第5話 二倍差 その2
文字数 4,054文字
辻神たち五人が三色神社に戻って来た時に、彼らはいた。
「早すぎたかな? でも営業時間もクソもない! 対応しないこの神社が悪いんだぜ!」
ギルが大声で叫ぶ。
「誰だお前たち…?」
当然、叢雲は彼らのことを疑問に思うだろう。
「やっと来たねぇ。まったく、全然接客がなってないなぁ」
彼らは【UON】の霊能力者だ。この大会に参加して、優勝賞金をかっさらう計画なのだ。二月に敗北した恨みを晴らす意味もある。この大会は国籍を問われないので参加ができた。
「キサマらも参加者か?」
とディスが聞くと、叢雲と橋姫は首を横に振る。
「私たちがそうだ」
辻神は山姫と彭侯を指差し、言った。
「やるってのか? いいだろう! オレたちの力を見せてやる! 海外風情がデカい顔するんじゃねえぜ!」
「ちょっと待て。ここの住職か従業員に聞きたいことがあるのだ」
どうやらディスたちは何かしらの疑問を抱き、結果としてこの三色神社にたどり着いたようだ。
「俺でもいいか? ここで住み込みで働いているんだが」
「いいぞ。では問おう! 先月、ここを二十人の【UON】の霊能力者が攻めたが、一晩で壊滅してしまったという悲しい事件があった。それについて教えてくれ。予め断っておくがワタシたちはその件の復讐や報復は考えていない」
二十人が、返り討ちに遭った。その不自然な結果が何故生じたのか、が不思議なのだ。
「俺が倒した……。集束させた電霊放を曲げることができたから、とても簡単だった。と言って信じてもらえるか?」
ここ、三色神社は【神代】からはあまり重要視されていなかった。だから増員の派遣はなし。しかし叢雲の実力をもってすれば、二十人程度なら簡単に退けられるだけのこと。
にわかには信じがたい話ゆえに、ギルら五人は互いに顔を合わせて何か呟いている。しかしディスは、
「なるほど……。キサマが原因だったか」
その返事を事実として受け入れた。彼ほどの実力者になれば、相手の言っていることが嘘か誠かなんて表情ですぐにわかる。
(嘘ではない。彼はもしかしたら、シデンよりも強い者かもしれないな。少なくとも何とかダンジュウロウよりは格段に手練れ)
ただ、その叢雲は大会参加者ではない、つまり戦う必要がないのはディスたちにとって幸運なことだった。
「しかし、そっちの……三人は見逃せない! ワタシたちはこの大会で好成績を残し、【神代】に【UON】の強さを示したいんでね」
「待ってヨ? チームの定員は四人なはずだワ? でも君たちは六人いる…よね?」
簡単な話だ。ギルとゼブとジオ、ガガとザビとディスがそれぞれチームを組んでいる。そして他のチームと協力してはいけないというルールはない。だからこれまで、六人で行動してきた。それは今朝も例外ではない。ディスたちは今、六人で三人しかいない辻神たちと対戦しようと思っている。
「どうする、辻神? 流石にこの人数差のアドバンテージは大問題だぜ? 聖閃たちを連れ出さねえか?」
「ぼくは反対だヨ。よく知らない人たちと組んでも、絶対に崩壊するワ!」
二人の言うことはどちらも正しい。辻神は、
「私たちだけでやろう。他の人の手を借りたことが知られたら、【神代】の威厳が保てなくなる。それに万一アイツらが強かったら、聖閃たちを巻き込んで敗北にしてしまうのは流石に申し訳ない」
難しいが、自分たちだけで戦うことを決める。
一方の【UON】のチームも、
「今までワタシたちは、【神代】の霊能力者のレイショウガッタイを見てきた! 今度は実際に使ってみる番だ! レイショウガッタイ、名付けてファントムフェノメノン・ポリメライズフュージョン! 実戦でどの程度使えるかは調べておく必要がある」
「了解でち!」
「確かに見ているだけでは身に付きませんね」
戦いの方針を決めた。
審判は叢雲と橋姫だ。
「境内の中だけでやってくれ。言っておくが本殿どころか離れ屋にかすり傷でも付けたら容赦しないぞ?」
