第4話 虹屋敷
文字数 2,421文字
玄関前の石段左右にある石柱を眼にしてイルミ・ランタサルは顔を引き
何なの!?
石の柱に人が数人巻きつくオブジェが彫り込まれているが、すべて全裸の若い男!
イラ・ヤルヴァの話しに乗って尻を磨くだのトドの睾丸だの作り事でこの国の兵士らを
「どうしたイルミ? 顔が青い」
アイリが横を向いて王女を見上げていた。
「あんた、このオブジェ見て何も気づかないの?」
王女に言われアイリは振り返り石柱を見つめた。
「え? 柱の? あぁ裸の男の──」
「親父の尻を見なれているから何ともない」
ち、父親の尻を!? それはそれで問題あるでしょ! そう思いながらイルミは少女に小声で尋ねた。
「ァィリ──あなたのお父上は──その──娘に
いきなりアイリはイルミ王女の背を平手で
「趣味なわけないじゃん! 親父は風呂上がりに身体が冷めるまで素っ裸でうろうろするから」
「その話──後でくわしく聞かせてくださいなァ!」
イラ・ヤルヴァの横を歩いていたユリアンッティラ
それを列の後ろから女騎士ヘルカ・ホスティラが冷めた眼で見ていて
「公爵ともあろうものが──見苦しい」
それを耳にして騎士団長リクハルド・ラハナトスが彼女に顔を寄せ
「ホスティラ、公爵を刺激するな。今夜、我々も宿を借りるのだ」
それをヘルカは世話になる恩義に
寝るときに扉に
一同が広い吹き抜けのエントランスに入ると正面と左右に中2階の渡り廊下へ3つの階段が繋がっていた。
左右の階段だけは壁にそって湾曲しているが、真っ直ぐな中央階段だけ黒いカーペットが掛けられている。
その中央の真っ直ぐな階段上部の登りきる際の両側手すり外に正面からよく見える角度で大きな円形の金色の
それを見てイルミ王女は眉根に深々と
あの公爵、家の造作を趣味丸出しの
「見てみぃイルミ! あんな大きな
まったく、この小娘! 王女はアイリが気づいていないことに、やっぱり子どもだと思った。
こちらへどうぞ、と男に化けきれていない執事のユリウスがエントランス左の扉を開き通路へ差し招いた。
その廊下へアイリと続きイルミ王女がまず入るといきなり少女の
転がったアイリは上半身を起こし王女へ怒鳴った。
「なにすんだぁ! でけぇ糞がぁ!」
謝罪も説明もなく王女は一番動きの速い女騎士へ命じた。
「ヘルカ・ホスティラ! アイリに目隠しを!」
め、目隠しだぁ!? アイリはイルミ王女が通路に何か美味いものでも見つけてそれを隠そうとしていると思った。その瞬間、少女は横へ身体を倒し王女の脇から通路を見ようとした。
それに合わせイルミ王女はスカートを引っ張り通路を隠した。
「てっ、てめぇ! 何、隠した!?」
問い詰められ王女は腰に両手を当て眼を細め身をのりだした。
「アイリ・ライハラ! 眼が腐るから見ては駄目です!」
ますますもって怪しいと少女は食ってかかる。
「さては、てめぇ! 美味しいものでも独り占めに、し、しようと──」
「美味しい料理なら
王女に宣言され身を引いた寸秒、アイリは後ろから女騎士ヘルカ・ホスティラに目隠しをされてしまい両手も後ろに引っ張られ手首を腰の後ろで結ばれてしまった。
「さあ皆さん、リビングはこの先ですのでどうぞ」
イラ・ヤルヴァの声だとアイリは思った。アイリは誰かに立たされ歩きだした。
「なっ、何だこりゃあぁ!」
ヘルカが素っ頓狂な声を上げた。本気で驚いている。美味いものを見て出す言葉じゃねぇぞと少女は思った。
「うっ!」「ひぇえ!」「うわぁ!」
さ、最初のは騎士団長リクハルド・ラハナトスだぞ。あの肝の据わったおっさんがぁ──何を見て
アイリは生唾を呑み込み、見たいと思った。
立ち止まり足片を振り上げ爪先で目隠しをずり上げようとして『バシッ』と向こう
「お、王女様ぁ! その様なものを!
声は王女付きの
アイリはまたしばらく歩かされたが、他のもの達の緊張感がひしひしと伝わり、廊下に何があるんだと疑問と好奇心が膨れ上がると歩く向きを変えられ背後で扉が閉じた。
すぐに少女は目隠しを外され手を自由にされた。
アイリ・ライハラがいきなり振り向きドアに走ろうとして首を引っ張られ後ろにひっくり返り背中から厚手のカーペットに倒れ込んだ。
少女は自分の首に両手を当てると首輪がついていた。