第3話 虚々実々
文字数 2,124文字
アイリ・ライハラはソファに寝そべるデアチ6位のエステル・ナルヒの反応を見たかった。
物腰柔らかだが、顔中
アイリが腰に下げた
手首をぷい。
「あっちちちちち!」
少女は
「きさんじなもんだねぇ。しんござがいけありんせん事をするからどすえ。薬になりんしたかえ」
(:ダメだね。やたらと騎士がいけない事をするから。
アイリは意味が分かったような気がして火傷した指を振りながら言い返した。
「やいナルヒ! お前騎士団長にこんな扱いするんかい!?」
デアチ国第6騎士は
「かんらからから」
その笑い声が気に
「アイリ・ライハラ、お前の負けだよ」
女騎士ヘルカ・ホスティラに言われ少女はキッと振り向いた。
「ナルヒ殿、まだアイリ・ライハラは騎士団長としても、人としても
「何とでもお言いなんし。しんござはこれでありんすから 嫌いなんでありんす」
(:なんとでも言うがよい。騎士はこれだから嫌いなのよ)
アイリはヘルカから『けしからぬ』と言われたようで腹が立ち、ナルヒからも否定されたようで向かっ腹立った。
その少女にデアチ国第6騎士が
「
(:あんた──
いきなりアイリ・ライハラが飛びかかり、エステル・ナルヒは片足を振り上げピンヒールで顔を押さえた。
「お前殺す! 絶対殺す!」
顔をハイヒールでぐりぐりされ少女は真っ赤になりまくし立てた。
「おいこらぁ、エステル! てめぇ外にでぇろぉ!」
アイリがピンヒールから逃れようとすると、エステルはヒョイと足の向きを変える。
「たかだかぁ6位だぁろうがぁ! 2位と3位、4位を俺ぁ倒したんだぞぉ!」
エステルは足首を
「なんざんす?
(:何なの?
こいつぜってい馬鹿にしてやがる! アイリは必死になってエステルの足を
「
「やだぁ」
ヘルカが眉根を寄せて苦笑いした。
「エステル・ナルヒ殿、失礼つかまつる」
ヘルカはデアチ国第6騎士にそう告げるなり片腕でアイリ・ライハラを脇に抱きかかえ、じたばたしだした少女に構わず部屋を出た。
「放せヘルカ! 放しやがれぇ!」
「アイリ、
ヘルカが顔を離すとアイリは下唇を噛みしめ女騎士を
「短絡な! あなたはまるで猿山のボスか!? この国の騎士すべてを試すつもりなのか?」
さぁ、猿山の──
アイリはショックを受け
「そんな時間はないでしょ。イルミ王女から貴公はこの国の剣竜騎士団を
「力でねじ伏せる」
アイリがぼそりと言うとヘルカは少女の額に人さし指を押しつけた。
「ここをお使いなさい」
ぶん! ごっちん!
いきなりアイリはヘルカへ頭突きを喰らわせた。
なっ! なんて硬い頭だ!
思いっきり
「馬鹿か、お前は! 知恵を
怒鳴られ下唇を突きだした少女を見てノーブル国リディリィ・リオガ騎士団第3位の女騎士は本当に猿のようだと思った。