第16話 お聞きなさい
文字数 1,807文字
首に回された呪いのアイテムをつかみ引き剥 がそうとしながら振り向いた先のイルミ・ランタサル王妃 を睨 みつけアイリ・ライハラは怒鳴った。
「ば、バカやろう! なんてことしやがる!?」
イルミは青髪の少女を見つめ静かに切りだした。
「アイリ────お聞きなさい────」
呪いの首輪 から指を放し眼の前の馬糞女につかみかかろうと踏みだすと盛り髪の王妃 は合わせるように脚を前に繰りだし激昂するアイリに胸元をつかませた。その二人の姿に周囲の通行者は驚きの眼差しを向け遠巻きに避けて行き始めた。
「このイズイ大陸は長い年月 人同士がいがみ合い殺し合ってきたわ」
アイリ・ライハラに服を上に引き上げられイルミは顔を歪 めなお青髪の少女から視線を逸らさずに見つめ思った。
「それがどうした!? さっさと外しやがれ! お前ぇ俺っちに怨 みでもあるんかぁ!?」
そう────その言動の粗暴さが貴女 の力の根源。
「あなた一人の力でこの混迷の大地を統一しきったでしょう」
イルミ・ランタサルの胸元を吊り上げるアイリは王妃 が目尻下げじっと見下ろすエメラルドグリーンの眼差しと話しの成り行きに青い瞳游 がせ困惑し始めた。
「お、俺一人のせいじゃ────────」
「いいえ──アイリ────お聞きなさい────他のものはあなたの助力をしたに過ぎないのよ」
「そ、それとこの首輪 、なんの関係があるんだぁ、よ」
アイリ・ライハラは王妃 を吊り上げるのを止めたが胸元から握りしめる手を放さなかった。
「人と人が殺し合う時代の終わりが幕開け、あとは人を襲いにくる魔族と和合できれば、人は無意味な不幸から救われる」
話しの行く先が見えだしたアイリはイルミ・ランタサルの胸元を前後に揺すって言い返した。
「結局、俺っちに魔王城へ行けということじゃん!」
指摘されイルミ・ランタサルは眉間に皺 を刻み哀しげな面もちで訴えかける少女を見つめ諭 した。
「あなたが頼 りなの────────アイリ・ライハラ」
な! 泣き落としかぁ! ひ、卑怯 な女だぁ! 命じられるより断り辛いじゃん! アイリ・ライハラは王妃 の胸元から手を放ししゃがみこみ地面見つめ頭を抱え込んだ。
いいやこの馬糞女、泣き落としながら人の首に呪縛の鎖 をつけやがったんだぞ!
アイリ・ライハラは頭抱え込んだまま顔を上げイルミ・ランタサルを見上げ唇をへの字にねじ曲げた。それを蔑 んだ眼差しで見下ろし王妃 はぼそりと告げた。
「お止めなさいアイリ、あなたの可愛い顔が台無しよ」
その難題ばかり押しつける一歳違いの婆 にアイリは言うべきことははっきりと告げた。
「いやだぁ────────行きたく、ねぇ」
その言葉にイルミ・ランタサルは鼻筋 に皺 を刻み眼を細め僅 かに間 をおいてぼそりと命じた。
「締まれ!」
とたんに首の呪いのアイテムがぎゅ────────っと締まりだしてアイリ・ライハラは髪の色と同じくらいに顔色が青くなりその首輪 をつかんで地面をジタバタと転げ回った。
「てっ、てめぇ、ぐえぇええ、ぶち殺す、うぅ、ぜぇえぜぇえ──」
それを眼差しは冷ややかなまま唇に笑みを浮かべたイルミ・ランタサルはもうちょっと首輪 が締まるのを待ちしばし見つめ少女に教えた。
「アイリ・ライハラ、あなたが魔王の元へゆきその首に手をかけたならその首輪 はとれます」
アイリは転げ回る余力もなくなり唇すぼめ必死で息を吸おうと足掻いた。
「すぅ、はぁ、すぅ、はぁあああぁ」
「どうします、アイリ・ライハラ?」
