第19話 形勢
文字数 1,767文字
雨だれを漠然 と見つめる。
そこには数百、数千、数万の水滴が入り乱れ協調もなく落ちている。
一滴の雨粒を見つめると他すべてはぼやけ視界の中にあっても脇役となる。
遠い昔、主役でいたいと思い抱いたのに、引き寄せたものはまったく違っていた。
ほら、思い通りの世界が君の前にある。
そう言い放った奴はついぞ姿見せなかった。
あれは何だったのかと聞くこともできず美しいと思ったままの行いに辿 り着いた。
もうそのころには銀盤だの銀眼なぞ通り名がまとわりついていた。
そう我 振るう氷の長剣 は美しい。
それが血を吸い開いた蝶の羽根のように染まるとさらに情欲がいっそう増す。
ああ、我は壊れているのかもしれない。
だって、必死で逃げる後ろ姿に迫り首を刎 ねるのがなにものにも代 え難 く楽しいからだ。
悪だの善 など、どうでもいい。
吹き上げる鮮血が赤から黒になってゆく恍惚感 に痙攣 しそうになる。
さあ、お前たち────────どう逃げ惑う。
いきなり姿現した銀眼の魔女はイルミ・ランタサルの思惑とはあまりにもかけ離れていた。
王妃 守るヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイそれぞれの前に、そうして一塊になったアイリ・ライハラとノッチ、カローンを取り囲むように、それぞれに1人の銀眼の魔女ミエリッキ・キルシが現れ計画がすべて流れ去った。
分身し能力が落ちるなど甘い妄想 で、それぞれの銀眼の魔女は別々のスタンスで王妃 除くそれぞれに全力で斬 りかかってきた。
発作的に反応できた青竜ノッチとアイリ・ライハラが鋭く振り込んでくる氷の刃 に的確に撃ってでて、それに僅 か遅れカローンが拳 振り上げる余裕がまだあった。
テレーゼ・マカイは剣 で防ぐかバンシーの叫び声で氷の刃 を破壊するかを迷ったため遅れを取り、ヘルカ・ホスティラは条件反射のごとく引き抜いた刃 で振り下ろされる氷の刃 を打ち返した。
同時に現出した5人の銀眼の魔女は一人ひとりが服装も違えば振り込んでくる氷の剣 も長さや種類が異なっており、ヘルカ・ホスティラが打ち返した刃 はもはや剣 ではなく女騎士の胸幅はありそうな重量級の大斧 だった。
それらを游 がせた瞳で見回したイルミ・ランタサルは、コレクションを破壊された魔女の怒りの報復だと一瞬考えそれを投げ捨てた。
どの魔女も不気味な笑みを浮かべおり、今まで襲ってきた延長線上の所行なのだと王妃 は理解した。
これは銀眼の魔女にとって遊びていどのことなのだ。
おそらくは価値基準の相違 ────それを押しつけられる方は困惑をともなう大迷惑。
殺人にいたる行為をおこないながらそれを微塵にも理解してない所行は悪意うんぬんの前に野生の肉食獣に襲われているのにも近く、質 の悪いことに肉食獣なら襲う理由が空腹を満たす目的意識ゆえの動機と行動と結果の図式が成り立つが、もしかしたら銀眼の魔女は何かしらの感情を満たすために殺戮 を行うと図式が成り立つ女。
願望は何か!? 原因と結果は何だ!?
殺戮 願望────それならただの殺人鬼。
銀眼の魔女にはその図式の中間に居座る何かがある。それがあの終始浮かべている笑みの理由にもなる何か。
あの魔女は生まれてきたときから殺人鬼としてのレッテルを持っていたわけではない。
何かしらの分水嶺 があったはず。
それを知れば倒す秘策も浮かぶのかもとイルミ・ランタサルは思ったのもつかの間、ヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイが銀眼の魔女に押され始めていた。手をかそうにも短剣1つで何ができようと王妃 は思い2人の枷 にならぬよう逃げ惑った。
「アイリ!我 とカローンで3人を相手する。女騎士と女剣士のかせに行け!」
そうノッチが魔女の猛攻を捌 きながら少女に持ちかけた。
アイリ・ライハラは頷 くと凄まじい勢いでヘルカらの方へ駆け1人の魔女が追おうとするのをノッチは斬り込んでさまたげた。
王妃 が銀眼の魔女には剣 での攻撃が利かぬと口にしていたが、蓋 を開けるとそんなことはなく1体なら余裕で押し切れた。
カローンも拳 だけでなく肘や足を使った攻撃で押し切れたが2人で銀眼の魔女3人を相手するのは五分ごぶとなる。
そうノッチが考えた刹那 、アイリ・ライハラがヘルカ・ホスティラにかかっていた手斧の魔女を刺し貫いて形勢が変わったかに見えた。
そこへさらに5人の銀眼の魔女が現界した。
そこには数百、数千、数万の水滴が入り乱れ協調もなく落ちている。
一滴の雨粒を見つめると他すべてはぼやけ視界の中にあっても脇役となる。
遠い昔、主役でいたいと思い抱いたのに、引き寄せたものはまったく違っていた。
ほら、思い通りの世界が君の前にある。
そう言い放った奴はついぞ姿見せなかった。
あれは何だったのかと聞くこともできず美しいと思ったままの行いに
もうそのころには銀盤だの銀眼なぞ通り名がまとわりついていた。
そう
それが血を吸い開いた蝶の羽根のように染まるとさらに情欲がいっそう増す。
ああ、我は壊れているのかもしれない。
だって、必死で逃げる後ろ姿に迫り首を
悪だの
吹き上げる鮮血が赤から黒になってゆく
さあ、お前たち────────どう逃げ惑う。
いきなり姿現した銀眼の魔女はイルミ・ランタサルの思惑とはあまりにもかけ離れていた。
分身し能力が落ちるなど甘い
発作的に反応できた青竜ノッチとアイリ・ライハラが鋭く振り込んでくる氷の
テレーゼ・マカイは
同時に現出した5人の銀眼の魔女は一人ひとりが服装も違えば振り込んでくる氷の
それらを
どの魔女も不気味な笑みを浮かべおり、今まで襲ってきた延長線上の所行なのだと
これは銀眼の魔女にとって遊びていどのことなのだ。
おそらくは価値基準の
殺人にいたる行為をおこないながらそれを微塵にも理解してない所行は悪意うんぬんの前に野生の肉食獣に襲われているのにも近く、
願望は何か!? 原因と結果は何だ!?
銀眼の魔女にはその図式の中間に居座る何かがある。それがあの終始浮かべている笑みの理由にもなる何か。
あの魔女は生まれてきたときから殺人鬼としてのレッテルを持っていたわけではない。
何かしらの
それを知れば倒す秘策も浮かぶのかもとイルミ・ランタサルは思ったのもつかの間、ヘルカ・ホスティラとテレーゼ・マカイが銀眼の魔女に押され始めていた。手をかそうにも短剣1つで何ができようと
「アイリ!
そうノッチが魔女の猛攻を
アイリ・ライハラは
カローンも
そうノッチが考えた
そこへさらに5人の銀眼の魔女が現界した。