第7話 徒党
文字数 2,012文字
「このまま越境しますかぁ!?」
ミカエル・プリンシラに問われアイリは鼻筋に皺 を刻んだ。
「できるだけ南に回り込む。ノーブルの領域を通り越しイルベ連合の国境 際 でイルブイに入る」
言い切りアイリは手綱 を振った。
「遠いです。それだと2週間かかります」
「承知だよ。デアチの大軍が押し寄せる前にイモルキの城都に入れたらいい。混乱を逆手に取るタイミングが難しい。デアチから最短距離をとってみろ俺たちを追撃してくる連中の思うつぼだ。追っ手はないと思うか」
「いえ、剣竜騎士団の連中カンカンでしょう」
第4位騎士の言い分にアイリは鼻を鳴らしたが風にかき消された。
「そうだ! 俺たちが手を出すことでイモルキは先見隊だと思うだろ。大挙して攻める前触れだとバレてしまうだろ。それをデアチの騎士らはゆるせない」
だが、そんなことどうでも良かった。
意趣返しだけが今はすべてで、余興は謎解きだった。
父が追い立てられた理由はなんだ?
その答はイモルキの城に巣くう家臣 らにある。世の中を遠ざけた父の原因をつくった奴ら。
「アイリ────」
ヘルカ・ホスティラが馬を寄せてきた。
少女は無言で振り向いた。
「お前に加担したのだが、王妃 様の不利な状況には────」
アイリ・ライハラは手を振った。
「くるんくるんの不都合にはさせない。それに心配ならなぜ止めなかった」
「貴君が肉親を思うのを身につまされた。父は我 が騎士になるのを反対し続けたが教会の圧力に屈したんだ。最後には祝福してくれたよ」
「そう──よかったじゃん。俺は王家に身売りされたんだよ」
「いや、違う! 貴君は奉公 に出されたのを近衛兵副長に抜擢 され名誉の元に騎士になったではないか」
アイリは唇を歪 めた。
ものの判別もつけられない展開に気づいたら騎士にさせられたんだ。サタンを捕らえたり、魔女討伐 をやらされたり、もう騎士のこなす範疇 を越えている。
だが頼 られ信じる仲間がいるからこそ騎士を続けていた。
正直、王家を護るなんて騎士道を信じてるやつがやればいい。くるんくるんとウルマス国王は守ってしまうけれど。
「騎士団ってなんだよ!? 騎士道ってそんなに偉 いのかよ!?」
「貴君は騎士見習いをえてないからそう思うんだ。騎士を数年やったものでも、10年やったものでも迷うことがある」
「その騎士が親父 を追い詰めたんだぞ!」
ヘルカが下目遣 いにアイリを見つめ強張った顔で絶句した。
「ヘルカ、その話は後回しだ。西の丘から騎兵が10数騎駆け下りてくる。デアチの連中にしては追いつくのが早すぎる」
ヘルカが顔を回しまだ遠いそれらを見つめた。
「アイリ、武装した野盗だ。どうする!?」
「この辺りの治安維持だ! 野盗を行きがけの駄賃でつぶしてゆく!」
「了解した! マイラぁ! 騎士団長に着け! 残りミカエル、カレヴァ、イェッセ、マンネは我 と共に南側から迎え撃つ!」
一斉に御意 の連呼がヘルカに向けられた。
すぐに騎馬が散るとアイリは馬の脚を落とし駆歩 で南東へと馬を回した。それにノッチ、テレーゼ、若き女騎士マイラ・リュリュが馬を合わせた。頭数が少なく歩法を落としたアイリ達の一団に野盗らの騎馬は向きを変え一直線に追いすがってくる。
その迫る連中を馬上で半身振り向いて見たアイリは連中の鎧 や鞍 がバラバラだと気づいた。
間違いなく野盗の集団だ。
丘を乗り越えて下りアイリとノッチはテレーゼと女騎士マイラとに左右に別れ馬をひるがえし剣 を引き抜き待ち構えた。
丘を越えてきた野盗連中は狙った騎馬が左右に別れ待ち構えているのを目にして混乱しながら丘を駆け下りてきた。
瞬殺だった。
アイリとノッチがいきなり6人を斬 り倒し、テレーゼと若き女騎士マイラが3人を斬 り倒した。
野盗らは一気に人数の優位がなくなり6騎が丘を駆け上り逃れ2人が取り残された。その残党をアイリ達4人は一斉に斬 り刻んだ。
逃げた6騎が丘の頂きにでると回り込んできたヘルカ・ホスティラら5騎と鉢合わせになり逃げ場をなくし斬 り結んだ。上位騎士と野盗とでは剣技 のレヴェルが違っていた。寸秒で残った野盗も斬 り倒された。
