第6話 暴走×報復 その1
文字数 3,755文字
魔綾の監視には、穴があった。
「名古屋に行くんなら、新幹線は外せねーぞ」
病射と朔那は、嵐山から伏見稲荷大社に移動した後に新幹線のチケットを買った。この時、券売機は京都駅の南側にあったのだ。魔綾が見張っているのは、北川の中央改札。二人はそこを通っていないので、彼女に発見されなかったというわけだ。
しかしこれは、魔綾の考えが足りなかったためではない。彼女はまだ、病射が朔那と一緒に行動していることを知らない。京都から出ようとしていることなど、想像もできないのである。
「ん……?」
【神代】の予備校の内の一つが京都駅の近くにある。この夜、そこに一本の電話があった。
「はい、もしもし? 何でしょう?」
それは、弥和の電話だ。
「少々お待ちください。担当者に代わります」
数秒待って、霊能力者である神道和樹が出た。
「はい! 何でしょう?」
もう夜遅い時間だが、それでも【神代】は受け付けている。
「あの、考え過ぎかもしれないんですが……」
「いいですよ。不安や心配事は解消しないと良い夜にはなりませんので」
弥和は少し、迷った。というのも親戚である朔那のことを、【神代】に告げ口していいのかと葛藤したのだ。しかし、決める。彼女に心霊犯罪者になって欲しくないという思いの方が勝ったのだ。
「朔那を、復讐する前に止めてください!」
「…と! どういう意味でしょう?」
詳しい話を和樹は尋ねた。
「なるほど、です……」
朔那がこの日に孤児院に戻って来なかったことと、復讐に走ったことはイコールではない。それだけでその発想に至るのは、安直が過ぎる。だが、
(こんなに真剣な声なんだ、嘘じゃないんだろう)
彼はそう判断し、
「わかりました。となれば、上杉左門に護衛を出しましょう。そうすれば、朔那も手を出せないでしょうから、復讐する前に止められますね」
「お、お願いします!」
こういう時に使える人材が【神代】にはいる。和樹はすぐに皇の四つ子に連絡を取り、
「明日、朝一番で名古屋へ行くんだ。上杉左門の護衛だ。住所は……」
指示を出した。
幸いにも、病射と朔那は名古屋に到着した日はホテルに泊まってそれ以上動かなかったので、朝一番の命令でも間に合ったのだ。
緑祁たちが京都に訪れ、そして病射と朔那が名古屋に移動した次の日のことである。
「病射、お前の腕を疑うわけじゃない。でも、こちらとしてはもっと戦力が欲しい」
「どうしてだ? 迷霊が二体いるじゃないか?」
「左門のヤロウは、完膚なきまでに叩きのめす! だが、ヤツを直接叩けるとは思わない方が良い」
「どういうことだ、それ?」
「邪魔者がいたら、面倒だろう?」
彼女は彼に提案した。
「お前と私は二人だけで、これ以上人手は増やせない。なら幽霊の力を借りるしかないのさ。その調達した幽霊に、左門の仲間がいたら、攻撃させる。その隙に、ヤツを殺す!」
「そういうことか!」
これに病射は反対しない。
「では、どこでその幽霊を捕まえるか!」
「心当たりがあるのか?」
地図を広げた朔那は、ある場所をまず指し示し、
「この周辺に左門の家がある。最終的なゴールはここだ。だがその前に……」
その指を動かし、
「こっちに寄る」
そこは、町から少し離れた森のようだ。
「廃校がある。心霊スポットで有名だ。ここで調達しよう」
「沢山の幽霊が集まる場所だな!」
「ああ!」
早速ホテルを出る二人。森の中にある件の廃校に向かう。
幽霊は時として、集まる場所を選ぶ。例えば、水辺だ。水は幽霊を呼びやすいのである。二人が今歩いている森の中も、日影が多いために集まりやすい。人気のある場所にも幽霊は集まる。病院や学校だ。昼間は賑やかな場所でも、夜は静まり返る。そのせいで、人の温もりを求める魂たちが蔓延る場所となるのだ。
