第21話 おまかせあれ
文字数 1,792文字
中腹から山頂のなくなった異様な形の山の山腹にある洞窟 入り口を睨 むもの達。
城の敷地ほどに離れ広がり岩に隠れ見張る騎士らは、本当にここにイズイ大陸でもっとも嫌われ怖れられるアーウェルサ・パイトニサム──裏 の魔女のキルシがいるのかと固唾 を呑んだ。
妖魔を使役するどころか、山を切り離し投げつけてきたのだ。騎士らの殆 どはキルシが小娘だとしか知らぬが悪魔の幹部と渡り合う覚悟で腹をくくっていた。
彼らは騎士団長アイリ・ライハラが一刀で巨大な赤竜を斬 り殺したのも眼にした。
たとえ魔女が恐ろしい存在でもアイリ・ライハラの元に一丸となれば、倒せないはずはないと信じる。それに騎士ら数人はアイリ・ライハラの傍 に天使が1人いると言い張った。
天、味方する我ら剣竜騎士団に恐れるものなき。
「──で、どう攻めますアイリ殿ぉ?」
問われ洞窟 から眼を放し横にいる蛮族の総大将ヒルダ・ヌルメラへ振り向くと瞳をうるうるさせ見つめていることにアイリは引いてしまった。
「ヒルダ、お前、眼に砂でも入ったのか?」
「違いますよアイリ殿ぉ。知ってはおりましたが、貴女 様がこんなお強いと目の当たりにして感極まっているのですぅ」
「いや、俺はただの女の子だ。そんなに強くねぇよ」
いきなりヒルダに飛びかかられ両肩をつかまれたアイリは総大将に激しく揺さぶられた。
「なぁにをぉおっしゃるのでぇすかぁ! この大陸広しとはいえ赤竜を1撃で倒せるものなぞ他にいませんともぉ!」
声の大きさにアイリは慌 ててヒルダの口を両手でふさいだ。
「ば、ばか野郎。声がでけぇ。それに赤竜ぐらい親父も1撃で倒せる」
説明しながらアイリはヒルダから手を放した。
「な、なんとお父上はノーブルの騎士団長なのですか!?」
また慌 ててアイリはヒルダの口を両手でふさいだ。
「だぁからぁでけぇ声だすなぁ。親父はただの鍛冶職人だぁ」
「騎士団長殿!洞窟 入り口に人陰が!」
歳嵩 の騎士オイヴァ・ティッカネンに言われアイリはヒルダを放りだし岩陰の縁から洞窟 を盗み見た。見覚えのある頭に包帯を巻いた長い黒髪の小娘がそこにいた。
裏 の魔女のキルシ!
攻め手をあぐねいていたら向こうから出て来やがった。
キルシは周囲を見回し始め何かを探している風に見えた。たぶん討伐隊の姿を探しているのだろうとアイリは思った。山を投げつけ、山道に狂戦士 や赤竜を遣 わしたぐらいだ。討伐隊 の動きなど手に取るようにわかっていたのだ。
だからもう着くころだと見張っている。
「アイリ殿ぉ、石を投げつけ出方を見ましょう」
アイリに顔を寄せて岩陰から洞窟 の方を見てるヒルダがそう提案しアイリは眼を丸め驚いた。
「おい、あそこまで闘技場 の端から端まで以上あるぞ」
「なんのそれくらい」
そう言ってヒルダは2人の足元に落ちている瓜 ほどの石を鷲掴 みにして拾い上げ振りかぶった。
アイリは眼が点になった。
石は届くどころか届きすぎて洞窟 の入り口からかなり高い山肌に命中し、それが派手に転がり落ちた。
その音に裏 の魔女のキルシは振り向き山肌を仰ぎ見た。1個の落石が次々に石を弾いてあっという間に土石流になりキルシが慌 てて山から逃げだした。
「ぷぷぷっ、お前、石1つであの魔女倒せるんじゃねぇ?」
アイリは口元に手のひらをあて忍び笑いをもらしそう総大将に告げた。
土石流がおさまると、そこから離れたキルシはアイリらに背を向け中腹からチョン切れた山の頂 をじっと見つめ何かを探し続けた。
