第17話 どこまで続くぬかるみぞ
文字数 1,659文字
盗賊からぶん盗った安物の剣 など意に介さずそれで打ってくる敵の刃 を弾き逸 らし一瞬で鞭 のように振り返し山賊の戦闘力を奪ってゆく。
右に立ちがんがんに攻める女騎士テレーゼ・マカイの剣技にアイリ・ライハラは舌を巻いた。
こいつ叫んでものをぶっ壊さなくても十分に強いじゃん!
何であんな妖魔のような力に頼 っていたんだ!?
きっとそれなりの理由があるのだろうけれど、今はそんなことに拘泥 してる場合ではなかった。
次々に岩陰から姿現す盗賊らが一体どれくらいいるんだとテレーゼの左で少女は剣 を振り回し続け、身を翻 す都度に踊り上がるテレーゼの金色の髪を気にし続けた。
こ、こいつ頭髪の右半分がないのを気がつかねぇじゃん!
アイリが眉根しかめて横目で見た紫甲冑 の女騎士は顔を激しく動かす都度に左の髪が視線を妨 げてもその逆がないことにぜ──んぜん気づいちゃいねぇ!
だが襲いかかってくる男らが1度ならず何度もマカイの双子の片割れの額から上へ視線を向ける。そりゃあ右半分がない髪型なんてまともじゃないし珍しい。
騎士風体 の女が右半分坊主なのはめちゃくちゃ変だよ。
そう思いながらアイリは同時に3人を斬 り倒しそれを眼にした右にいるテレーゼが顔を振り向け微笑んで告げた。
「小娘! おぬし小柄ながらやるではないか!」
こっち振り向くなぁ!
少女は顔を引き攣 らせ苛ついて空に剣 を刃 見えないほどに走らせまだ近寄って来てない山賊を旋風で1度に5人斬り倒し、寸秒テレーゼが叫び声を響かせ7人を同時に斬 り倒した。
その2人の後を記憶喪失のキルシを傍 らに抱き寄せついて行く女異端審問司祭ヘッレヴィ・キュトラは眼の前の2人の剣技どころか離れ技 に呆れかえった。
山賊らは技術も体力も女2人の剣士に及 ばない。
いいや、心なしかここの山賊らはなぜか弱い。弱すぎる。
後ろを振り向いたヘッレヴィは歩いてきた左右に斬 り倒され呻 く男らがすでに50人はいることに苦笑いした。
いきなり異端審問司祭はつまづきそうになり顔を戻すと足元を見た。
倒れた男に足を引っ掛けていた。肩を斬られた男が剣 を手放しうつ伏せで呻 いていた。
「く、くそう──食いもんさえ────食ってりゃ──」
え!? こいつら腹空かせて斬り合いしてる!?
ヘッレヴィ・キュトラは眼を耀 かせて記憶喪失の少女を抱き寄せたまま剣 を拾い上げた。
私 にも倒せるかも。
武器を手にした異端審問司祭の前でテレーゼ・マカイはぶんぶんと剣 を振り回しながら何か不甲斐ないと唇をへの字に曲げていた。
かかってくる盗賊らは剣 や斧を手にしてるが重くもなさそうな得物 に振り回され、刃 を弾き逸 らしただけでふらついて足を絡ませバランスを崩 す。
勝ち続けていたがまるで子ども相手に戯 れているようだとうんざりしてきた。
兜 を被っていれば気にもならないが、激しく動く都度に顔に被ってくる髪が気になり頭を振って肩後ろに飛ばした。
マカイの片割れは違和感を抱きそれを気にしだした瞬間、振り向いて顔を見た少女が先へ駆け出し声をかけた。
「向こうに盗賊らの頭 がいるぞ!」
テレーゼは少女がなぜそんなことを知ってるのかと思いながら遅れ取り戻そうと肩の違和感を忘れ走った。
大きな岩を回り込む直前にその女騎士へ少女がまた振り向いて叫んだ。
「こっちだぁマカイのなんてろ !」
ま、マカイのなんてろ!? 馬鹿者! マカイのシーデだ! そう思いながらテレーゼ・マカイはなぜか乗せられている思いを振り払えず岩を回り込むと少女が盗賊の一団と対峙していた。
盗賊らが不細工な眼光鋭い人相の悪い小太りの男を守るように護っている。
こいつが群盗の頭 かと二刀流のテレーゼ・マカイが構えた背後で女異端審問司祭が石につまづき剣 を放り投げてしまった。
「あぁぁぁっ!」
ヘッレヴィ・キュトラの裏返った声に振り向いたアイリ・ライハラは回転する剣 の刃 がテレーゼ・マカイの左頭部を掠 り飛び越えてきたのを慌 てて跳び退いて躱 すと、マカイの片割れの後頭部から金髪がバッサリと落ちて少女は顔を引き攣 らせた。
右に立ちがんがんに攻める女騎士テレーゼ・マカイの剣技にアイリ・ライハラは舌を巻いた。
こいつ叫んでものをぶっ壊さなくても十分に強いじゃん!
何であんな妖魔のような力に
きっとそれなりの理由があるのだろうけれど、今はそんなことに
次々に岩陰から姿現す盗賊らが一体どれくらいいるんだとテレーゼの左で少女は
こ、こいつ頭髪の右半分がないのを気がつかねぇじゃん!
アイリが眉根しかめて横目で見た紫
だが襲いかかってくる男らが1度ならず何度もマカイの双子の片割れの額から上へ視線を向ける。そりゃあ右半分がない髪型なんてまともじゃないし珍しい。
騎士
そう思いながらアイリは同時に3人を
「小娘! おぬし小柄ながらやるではないか!」
こっち振り向くなぁ!
少女は顔を引き
その2人の後を記憶喪失のキルシを
山賊らは技術も体力も女2人の剣士に
いいや、心なしかここの山賊らはなぜか弱い。弱すぎる。
後ろを振り向いたヘッレヴィは歩いてきた左右に
いきなり異端審問司祭はつまづきそうになり顔を戻すと足元を見た。
倒れた男に足を引っ掛けていた。肩を斬られた男が
「く、くそう──食いもんさえ────食ってりゃ──」
え!? こいつら腹空かせて斬り合いしてる!?
ヘッレヴィ・キュトラは眼を
武器を手にした異端審問司祭の前でテレーゼ・マカイはぶんぶんと
かかってくる盗賊らは
勝ち続けていたがまるで子ども相手に
マカイの片割れは違和感を抱きそれを気にしだした瞬間、振り向いて顔を見た少女が先へ駆け出し声をかけた。
「向こうに盗賊らの
テレーゼは少女がなぜそんなことを知ってるのかと思いながら遅れ取り戻そうと肩の違和感を忘れ走った。
大きな岩を回り込む直前にその女騎士へ少女がまた振り向いて叫んだ。
「こっちだぁマカイの
ま、マカイのなんてろ!? 馬鹿者! マカイのシーデだ! そう思いながらテレーゼ・マカイはなぜか乗せられている思いを振り払えず岩を回り込むと少女が盗賊の一団と対峙していた。
盗賊らが不細工な眼光鋭い人相の悪い小太りの男を守るように護っている。
こいつが群盗の
「あぁぁぁっ!」
ヘッレヴィ・キュトラの裏返った声に振り向いたアイリ・ライハラは回転する