第24話 幸せの理由
文字数 1,779文字
くそう────なんで人と会うと愛想笑いして世間体 気にするような話し方するんだ!?
困惑げなアイリ・ライハラはそれでも在庫の農機具や調理道具を両手の指の数は──押し売りした気もするが──売りさばき客のいなくなった鍛冶屋の作業場で眉根をしかめていた。
一緒について回る記憶喪失の小娘とも顔を合わせると意味もなくにこにこしてしまう。
もう頭が腐ってるようだとアイリは顔をしかめた。
それなのにこの幸せ感はなんなんだ!?
後妻らと目線が絡むと微笑みかけてしまう。
ああ、半端なく幸せなのが腹の立つ!
落ち着かないので親父の作業場を掃除して整理整頓したらよけいに苛々 が高じてきたところに蹄鉄 を24個も食らいながら逃げ出したクラウスが廊下から顔を覗 かせ娘と眼が合った瞬間また逃げようとしてアイリに呼び止められた。
「クソ親父!」
恐るおそる作業場を覗 き込んだ父親は娘と記憶喪失の子が箒 を手にしていることに気づき作業場を見まわして娘に尋 た。
「掃除してくれたのか?」
クラウスに問われアイリは微笑んで頷 いた。
父親は目尻を下げ口を開いたが言葉を上手く探せずにいると娘がにこにこと尋 ねた。
「母様 が亡くなって母様 のことどうでもよくなったんだぁ?」
きついことを言いながらの娘の笑みが厳しくクラウスは感じた。
「そうじゃないよ。ユリアナのことを今でも1番愛してる。彼女が天に召 され、辛さを埋めるために女遊びの真似事ばかりしてきたが、逆にそれが辛く感じていたんだ」
言い訳に聞こえるだろうと父親は思いながら、それでも娘が笑顔崩 さぬことに父親は焦慮 を感じたが、説明して理解してもらおうと口を開きかけるとアイリが嬉し泣きを我慢してるように思えて娘の真意をつかみかねた。
「だからって3人──も? ハーレムじゃん。トドと変わんないじゃん」
娘にトドと言われるのは2度目だった。父はそれが情けなく思えた。
「お前にとって母は1人だった。1人だったから病に持って行かれたのをどうすることもできなかった。だが3人なら辛い思いもさせなくてすむと思ったんだ」
父がそう告げると娘は笑顔で言い返した。
「3倍になるじゃん。3人の誰が欠けても辛い思いするじゃん」
切々と訴えるアイリが笑みを崩 さぬことにクラウスは気がつき話しを逸 らすつもりはなかったが問いただした。
「アイリ、お前どうかしたのか? 嬉しそうにそんなことを言いだすなんて──」
「わかねぇよ。何だか気持ちが落ち着かないんだ。ウキウキしまくって。殴られても笑っていられそうだぁよ」
「お前、変なものでも食べたんじゃないか? 色合いの派手な茸 とか?」
父に言われ少女は笑いながら頭 振った。
「食い物でおかしくなったのはトドの睾丸 だけだよ。あの時は落ち着かなくて走り回ったけれど。今は違う感じだよ。気に食わないことでも何でも許しちゃう」
こ、こいつ奉公 先でそんなもん口にしてるのか!? とクラウスは驚き娘の瞳を覗 き込んだ。
虹彩に被るように黄金色の淡い光が踊っている。
クラウスはもしやと思い娘に尋 ねた。
「お前、村はずれの森の池に何か投げ込んだのか?」
「え? 石、石を投げ入れた」
それを聞いて父親はため息をついた。
「で、神様っぽいやつに何かもらったんだな」
アイリは眼を寄せて頭 振った。
「もらってねぇ。指さされて花びらが舞い落ちてきたらそれからウキウキしてスキップして帰ってきた」
「ああ、それは池の精霊だ。池にものを投げ入れられると頭にきて畔 にいる人を担 いでからかう性悪の精霊だ」
それを聞いてアイリは何だか向かっ腹が立ってきた。
