第10話 雷が瞬いた その4

文字数 1,333文字

「マスター・ハイフーン!」

 ゼキアたちがハイフーンに駆け寄る。

「大丈夫ですか! 目を開けてください!」
「……む? 平気だね。眼鏡こそ壊れちゃったけど、こんな傷はすぐに治せるからね」
「なら! そのままあの四人をやっつけてくださいよ!」

 そう言うゲイトに対し、

「それはもうできないね」

 と否定するハイフーン。

「どうしてですか!」
「ミーは負けたね。これ以上戦っても、精神面でシデンたちを上回ることはないね。だから無意味だね」
「ならばわたしたちが!」

 構えようとするガイザのことをなだめるように、

「もう、やめだね」

 と言った。それは、【UON】が日本から撤退することを意味している。

「帰ろうね。ミーたちは故郷に。【神代】から日本を奪い取ろうとすることは、愚かなことだったね。だから負けたんだね」

 それを聞いたテギアはわんわん泣いた。

 ハイフーンはこの場所から去る時、紫電にある約束をした。

「近日中に、撤退する旨を【神代】に伝えるね」

 白旗を揚げることだ。紫電も、

「わかったぜ。気をつけて帰れよ?」

 頷く。

「いや~素晴らしかったね! ゼキア、テギア、ガイザ、ゲイト。ミーは【UON】の本部への報告のためにさっさと帰るけどね、ユーたちはちょっと観光でもしていくといいね」
「遠慮します。他のチームはどうか知りませんけど、おれたちはあなたが戻ると言うのならついて行きますよ」

 そして去っていった。

「か、勝ったぁ~」

 それを実感した紫電の全身から力が抜け、倒れた。

「大丈夫? 私が肩、貸すよ?」
「ああ。助かるぜ」

 このままホテルに戻る。いいやその前に傷ついた体を治してもらうため、【神代】に向かった方がいいかもしれない。

「まだ終電間に合うぜ。紫電、まずは本店に戻ろう。俺と柚好じゃ、その傷は治せない」
「そうですね。それを先にするべきです」
「なんならタクシー呼ぶ?」

 とりあえず一同は最寄りの駅を目指して、明治神宮の敷地内から出た。


 次の日、正式に【UON】から謝罪があった。

「今回、【UON】の末端の霊能力者が勝手な行動をとったことについてお詫びしたい」

 そんな無責任な始まりからではあるが、【UON】は作戦を放棄し、これ以上【神代】と戦うつもりがないことを明らかにした。

「………以上をもって、対【UON】の作戦行動を終了する! 諸君、よく頑張った!」

 会議室に集められた、今回の任務に就いていた霊能力者たちは富嶽のその声を皮切りに、一斉に歓喜の声を出した。それを見て富嶽は、思った。

(この島には、風が吹いておる! それはきっと、神が吹かせてくれた風であろう。日本を【神代】を守るための風。神守の風だ。それが若き霊能力者たちに吹いて、守ってくれたのだ!)

 お祝いのために今夜はみんなで高級レストランに行くことが決まった。だが紫電と雪女はその賑やかな団体から抜け出し、一足先に空港に到着。

「いいの、参加しなくて?」
「ああ。俺はああいう空気はどっちかって言うと苦手だ」
「てっきり得意な方だと思ってたよ……」
「いいじゃねえか、そんなことはどうでも。お前と俺、二人だけいればそれで十分だ。さ、八戸に帰ろうぜ」
「そうね。じゃ、行こっか」

 夜の便に乗り込んだ二人。勝利を手土産に、故郷へ凱旋する。
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