第12話 真相
文字数 1,709文字
「いらっしゃいませ」
首の翡翠 の飾りから少女店員の顔へアイリ・ライハラは視線を游 がせた。
なんでこいつ同じ細工の首飾りをしてるんだ!?
騎士団長はマントの中で握りしめていた腰もののハンドルから手を放しマントから手を出して棚のパンを指さした。
「ど、どのパンがおすすめ────なのか?」
どもりながらアイリは棚向こうにいる店員の首飾りに視線を離せずに尋 ねた。
「こちらのパンは柔らかく甘いですよ」
そう言い少女店員は四角く焼かれたパンを薦めた。
どう見ても首飾りの作りは親父 の細工ものに思えた。
「すまぬが──あなた────その首飾り──どうした?」
少女店員は聞かれたことの意味を一瞬つかみかねて言葉に詰まった。
その動揺にアイリは自分の剣 のハンドルから飾り付けのネックレスを取り外すとマント下から取り出し少女店員を脅さぬようゆっくりと持ち上げて見せた。横からヘルカ・ホスティラがどうしたのだと小声でアイリに尋 ねアイリは左手のひらを見せ黙ってくれと無言で制した。
その宝玉を眼にして少女店員が確かめるように呟 いた。
「クラウス────叔父 ──さま」
「叔父 さま? クラウスはわたしの父だ。わたしはアイリ・ライハラ」
アイリは一瞬かっと頭に血が登って怒りを口にしそうになった。
やっぱり馬鹿親父 は異国に腹違いの娘を隠していたのだ。
「もう一度聞く。その首飾り、どうしたのだ?」
「母の形見──母が、王妃 の母がクラウス叔父 さまに頂いたの」
王妃 だと!? アイリは目眩 を覚えた。よりによって父はイモルキ王室の女王に手を出していたのか。
ふとアイリは小さな時に父に聞いた話しを思いだした。
王家より託された王女アグネスを革命の手より隠し────。
「きみ、アグネスというのか?」
少女店員が頷 いた。
革命の手より隠し!?
「父は、クラウスは王宮に仕えていたのか?」
「クラウス叔父 さまは、父の大事な友で────」
「アイリ、この店員がどうかしたのか?」
様子見ていたヘルカがたまらずもう一度騎士団長に尋 ねた。
「黙って!」
制したアイリはイモルキの王室直属だった魔導師 をクラウスがしていたと酔った勢いで話したことを思いだした。
「父は、クラウスは魔導師 じゃなかったのか!?」
アグネスだと認めた店員が頷 きアイリ・ライハラは色々と繋がり棚に翡翠 飾りを握った手を着いて俯 いた。
革命だと!? 王室転覆の一派から父は王から託されたこの娘を隠していたんだ。こんな城下の喉元の街中に!
「アグネス、どうかしたのかい?」
店奥から出てきた女将 とおぼしき女がマント姿の一団を眼にして青ざめ息を呑んだ。
「待て! 怪しいものじゃない。アグネスを預けたクラウス・ライハラの娘だ」
女将 はすぐに表情を緩めアイリに告げた。
「店に皆さんでいると目立ちます。奥に、奥に入って」
すぐにアイリらは店奥の暖簾 をくぐり抜け居間へと入ると女将 が店番に立ちアグネスが奥の部屋へ入ってきてアイリは連れてきた一同に説明した。
「父は昔、イモルキ王室の宮廷魔導師 をしていて革命の折りにこの娘アグネスを王家から預かりここの家族に預け国外に逃れた────それでいいなアグネス」
アグネスが頷 いた。
「アグネス、わたしはノーブル国リディリィ・リオガ王立騎士団の騎士団長をしている。父の怨嗟 を晴らしにイモルキに密入国してきた。父を追い立てた家臣 や騎士らを倒しに来たんだ。このものらはわたしの配下のもので信頼できるから心配いらない」
「クラウス叔父 さまは御健在なのですか?」
アグネスに問われアイリは苦笑いを浮かべた。
「ぴんぴんしてる。ノーブル国の田舎で鍛冶職人をしてるよ」
テレーゼ・マカイがつとめて落ち着いた口調でアイリに問うた。
「アイリ、イモルキの現政権をひっくり返すなら相当数を倒さなければならず我々では手にあまるぞ」
政権をひっくり返す!?
そうかアグネスを王室に戻すというのか。
アイリ・ライハラは眉根を寄せた。予定外だった。まさか父が関わった王女と巡り会うなど思いもしなかった。テレーゼの言うとおり政権転覆を謀 るなら相当の覚悟がいる。
アイリ・ライハラはテレーゼに顔を向け言い切った。
「成せば成るさ」
首の
なんでこいつ同じ細工の首飾りをしてるんだ!?
騎士団長はマントの中で握りしめていた腰もののハンドルから手を放しマントから手を出して棚のパンを指さした。
「ど、どのパンがおすすめ────なのか?」
どもりながらアイリは棚向こうにいる店員の首飾りに視線を離せずに
「こちらのパンは柔らかく甘いですよ」
そう言い少女店員は四角く焼かれたパンを薦めた。
どう見ても首飾りの作りは
「すまぬが──あなた────その首飾り──どうした?」
少女店員は聞かれたことの意味を一瞬つかみかねて言葉に詰まった。
その動揺にアイリは自分の
その宝玉を眼にして少女店員が確かめるように
「クラウス────
「
アイリは一瞬かっと頭に血が登って怒りを口にしそうになった。
やっぱり馬鹿
「もう一度聞く。その首飾り、どうしたのだ?」
「母の形見──母が、
ふとアイリは小さな時に父に聞いた話しを思いだした。
王家より託された王女アグネスを革命の手より隠し────。
「きみ、アグネスというのか?」
少女店員が
革命の手より隠し!?
「父は、クラウスは王宮に仕えていたのか?」
「クラウス
「アイリ、この店員がどうかしたのか?」
様子見ていたヘルカがたまらずもう一度騎士団長に
「黙って!」
制したアイリはイモルキの王室直属だった
「父は、クラウスは
アグネスだと認めた店員が
革命だと!? 王室転覆の一派から父は王から託されたこの娘を隠していたんだ。こんな城下の喉元の街中に!
「アグネス、どうかしたのかい?」
店奥から出てきた
「待て! 怪しいものじゃない。アグネスを預けたクラウス・ライハラの娘だ」
「店に皆さんでいると目立ちます。奥に、奥に入って」
すぐにアイリらは店奥の
「父は昔、イモルキ王室の宮廷
アグネスが
「アグネス、わたしはノーブル国リディリィ・リオガ王立騎士団の騎士団長をしている。父の
「クラウス
アグネスに問われアイリは苦笑いを浮かべた。
「ぴんぴんしてる。ノーブル国の田舎で鍛冶職人をしてるよ」
テレーゼ・マカイがつとめて落ち着いた口調でアイリに問うた。
「アイリ、イモルキの現政権をひっくり返すなら相当数を倒さなければならず我々では手にあまるぞ」
政権をひっくり返す!?
そうかアグネスを王室に戻すというのか。
アイリ・ライハラは眉根を寄せた。予定外だった。まさか父が関わった王女と巡り会うなど思いもしなかった。テレーゼの言うとおり政権転覆を
アイリ・ライハラはテレーゼに顔を向け言い切った。
「成せば成るさ」