第24話 払拭(ふっしょく)
文字数 1,875文字
翌朝、アイリとノッチは実家をあとにした。
馬を速歩 で歩ませても王都までは半日かかる。
「ノッチ、言葉少なだったな」
「親子の仲を邪魔するものではないと思いまして。良い両親達ではないか」
「まあな。ノッチは親っているの」
ノッチが笑い声をあげるのをアイリは初めて眼にした。
「我の親は主 ただ1人である」
アイリはくそ面白くもねぇと鼻筋に皺 を刻んだ。
「天上人 には悪人はいないの?」
「ルシファー1人ぐらいですな。それよりアイリ、もう少しイラ・ヤルヴァを敬 うことです」
「ああ、イラかぁ。別に馬鹿にはしてないよ。仲がいいだけじゃん」
もっと早くに死んだやつを黄泉 から連れ戻せたらイラ・ヤルヴァを連れ戻したのにとアイリは思った。
「なあ、ノッチ。俺が黄泉 から帰ってこられるのってお前の加護のおかげ?」
「やっと気づいたのですか。あぁ、あなたは────」
いや、もっと前に気づいていたしとアイリは苦笑い浮かべた。
イラだけではない、姉を戻して欲しいと願うテレーゼのためにテレーザ・マカイを、そして母ユリアナをとアイリは思ってつらくなった。
人は掛け替えのない人をしのんで強くなっていくのだろうけれど打ちのめされ立ち直れない人もきっといる。
物心つかない頃に亡くした母と1度は会いたい、甘えたいと思うことがあった。
そういえばイルミ・ランタサルも幼いころ王妃 様を亡くしている。それでもあそこまで強くなった。
背に腹は代えられないということか。
背負うものが違うということか。
つらつらと考えていて昼過ぎにノッチと2人王都に着いた。ウルマス国王への面会を申し出てしばらく待たされ謁見 されることとなり応接間で王と初めて会うこととなり応接間に案内されるとすでにウルマス国王が起きて部屋にいた。
「どうしたアイリ・ライハラよ」
「王よお加減がよろしいようで何よりです」
「昨日の今日で謁見 を申し出るからには重大なことでもあるのか?」
「はい、国民への呪い──それを解くには魔女のことを詳しく知らしめる必要があると知り馳せ参じました」
「そうか。魔女を知れば呪い解けるとな。知るだけでいいのか? で、魔女はいかに?」
「はいウルマス国王様。銀眼の魔女──年の頃、18、9。身長は高く王様と並び、容姿は白髪の長髪で肌は透き通る様な薄い肌色をしてまして、目の色は氷の様な銀色をしています。紫の紅をさした唇でいつも薄ら笑みを浮かべ、着る服はいつも白装束 に白く染めた爪をしております」
「変わっておるな。まさに魔女か。でそちはその魔女と会い何をどのように話した」
アイリは1度喉を鳴らし、魔女の話し方を説明した。
「話し方、珍妙です。イルミ王女言われるには魔女は時制の感覚が曖昧で人の先にあることを過去のように語り、今のことを先々であるように話しますが、それらすら曖昧で意味をつかみかねます」
「やり取りを出来ぬ相手とな。さぞ倒すのが厄介 であっただろう」
「おおよその特徴、しかと理解したぞ。では名を呼んでみよう」
アイリは慌 て止めに入った。
「王様、おまちください。処刑が決まっている囚人で試し安全であるか確かめる必要がございます」
「よし、さっそく手配しよう」
そう告げウルマス国王は手を叩き合わせ侍女 が現れると家臣 の名を告げ呼び寄せた。
すぐに国王は処刑人の中から刑の執行間近いものを選ぶようにと命じアイリ・ライハラに魔女の特徴を紙に書かせそれを処刑人に読ませ魔女の名を最後に読ませるようにと指示した。
アイリは別室で紙に魔女の特徴を書き、それを持って牢 へと国王の家臣 と共に向かった。
その処刑人は文盲であり、アイリが鉄格子 越しに言い含めるように特徴を読み上げ、最後に処刑人に魔女の名を口にさせた。
処刑人は死ななかった。
アイリ・ライハラはその特徴の書かれた紙を家臣 に預け大量に印刷させお触れとして街中に掲示するように頼んだ。
読んだだけで呪いが解けると噂が街中に広がり国民のほとんどがそれを知るところとなったが、中には見ただけで読まず、魔女の名を口にして死にゆくものが出たがどうしようもなかった。
