第6話 火刑人のヴェラ
文字数 1,845文字
大粒の雨のベール越しに刺すような視線向けてくる青髪の小娘を火刑人のヴェラは顎 を引いて睨みつけ言い放った。
「お前の脇 を固めるのが神の眷族 なぞと信じられるものか────」
妖魔軍団の長 が砂漠に敷いた赤いカーペットを避けるように青髪の小娘が左手に回り込み始めた。
「神は気まぐれで人の側に立つが、気まぐれで背を向ける。青髪──お前の力となるものか」
それを聞いて青髪の小娘が鼻で笑った。
「神の眷族 が気まぐれでわたしについたんじゃない」
雨音に紛 れ聞こえてきた話にヴェラは笑みを浮かべた。
「虚勢だ。神が人につくことはない」
そう言い切り妖魔軍団の長 は膝 を折り砕け散った骸骨兵 の長剣 のハンドルをつかみ拾いあげた。その切っ先 を砂地に引き摺 り回り込む小娘へと向きを変えてゆく。
「引き返せば命はとらないんだけど」
「断るわ────」
青髪の小娘の忠告をむげに断りヴェラは笑み浮かべる唇をさらに吊り上げた。
「なんで?」
問われた妖魔軍団の長 が土砂降りのの雨に打たれながら三白眼の赤い瞳を細めた。
その瞬間、ヴェラの周囲で砕け散っていた骸骨兵 の残骸が空中に浮き上がり数百体の元の姿に戻った。
「我の魔力が絶大だからよ」
「引き返せば命はとらないんだけど」
アイリ・ライハラは妖魔の少女に忠告した。妖魔軍団が引き返せばイルベ連合の兵士達が無駄に命落とすこともないだろうと思った。
「断るわ────」
断られアイリはやはり妖魔は人を襲うことしか意識にないのだと落胆した。争いは避けられぬ。だがその理由をアイリは知りたいと思った。
「なんで?」
降りしきる雨の中で火刑人のヴェラが目を細めるとその瞬間、ヴェラの周囲で砕け散っていた骸骨兵 の残骸が空中に浮き上がり数百体の元の姿に戻った。
「我の魔力が絶大だからよ。それに我の────」
魔力を隔てるはずの多量の水のベールがあってもなお妖魔軍団の長 はその魔法の影響力を楽々と顕示した。
「──火焔 はこの程度の雨粒なぞ簡単に蒸発させるわ」
いや、そんなことはない! アイリは自分と後につくイルベ連合の兵士たちを取り囲んでいた焔 が弱まり消えかかっているではないかと思った。
その刹那 、急激に炎は勢いを増して城壁のように立ち上って降り注ぐ雨を水蒸気に変え始めた。
「青髪よ。我の通り名を知っているの?」
アイリはイルベ連合の役人に聞いた妖魔軍団を配下におく魔物の名を思いだした。
「六災厄が一人──火刑人のヴェラだろ」
「どうして火刑人と云われるかご存知?」
それはもう見せられた魔法でアイリは理解していた。
「火焔 魔法が得意だからだろ」
ヴェラは口角を吊り上げ目尻を下げた。
「そう得意よ────燃やせないものがないくらいにね」
こいつは自分の魔力に絶対的な自信を持っている。本当に千三百年間あらゆるものを焼き尽くしてきたのだろう。人の魔導師が放つ火炎魔法などお遊びに思えるほどに。
そうやって六災厄と云われる妖魔最高峰の数少ない大将にのし上がってきたのだとアイリは火刑人ヴェラを睨みつけ、こいつはプライド高く傲慢 だと長剣 握る自分の利き腕である右へとステップを交差させ続け言い捨てた。
「やっぱりお前たち妖魔は化け物だ。容赦なく殺せる」
「小娘──私は人を殺すことに人生の大半を捧げてきたの」
「私も魔物を殺すことに多くの時間を挺身 してきた」
無言の間合いが流れ、アイリはヴェラが攻撃のきっかけをつかもうとしていると思った。何の前触れもなくいきなりそれが起きた。
火刑人のヴェラからアイリ・ライハラの方へ雨水を含む砂地がドラゴン・ブレスのように派手に燃え上がった。
「やっぱりお前たち妖魔は化け物だ。容赦なく殺せる」
そう青髪の小娘が言い放ちヴェラは言い返した。
「小娘──私は人を殺すことに人生の大半を捧げてきたの」
それに青髪の小娘も同調した。
「私も魔物を殺すことに多くの時間を挺身 してきた」
やはりこの小娘は勇者なのだ。この小娘が大人の勇者になる前に殺しておかなければならない。でないと多くの妖魔をこの手合いは殺しつくすだろう。
無言の間合いが流れ、ヴェラは攻撃のきっかけをつかもうとした。十分に時が昇華し何の前触れもなくいきなりそれを起こした。
火刑人のヴェラはアイリ・ライハラの方へ雨水を含む砂地をドラゴン・ブレスのように派手に燃え上がらせた。
その火焔 を突き破り雷撃が襲ってきて火刑人のヴェラは驚いて半身躱 し胸元を青白い稲光が走り抜け思った。
なんだあの反応速度は!?
