し攻撃する霊障合体である。当てられたのなら、威力はかなり高い。
「覚悟しろよ、コイツ!」
まずは右手で鬼火を、左手で電霊放を繰り出す。その両手を合わせて、
「レイショウガッタイだ!」
極光。赤いオーロラが繰り出され、その膜状の光が怪神激に迫る。怪神激は素早い動きで逃げ回ったが、膜状に広がる極光に追いつかれ、直撃。
「ぎょおおおおあああああおおおおおおおお!」
翅がもげて地面に落ちた。
「やったぞ、リュウケ君!」
「気をつけて! まだ意識があるかもしれない」
幽霊を退けながら恐る恐る近づいてみると、ピクピクと足が動いていた。
「まだ動けるのか……! 信じられない! どうやったら除霊ができるんだ?」
しかも千切れたはずの翅が、再生しつつある。焦ったフレイムはまた極光を使って攻撃したが、それでも除霊しきれない。そして攻める手を休めると、黒焦げになった体に色が蘇り傷も治っていく。
「除霊不可能? そんな馬鹿な? こんな幽霊が極東アジアにいるっていうのか!」
「自然発生したんじゃないのかも……」
緑祁は日新館での出来事を思い出していた。あの時に出現した三体の異形な幽霊は、豊次郎が封印している物を破壊して解き放ったのだ。
「大体、いきなり霊界重合が起きるのがおかしいんだ! 誰かが引き起こしたとしか思えない」
「でも、誰が? 何の目的で?」
「それは、わからない……」
二人が諦めてしまうと、この新青森が終わってしまう。
だが緑祁は閃いた。
「一つだけ、あるかもしれない。あの幽霊を倒す方法が!」
「何だそれは?」
前に青森で、天王寺修練が霊界重合を引き起こした時のことだ。あの時、除霊不可能な故霊をこの世に呼び戻した。
「かなり危険だけど、あの故霊をここに呼んで戦わせるんだ」
「なるほどなるほどなるほどなるほど! その二体が戦って、故霊が勝てば霊界重合も治まるってワケだな?」
「上手くいけば、だけどね」
「賭けようぜ、それに!」
危険な橋渡りだが、フレイムは乗った。もちろん言い出した緑祁も。
「リュウケ君はじゃあその、故霊を探してくれ! ワタシでは判別ができない。アイツの注意はワタシが引き受ける!」
「任せたよ! 死なないで!」
「誰が骨に変わるか、こんな極東で!」
緑祁は火災旋風を使って幽霊を退けながら、新青森の町へ駆けた。
「さあキモいの! オマエの相手はワタシだ!」
その間、彼を信じてフレイムは一人でこの怪神激の相手をする。
(回復力は高い。だが、こっちの攻撃は通用するし回復中は動きが止まる! それを利用すれば、ワタシたちにも勝算がある!)
「なるほどなるほど! つまりはワタシたちに向かって来る幽霊たちを倒していけば、ボスにたどり着けるというわけだな?」
「それでいこう!」
また、幽霊の群が出現した。
「ここは僕が、霊障合体で!」
緑祁が前に出て、火災旋風を起こした。その赤い風にさらわれた霊が、霧のようにこの世から消えていく。
「なるほどなるほどなるほど! それが噂に聞く、レイショウガッタイ! どんな対訳が当てはまるのかな?」
「僕が決めていいの?」
「いいわけないだろ! ワタシだって決められないのにキミに決定権があるもんか」
とにかく二人は、この奥に中心となる霊がいると信じ前に進む。すると新青森駅の周辺に差し掛かる。
「まさか、駅にいる……?」
あり得ない話ではない。霊界重合が阻止された途端に逃げるのには、交通手段が沢山整っている駅が一番良い。もしかしたら青森に来てすぐさま霊界重合を始めたのかもしれない。
「あ、あれを見ろリュウケ君!」
フレイムが指をさしたのは、先ほど緑祁が召喚した二体の式神だ。[ライトニング]と[ダークネス]は、ここにたどり着いていたのだ。唸り声を上げながら、精霊光と堕天闇を繰り出し攻撃をする式神。
その、[ライトニング]と[ダークネス]の二体と対面している幽霊……それが、怪神激だ。
「何だ、あの気持ち悪い幽霊は? おぞましいぞ、吐き気がする!」
「は、初めて見る……」
前に故神、害神、救神を見た時にも鳥肌が立つのを感じた。幽霊にしては歪過ぎる。
「屍亡者の亜種? でも、やっていることは全然違う……」
そして今二人の前にいる幽霊は、その三体よりも形容しがたい姿なのである。大きな頭から足が昆虫のように三対、背中に翅が二対生えている。その顔にある口から首が伸びており、首長竜のように先端にも頭があるのだ。
「リュウケ君! あれは除霊していいよな?」
「そもそもそうしないと、霊界重合が治まらないよ」
今、怪神激の口から黒い煙が吐き出された。その息に触れた[ライトニング]が苦しみだした。
「式神にもダメージがあるのか! フレイム、あれは受けちゃ駄目だ!」
「オーケーオーケー! リュウケ君、まずキミの式神を仕舞いな」
これ以上[ライトニング]たちを戦わせるのは難しい。既に結構傷ついているのだ。緑祁もフレイムの判断に賛成し、二体の式神を自分の側に呼んで札に戻した。式神がいなくなった怪神激は、緑祁とフレイムのことを睨んだ。
「ぶおおおおおおおおお!」
お前たちと敵と認識した、と言いたげな雄叫びだ。
「勝算はあるのかい、フレイム?」
「当たり前だ。あの口から伸びてる頭を見ろ! あれを潰せば、全部解決だろう?」
「そうなの……かなあ?」
