第20話 雷速(らいそく)
文字数 1,607文字
「お前らの剣技を打ち破りに戻ってきたぞ」
そうアイリ・ライハラに言い放たれ燻し銀の甲冑を身につけた騎士が首だけでなく片腕も繋がっていることを訝しみながら言い返した。
「貴様ぁ、死霊か!?」
「人をゾンビみたく言うな」
ノッチが退きテレーゼに並ぶとアイリへ尋ねた。
「どうやるアイリ?」
「テレーゼはそのままアグネスの護衛! ノッチ、俺とヘルカでその三人組を倒す!」
それを聞いた赤毛の軽装の騎士が笑い声を上げた。
「姉様、青髪──私らを倒すと────」
「また首を刎ねられに来たか。度胸だけは誉めてやるぞ」
燻し銀の甲冑を身につけた騎士がアイリへと言い切るとアイリとヘルカ、ノッチが進み出てきた。
「いいか、ノッチは燻し銀の甲冑、ヘルカは軽装の奴を」
アイリはそう命じ己は双刀の騎士へと向かった。
赤毛の三人組はアイリ一人を取り囲もうとしたが次女と三女はノッチとヘルカに阻まれ歪な形で三人を取り囲み赤毛の騎士らはノッチとヘルカを睨み据えた。
「どうした? かかって来いよ」
アイリは双刀の騎士をけしかけた。
「お前らは勘違いしてる」
双刀の騎士がそう呟くようにアイリに言うといきなり姿が揺らぎ見えなくなった一閃、二口の刃がアイリの頭上から振り下ろされアイリは振り上げた剣一振りで受け止め火花散らした。
「なかなか速いじゃないか────」
そう言い捨てアイリは双刀使いがかなり速いのを認めた。だが殺気でなく打ち込んでくる太刀筋を今度は見切ることができた。
見えるなら防ぐことも攻めることも自在だとアイリは双刀を打ち返した。
片腕と首を刎ねた小娘とメッタ斬りにした大柄の女剣士が生きていることに、三姉妹の長女タルヤ・ジンデルは息を呑んだ。
何かの幻覚かと首を刎ねたはずの小娘の遺体を確かめると遺体がなくなっていた。
どうなっている!? 次女のウネルマが言うように青髪の小娘は死霊────ゾンビの類なのか!?
だが斬り殺す前と寸分違わず────そうか。青髪は青い血をしていた。魔法で護られているのか、まともな身体ではないのだ。だが背丈の高い剣士は赤い血を流していた。
血の色は関係ないと三姉妹の長女タルヤ・ジンデルは結論づけた。
「どうした? かかって来いよ」
挑発する青髪らが三角の陣形を崩すように広がり妹たちの立ち位置を微妙にずらした。
我らが陣形を見抜いたと勘違いするなよ!
「お前らは勘違いしてるよ」
そう呟くように言い捨てた直後、タルヤ・ジンデルは地面につま先を食い込ませて凄まじい勢いで駆け出し二口の剣を振り上げ跳躍すると青髪の頭へ刃打ち込んだ。
眼の前に火花広がり寸秒、「なかなか速いじゃないか────」と言い切られ打ち込んだ剣を打ち上げられタルヤ・ジンデルは地に着いた両足を蹴り込んでバク転し青髪の小娘に間合いを取った。
そうだ。この速さだ! 青髪はそれでもまだ全力を見せていない。だが────。
我の速さこんなものではないぞ!
そうタルヤ・ジンデルは意識した寸秒、四馬身の間合いをイモルキの紅い三連火の長女は一瞬でつめると躰回転させ横様に二口の刃を打ちだした。
魔法による加速に上乗せし回転力の速さで剣打ち込む稲妻の如き刃が貴様の身体引き裂く。
突如両手握る剣のグリップに凄まじい衝撃を感じて目の前で火花広げ双刀の刃が受け流された。
一周、躰回しもう一撃打ち込むかと躊躇した寸秒、青髪は刃切り返し回転する逆側から迎え撃つように襲いかからせてきた。
躰仰け反らせ鼻先のぎりぎりを刃が駆け抜けてゆくのを目で追ったタルヤは地面に剣握る手の腹を着いて側転し間合いを取った。
銀眼が言っていた通り青髪はとんでもない強者だった。
側転からバク転しまた四馬身の間合い取ったタルヤ・ジンデルは青髪から言い切られた。
「さあ、本気でいこうじゃん!」
目の前にいた青髪の少女が残像引き伸ばし姿消した刹那、とんでもない方向から青髪が襲いかかってきた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)