第13話 秘密猫の手
文字数 1,730文字
「とりあえずお前のことは捨て置いてやろう」
手前ぇなんで上から目線なんだよ!
冥府 の苦悩の河 の河守 から告げられアイリ・ライハラは腹立った。
「で、どうやって現世に行く?」
「てめぇ、主 の1人だろ。しかたねぇなぁ。連れていってやるよぉ」
小生意気な餓鬼 が!
小娘に言われカローンは腹立ちを覚えた。
その様 を見ていてヘルカ・ホスティラは鍋 が薬缶 を黒いとあざ笑っているようだと呆れて鼻筋に皺 を刻んだ。
「それじゃあヘルカ、カローンを頼んだぞ」
女騎士は眼を点にした。
こんな爺 を押しつけてアイリはどこへ行くつもりだぁ!?
「おいアイリ、貴殿 は────百歩譲ってだがこんなむさ苦しいオヤジを押しつけてどこに行くつもりだ!?」
歩きだしたアイリは歩みを緩め半身振り向いて応えた。
「もちろんヘルカも現世に帰るんだよ。帰った先でカローンは色々とまごつくだろぉ」
「いや、だからなぜ拙者 がこのオヤジの面倒をみるんだぁ!?」
ヘルカは少しばかり声を荒げた。
「だってお前さん、前の騎士団長リクハルド・ラハナトスの面倒をけっこうみてたじゃん」
「面倒みておらんわ!」
強調し言い返す女騎士にアイリは戻ってきてヘルカの横にいるカローンとヘルカの手をつかんで2人の手を握り合わせ言い切った。
「ほら、相性ぴったしぃ」
握りしめるオヤジの手のひらがみょうに湿っぽくヘルカは慌 てて振りほどいた。
「あ────駄目だめ──テレーゼも俺もオヤジ苦手だから────」
そう言ってアイリはまたカローンの手をヘルカの手に合わさせ握りしめさせた。
「そうか────────ではない!拙者 に押しつけるなぁ!」
アイリは珍しくヘルカが粘るなぁとカローンの両手で女騎士の左手を握りしめさせた。
「ほらオッサン、自分からも頼めよ」
そうアイリに言われカローンは照れ笑い浮かべながら両手の指に力込め頼んだ。
「よろしゅう願います。わしゃぁぬしのよう女子 嫌いではないぞ」
ぞぞぞぉ────と腕を鳥肌が立ち上りヘルカ・ホスティラは顔を引き攣 らせ大げさに腕をブン回し、カローンの手を振りほどいた。
アイリはカローンを連れて行けばけっこうな戦力になると思ったものの別な意味で厄介 かもと思った。
「ほらオッサンついて来いよ」
そう告げアイリが歩き出すとテレーゼとヘルカが慌 てて歩きだし、あとをカローンが付き従った。
迷いの森を半時ほど歩くとアイリがいきなり立ち止まって告げた。
「ここだよ」
そう告げアイリが顎 を振った先を3人は見たが木の幹の間になにもなくテレーゼが尋ねた。
「アイリ、毎度思うが、貴殿に《きでん》にはどの様に見えているんだ?」
「えっ!? あぁ、もやもやした出入り口」
「もやもや!? 蜃気楼のようなですか?」
「見え方関係ねぇじゃん。テレーゼ、通れりゃいいんだよ」
アイリが説明をめんどくさがり入るように促 すとヘルカがまず入りカローンの後にテレーゼが入り最後にアイリが入ると一瞬霞 んだドア枠が見えてかき消えた。
────☆─☆─☆────
アイリが抜けるとそこは真っ暗でひんやりとした狭い場所だった。
だがアイリの髪から広がる仄 かな青い光が他の3人の顔を照らし出した。
「くそう、やっぱり穴底かぁ」
そうアイリがぼやくとテレーゼが見上げ教えた。
「落とし口から70ネフフス(約210m)ほどです」
アイリが見上げると落とし口の明かりが小さな点に見えた。顔を下ろすとアイリの髪の明かりが壁を照らしだした。ぬらぬらとした光り具合でアイリは触れずとも氷壁だと思った。
「どうするんだアイリ?」
ヘルカが尋ねると少女は肩をすぼめた。
「お前ら、なんで穴底にいる? もたもたしてると埋められやせんか?」
カローンが皆 に問うた。
「どつぼ────だよな」
そうアイリ・ライハラがこぼすとカローンがいきなり内壁に拳 打ち込んで腕を引き抜いた。
「どつぼには、こんな手がかりや足がかりはないよな」
冥府 の河守 が一つ目の穴に片つま先を入れて肩よりも低い位置を殴りつけた。
黙って見つめているヘルカに少女が聞いた。
「器用じゃん」
「あのオヤジ、なんだか変だろ。普通、あれだと殴りつける腕に力入らないんだが」
だから秘密兵器なんだよ────とアイリ・ライハラはにやついた。
手前ぇなんで上から目線なんだよ!
