第2話 密議
文字数 1,852文字
「ランタサル王家転覆なら乗らんぞ」
言うに事欠いてくるんくるんを引き摺 り下ろすとか思い浮かばんのか、この脳筋 騎士道の塊 は、とアイリは眉根しかめて思ったことをぽろりとヘルカ・ホスティラに言いそうになった。
「ば、馬鹿かぁ! そんなことしたらくるんくるんに特大の星球武器 でぶっ叩 かれるわ!」
思ったことを口に出さなかったぞ──とアイリは胸をなで下ろした。
「お前でもあの特注で突起を長めに作った武器が怖いのか?」
女剣士ウルスラ・ヴァルティアと脳筋 ヘルカ・ホスティラの前でも通しているテレーゼ・マカイがしらっと少女に指摘しアイリは言い返した。
「あぁ!? 知らんのかぁ──家臣 の6人に1人はイルミにあれでぶっ叩 かれて重傷な奴は1年経つのにまだ政 に復帰してないんだぞ。死んでしまうわ」
ヘルカはつまらなそうに足組と腕組みしてそっぽを向いてしまった。
その態度にアイリは眼を細め思った。はいはい、あんたは長剣 が根元までざっくり刺さっても死なんもんね、とアイリはうっかり口が滑りそうになり、何の関係もなく口笛を吹いて誤魔化すとテレーゼ・マカイが核心をついてきた。
「小娘の茶会でもなかろう。こんな夜更けに呼びだした理由はなにか退 っ引 きならないことでも起きているのか?」
アイリ・ライハラは2人を見回し話を切りだした。
「裏の魔女ミルヤミ・キルシがいなくなってホッとしてるところに嫌な話が舞い込んだんだ」
「なんだぁ? 嫁いだばかりで旦那 を他の女に盗られかけてるのか?」
面白くもなさそうな顔でヘルカが流し目でからかった。
「ちゃうわい! お前こそさっさと男見つけろよ!」
ヘルカがソファから腰を浮かし肩を怒らせた。
「ば、馬鹿もんがぁ!我 は騎士道の僕 ! 男なんぞ不要だぁ!」
「2人とも話しの腰を折るな」
テレーゼがにやつきながら窘 めるとアイリがかしこまって続きを話した。
「あのミルヤミ・キルシに姉がいてそいつも魔女で良くない人物らしい」
「そこら辺────詳しく話せアイリ」
ヘルカが鼻息荒くテーブルに身を乗りだした。
「鼻の穴を広げるな! かっこわりぃ────」
「うるさい! 生まれつきの顔をとやかく言うな!」
ヘルカがアイリを叩 こうとしてテレーゼが片腕出して押し止めアイリに尋 ねた。
「その魔女、なんという名だ?」
「名は知らんが、銀盤の魔女とか云われてるらしい」
突然、テレーゼ・マカイが顔を強ばらせアイリは愕 くと彼女が打ち明けた。
「それは伝承だろう────昔、行商人から聞きかじった。関わった連中を皆 殺すというらしい」
アイリはくるんくるんが言っていたのと微妙に違っているような気がしてテレーゼに尋 ねた。
「悪人だろうか? そんな見境なく人を殺すやつがどうしてどこの国からも手配されていないんだろう?」
「お前ぇ、人の話しをきちんと聞け! 伝承──眉唾の話だぁ」
ヘルカに言われてもアイリは釈然としなかった。
「いるかどうか探しに行ってみないか?」
アイリ・ライハラが持ちかけると、ヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイからじっと見返されアイリはもう一度念押しした。
「えぇ!? 行かないのかぁ?」
「貴君、我 が行く前提で話を持ち込んだだろう」
ヘルカ・ホスティラが真顔で指摘したので、アイリはやっぱり駄目かと諦 めかけ気落ちしたのが表情になると女騎士が付け加えた。
「最近、休みを取っていなかったので王妃 に申し出てしばらくお暇を頂く。無論、何をするかは決めていない」
うっ! 何のかんの言いながらこいつ行く気だぞ、とアイリは苦笑いすると話しの流れを聞いていたテレーゼ・マカイもアイリに言いだした。
「私は剣竜騎士団には所属してない一介 の剣士だ。身の振り方は自由だぞ。それよりもアイリ、君の方が居なくなるのはマズいのではないか?」
アイリは胸を張った。