(この辺の浮遊霊は駄目だ。絶対に戦力にはならねーぜ)
弱そうな霊は無視して先に進んだ。
「朔那、その廃校はどんな曰くがあるんだ?」
「簡単だ。そもそもそこは、戦時中に……」
【神代】ほどではないが、暗い歴史がある場所だ。
戦時中、そこは学校ではなく病院だった。それも戦地で傷ついた人を癒すための場所。しかし、軍はそんな怪我人たちに負の価値を見い出してしまう。
「戦争のためだ、仕方がない」
人体実験の材料に使うことにしたのだ。まだ生きている同胞や捕虜が、実験台に。それも死ぬとしか思えない実験だ。そんな暴走した軍部の身勝手な行為のせいで、少なくはない命が失われてしまう。
それだけではない。そもそも手遅れな患者も運び込まれて、ここで亡くなる。
戦後、この病院は学校として生まれ変わった。だが悲劇は終わらない。いじめや教育面の不備があったわけでもないのに、児童や教員の自殺が絶えなかった。当時から学校が前は病院であるということは知っている人は知っており、
「あの世から手招きされているのでは?」
という噂が囁かれていた。でも確かめる術はなく、非科学的な話だった。
しかし、その学校の周辺で、幽霊を見た、という情報もちらほらあった。ここで、
「ならば、霊能力者を呼んで解決してもらおう」
と誰かが言った。そしてその人は近隣の神社に連絡、そこから【神代】に依頼が入ったのだ。もちろんすぐに除霊を決定し、霊能力者を派遣。
「できました……」
かなり自信がなさそうな小声で、その霊能力者はそう報告した。【神代】の記録も、除霊完了、となっている。
これは、嘘の報告だった。その霊能力者は、自分の手に負えないことを即座に悟り、除霊を諦めた。ただし完全に匙を投げたのではなく、できる限りのことはしたのだ。それが、結界を作ることだった。学校を囲うようにお地蔵様を四体設置し、この世ならざる力を弱めた。
「手入れさえされれば、大事にはならないだろう……」
結界は機能した。そのおかげで、自殺者や幽霊の目撃情報は減ったのだ。
だがその学校は、昭和の終わりに廃校になる。お地蔵様も放置され、誰も手入れをしなくなった。そのせいで幽霊たちは力を取り戻し、成長・合体を繰り返しているのだ。
朔那はその、隠された除霊の真実を知らない。ただ単に、
「十数年前に除霊はされたが廃校になったので、再び幽霊が集まっただろう」
という楽観的な考えに基づいた選択だったのだ。
「ん? 何だこれ?」
病射の足に何かが当たった。それは苔むした岩だ。
「不自然だな……?」
いきなり林道の真ん中に、岩が現れる。それはおかしい。誰かが動かしここに置いたとしか思えないほどだ。
実は、それが結界を作っていたお地蔵様である。ただしもう効果は消え、無用の長物と化している。
「そんな物よりも、廃校に急ぐぞ! 病射!」
「わかってる」
事実を知らない二人は、廃れた建物を見つけるとその中に入り込んだ。扉は既に朽ち果てており、二人の侵入を拒む物は何もない。
「いるな……。結構数が多い」
肌で感じる。ここにはいる。
「よし、ならばこの提灯に封じ込めよう。ほれ、病射」
「ああ、サンキュー」
二手に分かれてこの廃校を探索するのだ。朔那は一階を、病射は二階。三階は一先ず後回し。
「床、抜けたりしねーだろうな?」
階段を登りながらぼやく病射。しかし無駄にコンクリートは頑丈で、足踏みしても揺れたりはしない。
そのまま廊下を進んで、ある一室の中に入り込んだ。大きめの椅子とテーブルがある部屋だ。
