第20話 餓鬼
文字数 1,524文字
「────放せ! ──お前らぁ! 」
狭く低い洞窟 の脇の側道に響くヘルカ・ホスティラの声を頼りにアイリ・ライハラはイラ・ヤルヴァを引き連れ奥へ急いだ。
何者かに連れ去られたヘルカと男騎士の命が、助け遅れれば絶望的になる。
何が2人を掠 ったのだろうかとアイリ・ライハラは困惑しながらも狭く長い側道を早足で進み始めイラ・ヤルヴァが追いかけた。
「イラ、お前の方がヘルカ・ホスティラに近かった。女騎士を掠 ったのがどんな奴だったか見たか?」
「いえ、発光石の明かりの外だったので見えませんでした」
油断ならない。ヘルカも若い男騎士も体格はしっかりしていて重い。それをこんなに速く引きずっていく連中は相当な力があると少女は思った。
その矢先に側道奥から聞こえていたヘルカの喚 き声がしなくなった。
アイリは繰り出す足をさらに速めたが、その細い側道の先に揺れ動く小さな明かりが眼についた。
よく見ると炎の明かりにも見える。
近づいて行くとその照らされた先が開けているのがわかった。
アイリとイラは駆ける足を遅くし、用心深く側道からその開けた場所を覗 き込んだ。
そこはちょっとした屋敷が入りそうな開け天井も高い洞窟 だった。
その中央に円陣を作って赤黒い色の肌をした生き物らがいる。中央には盛大に薪 が燃やされいる。洞窟 を照らす明かりはその炎だった。
「ゴブリンですか? 力押しで行きます?」
イラが少女の耳元に顔を近づけ訪ねた。
「いや、違うぞ。皆 角がある。見たことや聞いたことのない魔物だ。俺らより小さいが数がけっこういる」
どれもガーゴイルの様な痩せた体をして体格は大きくなかったが、顔つきは物騒で獰猛な感じがした。身長はアイリの鼻先までだったが数がまとまると厄介なのは、先の兎 の様な魔物に踏み越えられ少女は懲 りていた。
魔物らは薪 の炎の左右に木作ったY字の支柱を立てている。焚 き火の傍らに2本の長い木の棒にそれぞれ女騎士ヘルカ・ホスティラと若い男の騎士が手足を巻きつける様に縛りつけられ気を失い転がされいた。
知ってる奴が火炙 りにされるのを見るのは夢見が悪いとアイリはため息をついた。
「イラ、俺があいつらすべてを引きつける。お前、2人の騎士を助け出せるか?」
アイリは焚き火に集まっている魔物を見つめながら女暗殺者 に尋ねた。
「お任せ下さい、御師匠様」
「お前の方にあいつらが4、5匹行っても大丈夫か?」
「えぇ!? 5匹も来るんですかぁ?」
「引き受けたならキャットオブナインテイ ルで遊んでやってもいいぞ」
「えへへぇ、お任せ下さい御師匠様」
即決かよ! イラ・ヤルヴァが引き受けると言った直後、涎 を啜 ったのでアイリは眉をしかめた。
「それじゃあ、お先に」
そう言ってアイリは洞窟 の岩陰から歩きだし広い場所へ出て行くと長剣 を引き抜き右横周りに移動し始め声を上げた。
「おい、お前ら! 鬼ごっこをしようぜ!」
アイリ・ライハラの声に魔物らが一斉に振り向くと焚 き火から離れ唸 り声を溢 しながら少女の方へわらわらと迫りだした。
少女は側道から十分に離れると壁を背に立ち止まり、魔物らを見回し足を肩幅に開き構え呟 いた。
「──フォーステップ」
言い放った直後、アイリ・ライハラが剣の切っ先を緩やかに振り回し始めると、魔物らは怖じずに馬の身長ほどにまで迫ってきた。
少女がいきなり大きく頭を揺すり群青の宝石がたなびく残像を残した瞬間、軽く振っていた長剣 が唸 り姿を消すと近づいた魔物らの前に旋風が巻き起こった。
直後、一瞬で十数体の魔物の胴や首が斬れ落ち霧消すると地面に赤い小さな魔石がばらばらと落ちた。だが他の魔物らは足を緩めるどころか、一気にアイリ・ライハラへと駆け迫り少女はぎょっとなった。
狭く低い
何者かに連れ去られたヘルカと男騎士の命が、助け遅れれば絶望的になる。
何が2人を
「イラ、お前の方がヘルカ・ホスティラに近かった。女騎士を
「いえ、発光石の明かりの外だったので見えませんでした」
油断ならない。ヘルカも若い男騎士も体格はしっかりしていて重い。それをこんなに速く引きずっていく連中は相当な力があると少女は思った。
その矢先に側道奥から聞こえていたヘルカの
アイリは繰り出す足をさらに速めたが、その細い側道の先に揺れ動く小さな明かりが眼についた。
よく見ると炎の明かりにも見える。
近づいて行くとその照らされた先が開けているのがわかった。
アイリとイラは駆ける足を遅くし、用心深く側道からその開けた場所を
そこはちょっとした屋敷が入りそうな開け天井も高い
その中央に円陣を作って赤黒い色の肌をした生き物らがいる。中央には盛大に
「ゴブリンですか? 力押しで行きます?」
イラが少女の耳元に顔を近づけ訪ねた。
「いや、違うぞ。
どれもガーゴイルの様な痩せた体をして体格は大きくなかったが、顔つきは物騒で獰猛な感じがした。身長はアイリの鼻先までだったが数がまとまると厄介なのは、先の
魔物らは
知ってる奴が
「イラ、俺があいつらすべてを引きつける。お前、2人の騎士を助け出せるか?」
アイリは焚き火に集まっている魔物を見つめながら女
「お任せ下さい、御師匠様」
「お前の方にあいつらが4、5匹行っても大丈夫か?」
「えぇ!? 5匹も来るんですかぁ?」
「引き受けたならキ
「えへへぇ、お任せ下さい御師匠様」
即決かよ! イラ・ヤルヴァが引き受けると言った直後、
「それじゃあ、お先に」
そう言ってアイリは
「おい、お前ら! 鬼ごっこをしようぜ!」
アイリ・ライハラの声に魔物らが一斉に振り向くと
少女は側道から十分に離れると壁を背に立ち止まり、魔物らを見回し足を肩幅に開き構え
「──フォーステップ」
言い放った直後、アイリ・ライハラが剣の切っ先を緩やかに振り回し始めると、魔物らは怖じずに馬の身長ほどにまで迫ってきた。
少女がいきなり大きく頭を揺すり群青の宝石がたなびく残像を残した瞬間、軽く振っていた
直後、一瞬で十数体の魔物の胴や首が斬れ落ち霧消すると地面に赤い小さな魔石がばらばらと落ちた。だが他の魔物らは足を緩めるどころか、一気にアイリ・ライハラへと駆け迫り少女はぎょっとなった。