「馬も武具も死体から盗んだものでは敵うわけがない」
そうヘルカ・ホスティラが言い捨てると皆 は剣 を戻した。
「アイリ殿ぉ! 遺体はどうします?」
第4位騎士ミカエル・プリンシラが騎士団長に尋 ねた。
「晒 しものにしておけ。野盗が減る」
そう丘の上の騎士らに命じてアイリ・ライハラは馬の踵 を返し馬を走らせだし皆 が続いた。
☆(ФωФ)ωの解説☆
馬の足──速さの走らせ方には名称がありそれらを歩法といいます。主にゆっくりな方から、常歩 (110m/分)、速歩 (220m/分)、駆歩 (340m/分)、襲歩 (1100m/分)などがあります。
馬も生き物ですので全力で何時間も走れません。常歩 でも時間ごとに休憩が必要ですし、全力の襲歩 ですと10分ぐらいで馬を休ませる必要があります。
ミカエル・プリンシラに問われアイリは鼻筋に
「できるだけ南に回り込む。ノーブルの領域を通り越しイルベ連合の
言い切りアイリは
「遠いです。それだと2週間かかります」
「承知だよ。デアチの大軍が押し寄せる前にイモルキの城都に入れたらいい。混乱を逆手に取るタイミングが難しい。デアチから最短距離をとってみろ俺たちを追撃してくる連中の思うつぼだ。追っ手はないと思うか」
「いえ、剣竜騎士団の連中カンカンでしょう」
第4位騎士の言い分にアイリは鼻を鳴らしたが風にかき消された。
「そうだ! 俺たちが手を出すことでイモルキは先見隊だと思うだろ。大挙して攻める前触れだとバレてしまうだろ。それをデアチの騎士らはゆるせない」
だが、そんなことどうでも良かった。
意趣返しだけが今はすべてで、余興は謎解きだった。
父が追い立てられた理由はなんだ?
その答はイモルキの城に巣くう
「アイリ────」
ヘルカ・ホスティラが馬を寄せてきた。
少女は無言で振り向いた。
「お前に加担したのだが、
アイリ・ライハラは手を振った。
「くるんくるんの不都合にはさせない。それに心配ならなぜ止めなかった」
「貴君が肉親を思うのを身につまされた。父は
「そう──よかったじゃん。俺は王家に身売りされたんだよ」
「いや、違う! 貴君は
アイリは唇を
ものの判別もつけられない展開に気づいたら騎士にさせられたんだ。サタンを捕らえたり、魔女
だが
正直、王家を護るなんて騎士道を信じてるやつがやればいい。くるんくるんとウルマス国王は守ってしまうけれど。
「騎士団ってなんだよ!? 騎士道ってそんなに
「貴君は騎士見習いをえてないからそう思うんだ。騎士を数年やったものでも、10年やったものでも迷うことがある」
「その騎士が
ヘルカが
「ヘルカ、その話は後回しだ。西の丘から騎兵が10数騎駆け下りてくる。デアチの連中にしては追いつくのが早すぎる」
ヘルカが顔を回しまだ遠いそれらを見つめた。
「アイリ、武装した野盗だ。どうする!?」
「この辺りの治安維持だ! 野盗を行きがけの駄賃でつぶしてゆく!」
「了解した! マイラぁ! 騎士団長に着け! 残りミカエル、カレヴァ、イェッセ、マンネは
一斉に
すぐに騎馬が散るとアイリは馬の脚を落とし
その迫る連中を馬上で半身振り向いて見たアイリは連中の
間違いなく野盗の集団だ。
丘を乗り越えて下りアイリとノッチはテレーゼと女騎士マイラとに左右に別れ馬をひるがえし
丘を越えてきた野盗連中は狙った騎馬が左右に別れ待ち構えているのを目にして混乱しながら丘を駆け下りてきた。
瞬殺だった。
アイリとノッチがいきなり6人を
野盗らは一気に人数の優位がなくなり6騎が丘を駆け上り逃れ2人が取り残された。その残党をアイリ達4人は一斉に
逃げた6騎が丘の頂きにでると回り込んできたヘルカ・ホスティラら5騎と鉢合わせになり逃げ場をなくし
「馬も武具も死体から盗んだものでは敵うわけがない」
そうヘルカ・ホスティラが言い捨てると
「アイリ殿ぉ! 遺体はどうします?」
第4位騎士ミカエル・プリンシラが騎士団長に
「
そう丘の上の騎士らに命じてアイリ・ライハラは馬の
☆(ФωФ)ωの解説☆
馬の足──速さの走らせ方には名称がありそれらを歩法といいます。主にゆっくりな方から、
馬も生き物ですので全力で何時間も走れません。