「あいつ、俺たちがあの切れた山の上にいると思ってるぞ」
アイリがそう言うとヒルダは先ほど投げた石よりも大きな樽 半分ほどの岩にしがみついた。
「アイリ殿ぉ、キルシが背を向ける今が絶好の好機ぃいい! こいつを投げつけまぁ────す」
そう宣言し腕と足を震わせヒルダはその岩を頭上に持ち上げると助走つけて身体を前折りにし一気に投げ上げた。
いきなり裏 の魔女のキルシのすぐ横にどでかい岩が落ちてきて魔女は両手片足を振り上げ驚いた。
駄目じゃん。掠 りもしないじゃん、とアイリは眼を細め無表情になった。
いきなりミルヤミ・キルシは振り向くとアイリ達が隠れる大岩へ右腕振り上げ指さし怒鳴った。
「貴様らがぁそこにいるのは最初かぁらぁお見通しだぁ!」
岩陰に隠れそれを見ていたアイリ・ライハラは裏 の魔女のキルシはこんなに阿呆 だったかと眉根寄せて出て行くべきかと迷った。
城の敷地ほどに離れ広がり岩に隠れ見張る騎士らは、本当にここにイズイ大陸でもっとも嫌われ怖れられるアーウェルサ・パイトニサム──
妖魔を使役するどころか、山を切り離し投げつけてきたのだ。騎士らの
彼らは騎士団長アイリ・ライハラが一刀で巨大な赤竜を
たとえ魔女が恐ろしい存在でもアイリ・ライハラの元に一丸となれば、倒せないはずはないと信じる。それに騎士ら数人はアイリ・ライハラの
天、味方する我ら剣竜騎士団に恐れるものなき。
「──で、どう攻めますアイリ殿ぉ?」
問われ
「ヒルダ、お前、眼に砂でも入ったのか?」
「違いますよアイリ殿ぉ。知ってはおりましたが、
「いや、俺はただの女の子だ。そんなに強くねぇよ」
いきなりヒルダに飛びかかられ両肩をつかまれたアイリは総大将に激しく揺さぶられた。
「なぁにをぉおっしゃるのでぇすかぁ! この大陸広しとはいえ赤竜を1撃で倒せるものなぞ他にいませんともぉ!」
声の大きさにアイリは
「ば、ばか野郎。声がでけぇ。それに赤竜ぐらい親父も1撃で倒せる」
説明しながらアイリはヒルダから手を放した。
「な、なんとお父上はノーブルの騎士団長なのですか!?」
また
「だぁからぁでけぇ声だすなぁ。親父はただの鍛冶職人だぁ」
「騎士団長殿!
攻め手をあぐねいていたら向こうから出て来やがった。
キルシは周囲を見回し始め何かを探している風に見えた。たぶん討伐隊の姿を探しているのだろうとアイリは思った。山を投げつけ、山道に
だからもう着くころだと見張っている。
「アイリ殿ぉ、石を投げつけ出方を見ましょう」
アイリに顔を寄せて岩陰から
「おい、あそこまで
「なんのそれくらい」
そう言ってヒルダは2人の足元に落ちている
アイリは眼が点になった。
石は届くどころか届きすぎて
その音に
「ぷぷぷっ、お前、石1つであの魔女倒せるんじゃねぇ?」
アイリは口元に手のひらをあて忍び笑いをもらしそう総大将に告げた。
土石流がおさまると、そこから離れたキルシはアイリらに背を向け中腹からチョン切れた山の
「あいつ、俺たちがあの切れた山の上にいると思ってるぞ」
アイリがそう言うとヒルダは先ほど投げた石よりも大きな
「アイリ殿ぉ、キルシが背を向ける今が絶好の好機ぃいい! こいつを投げつけまぁ────す」
そう宣言し腕と足を震わせヒルダはその岩を頭上に持ち上げると助走つけて身体を前折りにし一気に投げ上げた。
いきなり
駄目じゃん。
いきなりミルヤミ・キルシは振り向くとアイリ達が隠れる大岩へ右腕振り上げ指さし怒鳴った。
「貴様らがぁそこにいるのは最初かぁらぁお見通しだぁ!」
岩陰に隠れそれを見ていたアイリ・ライハラは