僅 か数日でノーブル国に蔓延 していた呪いは払拭 され事態は終焉 した。
4日間様子を見守っていたアイリとノッチはデアチ国のイルミ・ランタサルの元へ戻ることになった。
アイリは呪詛 のようにイルミ・ランタサルをそそのかす口上を考えながら帰路についた。
父クラウスを追い立てた東の大国イモルキ国に攻め入るのは2週間後になる。
いつもお読みくださりありがとうございます。
1月24日水曜日 ─第4部─ 公開予定です(ФωФ)ノ
馬を
「ノッチ、言葉少なだったな」
「親子の仲を邪魔するものではないと思いまして。良い両親達ではないか」
「まあな。ノッチは親っているの」
ノッチが笑い声をあげるのをアイリは初めて眼にした。
「我の親は
アイリはくそ面白くもねぇと鼻筋に
「
「ルシファー1人ぐらいですな。それよりアイリ、もう少しイラ・ヤルヴァを
「ああ、イラかぁ。別に馬鹿にはしてないよ。仲がいいだけじゃん」
もっと早くに死んだやつを
「なあ、ノッチ。俺が
「やっと気づいたのですか。あぁ、あなたは────」
いや、もっと前に気づいていたしとアイリは苦笑い浮かべた。
イラだけではない、姉を戻して欲しいと願うテレーゼのためにテレーザ・マカイを、そして母ユリアナをとアイリは思ってつらくなった。
人は掛け替えのない人をしのんで強くなっていくのだろうけれど打ちのめされ立ち直れない人もきっといる。
物心つかない頃に亡くした母と1度は会いたい、甘えたいと思うことがあった。
そういえばイルミ・ランタサルも幼いころ
背に腹は代えられないということか。
背負うものが違うということか。
つらつらと考えていて昼過ぎにノッチと2人王都に着いた。ウルマス国王への面会を申し出てしばらく待たされ
「どうしたアイリ・ライハラよ」
「王よお加減がよろしいようで何よりです」
「昨日の今日で
「はい、国民への呪い──それを解くには魔女のことを詳しく知らしめる必要があると知り馳せ参じました」
「そうか。魔女を知れば呪い解けるとな。知るだけでいいのか? で、魔女はいかに?」
「はいウルマス国王様。銀眼の魔女──年の頃、18、9。身長は高く王様と並び、容姿は白髪の長髪で肌は透き通る様な薄い肌色をしてまして、目の色は氷の様な銀色をしています。紫の紅をさした唇でいつも薄ら笑みを浮かべ、着る服はいつも
「変わっておるな。まさに魔女か。でそちはその魔女と会い何をどのように話した」
アイリは1度喉を鳴らし、魔女の話し方を説明した。
「話し方、珍妙です。イルミ王女言われるには魔女は時制の感覚が曖昧で人の先にあることを過去のように語り、今のことを先々であるように話しますが、それらすら曖昧で意味をつかみかねます」
「やり取りを出来ぬ相手とな。さぞ倒すのが
「おおよその特徴、しかと理解したぞ。では名を呼んでみよう」
アイリは
「王様、おまちください。処刑が決まっている囚人で試し安全であるか確かめる必要がございます」
「よし、さっそく手配しよう」
そう告げウルマス国王は手を叩き合わせ
すぐに国王は処刑人の中から刑の執行間近いものを選ぶようにと命じアイリ・ライハラに魔女の特徴を紙に書かせそれを処刑人に読ませ魔女の名を最後に読ませるようにと指示した。
アイリは別室で紙に魔女の特徴を書き、それを持って
その処刑人は文盲であり、アイリが
処刑人は死ななかった。
アイリ・ライハラはその特徴の書かれた紙を
読んだだけで呪いが解けると噂が街中に広がり国民のほとんどがそれを知るところとなったが、中には見ただけで読まず、魔女の名を口にして死にゆくものが出たがどうしようもなかった。
4日間様子を見守っていたアイリとノッチはデアチ国のイルミ・ランタサルの元へ戻ることになった。
アイリは
父クラウスを追い立てた東の大国イモルキ国に攻め入るのは2週間後になる。
いつもお読みくださりありがとうございます。
1月24日水曜日 ─第4部─ 公開予定です(ФωФ)ノ