第16話 抜き技
文字数 1,460文字
自分の投げた長剣 がアバドンの黒い額に突き立ち煉獄 最下層の王がもんどりうってひっくり返ると、アイリ・ライハラは傍 にいる兵士らの剣 2口 を引き抜き迫った。
「こ、小癪 な! 我は奈落王! 身の程を────げぇ!」
額から引き抜いた長剣 を投げ捨てサタンさえ閉じ込める力持つ大王が立ち上がると迫ってきた女騎士がまたもや額に剣 を突き立てた。
倒れたアバドンに跨 がりアイリ・ライハラはぶすぶすと顔に剣 を突き立て始め一気に闇の王が身を起こすとアイリ・ライハラは跳び退 いた。
「ちょ、調子にのりおって人間風情が」
その捨てぜりふを無視してアイリ・ライハラは一兵卒の剣 を振りかぶりアバドンは両腕振り上げ顔を庇 った。
「ま、まだ刺したらぬかぁ!?」
「俺、あんたに怨 みねぇけれど、王妃 がやれと言ってるし、黙ってると片っ端に苦悩の河 に連れて行きそうじゃん」
言い切りアイリ・ライハラは己の長剣 を引き抜き手首と指の動きで身体の周囲に刃口 の弧を素早く描いた。
「お、お前、我があくどいように聞こえるぞ! そもそも黄泉落ちした連中を連れ帰ったのはあの玉座に座る女主 が道理をそれた────」
闇の王は後ろに右腕を振り上げ王妃 を指差した。
「知らん!」
寸秒件 の女がアバドンの背に言い切りアバドンは振り向いて指摘した。
「言い逃れるかぁ! お前が配下らに命じて──」
「知らん!」
「地の底のおっさん! でっけぇ糞が知らんって言ってるじゃん」
アイリ・ライハラに言われ闇の王は顔を振り戻した。
「じゃ、じゃあ誰がぁ!?」
「俺────」
そう告げアイリ・ライハラは自分を指差した。
「き、きさまぁかぁ!?」
「一々確認するなよ。面倒くせぇ。俺だよ。俺。ご一行様へ帰り道教えたのも案内したのも俺だぁ」
それを聞いて奈落王の目が座った。
「なら真っ先に貴様を苦悩の河 に放り込む。続けて煉獄 を抜け出したものらすべてを────ひぃいいいい!?」
取り囲んでいる騎士や兵士らが一斉に斬 りかかりアバドンは一気に跳ね飛ばし空を人が舞った。
「お、お前ら地獄の主 がもの言ってる時には大人しく────ひぎぃいいい」
跳ね上がられた男らの下をさらに遠巻きにしていた兵士らが剣 振り上げアバドンへ群がった。
2度はね飛ばされる兵士らを見ながら御輿 玉座に座る王妃 イルミ・ランタサルが膝 を叩いて笑い声を上げた。
「な、なんちゅう連中だぁ! 人の言うことは聞くように育てられてねぇのかぁ!」
喚 き散らす闇の王へ三度兵士らが剣 構え上げ迫ると蹴散らしていて気づいた。
あの大見得切ってた若い女騎士がいない。
見まわす冥府の大王が風切り音を耳にして顔を上げると剣 を振りかぶり飛び下りてくるアイリ・ライハラが見えた。
ぶすっ!
飛び下りてきたアイリ・ライハラに両肩に乗られた膝 の勢いで、額を貫 かれがっくりと両の膝 を地面に落としたアバドンは仰 け反 って仰向けにひっくり返った。
「口ほどにもねぇ!」
アイリ・ライハラに言い捨てられ3度額を貫 かれた闇の王がいきなりその刃 を片手でつかんで引き抜き言い放った。
「舐 めるなよ。人間風情が!」
跳び退 いた大将の代わりに取り囲んでいる30あまりの騎士や兵士らが駆け寄りよってたかって闇の王を串刺しにした。
だがそれを見ていたアイリ・ライハラはこれで片が付いたなど甘い思いを抱かなかった。捕らえたサタンも何度も刺して斬ったが復活してきた。
数十口 の剣 に嬲 られそれらを弾き返した冥府の王は、まず手近な兵士の項 をつかみ勢いつけて魂 を引き抜いた。
その抜かれる様を見た兵士らは驚いて一斉に後退 さった。
「こ、
額から引き抜いた
倒れたアバドンに
「ちょ、調子にのりおって人間風情が」
その捨てぜりふを無視してアイリ・ライハラは一兵卒の
「ま、まだ刺したらぬかぁ!?」
「俺、あんたに
言い切りアイリ・ライハラは己の
「お、お前、我があくどいように聞こえるぞ! そもそも黄泉落ちした連中を連れ帰ったのはあの玉座に座る
闇の王は後ろに右腕を振り上げ
「知らん!」
寸秒
「言い逃れるかぁ! お前が配下らに命じて──」
「知らん!」
「地の底のおっさん! でっけぇ糞が知らんって言ってるじゃん」
アイリ・ライハラに言われ闇の王は顔を振り戻した。
「じゃ、じゃあ誰がぁ!?」
「俺────」
そう告げアイリ・ライハラは自分を指差した。
「き、きさまぁかぁ!?」
「一々確認するなよ。面倒くせぇ。俺だよ。俺。ご一行様へ帰り道教えたのも案内したのも俺だぁ」
それを聞いて奈落王の目が座った。
「なら真っ先に貴様を
取り囲んでいる騎士や兵士らが一斉に
「お、お前ら地獄の
跳ね上がられた男らの下をさらに遠巻きにしていた兵士らが
2度はね飛ばされる兵士らを見ながら
「な、なんちゅう連中だぁ! 人の言うことは聞くように育てられてねぇのかぁ!」
あの大見得切ってた若い女騎士がいない。
見まわす冥府の大王が風切り音を耳にして顔を上げると
ぶすっ!
飛び下りてきたアイリ・ライハラに両肩に乗られた
「口ほどにもねぇ!」
アイリ・ライハラに言い捨てられ3度額を
「
跳び
だがそれを見ていたアイリ・ライハラはこれで片が付いたなど甘い思いを抱かなかった。捕らえたサタンも何度も刺して斬ったが復活してきた。
数十
その抜かれる様を見た兵士らは驚いて一斉に