第8話 1激の差
文字数 1,746文字
こんな凶暴な魔物巣くう洞窟 になぜいるのか。
さあ、鍛練 に行ってらっしゃい。
あのくるんくるんが言い出しっぺで、無責任に決めてしまったツケだとアイリ・ライハラは腹を立てた。
それはおいといて、現れたサイクロプスを倒さないことには騎士ら半数以上が倒されてしまう。
「ヘルカ! 騎士らを下がらせ俺がサイクロプスの気を引く。お前が背中からコアを突き刺せ」
「前にやった通りだな。気をつけてやれよアイリ」
聞き終える間 もなくアイリは叫びながらサイクロプスの方へ駆けた。
「下がれ!皆 下がれ!」
引き抜いた長剣 を振りかぶりアイリ・ライハラは開いた騎士らの中央を駆け抜けた。振り向いた怪物が顔正面の一つ目で一団を睨 みつけ地鳴りの様に吠 えた。
大きい! 上背のある女騎士ヘルカ・ホスティラが年端 のいかぬ幼子に見えるほど身長差があった。それでも大きくなったアイリは前ほど気圧されてはいなかった。
上手くやれば正面から倒せるとアイリ・ライハラは自信を持って駆けた。
「ファイブ・ステップ!」
目前が開けるやいなや凄まじい勢いで突進したアイリは強く地面を蹴り跳び上がるとサイクロプスの1角に打撃を加え1回転し背後に飛び下りた。
その騎士団長の姿を追ってサイクロプスが騎士らに背を向けた。そこをヘルカ・ホスティラは駆けて長剣 を引き構えた。
前回の対サイクロプス戦では一撃で仕留めることができなかった。だが2度目。ヘルカ・ホスティラは自信を持ってサイクロプスの背中中央に剣 を突き立てた。
長剣 の中ほどまで一気に突き立てサイクロプスが霧散して消えることを期待してヘルカは消えぬと判断した一閃 刃 を横に捻 り真横へ走らせた。
その怪物の先でアイリ・ライハラがサイクロプスの握る岩の棍棒 を弾き返す音が響いてきた。
消えない!?止 めを刺したはずの化け物がまだ生きていてアイリ・ライハラを襲っていた。
そのサイクロプスの背に一気に6人の騎士が剣 を突き立てた。そのどれかがコアを粉砕し化け物は霧散し、拳 1つ分の大きな魔石が地面に転がった。
怪物の注意を逸らしたアイリ・ライハラが曲がった長剣 を手に立ち尽くしていた。
「アイリ無事か?」
ヘルカ・ホスティラが気遣って声をかけると、騎士団長は笑顔を浮かべた。
「剣 がダメになったよ」
「3人が倒された。これ以上は──」
弱腰の参謀長をアイリ・ライハラは笑い飛ばした。
「アハハハ! 怪我した奴は迷宮から出す。運ぶのに6人をつける。6人の内3人が戻るまでここに野営しよう」
アイリ・ライハラの明確な指示にヘルカ・ホスティラは異を唱えるつもりはなかった。いつの間 にかアイリは立派に指揮できるまでに成長していた。ヘルカは自身が腰に下げたもう1振りの長剣 を鞘 ごと引き抜くとアイリに投げ渡した。
「使えよアイリ」
「おう! 助かるヘルカ」
アイリは曲がった剣を投げ捨て参謀長の剣 を引き抜いて振り回し頷 いた。
「次からはサイクロプスを皆 で刺そう」
一撃でしとめられなかったことをアイリは責めもしない。そのことでヘルカ・ホスティラは責任を感じた。
「私が見張りに立つ。皆 ゆっくりしてくれ」
ヘルカ・ホスティラがそう告げると別な2人が見張りにと言いだして彼女は困った。
ヘルカは中堅のイスモ・ヤラに自分が立つ深層側に見張りにつくように告げもう1人の若手ヨーナス・レイヴォは上層側に見張りに立たせた。
「参謀長、前回の迷宮探索はもっと少ない人数だったんでしょう。どうやってサイクロプスを倒したんですか」
一緒に見張りに立つイスモが問いかけた。