「これ治るの?」
そう聞きながら少女が壁に並べて立てかけてある剣 の方へ歩いてゆき自身の身長ほどの剣 をつかみ上げた。
「1日もあれば──な、なにをするつもりだアイリ!?」
「何だかムカつくのが嬉しいんだ。お礼参りしてくる。行くよイルミ!」
娘がそう言い捨て作業場の出入り口の方へ向かうと記憶喪失の魔女もニコニコしながら傍 へ駆け寄った。
精霊とことを構えようとする娘を慌 てて止めようとクラウス・ライハラが声をかけようとして顎 を落とした。
出入り口に入り込んできた全身茸 だらけの人の形した魔物にアイリ・ライハラが立ち止まりその後ろに記憶喪失の魔女が嬉しそうにしがみついた。
その魔物はこともあろうか、女異端審問司祭の服装を身に纏 っていた。
困惑げなアイリ・ライハラはそれでも在庫の農機具や調理道具を両手の指の数は──押し売りした気もするが──売りさばき客のいなくなった鍛冶屋の作業場で眉根をしかめていた。
一緒について回る記憶喪失の小娘とも顔を合わせると意味もなくにこにこしてしまう。
もう頭が腐ってるようだとアイリは顔をしかめた。
それなのにこの幸せ感はなんなんだ!?
後妻らと目線が絡むと微笑みかけてしまう。
ああ、半端なく幸せなのが腹の立つ!
落ち着かないので親父の作業場を掃除して整理整頓したらよけいに
「クソ親父!」
恐るおそる作業場を
「掃除してくれたのか?」
クラウスに問われアイリは微笑んで
父親は目尻を下げ口を開いたが言葉を上手く探せずにいると娘がにこにこと
「
きついことを言いながらの娘の笑みが厳しくクラウスは感じた。
「そうじゃないよ。ユリアナのことを今でも1番愛してる。彼女が天に
言い訳に聞こえるだろうと父親は思いながら、それでも娘が笑顔
「だからって3人──も? ハーレムじゃん。トドと変わんないじゃん」
娘にトドと言われるのは2度目だった。父はそれが情けなく思えた。
「お前にとって母は1人だった。1人だったから病に持って行かれたのをどうすることもできなかった。だが3人なら辛い思いもさせなくてすむと思ったんだ」
父がそう告げると娘は笑顔で言い返した。
「3倍になるじゃん。3人の誰が欠けても辛い思いするじゃん」
切々と訴えるアイリが笑みを
「アイリ、お前どうかしたのか? 嬉しそうにそんなことを言いだすなんて──」
「わかねぇよ。何だか気持ちが落ち着かないんだ。ウキウキしまくって。殴られても笑っていられそうだぁよ」
「お前、変なものでも食べたんじゃないか? 色合いの派手な
父に言われ少女は笑いながら
「食い物でおかしくなったのはトドの
こ、こいつ
虹彩に被るように黄金色の淡い光が踊っている。
クラウスはもしやと思い娘に
「お前、村はずれの森の池に何か投げ込んだのか?」
「え? 石、石を投げ入れた」
それを聞いて父親はため息をついた。
「で、神様っぽいやつに何かもらったんだな」
アイリは眼を寄せて
「もらってねぇ。指さされて花びらが舞い落ちてきたらそれからウキウキしてスキップして帰ってきた」
「ああ、それは池の精霊だ。池にものを投げ入れられると頭にきて
それを聞いてアイリは何だか向かっ腹が立ってきた。
「これ治るの?」
そう聞きながら少女が壁に並べて立てかけてある
「1日もあれば──な、なにをするつもりだアイリ!?」
「何だかムカつくのが嬉しいんだ。お礼参りしてくる。行くよイルミ!」
娘がそう言い捨て作業場の出入り口の方へ向かうと記憶喪失の魔女もニコニコしながら
精霊とことを構えようとする娘を
出入り口に入り込んできた全身
その魔物はこともあろうか、女異端審問司祭の服装を身に