「心配はない。私も山姫も彭侯も、そんな不器用ではない」
「こちらも問題はない。そういうことはもうしないと上から言われている」
二組の了解を得て、準備が整ったのを確認してから、
「では………始めっ!」
電霊放でスターターピストル代わりに音を鳴らし、戦いの火蓋を切った。
「固まれ! 相手は二倍の六人! 一人で勝とうとするな、みんなで勝つ!」
辻神たちは一か所に固まり、戦うつもりだ。対する【UON】のメンバーは全員が広がり、辻神たちを遠巻きに囲んだ。
「誰から行く? ワレか?」
「いいや、オレッチ!」
「ここはボクチンが、でち!」
「ワタピから行くかねぇ」
「指示がないならアタチが出ましょうか?」
一見すると統制がとれていないように思える会話だが、ディスにはある思惑がある。
(誰から来るか、わからないだろう? 誰に注意を払うべきかも不明瞭。それでいい、集中力を分散させればその分疲れる)
そして懐から百均の拳銃を取り出し、構える。
「アレが霊障と関係があるのか!」
霊魂を発射できる改造が施された銃。しかし今はまだ、トリガーを引く気がない。そしてその銃口は実は、ガガに向けられている。これはディスからの無言の指令だ。
(ガガ! シャドープラズマを使え! コイツらのファントムフェノメノンが見たい!)
サインに気づいたガガはおもちゃの銃をポケットから取り出し、電霊放を撃った。
「あ、危ない彭侯!」
電霊放に気づいた橋姫は即座に礫岩を使用し、岩石でそれを防御した。
「あの女はプロテクトテラが使えるワケか」
だとしたら、次の攻撃は違う仲間に任せる。銃口はゼブを向いた。
(ワタピに任せな!)
彼女は雪と鉄砲水を同時に展開。
「こういうのが、レイショウガッタイって言うんだろう? そぉれ!」
流氷波だ。氷を含んだ水が三人を襲う。ここは彭侯が自分の鉄砲水で防御。
(アイツはアクアシュトローム……。ということは、プロテクトテラとアクアシュトロームを合体させることが、二人ならできるということか……)
これは、認識が違う。霊障合体は一人で行うものだ。だがその極意を知らないディスたちは、誰かと協力すればできると感じている。だから、警戒する。
(次はギルに行かせるか。ゴーストフレアなら!)
指示を出すと、
「オレッチが焼き捨ててやる!」
ギルは鬼火を繰り出し、飛ばした。
「電霊放…!」
だが、これは辻神が構えたドライバーから撃ち出された電霊放に防がれる。
「しまった! またやらかした!」
「いや、これでいいぞギル。大まかな霊障はわかった!」
ここから、である。ディスはジオに攻めさせる。
「ボクチンは学習能力が高いでちよ? 行くでち!」
応声虫と木綿を試しに組み合わせてみる。すると樹海脈ができるのだが、
「な、何ですこの音! ジオ、何をしているんですか?」
「でち?」
生じた雑音は、使ったジオは襲わない。しかし周囲の仲間の鼓膜を敵ごと揺さぶってしまうのだ。ガガが耳を塞いでいるのを見たジオは、樹海脈をやめる。
「ごめんでち。気づかなかったでち……」
「気にするでない」
しょんぼりする彼にザビがフォローを入れた。
「さぁ、【神代】の霊能力者! そろそろそっちから攻めてきてもいいんじゃないか? ワタシたちを倒したいのなら、そうするしかないだろう?」
明らかな挑発をすると、
「んだと~! ならやってやる!」
彭侯がキレる。辻神の忠告も聞かずに、鉄砲水を上に向けて放った。
「どこを狙っているんだぁ?」
それは重力に負けると、雨のように周囲に降り注いだ。
「ぐっ!」
受けたガガが急に苦しみだした。これはただの鉄砲水ではなく、汚染濁流だ。毒厄が彼女を襲ったのである。
「どうした、さっきまでの威勢はよ? いいか外国人、これが、霊障合体だ!」
その手本を見せてやる。
(マズい。このままではガガが負ける! だがワタシが近づこうにも、このツジガミとかいいうヤツ! 今はワタシの方を見て警戒している! 近づけない! ん、待てよ?)
