第5話 紛(まご)うことなき
文字数 1,814文字
眼の前のスケルトン5体が邪魔になったが薙 ぎ払うとその先のイルミ・ランタサルをも大怪我を負わす懸念が意識を覆 った。
黒骸骨の振るう剣 すべてを打ち返し、2体を蹴り倒したアイリ・ライハラは残り3体が振り下ろす刃 をまた弾き飛ばしそいつらを肩で押しきり突き抜ける。馬8頭先で倒した荷馬車を背にイルミ王女が3体のスケルトンに追いつめられていた。
頭蓋骨越しに向けたイルミ・ランタサルの表情が怖じけているどころかアイリと視線が絡んだ瞬間、藪睨 みで微笑んだ。
「来なさいアイリ・ライハラ!!」
「シックス・ステップ!!」
答えるように少女が吐き捨てた矢先、群青の髪がグンと引き伸ばされ蒼白い稲妻になった須臾 、イルミ・ランタサルを取り囲んだ黒骸骨すべての背後で踊り狂うと頚椎 が寸断しその場にガラガラと音を放ち崩れ落ちた。
直後、ジグザグの雷光が王女の前で集束すると彼女の前に背を向けた近衛兵副長が長剣 を構え辺りを睨 みながら見回し声をかけた。
「イルミ! 怪我は!?」
「あなたがいてくれるのに怪我するわけないじゃないですか!」
イルミ・ランタサルは眼の前で揺れ動く青い宝石のような髪を見つめ微笑みながら瞳を細め思った。
この子は紛 う事なき私 の戦士 ────喩 えあのような魔物が一千どころか万の数来たとしても心乱されはしない。
少女が顔を振り向けたずっと先へイルミ王女も視線を振り向けると女騎士ヘルカ・ホスティラが11体のスケルトンに苦戦していた。
「お行きなさいアイリ! ヘルカを助けてあげて!」
「ここにいろよ、イルミ! すぐ戻る!! シックス・ステップ!!」
そう言い残し取り囲まれた女騎士の方へ群青の雷光が突っ走った。その稲妻がヘルカ・ホスティラを取り囲んだ黒骸骨らの後ろを縦横無尽に駆け踊る。その光景にイルミ・ランタサルは決心した。
アイリ・ライハラという軍団に匹敵する特別な少女に忠誠を誓わせるには何をすれば良いか。
助け出されたヘルカは他の苦戦してる騎士の元へ駆けて行く。その背後で少女は森の方から次々に現れる魔物に向き直ると何かを叫び長剣 を凄まじい速さで振り切った。
月明かりの下、少女から森へ瀑布のような多量の土埃 が広がり走ると、わらわらと出てきていたスケルトン数十がバラバラに砕け防具と武器を撒き散らし、その背後で伐り倒れる木々と共に崩れ落ちた。
瞬間をつぶさに見ていた一国の王女は腰の横に下ろした右手の指を順に妖しく折り曲げては伸ばしながら隣国ウチルイを挟 み長年ちょっかいを出してくる大国デアチと本気で一戦交える気構えになった。
急激にスケルトンの数が減りだし、刃 のぶつかる音が疎 らになると、剣 を構えた6人の騎士とアイリとイラが王女のまわりに後退 り防御陣形を作った。
残った黒骸骨がそろったようにその場に崩れ落ちても彼らは家の背後の影や森に伸びる暗い闇に用心する視線を向け続けた。
「怪我をしたものは!?」
ラハナトス騎士団長が問うと返された声に怪我人はいなかった。
「皆 、見事な戦いぶりでした! 魔物は今宵 もう襲っては来ないでしょう!」
そうイルミ王女が労 うと、それぞれが剣 を収めた。
森の奥から村の通りを見つめていた双眼が木々の合間の暗闇に下がり始めた。
近隣11の村人を掠 い生みだした尖兵が事もなく倒されてしまった。
たかだか8人の戦士にこうも手こずるとは思いもしなかった。
いいや、8人ではない。
やはりあの蒼 髪の娘1人が攻める10のうち8以上を易々と倒している。
あれは、魔石を埋め込んだ大熊さえ一刀で斬り殺した。
だが──お前のその力、奪う術を用意したのだとその闇に立つものは暗がりの中で口角を吊り上げ醜く笑うとその顔左半分が枝葉の間から差し込んだ月光に照らされた。
アーウェルサ・パイトニサム──裏の魔女キルシは瞳を細め森の奥へ溶け込んだ。
黒骸骨の振るう
頭蓋骨越しに向けたイルミ・ランタサルの表情が怖じけているどころかアイリと視線が絡んだ瞬間、藪
「来なさいアイリ・ライハラ!!」
「シックス・ステップ!!」
答えるように少女が吐き捨てた矢先、群青の髪がグンと引き伸ばされ蒼白い稲妻になった
直後、ジグザグの雷光が王女の前で集束すると彼女の前に背を向けた近衛兵副長が
「イルミ! 怪我は!?」
「あなたがいてくれるのに怪我するわけないじゃないですか!」
イルミ・ランタサルは眼の前で揺れ動く青い宝石のような髪を見つめ微笑みながら瞳を細め思った。
この子は
少女が顔を振り向けたずっと先へイルミ王女も視線を振り向けると女騎士ヘルカ・ホスティラが11体のスケルトンに苦戦していた。
「お行きなさいアイリ! ヘルカを助けてあげて!」
「ここにいろよ、イルミ! すぐ戻る!! シックス・ステップ!!」
そう言い残し取り囲まれた女騎士の方へ群青の雷光が突っ走った。その稲妻がヘルカ・ホスティラを取り囲んだ黒骸骨らの後ろを縦横無尽に駆け踊る。その光景にイルミ・ランタサルは決心した。
アイリ・ライハラという軍団に匹敵する特別な少女に忠誠を誓わせるには何をすれば良いか。
助け出されたヘルカは他の苦戦してる騎士の元へ駆けて行く。その背後で少女は森の方から次々に現れる魔物に向き直ると何かを叫び
月明かりの下、少女から森へ瀑布のような多量の
瞬間をつぶさに見ていた一国の王女は腰の横に下ろした右手の指を順に妖しく折り曲げては伸ばしながら隣国ウチルイを
急激にスケルトンの数が減りだし、
残った黒骸骨がそろったようにその場に崩れ落ちても彼らは家の背後の影や森に伸びる暗い闇に用心する視線を向け続けた。
「怪我をしたものは!?」
ラハナトス騎士団長が問うと返された声に怪我人はいなかった。
「
そうイルミ王女が
森の奥から村の通りを見つめていた双眼が木々の合間の暗闇に下がり始めた。
近隣11の村人を
たかだか8人の戦士にこうも手こずるとは思いもしなかった。
いいや、8人ではない。
やはりあの
あれは、魔石を埋め込んだ大熊さえ一刀で斬り殺した。
だが──お前のその力、奪う術を用意したのだとその闇に立つものは暗がりの中で口角を吊り上げ醜く笑うとその顔左半分が枝葉の間から差し込んだ月光に照らされた。
アーウェルサ・パイトニサム──裏の魔女キルシは瞳を細め森の奥へ溶け込んだ。