「校長室か? 学校が無くなる時の校長はどんなことを考えんのかな?」
床に額縁だけが落ちている。写真は虫に食われて消失したのだろう。他にも扉の開いた金庫が置いてあった。
「……流石に人骨とかは出てこねーよな? 朔那の話じゃ、戦時中は実験していたらしいが……。ちゃんと埋葬されてるだろうし」
物色していると、床の上に不自然なほど綺麗な写真が一枚だけあった。
「何だこれは?」
老人が一人写っている。病射は数秒それを見ていた。するとその写真の人物が、瞬きをしたのだ。
「そういうことか!」
これは幽霊だ。侵入してきた病射を驚かせ追い払おうとしたに違いない。しかし相手が悪かった。
「ふん!」
腕時計から電霊放を撃ち、写真ごと幽霊を貫く。
「ビックリさせるだけなら生きててもできる。今のヤツは使えそうにないな」
もっと強そうな幽霊が欲しい。彼は校長室を出て他の教室に向かおうとした。
「ん?」
廊下に、女性が立っている。それも朔那ではない、いいや生きている人ですらない。
「数だけは本当にいるよな……。だが、質は! 嘆かわしいぜ」
ただの浮遊霊だ。そして強い邪念などもなく、利用できそうにないレベル。そう判断した病射は電子ノギスを取り出して、その先端から電霊放を撃つ。
「邪魔だ! あの世で大人しくしてやがれ!」
桃色の稲妻が瞬き、その女性の幽霊をこの世から消した。
「んんん?」
その時だ。突然、校舎が揺れ出した。
(朔那の礫岩か? ここで地震を起こして……だ、だが! 理由はなんだ?)
慌ててスマートフォンを取ろうとポケットに手を伸ばすのだが、その瞬間、目の前の廊下の床が割れ始めた。
「お、おい!」
流石にこれは礫岩では無理だ。となると、この揺れを引き起こしている者は朔那ではないということになる。
では、誰が? その正体は彼の目の前に姿を現した。
「こ、これは!」
「名古屋に行くんなら、新幹線は外せねーぞ」
病射と朔那は、嵐山から伏見稲荷大社に移動した後に新幹線のチケットを買った。この時、券売機は京都駅の南側にあったのだ。魔綾が見張っているのは、北川の中央改札。二人はそこを通っていないので、彼女に発見されなかったというわけだ。
しかしこれは、魔綾の考えが足りなかったためではない。彼女はまだ、病射が朔那と一緒に行動していることを知らない。京都から出ようとしていることなど、想像もできないのである。
「ん……?」
【神代】の予備校の内の一つが京都駅の近くにある。この夜、そこに一本の電話があった。
「はい、もしもし? 何でしょう?」
それは、弥和の電話だ。
「少々お待ちください。担当者に代わります」
数秒待って、霊能力者である神道和樹が出た。
「はい! 何でしょう?」
もう夜遅い時間だが、それでも【神代】は受け付けている。
「あの、考え過ぎかもしれないんですが……」
「いいですよ。不安や心配事は解消しないと良い夜にはなりませんので」
弥和は少し、迷った。というのも親戚である朔那のことを、【神代】に告げ口していいのかと葛藤したのだ。しかし、決める。彼女に心霊犯罪者になって欲しくないという思いの方が勝ったのだ。
「朔那を、復讐する前に止めてください!」
「…と! どういう意味でしょう?」
詳しい話を和樹は尋ねた。
「なるほど、です……」
朔那がこの日に孤児院に戻って来なかったことと、復讐に走ったことはイコールではない。それだけでその発想に至るのは、安直が過ぎる。だが、
(こんなに真剣な声なんだ、嘘じゃないんだろう)
彼はそう判断し、
「わかりました。となれば、上杉左門に護衛を出しましょう。そうすれば、朔那も手を出せないでしょうから、復讐する前に止められますね」
