第25話 ロードローラー
文字数 1,724文字
イルミ・ランタサルはわざわざウチルイの兵士が集まって待ち構える方へ荷馬車を向かわせた。
「さあ! 大人しくしてると串刺しにされますよ!」
脅 す声に艶 があるとアイリ・ライハラは引いてしまいそうだった。
2頭立ての馬の間に手足縛られ縄 で吊 されたアーウェルサ・パイトニサム──裏の魔女キルシはぶらんぶらんと揺られ馬の首元にぶつかるたびに左右の馬から睨 まれるのが気になりながら、それでも前方から迫ってくるウチルイの近衛兵や騎士を見つめ必死で魔法詠唱 した。
近衛兵の集団中央で爆轟と土砂が噴き上がり、数十人の兵が馬ごと空中高く飛ばされ落ちてきた。
「ひでぇえ──」
荷物の上に座り込んでいるアイリが思わず呟 くと操馬台 に座るイルミ王女が振り向いて諭 した。
「何が酷いんですか? 難局を突破できるならかまうもんですか!」
馬の間にぶら下げられた魔女キルシの前に大きな白い布で『我は裏の魔女キルシなり! 道ふさぐものどもに厄 あれ!』と垂れ幕を馬らの首に渡してある。
キルシは自 ら迫り来る近衛兵を倒さないと、前方から槍 で串刺しにされかねなかった。
操馬台 で手綱 を握る女暗殺者 イラ・ヤルヴァがクスクス忍び笑いを溢 し、アイリはこいつも面白がってると呆 れかえった。
何度も馬と人が高々と土砂ごと飛ばされ数百騎で待ち構えていたウチルイの騎士や近衛兵らが右往左往していた。
「くそう──覚えていろイルミ・ランタサル────」
魔法詠唱 の合間に呪いの言葉を吐く最悪の魔女へ王女が油を注いだ。
「その息です!私 を憎む思いを魔法に込めてウチルイの兵士らに放ちなさい! よそ見してると、ほら!」
王女へ振り向いていたキルシが前方へ視線を戻すと、2人の騎士が馬上から斬りかかる寸前だった。裏の魔女は慌 てて早口で詠唱 し2騎の馬をひっくり返した。
すでに3百以上の兵士らを戦闘不能にして突破口が開け裏の魔女キルシが王女らに聞こえる様なため息をついた寸秒、イルミ王女は手綱 を操るイラにとんでもない事を命じた。
「イラ、引き返しなさい。なるだけ兵士らが立て直しかかっているところへ」
「お前ら悪魔かぁ! 何で引き返すんだぁ!」
馬の間にぶら下げられたキルシが大声で喚 くと、イルミ・ランタサルが楽しげに最悪の魔女へ告げた。
「悪魔なもんですか! 魔法を思う存分放 てるんですよ。感謝なさいな!」
大きく傾いた荷物にしがみつきアイリ・ライハラはイルミ王女が城へ襲撃されたことを根に持っていると思った。後ろの荷馬車から女騎士ヘルカ・ホスティラが何か抗議しているのが聞こえたが、引き返したアイリらの荷馬車がすれ違った。
「王女様ぁぁああ! 何をお考えになられておおおお──いでですかぁぁああ────!」
揺られまくる女騎士の大声の抗議が遠ざかると、どうなっているのだと操馬台 で必死にジェスチャーする騎士団長リクハルド・ラハナトスが見下ろすアイリの横を通り過ぎた。
直後、また前方で土砂が噴き上がり兵士らが飛ばさればらばらと落ちてくる。
それを見ながらアイリはこんな事してるとぜってぃに天罰が下るぞと眉根をしかめた。そんときゃあの指図 するでっけぇ糞を前に立てるけれど。
空から落ちてきた近衛兵の1人が立ち遅れ馬に揉 みくちゃになり、荷馬車の片側の車輪に轢 かれ荷馬車が大きく揺れた。
「あぁ!?」
荷に掛けられた麻布をつかんだまま少女はずるりと横に落ちかけ止 まろうとつかむ麻布がずれてさらに先をつかんだ────まま、顔から地面に落ちた。
「痛ぇええええ!」
顔を押さえ上半身を起こしたアイリ・ライハラは指の間に見えたものに青ざめた。猛 り狂ったウチルイの近衛兵2百に取り囲まれていた。
「さあ! 大人しくしてると串刺しにされますよ!」
2頭立ての馬の間に手足縛られ
近衛兵の集団中央で爆轟と土砂が噴き上がり、数十人の兵が馬ごと空中高く飛ばされ落ちてきた。
「ひでぇえ──」
荷物の上に座り込んでいるアイリが思わず
「何が酷いんですか? 難局を突破できるならかまうもんですか!」
馬の間にぶら下げられた魔女キルシの前に大きな白い布で『我は裏の魔女キルシなり! 道ふさぐものどもに
キルシは
何度も馬と人が高々と土砂ごと飛ばされ数百騎で待ち構えていたウチルイの騎士や近衛兵らが右往左往していた。
「くそう──覚えていろイルミ・ランタサル────」
魔法
「その息です!
王女へ振り向いていたキルシが前方へ視線を戻すと、2人の騎士が馬上から斬りかかる寸前だった。裏の魔女は
すでに3百以上の兵士らを戦闘不能にして突破口が開け裏の魔女キルシが王女らに聞こえる様なため息をついた寸秒、イルミ王女は
「イラ、引き返しなさい。なるだけ兵士らが立て直しかかっているところへ」
「お前ら悪魔かぁ! 何で引き返すんだぁ!」
馬の間にぶら下げられたキルシが大声で
「悪魔なもんですか! 魔法を思う存分
大きく傾いた荷物にしがみつきアイリ・ライハラはイルミ王女が城へ襲撃されたことを根に持っていると思った。後ろの荷馬車から女騎士ヘルカ・ホスティラが何か抗議しているのが聞こえたが、引き返したアイリらの荷馬車がすれ違った。
「王女様ぁぁああ! 何をお考えになられておおおお──いでですかぁぁああ────!」
揺られまくる女騎士の大声の抗議が遠ざかると、どうなっているのだと
直後、また前方で土砂が噴き上がり兵士らが飛ばさればらばらと落ちてくる。
それを見ながらアイリはこんな事してるとぜってぃに天罰が下るぞと眉根をしかめた。そんときゃあの
空から落ちてきた近衛兵の1人が立ち遅れ馬に
「あぁ!?」
荷に掛けられた麻布をつかんだまま少女はずるりと横に落ちかけ
「痛ぇええええ!」
顔を押さえ上半身を起こしたアイリ・ライハラは指の間に見えたものに青ざめた。