第11話 1難去って2難3難

文字数 1,592文字

 騎士団長が先に下りた23階層へヘルカ・ホスティラら19人は追いかけるように下り立った。

 広い洞窟(どうくつ)の中央にアイリ・ライハラがひっくり返っていた。

「どうしたアイリ!?」

「バジリスクが──いる──気を────つけろ」

 アイリ・ライハラは(しび)れて動けないようだが。バジリスク? 8本足の? ヘルカ・ホスティラは洞窟(どうくつ)内を見回した。

「トカゲはどこだ!? 注意しろ! 噛まれると石化するぞ!」

 参謀長の警告に騎士らは(ソード)を引き抜き構え洞窟(どうくつ)内を調べ始めた。

 ヘルカは2人の騎士と共にアイリの(そば)片膝(かたひざ)ついて騎士団長を介抱した。

「しかしよく石化させられなかったな」

(ソード)が──石化した──それで──(しび)れてる」

 攻撃に使う(ソード)(やり)を伝って毒が回ってくるというのは本当だったのだとヘルカは驚いた。

 とりあえずアイリ・ライハラには気付け薬を飲ませて(しび)れがなくなるのを待った。それにしてもバジリスクはどこに行ったのだとヘルカは辺りを見回した。

 その(そば)にドサッと何かが落ちてきて驚いたヘルカは跳び退()いた。

 シャーっと威嚇する魔物を視認してヘルカ・ホスティラが叫んだ。

「バジリスクがいたぞ!」

 大きくはなく山羊の成獣ほどの長さのトカゲだが8本足の魔物だった。その小ぶりの魔物にヘルカは一瞬油断した。その大きさゆえにアイリ・ライハラが油断したのだと気づいた。だが迷宮に詳しい騎士団長が被害を受けるかと困惑した。

 バジリスクに5人の騎士が()りかかり成敗するとアイリが忠告した。

「気をつけ──ろ。そいつじゃ──ない!」

 その寸秒、24階層への下り口から牛ほどの長さの魔物が這い上がってきた。

「全員で斬り捨てろ!」

 参謀長がそう命じると15人の騎士らが取り囲み(ソード)を構えた。

 でかくてもトカゲ、素速さを兼ね備えている。騎士らが()りかかろうとすると顔を振り向けシャーと叫んだ。

 噛まれると石化するとばかりに(みな)は及び腰になる。

 1人が勇気振り絞り尻尾を切り落とすと7名が一気に踏み込んで(ソード)を突き立てた。

 誰が致命傷を与えたかとかわからない。バジリスクは霧散すると(こぶし)半分の赤い魔石が地面に転がった。

「あ──倒した──のか」

 アイリが(つぶや)くとヘルカ・ホスティラが肩を揺すって喜んだ。

「アイリ! こいつら強くなったぞ! 見てみろよ!」

「や~~~めぇろ~~ぉ~~(しび)れてるん~だ~~ぁ」

「どうしたしっかりしろ騎士団長(きしだんつぉう)

「ヘルカ──お前嫌がらせ────してる──だろ」

 ヘルカはアイリを揺するのを止めた。

「なあヘルカ──もう止めよう──地上に戻りたい」

「何を!? お前がいないと魔物の事がわからん」

「だ──から、(みんな)で地上に戻る」

「それでは王妃(おうひ)の命令に反するだろう」


「100階層よりも深い層を知りたいって。ボロボロになるぞ。行ったことにして適当な報告すりゃあいいじゃん」


「無理だ。アイリ、イルミ・ランタサルは気づくぞ。メンバーの誰彼に質問してでっち上げを気づくぞ」

 ヘルカの警告にアイリは唇をへの字に曲げた。

「さあ立て騎士団長(きしだんつぉう)あと75階層ぽっちさ」

 下の階層ほど強い魔物がいるのをヘルカ・ホスティラは忘れているのだろうが気づいた時には戻る余力もない事がわからない筈でもないとアイリ・ライハラは思った。

 騎士道一直線の女が参謀長やってるのは問題だ。

 アイリは石化した(ソード)を予備に代え(みな)鼓舞(こぶ)した。

「24階層から先の魔物は輪をかけた様な強さだ。ヒーロー気取りで倒せるものじゃない。協力しなければ全滅するぞ。それじゃあ行くぞ!」

 先頭に立つアイリ・ライハラに続きヘルカ・ホスティラと男らが傾斜した洞窟(どうくつ)を下り始めた。

 24階層に入る前からその火炎が見えていた。

「24階層の魔物はアンピプテラ──翼持つ大蛇だ。ドラゴンほどじゃないが吐く火炎はそこそこ強い。真後ろに回り込んだものが首を落とさないと倒せないぞ」


 蜷局(とぐろ)巻いた馬の胴ほどもある太さの大蛇が待ち構えていた。





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登場人物紹介

 アイリ・ライハラ

珍しい群青の髪をした15歳の美少女剣士。竹を割ったようなストレートな性格で周囲を振り回し続ける。

 イルミ・ランタサル

16歳にして策士策謀の類い希なるノーブル国変化球王女。アイリにくるんくるんだの馬糞などと言われ続ける。

 ヘルカ・ホスティラ

20歳のリディリィ・リオガ王立騎士団第3位女騎士。騎士道まっしぐらの堅物。他の登場人物から脳筋とよく呼ばれる。

 イラ・ヤルヴァ

21歳の女暗殺者(アサシン)。頭のネジが1つ、2つ外れている以外は義理堅い女。父親はドの付く変態であんなことやそんな事ばかりされて育つ。

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