第19話 舌先三寸
文字数 2,109文字
「ま、待ってくれ! 考える余裕────楽しみを先延ばしにしたい!」
「ちっ! この
「何か言ったか?」
テレーゼに問われ、少女はにこやかな顔を振り戻すとだめ押しした。
「試そうぜ。お前が頭丸めるとそこの盗賊らですらメロメロだぞ」
マカイの片割れは眼を丸くした。
あんな歳いった終わったような親父連中でさえ目の色を変えるのか!?
だがムサいあいつらに言い寄られても困る!
頭を
「なぁ、
ここにきて四の五のと
「ダメじゃん! 頭下げたらぁ!」
少女が抗議するとテレーゼは言い返した。
「お、お前、今、額を狙っただろう!」
「違うよ! かすったから少し髪の毛が切れたけれど」
自称山賊王ヤンネ・ヴェンバリは女騎士が少女に命じて残り少ない髪を落としさらに不気味さで手下らを圧倒しようとしてると思った。
「お前ら! あの半坊主の女騎士は
首領に命じられ手下ら20人余りが少女を回り込んで女騎士へ迫った。
だが予想に反して女騎士は盗賊らに顔を向けると驚くには驚いたが、その表情は怯えでなくパッと明るい上気したものに見えてこいつは何を嬉しがっているのだと手下らは変態騎士に戸惑った。
そこで背を向けていた少女が気がつき女騎士に言っているのが彼らに聞こえた。
「ほらみろ! 髪の毛数本でこうだぞ! ハーレムだぁ! 剃り上げたら手に負えなくなるぞ!」
ハーレム!? 何が手に負えなくなるんだ、と
「た、確かに、そ、そうだがぁ、ちょっと、こいつら様子が────興奮しすぎじゃないか!? こいつら
苦笑いの女騎士が少女に問いただすのが聞こえていた。
「馬鹿を言え! こいつら愛情表現が下手なんだ!」
愛情表現!? 盗賊らは
へらへらの女騎士の代わりに男らへ振り向いた少女の青髪が踊り上がり
「こ、こいつらぁ! 髪数本で目の色が違うぞ!」
「だぁから、ウハウハのハーレム・ランドって言ったじゃん! 腹を決めろよぉ!」
少女振り回す
爆轟に
岩陰で記憶喪失の娘を抱きしめ乱闘をつぶさに見ていた女異端審問司祭ヘッレヴィ・キュトラは人の戦いじゃないと思った。
まるで────まるで猿山の乱闘だわ。
「あなたぁ────娘さんだと名乗る方が」
仕事場に顔を
「小猿が帰って来たかぁ!」
アイリの父は道具を放り出し立ち上がると仕事場の出入り口へと小走りに急いだ。
居間にいたのは4人。
「よう、親父久しぶり!」
アイリが陽気に声をかけるとクラウスは両手を広げ明るく出迎えた。
「随分と帰らなかったなアイリ。元気そうで父さんは嬉しいよ。聞いていたぞ近衛兵副長に
陽気な父に娘は声のトーンを下げ割り込んだ。その冷ややかな声にヘッレヴィ・キュトラとテレーゼ・マカイは顔色を曇らせた。
「随分? 誰のせいで足が遠のいたぁ? 3人の美女の1人がこいつかぁ? 女3人と大枚で俺をイルミ・ランタサルに売り飛ばしただろぅ」
部屋の片側で親子の再開を見ていた苦笑いを浮かべている後妻パラメラへ青髪の少女が片腕を振り上げ見もせずに指さした。
人、立場
「いやぁ──そりゃぁ──ところでアイリ、お前の護衛の騎士、なんで頭、
アイリ・ライハラが流した横目で見たテレーゼ・マカイが両手で頭