霊障合体だ。それを使えれば、彼女を助けることができるかもしれない。
(ワタシのメンタルキャノンにメディシンスピリットを乗せれば! できるのか?)
半信半疑で銃から霊魂を撃ち出した。
「あの銃、ただのオモチャじゃないワ! 霊魂が出た!」
「そういう霊障の使い手…か!」
しかし曲がる霊魂は、辻神や山姫を飛び越える軌道を描いた。
「止めろ、山姫!」
「え?」
遅かった。その霊魂はガガに着弾。
「ふ、ふう……。急に楽になりました!」
衝撃は少しで、そして同時に薬束が効果を発揮し毒厄が取り払われる。それを見て辻神、
「遅かった! アイツ、霊魂と薬束を合体させたぞ。さしずめ、救援光 ってところか!」
相手が霊障合体を使ったことを把握。
「さっさと決めるしかなさそうだ。やるか、アレを!」
「やるの、もう?」
「時間はあまりかけられない。コイツら【UON】の霊能力者は、霊障合体を研究し実践投入までしている。これでは長引けば長引くだけこちらが不利になるだけだ」
ポケットに隠し持っている、大量の電池。これらをばら撒いて電霊放を放出させる、風神雷神。辻神の切り札だ。
しかし、
「見抜いた!」
その、手で何かを取り出そうとする動きにディスが反応。霊魂撃ち込んでポケットを射抜き、開いた穴から電池が零れ落ちた。
「何?」
驚いたのはそれだけにではない。着弾したはずの霊魂が、向きを変えて彭侯に迫ったのである。
「ぐああああ!」
彼の膝に当たると、また浮き上がって今度は腕に命中。さらにそこから背中を襲う。
「アイツの霊魂は、一発限りではないのか! このままでは……」
口よりも先に手が動く。電霊放でその霊魂を撃ち抜いた。流石にこれには耐え切れず、霊魂は消えた。
「おまえの相手は私がする! 山姫、彭侯! 残りの五人に邪魔をさせるな!」
「了解だぜ!」
辻神はディスに向かって走り出した。
「ほう? ワタシを倒すと本気で言うのか。面白いのは名前だけではないようだな」
「早すぎたかな? でも営業時間もクソもない! 対応しないこの神社が悪いんだぜ!」
ギルが大声で叫ぶ。
「誰だお前たち…?」
当然、叢雲は彼らのことを疑問に思うだろう。
「やっと来たねぇ。まったく、全然接客がなってないなぁ」
彼らは【UON】の霊能力者だ。この大会に参加して、優勝賞金をかっさらう計画なのだ。二月に敗北した恨みを晴らす意味もある。この大会は国籍を問われないので参加ができた。
「キサマらも参加者か?」
とディスが聞くと、叢雲と橋姫は首を横に振る。
「私たちがそうだ」
辻神は山姫と彭侯を指差し、言った。
「やるってのか? いいだろう! オレたちの力を見せてやる! 海外風情がデカい顔するんじゃねえぜ!」
「ちょっと待て。ここの住職か従業員に聞きたいことがあるのだ」
どうやらディスたちは何かしらの疑問を抱き、結果としてこの三色神社にたどり着いたようだ。
「俺でもいいか? ここで住み込みで働いているんだが」
「いいぞ。では問おう! 先月、ここを二十人の【UON】の霊能力者が攻めたが、一晩で壊滅してしまったという悲しい事件があった。それについて教えてくれ。予め断っておくがワタシたちはその件の復讐や報復は考えていない」
二十人が、返り討ちに遭った。その不自然な結果が何故生じたのか、が不思議なのだ。
「俺が倒した……。集束させた電霊放を曲げることができたから、とても簡単だった。と言って信じてもらえるか?」
ここ、三色神社は【神代】からはあまり重要視されていなかった。だから増員の派遣はなし。しかし叢雲の実力をもってすれば、二十人程度なら簡単に退けられるだけのこと。
にわかには信じがたい話ゆえに、ギルら五人は互いに顔を合わせて何か呟いている。しかしディスは、
「なるほど……。キサマが原因だったか」
その返事を事実として受け入れた。彼ほどの実力者になれば、相手の言っていることが嘘か誠かなんて表情ですぐにわかる。
(嘘ではない。彼はもしかしたら、シデンよりも強い者かもしれないな。少なくとも何とかダンジュウロウよりは格段に手練れ)
