第13話 苦悩
文字数 1,828文字
「どうかされましたか、ホスティラ殿?」
同じ操馬台 に座る同僚の騎士に問われ彼女はハッとして道の外に出そうな2頭立ての馬を道の真ん中へ戻した。
「何でもない。ちょっと早いが手綱 を頼んでいいか?」
「構いません。休んでください」
そう言って彼が手綱 を受け取ると、ヘルカは荷台の外枠にもたれて腕組みをした。
アイリ・ライハラの意見を確かめたくイルミ王女に鎌 を掛けた事を後悔しながら、それ以上に大戦への不安が心を締め上げていた。
火急において騎士団は王室や長老たちを護り、なおかつ戦域の要所に別れて挑み敵兵を殲滅 するのが務め。
いつも果てしない先に思うのは1つ。
我は生き残れるのか。
死にたくないというのが本音。
だから腕を磨きここまで歩いて来た。
デアチと本格的に争えば我が国の兵その7割は死ぬだろう。いいやもっと多い。
あの屈強な娘──アイリ・ライハラはどう思って我に持ちかけたのか。我ならイルミ・ランタサルを止めることができると買い被られたか。
あの娘の怖ろしいほどの力ならたとえ1騎でデアチ精鋭の騎士団すべてを相手にしても王室を守り抜き、己 も戦 をくぐり抜けるだろう。
そのアイリ・ライハラが心配し持ちかけた。
ふとヘルカ・ホスティラはとんでもない事に気づいた。
まさか────。
アイリ・ライハラは己 の身でなく王や王女のみならず、兵すべて、国民すべてを憂 いておるのか!?
それは、いざ大戦 になれば己 が最先鋒────前線で先陣をきるつもりなのでは。
どちらに転んでもあれは代価を払う覚悟。
我と6つ違う小娘は決意の上でイルミ王女の奸計 を阻 もうとしている。
しかし、あの詭弁 使いであるイルミ・ランタサルをどうやって説得せよと。あれは馬鹿ではない。噂 ではどの重鎮をも論破すると何度も耳にしている。
策謀 あってこそデアチに手袋を投げつけるつもりだろう。
ヘルカ・ホスティラが頭を抱え込むと操馬台 で手綱 を握る騎士が心配し始め大声で騎士団長リクハルド・ラハナトスを呼んだ。
すぐに3乗 目を走る騎士団長らの荷馬車が追い上げて来た。
「どうした!?」
「ホスティラ殿の御容態が──」
困惑げな面もちでヘルカが騎士団長らの荷馬車へ顔を向けた。
「違う、騒ぐな! 騎士団長、何でもありませぬ」
眉根を寄せ女騎士が否定する様を眼にしてリクハルドは本気で心配し始めた。騎士団3位の地位にまで昇りつめたヘルカがその様な顔をすると決まってろくでもない事が起きた。
「ヘルカ、貴公本当に顔色が良くないぞ。腹の具合でも悪いのを隠しておるのか?」
「煩 い──ほっといてください。いずれおさまりますゆえ」
赤面してヘルカは己 の剣 に手を乗せ騎士団長を睨 みつけた。
リクハルド・ラハナトスは言葉を選び間違ったかと、まごついた表情を見せ馬車を下げ始めた。
ヘルカ・ホスティラがフードを深めに被り顔を前に向けると1乗 目の荷台に座るアイリ・ライハラが一生懸命にジェスチャーを始めた。
腕を懸命に動かし手の指を様々に開いたり閉じたりを繰り返し、両の人さし指を頭の左右からくるくる回しながら腰へ下ろし、決まって最後にルミ王女を指さす。
イルミ王女の事を何か伝えようとしてるのはわかったが、女騎士は後のことは皆目 見当がつかなかった。
ヘルカは苛々して少女に大声を出した。
「わからぬ! ライハラ! 言いたいことがあるなら大声で言え!」
「考えたか!? どうやってくるんくるんを説得するんだよ!」
そうアイリが告げた直後、ヘルカ・ホスティラは一生懸命アイリを指さし始めた。
「わかんねぇよ! へっぽこ!」
アイリがそう大声で詰 ると、荷物をよじ登ってきたイルミ・ランタサルが馬用鞭 で思いっきり少女の頭を叩 いて怒鳴った。
「煩 いわよ、アイリ!」
アイリ・ライハラは喚 き頭を押さえて荷台から転げ落ち派手な土埃 を上げた。
同じ
「何でもない。ちょっと早いが
「構いません。休んでください」
そう言って彼が
アイリ・ライハラの意見を確かめたくイルミ王女に
火急において騎士団は王室や長老たちを護り、なおかつ戦域の要所に別れて挑み敵兵を
いつも果てしない先に思うのは1つ。
我は生き残れるのか。
死にたくないというのが本音。
だから腕を磨きここまで歩いて来た。
デアチと本格的に争えば我が国の兵その7割は死ぬだろう。いいやもっと多い。
あの屈強な娘──アイリ・ライハラはどう思って我に持ちかけたのか。我ならイルミ・ランタサルを止めることができると買い被られたか。
あの娘の怖ろしいほどの力ならたとえ1騎でデアチ精鋭の騎士団すべてを相手にしても王室を守り抜き、
そのアイリ・ライハラが心配し持ちかけた。
ふとヘルカ・ホスティラはとんでもない事に気づいた。
まさか────。
アイリ・ライハラは
それは、いざ
どちらに転んでもあれは代価を払う覚悟。
我と6つ違う小娘は決意の上でイルミ王女の
しかし、あの
ヘルカ・ホスティラが頭を抱え込むと
すぐに3
「どうした!?」
「ホスティラ殿の御容態が──」
困惑げな面もちでヘルカが騎士団長らの荷馬車へ顔を向けた。
「違う、騒ぐな! 騎士団長、何でもありませぬ」
眉根を寄せ女騎士が否定する様を眼にしてリクハルドは本気で心配し始めた。騎士団3位の地位にまで昇りつめたヘルカがその様な顔をすると決まってろくでもない事が起きた。
「ヘルカ、貴公本当に顔色が良くないぞ。腹の具合でも悪いのを隠しておるのか?」
「
赤面してヘルカは
リクハルド・ラハナトスは言葉を選び間違ったかと、まごついた表情を見せ馬車を下げ始めた。
ヘルカ・ホスティラがフードを深めに被り顔を前に向けると1
腕を懸命に動かし手の指を様々に開いたり閉じたりを繰り返し、両の人さし指を頭の左右からくるくる回しながら腰へ下ろし、決まって最後にルミ王女を指さす。
イルミ王女の事を何か伝えようとしてるのはわかったが、女騎士は後のことは
ヘルカは苛々して少女に大声を出した。
「わからぬ! ライハラ! 言いたいことがあるなら大声で言え!」
「考えたか!? どうやってくるんくるんを説得するんだよ!」
そうアイリが告げた直後、ヘルカ・ホスティラは一生懸命アイリを指さし始めた。
「わかんねぇよ! へっぽこ!」
アイリがそう大声で
「
アイリ・ライハラは