応えようにも息を吸うことも吐くこともできずに顔色が青から血の気のない灰色になり始めた少女にもう一度冷酷非道で我が侭 な王妃 が両手の指を怪しげに蠢 かせ問いかけた。
「どうしますか、アイリ?」
地面に横たわって身体折り曲げたアイリ・ライハラが痙攣 したようにこくこくと頷 いた。
「緩め!」
「ひゅ────────っ、うぅううう、ひぃひぃひぃ」
身体折り曲げたまま地面に横向に倒れ空気を貪 るように吸い込むのに必死なアイリ・ライハラをイルミ・ランタサル王妃 が満足の笑みを浮かべ見下ろしていた。
三週間の後 ────九十八万の十字軍率いた青髪の総大将は天空の眷属ノッチス・ルッチス・ベネトス──ノッチを従え魔族との勢力境界線であるイズイ大陸南方の死の渓谷 ドセビローにいた。
馬上のアイリ・ライハラが首のかざりものに指をかけやたらと気にしていることにノッチは似合っていると思ったが口に出さなかった。
「ば、バカやろう! なんてことしやがる!?」
イルミは青髪の少女を見つめ静かに切りだした。
「アイリ────お聞きなさい────」
呪いの
「このイズイ大陸は長い
アイリ・ライハラに服を上に引き上げられイルミは顔を
「それがどうした!? さっさと外しやがれ! お前ぇ俺っちに
そう────その言動の粗暴さが
「あなた一人の力でこの混迷の大地を統一しきったでしょう」
イルミ・ランタサルの胸元を吊り上げるアイリは
「お、俺一人のせいじゃ────────」
「いいえ──アイリ────お聞きなさい────他のものはあなたの助力をしたに過ぎないのよ」
「そ、それとこの
アイリ・ライハラは
「人と人が殺し合う時代の終わりが幕開け、あとは人を襲いにくる魔族と和合できれば、人は無意味な不幸から救われる」
話しの行く先が見えだしたアイリはイルミ・ランタサルの胸元を前後に揺すって言い返した。
「結局、俺っちに魔王城へ行けということじゃん!」
指摘されイルミ・ランタサルは眉間に
「あなたが
な! 泣き落としかぁ! ひ、
いいやこの馬糞女、泣き落としながら人の首に呪縛の
アイリ・ライハラは頭抱え込んだまま顔を上げイルミ・ランタサルを見上げ唇をへの字にねじ曲げた。それを
「お止めなさいアイリ、あなたの可愛い顔が台無しよ」
その難題ばかり押しつける一歳違いの
「いやだぁ────────行きたく、ねぇ」
その言葉にイルミ・ランタサルは
「締まれ!」
とたんに首の呪いのアイテムがぎゅ────────っと締まりだしてアイリ・ライハラは髪の色と同じくらいに顔色が青くなりその
「てっ、てめぇ、ぐえぇええ、ぶち殺す、うぅ、ぜぇえぜぇえ──」
それを眼差しは冷ややかなまま唇に笑みを浮かべたイルミ・ランタサルはもうちょっと
「アイリ・ライハラ、あなたが魔王の元へゆきその首に手をかけたならその
アイリは転げ回る余力もなくなり唇すぼめ必死で息を吸おうと足掻いた。
「すぅ、はぁ、すぅ、はぁあああぁ」
「どうします、アイリ・ライハラ?」
応えようにも息を吸うことも吐くこともできずに顔色が青から血の気のない灰色になり始めた少女にもう一度冷酷非道で我が
「どうしますか、アイリ?」
地面に横たわって身体折り曲げたアイリ・ライハラが
「緩め!」
「ひゅ────────っ、うぅううう、ひぃひぃひぃ」
身体折り曲げたまま地面に横向に倒れ空気を
三週間の
馬上のアイリ・ライハラが首のかざりものに指をかけやたらと気にしていることにノッチは似合っていると思ったが口に出さなかった。