「お、お願いします!」
こういう時に使える人材が【神代】にはいる。和樹はすぐに皇の四つ子に連絡を取り、
「明日、朝一番で名古屋へ行くんだ。上杉左門の護衛だ。住所は……」
指示を出した。
幸いにも、病射と朔那は名古屋に到着した日はホテルに泊まってそれ以上動かなかったので、朝一番の命令でも間に合ったのだ。
緑祁たちが京都に訪れ、そして病射と朔那が名古屋に移動した次の日のことである。
「病射、お前の腕を疑うわけじゃない。でも、こちらとしてはもっと戦力が欲しい」
「どうしてだ? 迷霊が二体いるじゃないか?」
「左門のヤロウは、完膚なきまでに叩きのめす! だが、ヤツを直接叩けるとは思わない方が良い」
「どういうことだ、それ?」
「邪魔者がいたら、面倒だろう?」
彼女は彼に提案した。
「お前と私は二人だけで、これ以上人手は増やせない。なら幽霊の力を借りるしかないのさ。その調達した幽霊に、左門の仲間がいたら、攻撃させる。その隙に、ヤツを殺す!」
「そういうことか!」
これに病射は反対しない。
「では、どこでその幽霊を捕まえるか!」
「心当たりがあるのか?」
地図を広げた朔那は、ある場所をまず指し示し、
「この周辺に左門の家がある。最終的なゴールはここだ。だがその前に……」
その指を動かし、
「こっちに寄る」
そこは、町から少し離れた森のようだ。
「廃校がある。心霊スポットで有名だ。ここで調達しよう」
「沢山の幽霊が集まる場所だな!」
「ああ!」
早速ホテルを出る二人。森の中にある件の廃校に向かう。
幽霊は時として、集まる場所を選ぶ。例えば、水辺だ。水は幽霊を呼びやすいのである。二人が今歩いている森の中も、日影が多いために集まりやすい。人気のある場所にも幽霊は集まる。病院や学校だ。昼間は賑やかな場所でも、夜は静まり返る。そのせいで、人の温もりを求める魂たちが蔓延る場所となるのだ。
(この辺の浮遊霊は駄目だ。絶対に戦力にはならねーぜ)
弱そうな霊は無視して先に進んだ。
「朔那、その廃校はどんな曰くがあるんだ?」
「簡単だ。そもそもそこは、戦時中に……」
【神代】ほどではないが、暗い歴史がある場所だ。
戦時中、そこは学校ではなく病院だった。それも戦地で傷ついた人を癒すための場所。しかし、軍はそんな怪我人たちに負の価値を見い出してしまう。
「戦争のためだ、仕方がない」
人体実験の材料に使うことにしたのだ。まだ生きている同胞や捕虜が、実験台に。それも死ぬとしか思えない実験だ。そんな暴走した軍部の身勝手な行為のせいで、少なくはない命が失われてしまう。
それだけではない。そもそも手遅れな患者も運び込まれて、ここで亡くなる。
戦後、この病院は学校として生まれ変わった。だが悲劇は終わらない。いじめや教育面の不備があったわけでもないのに、児童や教員の自殺が絶えなかった。当時から学校が前は病院であるということは知っている人は知っており、
「あの世から手招きされているのでは?」
という噂が囁かれていた。でも確かめる術はなく、非科学的な話だった。
しかし、その学校の周辺で、幽霊を見た、という情報もちらほらあった。ここで、
「ならば、霊能力者を呼んで解決してもらおう」
と誰かが言った。そしてその人は近隣の神社に連絡、そこから【神代】に依頼が入ったのだ。もちろんすぐに除霊を決定し、霊能力者を派遣。
「できました……」
かなり自信がなさそうな小声で、その霊能力者はそう報告した。【神代】の記録も、除霊完了、となっている。