「アイリ・ライハラが気を引いてその隙に怪物の背を私が刺した。やはり1発では倒せなかったよ」
「よく急所がおわかりになったんですね」
「ああ、アイリが知っていた。あれは子どもの頃から迷宮に入っていたからな。80階層以上も下りてる強者 だ」
「本当ですか!? 子どもの時に!? 騎士団長って赤竜を一撃で倒したって噂で聞いたのですが」
「あいつがサイクロプスよりも数十倍大きな魔物を1人で倒すのを見たら信じるさ」
「それにしても鎧 を着ていながらどうやってあんなに身軽に動けるんでしょう」
「聞いてみたらいい。簡単に言うから笑えるぞ」
洞窟 の壁にもたれ座り込んでいるアイリ・ライハラが大きなくしゃみをした。
さあ、
あのくるんくるんが言い出しっぺで、無責任に決めてしまったツケだとアイリ・ライハラは腹を立てた。
それはおいといて、現れたサイクロプスを倒さないことには騎士ら半数以上が倒されてしまう。
「ヘルカ! 騎士らを下がらせ俺がサイクロプスの気を引く。お前が背中からコアを突き刺せ」
「前にやった通りだな。気をつけてやれよアイリ」
聞き終える
「下がれ!
引き抜いた
大きい! 上背のある女騎士ヘルカ・ホスティラが
上手くやれば正面から倒せるとアイリ・ライハラは自信を持って駆けた。
「ファイブ・ステップ!」
目前が開けるやいなや凄まじい勢いで突進したアイリは強く地面を蹴り跳び上がるとサイクロプスの1角に打撃を加え1回転し背後に飛び下りた。
その騎士団長の姿を追ってサイクロプスが騎士らに背を向けた。そこをヘルカ・ホスティラは駆けて
前回の対サイクロプス戦では一撃で仕留めることができなかった。だが2度目。ヘルカ・ホスティラは自信を持ってサイクロプスの背中中央に
その怪物の先でアイリ・ライハラがサイクロプスの握る岩の
消えない!?
そのサイクロプスの背に一気に6人の騎士が
怪物の注意を逸らしたアイリ・ライハラが曲がった
「アイリ無事か?」
ヘルカ・ホスティラが気遣って声をかけると、騎士団長は笑顔を浮かべた。
「
「3人が倒された。これ以上は──」
弱腰の参謀長をアイリ・ライハラは笑い飛ばした。
「アハハハ! 怪我した奴は迷宮から出す。運ぶのに6人をつける。6人の内3人が戻るまでここに野営しよう」
アイリ・ライハラの明確な指示にヘルカ・ホスティラは異を唱えるつもりはなかった。いつの
「使えよアイリ」
「おう! 助かるヘルカ」
アイリは曲がった剣を投げ捨て参謀長の
「次からはサイクロプスを
一撃でしとめられなかったことをアイリは責めもしない。そのことでヘルカ・ホスティラは責任を感じた。
「私が見張りに立つ。
ヘルカ・ホスティラがそう告げると別な2人が見張りにと言いだして彼女は困った。
ヘルカは中堅のイスモ・ヤラに自分が立つ深層側に見張りにつくように告げもう1人の若手ヨーナス・レイヴォは上層側に見張りに立たせた。
「参謀長、前回の迷宮探索はもっと少ない人数だったんでしょう。どうやってサイクロプスを倒したんですか」
一緒に見張りに立つイスモが問いかけた。
「アイリ・ライハラが気を引いてその隙に怪物の背を私が刺した。やはり1発では倒せなかったよ」
「よく急所がおわかりになったんですね」
「ああ、アイリが知っていた。あれは子どもの頃から迷宮に入っていたからな。80階層以上も下りてる
「本当ですか!? 子どもの時に!? 騎士団長って赤竜を一撃で倒したって噂で聞いたのですが」
「あいつがサイクロプスよりも数十倍大きな魔物を1人で倒すのを見たら信じるさ」
「それにしても
「聞いてみたらいい。簡単に言うから笑えるぞ」