ただ、その叢雲は大会参加者ではない、つまり戦う必要がないのはディスたちにとって幸運なことだった。
「しかし、そっちの……三人は見逃せない! ワタシたちはこの大会で好成績を残し、【神代】に【UON】の強さを示したいんでね」
「待ってヨ? チームの定員は四人なはずだワ? でも君たちは六人いる…よね?」
簡単な話だ。ギルとゼブとジオ、ガガとザビとディスがそれぞれチームを組んでいる。そして他のチームと協力してはいけないというルールはない。だからこれまで、六人で行動してきた。それは今朝も例外ではない。ディスたちは今、六人で三人しかいない辻神たちと対戦しようと思っている。
「どうする、辻神? 流石にこの人数差のアドバンテージは大問題だぜ? 聖閃たちを連れ出さねえか?」
「ぼくは反対だヨ。よく知らない人たちと組んでも、絶対に崩壊するワ!」
二人の言うことはどちらも正しい。辻神は、
「私たちだけでやろう。他の人の手を借りたことが知られたら、【神代】の威厳が保てなくなる。それに万一アイツらが強かったら、聖閃たちを巻き込んで敗北にしてしまうのは流石に申し訳ない」
難しいが、自分たちだけで戦うことを決める。
一方の【UON】のチームも、
「今までワタシたちは、【神代】の霊能力者のレイショウガッタイを見てきた! 今度は実際に使ってみる番だ! レイショウガッタイ、名付けてファントムフェノメノン・ポリメライズフュージョン! 実戦でどの程度使えるかは調べておく必要がある」
「了解でち!」
「確かに見ているだけでは身に付きませんね」
戦いの方針を決めた。
審判は叢雲と橋姫だ。
「境内の中だけでやってくれ。言っておくが本殿どころか離れ屋にかすり傷でも付けたら容赦しないぞ?」
「心配はない。私も山姫も彭侯も、そんな不器用ではない」
「こちらも問題はない。そういうことはもうしないと上から言われている」
二組の了解を得て、準備が整ったのを確認してから、
「では………始めっ!」
電霊放でスターターピストル代わりに音を鳴らし、戦いの火蓋を切った。
「固まれ! 相手は二倍の六人! 一人で勝とうとするな、みんなで勝つ!」
辻神たちは一か所に固まり、戦うつもりだ。対する【UON】のメンバーは全員が広がり、辻神たちを遠巻きに囲んだ。
「誰から行く? ワレか?」
「いいや、オレッチ!」
「ここはボクチンが、でち!」
「ワタピから行くかねぇ」
「指示がないならアタチが出ましょうか?」
一見すると統制がとれていないように思える会話だが、ディスにはある思惑がある。
(誰から来るか、わからないだろう? 誰に注意を払うべきかも不明瞭。それでいい、集中力を分散させればその分疲れる)
そして懐から百均の拳銃を取り出し、構える。
「アレが霊障と関係があるのか!」
霊魂を発射できる改造が施された銃。しかし今はまだ、トリガーを引く気がない。そしてその銃口は実は、ガガに向けられている。これはディスからの無言の指令だ。
(ガガ! シャドープラズマを使え! コイツらのファントムフェノメノンが見たい!)
サインに気づいたガガはおもちゃの銃をポケットから取り出し、電霊放を撃った。
「あ、危ない彭侯!」
電霊放に気づいた橋姫は即座に礫岩を使用し、岩石でそれを防御した。
「あの女はプロテクトテラが使えるワケか」
だとしたら、次の攻撃は違う仲間に任せる。銃口はゼブを向いた。
(ワタピに任せな!)
彼女は雪と鉄砲水を同時に展開。
「こういうのが、レイショウガッタイって言うんだろう? そぉれ!」
流氷波だ。氷を含んだ水が三人を襲う。ここは彭侯が自分の鉄砲水で防御。
(アイツはアクアシュトローム……。ということは、プロテクトテラとアクアシュトロームを合体させることが、二人ならできるということか……)
これは、認識が違う。霊障合体は一人で行うものだ。だがその極意を知らないディスたちは、誰かと協力すればできると感じている。だから、警戒する。
(次はギルに行かせるか。ゴーストフレアなら!)
