第19話 恋の鞘(さや)放り出し
文字数 2,202文字
夜に
首を
1年前にくるんくるんや自分に言い寄っていた男の扱いとしては酷だと思いヘルカ・ホスティラの付き合う相手探しを思いだした。
「騎士団長、呪いは解けるのでしょうか?」
反対のソファに座るユハナが
「うん、無理だろうな。ウルマス国王のチョーカーは外せることができても国民全員の暗示は解きようがないじゃん。
「はい、なんでしょう」
「ヘルカ・ホスティラは男の眼で見てどう思う?」
「はぁ? ヘルカをですか────」
ユハナが困った表情で考え込んだ。
「お前、つまるなよ。大事なことだよ」
頭後ろをかきながらユハナが応えた。
「騎士団長、怒らないでください。女として見たことがないです」
何か言いかけてアイリが口を
「ヘルカがどうかしたのですか」
アイリが答えずに腕組みして眼を寄せたのでユハナはやっぱりまずいことを言ったと気が動転した。
「いやな、あいつに男とつき合わせたらもっと物腰がやわらなくなるかと────」
「嫌です。
キッパリと断られアイリは困り顔になった。
「誰か──いないかな?」
そんな物好きがいるわけないじゃないかと第2騎士は思った。誰かを言えばそいつから
ヘルカは決して魅力がないわけでなく、何かというと騎士道を持ちだしてくる頭のかたさが困るのだ。それに上背があり騎士団の中では1番背が高い。おまけに腕力自慢ときたら誰が好んでつきあうものかとユハナは思った。
「よ、ヨーナス・オヤラなどいかがと。彼ならリディリィ・リオガ王立騎士団にも日が浅く、ヘルカ・ホスティラによけいな思い入れもないかと」
ヨーナス・オヤラはアイリはよく知っていた。北国デアチへ初めて攻め入った時には若いながらよく活躍して────そこまで思いだしたアイリは震えが走った。
ヘルカ・ホスティラが国王の首を
さすがにヨーナスでは無理が────とアイリが思った矢先にユハナ・マルカマキがしきりに
「彼ならヘルカ・ホスティラが姉さん
「ユハナ、お前、自分じゃなきゃあ誰でもいいんじゃないのか」
続けて何か言おうとした第2騎士がアイリに図星をさされて眼を点にして口をすぼめた。
「ヨーナスは第23位だったよな。したっぱ団員だから確かにヘルカ・ホスティラと親交も浅いし。おいトゥーレ、ヨーナスが
離れた椅子に腰掛け成り行きを聞いていた第7騎士のトゥーレが腰を上げて部屋を後にした。
しばらくしてがちゃがちゃと
呼びつけたヨーナス・オヤラだった。
「嫌です! お断りします!」
アイリは唖然となり何も言えずにいるとユハナ・マルカマキが代弁した。
「ヨーナス、まあここに来て話を聞け。ことはそれからだ」
第23位騎士がユハナのそばに来て突っ立った。
「まあ、俺の横に座れ。騎士団長から直々にお話になられる。すべてを聞いてから意見を述べよ」
ヨーナスが腰を下ろすとアイリが口を開いた。
「ヨーナス、お前第23位だったよな。今年で幾つだ?」
「
ヘルカ・ホスティラは今年21になったばかりだ。3歳違いならいけるかとアイリは思った。
「ヘルカ・ホスティラが
ヨーナスが落ち着きなさげにもじもじしてるのでアイリは
「トイレか?」
「違います。つき合ってる人がいるんです。
あぁ、交際中かとアイリは肩を落とした。それに意思も堅そうなので別なことを頼むことにした。
「ヨーナス、それじゃあお前、恋のキューピットやれ。ユハナ・マルカマキが付き合いたいとヘルカ・ホスティラに伝えろ」
「ちょっと待ったぁああ! 嫌ですと言いましたよね」
ユハナ・マルカマキが
「ユハナ、お前は運がいいぞ。直接申し入れて肩すかしを食らい恥をかかなくてすむんだ。それに騎士団長直々のたのみだ────お前、拒むのか?」
青ざめた第2騎士に決まりだとアイリ・ライハラは一安心した。
デアチ国のファントマ城で
銀眼の魔女を
しかしなぜに南に背を向けると寒気がするんだ。
よもや国王の身になにかあったのかと見当違いな心配をする女21歳だった。