第6話 クエスト
文字数 1,669文字
夜半の興奮のせいで寝つけずに朝を迎えたアイリ・ライハラは荷馬車の
離れた後ろを付いてくる騎士らの荷馬車も時々道を外れかかるのか、
「町が見えてきました! あそこで休みましょう」
操馬台でイラの横に座るイルミ・ランタサルがそう宣言した。
へえへえ、町でおくつろぎくだせぇ、と少女は聞き流そうとしてハタと気づいた。
イルミ王女がうろつきまわると護衛についてまわらなければならない。
めんどくさぁ!!
王女がうろつきまわらないように、縛ってしまうか!
いやいや、後が恐ろしい。
アイリは口をへの字に曲げ、荷物の脇から町を眺めた。
大きい!
自分たちのノーブル国のどの町よりも広がりがある。
だいたいからして、隣国ウチルイに来たことすら初めてなので少女は驚いた。
町が大きいということは、それだけイルミ王女が色んなところに行きたがるということ。付いてまわることを考え少女は顔をしかめた。
町での護衛はとても農民や商人に見えない騎士団に任せ、自分はずらかろうとアイリは考えた。イラはついて来るかもしれないが邪魔にはならない。
どうやってイルミ・ランタサルから逃げだそうと考えていると、思いのほか早く町に入ってしまった。
人ばかりでなく、
どこに入るのだとアイリが顔を向けたら、『スーグラフティ・メン』と玄関脇に下がった看板に書かれているのを眼にした。
勇敢なる者達? 何屋だと少女が眼を
────
────冒険者らが仕事を求め集まる店だぁあああ!
さっさと荷馬車から下りたイルミ王女が荷台の荷物の後ろに早足で行くと、反対側に逃げ下りようとするアイリを眼にして声をかけた。
「こら! どこに行くのです
振り向いたまま少女が反対側に落ちると、イルミ王女は荷馬車の後ろを回り込み地面にひっくり返っているアイリを見下ろし告げた。
「さあ、わたくしとクエストを選びに行きましょう!」
「クエストだぁ!?」
アイリが素っ頓狂な声で聞き返した。
「そうです! 貴女とイラ・ヤルヴァ、それにわたくしの騎士団にもっと経験を積んでもらわないとこの先乗り切れません」
「嫌だぁ!」
拒否して口をへの字に曲げた少女の
ドアが開かれその店に連れ込まれるのを最後まで抵抗するアイリの後に他のもの達もついて中へと入った。
中は小綺麗な酒場風で、奥にカウンターがあり左右のテーブル席には胡散臭そうなものらが突然の侵入者へ視線を向けた。
アイリの服をつかんだ王女は、客のいないテーブル席のグラスやお皿を片付けているウエイトレスの女の子に声をかけた。
「お聞きします。クエストはどこで申し込むのです?」
振り向いた女の子はにっこりと微笑んで王女に答えた。
「スーグラフティ・メンへようこそいらっしゃいませ。クエストのご希望ですね。カウンター右手奥のコーナーへどうぞ」
くるりと向きを変え、つかつかと歩いて行く王女の後ろで引き
カウンターから離れた室内の右手に沢山の大小の紙が貼られた掲示板の横に窓口があった。
イルミ・ランタサルが歩き寄ると、窓口の奥で顔を上げたのは丸眼鏡をかけた耳の長く尖った人でない若い女だった。