指示を出すと、
「オレッチが焼き捨ててやる!」
ギルは鬼火を繰り出し、飛ばした。
「電霊放…!」
だが、これは辻神が構えたドライバーから撃ち出された電霊放に防がれる。
「しまった! またやらかした!」
「いや、これでいいぞギル。大まかな霊障はわかった!」
ここから、である。ディスはジオに攻めさせる。
「ボクチンは学習能力が高いでちよ? 行くでち!」
応声虫と木綿を試しに組み合わせてみる。すると樹海脈ができるのだが、
「な、何ですこの音! ジオ、何をしているんですか?」
「でち?」
生じた雑音は、使ったジオは襲わない。しかし周囲の仲間の鼓膜を敵ごと揺さぶってしまうのだ。ガガが耳を塞いでいるのを見たジオは、樹海脈をやめる。
「ごめんでち。気づかなかったでち……」
「気にするでない」
しょんぼりする彼にザビがフォローを入れた。
「さぁ、【神代】の霊能力者! そろそろそっちから攻めてきてもいいんじゃないか? ワタシたちを倒したいのなら、そうするしかないだろう?」
明らかな挑発をすると、
「んだと~! ならやってやる!」
彭侯がキレる。辻神の忠告も聞かずに、鉄砲水を上に向けて放った。
「どこを狙っているんだぁ?」
それは重力に負けると、雨のように周囲に降り注いだ。
「ぐっ!」
受けたガガが急に苦しみだした。これはただの鉄砲水ではなく、汚染濁流だ。毒厄が彼女を襲ったのである。
「どうした、さっきまでの威勢はよ? いいか外国人、これが、霊障合体だ!」
その手本を見せてやる。
(マズい。このままではガガが負ける! だがワタシが近づこうにも、このツジガミとかいいうヤツ! 今はワタシの方を見て警戒している! 近づけない! ん、待てよ?)
霊障合体だ。それを使えれば、彼女を助けることができるかもしれない。
(ワタシのメンタルキャノンにメディシンスピリットを乗せれば! できるのか?)
半信半疑で銃から霊魂を撃ち出した。
「あの銃、ただのオモチャじゃないワ! 霊魂が出た!」
「そういう霊障の使い手…か!」
しかし曲がる霊魂は、辻神や山姫を飛び越える軌道を描いた。
「止めろ、山姫!」
「え?」
遅かった。その霊魂はガガに着弾。
「ふ、ふう……。急に楽になりました!」
衝撃は少しで、そして同時に薬束が効果を発揮し毒厄が取り払われる。それを見て辻神、
「遅かった! アイツ、霊魂と薬束を合体させたぞ。さしずめ、
相手が霊障合体を使ったことを把握。
「さっさと決めるしかなさそうだ。やるか、アレを!」
「やるの、もう?」
「時間はあまりかけられない。コイツら【UON】の霊能力者は、霊障合体を研究し実践投入までしている。これでは長引けば長引くだけこちらが不利になるだけだ」
ポケットに隠し持っている、大量の電池。これらをばら撒いて電霊放を放出させる、風神雷神。辻神の切り札だ。
しかし、
「見抜いた!」
その、手で何かを取り出そうとする動きにディスが反応。霊魂撃ち込んでポケットを射抜き、開いた穴から電池が零れ落ちた。
「何?」
驚いたのはそれだけにではない。着弾したはずの霊魂が、向きを変えて彭侯に迫ったのである。
「ぐああああ!」
彼の膝に当たると、また浮き上がって今度は腕に命中。さらにそこから背中を襲う。
「アイツの霊魂は、一発限りではないのか! このままでは……」
口よりも先に手が動く。電霊放でその霊魂を撃ち抜いた。流石にこれには耐え切れず、霊魂は消えた。
「おまえの相手は私がする! 山姫、彭侯! 残りの五人に邪魔をさせるな!」
「了解だぜ!」
辻神はディスに向かって走り出した。
「ほう? ワタシを倒すと本気で言うのか。面白いのは名前だけではないようだな」