「で、どうやって現世に行く?」
「てめぇ、
小生意気な
小娘に言われカローンは腹立ちを覚えた。
その
「それじゃあヘルカ、カローンを頼んだぞ」
女騎士は眼を点にした。
こんな
「おいアイリ、
歩きだしたアイリは歩みを緩め半身振り向いて応えた。
「もちろんヘルカも現世に帰るんだよ。帰った先でカローンは色々とまごつくだろぉ」
「いや、だからなぜ
ヘルカは少しばかり声を荒げた。
「だってお前さん、前の騎士団長リクハルド・ラハナトスの面倒をけっこうみてたじゃん」
「面倒みておらんわ!」
強調し言い返す女騎士にアイリは戻ってきてヘルカの横にいるカローンとヘルカの手をつかんで2人の手を握り合わせ言い切った。
「ほら、相性ぴったしぃ」
握りしめるオヤジの手のひらがみょうに湿っぽくヘルカは
「あ────駄目だめ──テレーゼも俺もオヤジ苦手だから────」
そう言ってアイリはまたカローンの手をヘルカの手に合わさせ握りしめさせた。
「そうか────────ではない!
アイリは珍しくヘルカが粘るなぁとカローンの両手で女騎士の左手を握りしめさせた。
「ほらオッサン、自分からも頼めよ」
そうアイリに言われカローンは照れ笑い浮かべながら両手の指に力込め頼んだ。
「よろしゅう願います。わしゃぁぬしのよう
ぞぞぞぉ────と腕を鳥肌が立ち上りヘルカ・ホスティラは顔を引き
アイリはカローンを連れて行けばけっこうな戦力になると思ったものの別な意味で
「ほらオッサンついて来いよ」
そう告げアイリが歩き出すとテレーゼとヘルカが
迷いの森を半時ほど歩くとアイリがいきなり立ち止まって告げた。
「ここだよ」
そう告げアイリが
「アイリ、毎度思うが、貴殿に《きでん》にはどの様に見えているんだ?」
「えっ!? あぁ、もやもやした出入り口」
「もやもや!? 蜃気楼のようなですか?」
「見え方関係ねぇじゃん。テレーゼ、通れりゃいいんだよ」
アイリが説明をめんどくさがり入るように
────☆─☆─☆────
アイリが抜けるとそこは真っ暗でひんやりとした狭い場所だった。
だがアイリの髪から広がる
「くそう、やっぱり穴底かぁ」
そうアイリがぼやくとテレーゼが見上げ教えた。
「落とし口から70ネフフス(約210m)ほどです」
アイリが見上げると落とし口の明かりが小さな点に見えた。顔を下ろすとアイリの髪の明かりが壁を照らしだした。ぬらぬらとした光り具合でアイリは触れずとも氷壁だと思った。
「どうするんだアイリ?」
ヘルカが尋ねると少女は肩をすぼめた。
「お前ら、なんで穴底にいる? もたもたしてると埋められやせんか?」
カローンが
「どつぼ────だよな」
そうアイリ・ライハラがこぼすとカローンがいきなり内壁に
「どつぼには、こんな手がかりや足がかりはないよな」
黙って見つめているヘルカに少女が聞いた。
「器用じゃん」
「あのオヤジ、なんだか変だろ。普通、あれだと殴りつける腕に力入らないんだが」
だから秘密兵器なんだよ────とアイリ・ライハラはにやついた。