第11話 星回り
文字数 1,782文字
ノーブル国の領地を南下し出立から2週間かけてアイリ・ライハラ一行はイモルキへの国境 を越えた。
イモルキに入ってからは街道を避け警戒しながら馬を進めたので一日の足は遅くなったが警邏隊 と衝突することもなく静かな行軍だった。
先を見つめるアイリが左手の拳 を差し上げ馬を止めたので皆 は倣 い緊張の中、騎士団長の指示を待った。
「下馬!」
アイリが囁 き声で命じると皆 は馬を下りヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイがアイリの傍 に駆け寄った。
「近衛兵が10人ほど野営している」
そうアイリが言うとヘルカとテレーゼが背丈の高い雑草から顔を上げ東を遠見した。
「よく10人だとわかるな。歩哨 もいないし哨戒 してるようには見えない」
ヘルカが騎士団長に意見した。
「もう少し多い。12人はいる。警備に出されたが問題もないのでのんびりしてるんだろう」
奇襲をかければ騎馬が優勢なのは歴然としていた。だが一人でも逃せば次は大軍と渡り合うことになる。
「馬を下げ南から迂回しよう」
それは臆病風に吹かれたのではなく、極力無駄な戦いを避けようとする姿勢だった。味方は9名でも敵は数万いるのだ。消耗戦になれば負けは見えていた。
アイリらは馬を曳 き南西へと大回りすると大きく曲がって東へと馬を進めた。
イモルキは冬場も比較的温暖で草原の雑草は背が高い。だが乗馬した姿は遠くからでも目立ってしまう。
アイリ達は迂回した先でまた別な哨戒 部隊と遭遇したが、これも難を避けた。
逸 る気持ちのあまり武勇に走ると1手で勝ち次手で負けてしまう。そのじりじりした思いを皆 はアイリ・ライハラから感じ取り好き勝手なことを言い出さなかった。
その分、敵の本拠地で大暴れすればお釣りがくる。
1人では負けてしまう。今は8人を温存すべきだ。
それから3日をかけアイリ一行は城都まで1日と迫った。
野に杭を並べるように打ち込んである。
塀のように柵を張り巡らせ一カ所門がある傍 には矢倉が立って街道から上都する通行人を改めている関所に遭遇した。
「あんな門、潰 すのも容易 いぞ」
ノッチに言われアイリは迷った。野に連なる柵は高く太い幹を組んで造ってある。関所を避け離れた場所の柵を壊すにも苦労しそうだった。
だが関所は城都にも近くすぐに兵や騎士が蝗 大群のように押し寄せてくるだろう。
アイリは秘技スーパー・ソニック・ライトニングでなんとか柵を破壊できるだろうと思った。駄目ならノッチに壊させる。
だが壊した柵はすぐに見つかり追っ手との時間勝負になるのは見えていた。
今、関所を破りこの場で援軍と一戦交え屈するか、追っ手との時間競争に追われ負けるか、アイリは熟考し少しでも可能性の高い後者にした。
追われても捕まるとは限らない。
アイリらは矢倉の注意を引かないように遠ざかり回り込んで野に連なる柵に迫り、秘技スーパー・ソニック・ライトニングを放った。
頑丈そうに見えた木を組み合わせた柵が粉みじんになり、近衛兵が駆けつける前にそこから一行はさらに王都へと向かった。
夕刻9人は馬を野に放ちマントに身を隠し城都の跳ね橋を歩いて街へ入った。
「活気がありますね」
ヘルカがアイリに顔を寄せて囁いた。ノーブル国の城都よりも通行人や業者が多かった。アイリはあまり顔を振らぬよう辺りを注視した。人垣に兵の姿はなくアイリもヘルカも気をゆるした。
「陽も暮れるこの時刻でよくこれだけ人通りがあるな。まるで祭りのようだよ」
アイリが呆 れて舌打ちした。
人が多すぎて警戒しなければならない近衛兵などの接近に気づくのが遅れる。
「夜陰に紛れ城に忍び込みますか」
テレーゼ・マカイが周囲を窺 いながら普通にアイリへ声をかけた。
「今夜決行する。日を改めると追撃隊にいいように追い込まれるぞ」