人のものとは思えなかった。
「お前の
妖魔軍団の
「神は気まぐれで人の側に立つが、気まぐれで背を向ける。青髪──お前の力となるものか」
それを聞いて青髪の小娘が鼻で笑った。
「神の
雨音に
「虚勢だ。神が人につくことはない」
そう言い切り妖魔軍団の
「引き返せば命はとらないんだけど」
「断るわ────」
青髪の小娘の忠告をむげに断りヴェラは笑み浮かべる唇をさらに吊り上げた。
「なんで?」
問われた妖魔軍団の
その瞬間、ヴェラの周囲で砕け散っていた
「我の魔力が絶大だからよ」
「引き返せば命はとらないんだけど」
アイリ・ライハラは妖魔の少女に忠告した。妖魔軍団が引き返せばイルベ連合の兵士達が無駄に命落とすこともないだろうと思った。
「断るわ────」
断られアイリはやはり妖魔は人を襲うことしか意識にないのだと落胆した。争いは避けられぬ。だがその理由をアイリは知りたいと思った。
「なんで?」
降りしきる雨の中で火刑人のヴェラが目を細めるとその瞬間、ヴェラの周囲で砕け散っていた
「我の魔力が絶大だからよ。それに我の────」
魔力を隔てるはずの多量の水のベールがあってもなお妖魔軍団の
「──
いや、そんなことはない! アイリは自分と後につくイルベ連合の兵士たちを取り囲んでいた
その
「青髪よ。我の通り名を知っているの?」
アイリはイルベ連合の役人に聞いた妖魔軍団を配下におく魔物の名を思いだした。
「六災厄が一人──火刑人のヴェラだろ」
「どうして火刑人と云われるかご存知?」
それはもう見せられた魔法でアイリは理解していた。
「
ヴェラは口角を吊り上げ目尻を下げた。
「そう得意よ────燃やせないものがないくらいにね」
こいつは自分の魔力に絶対的な自信を持っている。本当に千三百年間あらゆるものを焼き尽くしてきたのだろう。人の魔導師が放つ火炎魔法などお遊びに思えるほどに。
そうやって六災厄と云われる妖魔最高峰の数少ない大将にのし上がってきたのだとアイリは火刑人ヴェラを睨みつけ、こいつはプライド高く
「やっぱりお前たち妖魔は化け物だ。容赦なく殺せる」
「小娘──私は人を殺すことに人生の大半を捧げてきたの」
「私も魔物を殺すことに多くの時間を
無言の間合いが流れ、アイリはヴェラが攻撃のきっかけをつかもうとしていると思った。何の前触れもなくいきなりそれが起きた。
火刑人のヴェラからアイリ・ライハラの方へ雨水を含む砂地がドラゴン・ブレスのように派手に燃え上がった。
「やっぱりお前たち妖魔は化け物だ。容赦なく殺せる」
そう青髪の小娘が言い放ちヴェラは言い返した。
「小娘──私は人を殺すことに人生の大半を捧げてきたの」
それに青髪の小娘も同調した。
「私も魔物を殺すことに多くの時間を
やはりこの小娘は勇者なのだ。この小娘が大人の勇者になる前に殺しておかなければならない。でないと多くの妖魔をこの手合いは殺しつくすだろう。
無言の間合いが流れ、ヴェラは攻撃のきっかけをつかもうとした。十分に時が昇華し何の前触れもなくいきなりそれを起こした。
火刑人のヴェラはアイリ・ライハラの方へ雨水を含む砂地をドラゴン・ブレスのように派手に燃え上がらせた。
その
なんだあの反応速度は!?
人のものとは思えなかった。