これは、嘘の報告だった。その霊能力者は、自分の手に負えないことを即座に悟り、除霊を諦めた。ただし完全に匙を投げたのではなく、できる限りのことはしたのだ。それが、結界を作ることだった。学校を囲うようにお地蔵様を四体設置し、この世ならざる力を弱めた。
「手入れさえされれば、大事にはならないだろう……」
結界は機能した。そのおかげで、自殺者や幽霊の目撃情報は減ったのだ。
だがその学校は、昭和の終わりに廃校になる。お地蔵様も放置され、誰も手入れをしなくなった。そのせいで幽霊たちは力を取り戻し、成長・合体を繰り返しているのだ。
朔那はその、隠された除霊の真実を知らない。ただ単に、
「十数年前に除霊はされたが廃校になったので、再び幽霊が集まっただろう」
という楽観的な考えに基づいた選択だったのだ。
「ん? 何だこれ?」
病射の足に何かが当たった。それは苔むした岩だ。
「不自然だな……?」
いきなり林道の真ん中に、岩が現れる。それはおかしい。誰かが動かしここに置いたとしか思えないほどだ。
実は、それが結界を作っていたお地蔵様である。ただしもう効果は消え、無用の長物と化している。
「そんな物よりも、廃校に急ぐぞ! 病射!」
「わかってる」
事実を知らない二人は、廃れた建物を見つけるとその中に入り込んだ。扉は既に朽ち果てており、二人の侵入を拒む物は何もない。
「いるな……。結構数が多い」
肌で感じる。ここにはいる。
「よし、ならばこの提灯に封じ込めよう。ほれ、病射」
「ああ、サンキュー」
二手に分かれてこの廃校を探索するのだ。朔那は一階を、病射は二階。三階は一先ず後回し。
「床、抜けたりしねーだろうな?」
階段を登りながらぼやく病射。しかし無駄にコンクリートは頑丈で、足踏みしても揺れたりはしない。
そのまま廊下を進んで、ある一室の中に入り込んだ。大きめの椅子とテーブルがある部屋だ。
「校長室か? 学校が無くなる時の校長はどんなことを考えんのかな?」
床に額縁だけが落ちている。写真は虫に食われて消失したのだろう。他にも扉の開いた金庫が置いてあった。
「……流石に人骨とかは出てこねーよな? 朔那の話じゃ、戦時中は実験していたらしいが……。ちゃんと埋葬されてるだろうし」
物色していると、床の上に不自然なほど綺麗な写真が一枚だけあった。
「何だこれは?」
老人が一人写っている。病射は数秒それを見ていた。するとその写真の人物が、瞬きをしたのだ。
「そういうことか!」
これは幽霊だ。侵入してきた病射を驚かせ追い払おうとしたに違いない。しかし相手が悪かった。
「ふん!」
腕時計から電霊放を撃ち、写真ごと幽霊を貫く。
「ビックリさせるだけなら生きててもできる。今のヤツは使えそうにないな」
もっと強そうな幽霊が欲しい。彼は校長室を出て他の教室に向かおうとした。
「ん?」
廊下に、女性が立っている。それも朔那ではない、いいや生きている人ですらない。
「数だけは本当にいるよな……。だが、質は! 嘆かわしいぜ」
ただの浮遊霊だ。そして強い邪念などもなく、利用できそうにないレベル。そう判断した病射は電子ノギスを取り出して、その先端から電霊放を撃つ。
「邪魔だ! あの世で大人しくしてやがれ!」
桃色の稲妻が瞬き、その女性の幽霊をこの世から消した。
「んんん?」
その時だ。突然、校舎が揺れ出した。
(朔那の礫岩か? ここで地震を起こして……だ、だが! 理由はなんだ?)
慌ててスマートフォンを取ろうとポケットに手を伸ばすのだが、その瞬間、目の前の廊下の床が割れ始めた。
「お、おい!」
流石にこれは礫岩では無理だ。となると、この揺れを引き起こしている者は朔那ではないということになる。
では、誰が? その正体は彼の目の前に姿を現した。
「こ、これは!」