半信半疑だが、緑祁もどうやれば相手を除霊できるか、その見当がつかない。ここはフレイムの手に乗るのがいいだろう。
「くらえ! シャドープラズマ!」
手を叩き、その静電気を電霊放に変えて解き放つ。見事に怪神激の頭部に命中した。
「流石は命中率重視の拡散型だね!」
「おい、おかしいぞ?」
頭を潰された怪神激は、その首を吐き捨てた。すると新しい首が、胴体の口の中から生える。
「再生した?」
そして、息を思いっ切り吸った。さっきの黒煙を吐き出すつもりなのだ。
「マズい! 逃げろ!」
「……旋風!」
緑祁が反射的に手を振り、風を起こした。その風のおかげで煙は横に流され二人を襲わない。
「助かった、ありがとう」
「今はそんなこと言ってる暇じゃないよ! アイツを早く倒さないと!」
「……だな。よし、キミは援護してくれ! ワタシがアイツの弱点を探る」
「りょうか……」
頷こうとしたその時だ、自分たちの周りに、幽霊が大量にいる。
「な、何で……?」
怪神激が呼び寄せたのだ。
「邪魔だ、退けろ!」
「霊障合体・台風!」
このままでは、動きに支障が出る。だがいくら除霊しても、キリがない。
「この世とあの世が合わさっているから、幽霊なんて無限に呼び出せてしまえるんだ……」
その群を操れるのが、この怪神激である。一体一体の幽霊では二人には勝てない。だったら数の暴力で攻めるだけだ。二人の動きを止めることができるのなら、それでいいからである。
「ふっしゃああああああああああ!」
また、息を大きく吸った。
「く、来る!」
しかし逃げている暇がない。囲んでいる幽霊が邪魔であり、後ろに下がれない。
「だったら! このキモいゴーストを排除するしかない!」
伸びている頭への攻撃は意味がない。それはさっきわかった。なのでフレイムは今度は、胴体へ電霊放を当てる。
「とりゃ!」
しかし、怪神激はなんと翅を動かし飛んだ。上方向への動きは流石のフレイムも予想しておらず、攻撃が外れた。
「何でもアリか、コイツは!」
その、飛んでいる状態で黒い息を吐き出したのだ。
(間違いない! あれをくらったら、死ぬ……!)
生きていない式神が苦しむレベルなのだ、生きている人が受けたら、あの世に落とされる。
(いいや今はこの世とあの世の境目がない。アイツの支配下に加えられるだけだ……)
何とかして防がなくては。
「フレイム! 僕が旋風であの煙を何とかしのぐ! そっちがあの幽霊を撃ち落としてくれ! 鬼火と電霊放が使えるなら、その二つを合体させれる!」
旋風を出せるだけ出し、とにかく煙が近づかないようにする緑祁。
「イエッサー!」
フレイムにとっては、ぶっつけ本番だ。鬼火と電霊放の合体は、極光だ。オーロラを繰り出し攻撃する霊障合体である。当てられたのなら、威力はかなり高い。
「覚悟しろよ、コイツ!」
まずは右手で鬼火を、左手で電霊放を繰り出す。その両手を合わせて、
「レイショウガッタイだ!」
極光。赤いオーロラが繰り出され、その膜状の光が怪神激に迫る。怪神激は素早い動きで逃げ回ったが、膜状に広がる極光に追いつかれ、直撃。
「ぎょおおおおあああああおおおおおおおお!」
翅がもげて地面に落ちた。
「やったぞ、リュウケ君!」
「気をつけて! まだ意識があるかもしれない」
幽霊を退けながら恐る恐る近づいてみると、ピクピクと足が動いていた。
「まだ動けるのか……! 信じられない! どうやったら除霊ができるんだ?」
しかも千切れたはずの翅が、再生しつつある。焦ったフレイムはまた極光を使って攻撃したが、それでも除霊しきれない。そして攻める手を休めると、黒焦げになった体に色が蘇り傷も治っていく。
「除霊不可能? そんな馬鹿な? こんな幽霊が極東アジアにいるっていうのか!」
「自然発生したんじゃないのかも……」
緑祁は日新館での出来事を思い出していた。あの時に出現した三体の異形な幽霊は、豊次郎が封印している物を破壊して解き放ったのだ。
「大体、いきなり霊界重合が起きるのがおかしいんだ! 誰かが引き起こしたとしか思えない」
「でも、誰が? 何の目的で?」
「それは、わからない……」
二人が諦めてしまうと、この新青森が終わってしまう。
だが緑祁は閃いた。
「一つだけ、あるかもしれない。あの幽霊を倒す方法が!」
「何だそれは?」
前に青森で、天王寺修練が霊界重合を引き起こした時のことだ。あの時、除霊不可能な故霊をこの世に呼び戻した。
「かなり危険だけど、あの故霊をここに呼んで戦わせるんだ」
「なるほどなるほどなるほどなるほど! その二体が戦って、故霊が勝てば霊界重合も治まるってワケだな?」
「上手くいけば、だけどね」
「賭けようぜ、それに!」
危険な橋渡りだが、フレイムは乗った。もちろん言い出した緑祁も。
「リュウケ君はじゃあその、故霊を探してくれ! ワタシでは判別ができない。アイツの注意はワタシが引き受ける!」
「任せたよ! 死なないで!」
「誰が骨に変わるか、こんな極東で!」
緑祁は火災旋風を使って幽霊を退けながら、新青森の町へ駆けた。
「さあキモいの! オマエの相手はワタシだ!」
その間、彼を信じてフレイムは一人でこの怪神激の相手をする。
(回復力は高い。だが、こっちの攻撃は通用するし回復中は動きが止まる! それを利用すれば、ワタシたちにも勝算がある!)