それで十分だった。9人の士気が一気に高まった。
「アイリ、北の人ごみから騎士が3人来ます。どこかの店に隠れましょう」
そう第4騎士のミカエル・プリンシラが警告した。
アイリ・ライハラが選んだのはパン屋だった。香ばしい香りに誘われたという方が
暖簾をくぐり、若い店員から迎えられアイリ・ライハラの視線にとまったのは同じ歳ごろのその店員の顔ではなかった。
少女はマントの下で腰もののハンドルに手をかけた。
剣飾りに付けている翡翠 のネックレスと同じ細工の首飾りを店員の少女が首に下げていた。
イモルキに入ってからは街道を避け警戒しながら馬を進めたので一日の足は遅くなったが
先を見つめるアイリが左手の
「下馬!」
アイリが
「近衛兵が10人ほど野営している」
そうアイリが言うとヘルカとテレーゼが背丈の高い雑草から顔を上げ東を遠見した。
「よく10人だとわかるな。
ヘルカが騎士団長に意見した。
「もう少し多い。12人はいる。警備に出されたが問題もないのでのんびりしてるんだろう」
奇襲をかければ騎馬が優勢なのは歴然としていた。だが一人でも逃せば次は大軍と渡り合うことになる。
「馬を下げ南から迂回しよう」
それは臆病風に吹かれたのではなく、極力無駄な戦いを避けようとする姿勢だった。味方は9名でも敵は数万いるのだ。消耗戦になれば負けは見えていた。
アイリらは馬を
イモルキは冬場も比較的温暖で草原の雑草は背が高い。だが乗馬した姿は遠くからでも目立ってしまう。
アイリ達は迂回した先でまた別な
その分、敵の本拠地で大暴れすればお釣りがくる。
1人では負けてしまう。今は8人を温存すべきだ。
それから3日をかけアイリ一行は城都まで1日と迫った。
野に杭を並べるように打ち込んである。
塀のように柵を張り巡らせ一カ所門がある
「あんな門、
ノッチに言われアイリは迷った。野に連なる柵は高く太い幹を組んで造ってある。関所を避け離れた場所の柵を壊すにも苦労しそうだった。
だが関所は城都にも近くすぐに兵や騎士が
アイリは秘技スーパー・ソニック・ライトニングでなんとか柵を破壊できるだろうと思った。駄目ならノッチに壊させる。
だが壊した柵はすぐに見つかり追っ手との時間勝負になるのは見えていた。
今、関所を破りこの場で援軍と一戦交え屈するか、追っ手との時間競争に追われ負けるか、アイリは熟考し少しでも可能性の高い後者にした。
追われても捕まるとは限らない。
アイリらは矢倉の注意を引かないように遠ざかり回り込んで野に連なる柵に迫り、秘技スーパー・ソニック・ライトニングを放った。
頑丈そうに見えた木を組み合わせた柵が粉みじんになり、近衛兵が駆けつける前にそこから一行はさらに王都へと向かった。
夕刻9人は馬を野に放ちマントに身を隠し城都の跳ね橋を歩いて街へ入った。
「活気がありますね」
ヘルカがアイリに顔を寄せて囁いた。ノーブル国の城都よりも通行人や業者が多かった。アイリはあまり顔を振らぬよう辺りを注視した。人垣に兵の姿はなくアイリもヘルカも気をゆるした。
「陽も暮れるこの時刻でよくこれだけ人通りがあるな。まるで祭りのようだよ」
アイリが
人が多すぎて警戒しなければならない近衛兵などの接近に気づくのが遅れる。
「夜陰に紛れ城に忍び込みますか」
テレーゼ・マカイが周囲を
「今夜決行する。日を改めると追撃隊にいいように追い込まれるぞ」
それで十分だった。9人の士気が一気に高まった。
「アイリ、北の人ごみから騎士が3人来ます。どこかの店に隠れましょう」
そう第4騎士のミカエル・プリンシラが警告した。
アイリ・ライハラが選んだのはパン屋だった。香ばしい香りに誘われたという方が
暖簾をくぐり、若い店員から迎えられアイリ・ライハラの視線にとまったのは同じ歳ごろのその店員の顔ではなかった。
少女はマントの下で腰もののハンドルに手をかけた。
剣飾りに付けている