第15話 愚者らの謝肉祭

文字数 1,746文字

 ゴージャスな身体したネーちゃんに魔法使いのメス・ガキが1匹。

 どちらも高く売れるし、大人の方は楽しんだ後に高く売る。魔女娘の方は売り先をちょっと考えてから売り飛ばす。あの手の(やつ)を喉から欲しがる国王や領主は多い。

「──親分(おやびん)、どうしましょう?」

 だが襲撃した場にもう1人いた。

 フード被ったガキ。

 爆発で(みな)が吹き飛ばされた後にあれを探したが見つからなかった。

「──どうするんですかぁ、親分(おやびん)!?」

 捕まえた女共を奴隷商人に売り飛ばすのはいいが、まずいのは逃がしたガキが騎士や兵を連れて舞い戻ってくること。

 この(とりで)は小山の上にあり簡単に取り囲まれてしまう。そうならないためにも見晴らしが利くように小山に居を構えているのだが。

親分(おやびん)(ろう)の方が騒がしいんですけど!」

 ああ、うるせぇ! 物思いに(ふけ)る事もできねぇのかぁ! と自称山賊王ヤンネ・ヴェンバリは両肩を吊り上げ怒鳴りつけた。

「なんだぁ!? くだらねぇ事ならはり倒すぞぁ!」



 どっかぁ────────ん!!!



 爆轟に盗賊の(かしら)と配下の男らは揃ってぎぎぎぎぎと音のした方へ顔を振り向けた。

親分(おやびん)(ろう)の方ですぜぇ」

 ヤンネは腕振り上げ山肌掘って作った(ろう)を指さし手下に命じた。

「お、お前ら、見て──来い」

 小山の反対側にある(ろう)の方から喧騒に混じり男らの悲鳴が聞こえ始め山賊王と部下らは顔引き()らせ両腕振り上げ引いてしまった。

「ちょ、ちょっと見て──来い」

 ヤンネが心なしか大丈夫なのかと山肌の(きわ)を見つめていると(ソード)を手にした手下2人が木の幹を並べ地に埋めた塀を飛び越えて反対側へ落ちて(うめ)き声が聞こえた。

「ひ、ひいいいぃ、と、砦のな、中に、て、敵がいるじゃ、ね──かぁ!?」

 山賊王と手下らが後退(あとず)さった。



 小屋の陰から紫の甲冑(アーマー)を着た騎士1人と青い髪の少女が(ソード)を手に現れた。



 む、紫の甲冑(アーマー)!? で、デアチ国剣竜騎士団のま、マカイ────マカイのシーデ。叫び死を招く騎士だぁ!

 そ、それよりも恐ろしいのは、噂に聞く南のノーブル国の青髪の騎士!? 普通の小娘の格好でも見間違いではない! 宝石のような青い髪した奴なんてそう、そ、そういないぞ!



 ご、ゴーレム殺し! 魔神を触れずに倒せる悪魔の騎士!!!



 だ、だがなんでマカイのシーデの金髪の髪が半分ないんだ!?





 爆轟に一瞬で(ろう)の木製格子が砕け散り土煙が広がると記憶喪失の少女が驚いて女異端審問司祭にしがみついた。

 ごいん!

 派手な音にアイリ・ライハラとヘッレヴィ・キュトラ、キルシが振り向くと弾き飛んできた格子木の1本が額に命中し(あご)を振り上げ後ろに倒れるテレーゼ・マカイの姿を眼にした。

「あああっ!」

 ハモって3人が驚き声を上げると足音が聞こえ(ろう)外に舞う土煙の間に(ソード)を手にした数人の男らが血相変えた顔を見せ怒鳴った。

「ああ、きさまらぁ! どこから入りやがったぁ!?」

 振り向いた青髪の少女は咄嗟(とっさ)に拾い上げた格子木の1本を(ろう)外の中央にいる山賊の1人に投げつけた。

 ひゅるひゅる────ごいん!

 顔面に十字の木材が命中した男は鼻血を()き両足振り上げ凄まじい勢いで後ろにひっくり返った。

 その左右にいる男らが(ソード)を前に構え足を踏み出し(ろう)の中に迫ってきた。

 アイリはしゃがみこんで両手に石をつかむとその格好で連続で石を投げつけた。

 1つの石が(ソード)(フラー)(かす)り火花飛ばし山賊の眉間に命中し、もう1つの石は別の山賊の(ソード)(ブレード)に命中し押し切った。諸刃(もろは)の反対刃が顔の中央にぶつかり2人共両足振り上げ後ろに回転するようにひっくり返った。

 アイリがその2人の落とした(ソード)を拾い上げに行くと女異端審問司祭は少女の背に(たず)ねた。

「あ、アイリさん、どうしてこの人(ソード)を持ってないんですかぁ!?」

苦悩の河(アケローン)に落っことしたぁ。そんなことよりそいつ叩き起こしてこれ渡せぇ!」

 それって黄泉の河じゃないですか、とヘッレヴィが眼を丸くした寸秒アイリが山賊の(ソード)を投げ渡した。

「ひぃいいい!」

 回転する(ブレード)に顔引き()らせた女異端審問司祭がひょいと(かわ)すとぶんと(ソード)が落っこちてグサッと突き刺さる音にヘッレヴィは苦笑いし振り向いた。

 眼にしたヘッレヴィ・キュトラの(ほお)を冷や汗が一筋流れ落ちた。



 地面に突き刺さった(ブレード)がテレーゼ・マカイの右額上から後ろにかけ髪の毛を剃り落としていた。





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登場人物紹介

 アイリ・ライハラ

珍しい群青の髪をした15歳の美少女剣士。竹を割ったようなストレートな性格で周囲を振り回し続ける。

 イルミ・ランタサル

16歳にして策士策謀の類い希なるノーブル国変化球王女。アイリにくるんくるんだの馬糞などと言われ続ける。

 ヘルカ・ホスティラ

20歳のリディリィ・リオガ王立騎士団第3位女騎士。騎士道まっしぐらの堅物。他の登場人物から脳筋とよく呼ばれる。

 イラ・ヤルヴァ

21歳の女暗殺者(アサシン)。頭のネジが1つ、2つ外れている以外は義理堅い女。父親はドの付く変態であんなことやそんな事ばかりされて育つ。

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