「大丈夫! 親父に旦那 会わせるのに田舎にちょっと帰るとくるんくるんに嘘つく」
「貴君、剣 の使い手でもないものを連れて行くのか!?」
リディリィ・リオガ王立騎士団第3位の女騎士が不満そうに尋 ねた。
「ああ、問題ないよ──あいつ俺より強いから」
それを耳にしてヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイがアイリの方へ身を乗りだし声を荒げた。
「お前ぇより強いとはどういうことだぁ!?」
思わずアイリは引いてしまった。まさかノッチが天上人 とも言えず適当なことを返した。
「だってあいつ山奥でずっと修行してたから」
見つめる2人の眼が座っていることにアイリ・ライハラは馬糞を踏んづけたような気がして冷や汗を浮かべた。
言うに事欠いてくるんくるんを引き
「ば、馬鹿かぁ! そんなことしたらくるんくるんに特大の
思ったことを口に出さなかったぞ──とアイリは胸をなで下ろした。
「お前でもあの特注で突起を長めに作った武器が怖いのか?」
女剣士ウルスラ・ヴァルティアと
「あぁ!? 知らんのかぁ──
ヘルカはつまらなそうに足組と腕組みしてそっぽを向いてしまった。
その態度にアイリは眼を細め思った。はいはい、あんたは
「小娘の茶会でもなかろう。こんな夜更けに呼びだした理由はなにか
アイリ・ライハラは2人を見回し話を切りだした。
「裏の魔女ミルヤミ・キルシがいなくなってホッとしてるところに嫌な話が舞い込んだんだ」
「なんだぁ? 嫁いだばかりで
面白くもなさそうな顔でヘルカが流し目でからかった。
「ちゃうわい! お前こそさっさと男見つけろよ!」
ヘルカがソファから腰を浮かし肩を怒らせた。
「ば、馬鹿もんがぁ!
「2人とも話しの腰を折るな」
テレーゼがにやつきながら
「あのミルヤミ・キルシに姉がいてそいつも魔女で良くない人物らしい」
「そこら辺────詳しく話せアイリ」
ヘルカが鼻息荒くテーブルに身を乗りだした。
「鼻の穴を広げるな! かっこわりぃ────」
「うるさい! 生まれつきの顔をとやかく言うな!」
ヘルカがアイリを
「その魔女、なんという名だ?」
「名は知らんが、銀盤の魔女とか云われてるらしい」
突然、テレーゼ・マカイが顔を強ばらせアイリは
「それは伝承だろう────昔、行商人から聞きかじった。関わった連中を
アイリはくるんくるんが言っていたのと微妙に違っているような気がしてテレーゼに
「悪人だろうか? そんな見境なく人を殺すやつがどうしてどこの国からも手配されていないんだろう?」
「お前ぇ、人の話しをきちんと聞け! 伝承──眉唾の話だぁ」
ヘルカに言われてもアイリは釈然としなかった。
「いるかどうか探しに行ってみないか?」
アイリ・ライハラが持ちかけると、ヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイからじっと見返されアイリはもう一度念押しした。
「えぇ!? 行かないのかぁ?」
「貴君、
ヘルカ・ホスティラが真顔で指摘したので、アイリはやっぱり駄目かと
「最近、休みを取っていなかったので
うっ! 何のかんの言いながらこいつ行く気だぞ、とアイリは苦笑いすると話しの流れを聞いていたテレーゼ・マカイもアイリに言いだした。
「私は剣竜騎士団には所属してない
アイリは胸を張った。
「大丈夫! 親父に
「貴君、
リディリィ・リオガ王立騎士団第3位の女騎士が不満そうに
「ああ、問題ないよ──あいつ俺より強いから」
それを耳にしてヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイがアイリの方へ身を乗りだし声を荒げた。
「お前ぇより強いとはどういうことだぁ!?」
思わずアイリは引いてしまった。まさかノッチが
「だってあいつ山奥でずっと修行してたから」
見つめる2人の眼が座っていることにアイリ・ライハラは馬糞を踏んづけたような気がして冷や汗を浮かべた。