第22話 言い出したが勝ち
文字数 1,741文字
魔女キルシの見破った宣言に各々 岩陰に隠れる騎士らは顔を強ばらせ緊張した。
アイリ・ライハラが顔を歪 めているのを傍 らにいて気づいたイルブイの女大将ヒルダ・ヌルメラはアイリの役に立てばと脳筋 を絞り妙案を思いついた。
「アイリ殿、ここは魔女キルシの思いもしない行動に出て隙 を作り一気に畳み掛けましょう」
アイリは眉根寄せた。こいつが石を当てるからと投げさせたら、小石どころか大岩を外しやがったから面倒なことになってるじゃん。
気乗りしない面もちのアイリが疑り深い眼差しでヒルダを見つめたので、女大将はもう一押しと腰袋から顔が余裕で隠れる大きさの黄色い布を取り出しアイリへ突き出し力説した。
「アイリ殿、ほんとに妙案です! これを使いあの小賢 しい魔女を懲 らしめるのです!」
そんな布1枚でどうするんだとアイリは白 けたように眼を細めた。
「お任せあれ!」
ヒルダはそう言い切り、素早く腰ベルトから剣 の鞘 を外し布の1角をその先端の飾りに結びつけた。そうして腕を伸ばし岩陰から鞘 を突き出すと目立つように振り始めた。
突如 、岩陰から剣 の鞘 が突き出されそれが振られ黄色い布が揺れ流れるのを裏 の魔女のキルシは気づいた。
こ、降参する気か!?
だがあれはなんだ!? 白旗を振るのならわかるが、黄色い布だぞ!? その間抜けのような色にキルシは小馬鹿にされているような気がし始め声を荒げた。
「ふざけてるのか、きさまら! そこに隠れているのはわかったから、さっさと出てこい!」
一瞬、黄色い旗が揺れ動かなくなった。
「馬鹿やろう魔女を怒らせてどうするんだぁ!?」
アイリはヒルダの腕に跳びつき黄色い旗を引っ込めさせようとした。そこは蛮族きっての総大将──腕力には自信があると必死に抗 った。
「そうではないアイリ殿! キルシはまだ意味を理解しておらぬだけ。もっとアピールすれば本当に混乱します!」
アイリの顔に唾 飛ばし力説するヒルダは鞘 を激しく振り始めた。
さっきよりも勢いよく振られる黄色い 旗に何の意味があるのだぁ!? 魔女キルシは眉根寄せ唇をねじ曲げた。
さしずめ白旗が降参。赤旗なら突撃。緑旗なら休戦ぐらいだろう。だが黄色い旗はどういう意味があるのだとキルシは一生懸命に考えた。
────やはり、馬鹿にされてるように思える。
「隠れているお前らぁ!儂 を馬鹿にしてるのかぁ!!」
直後、振られている黄色い旗が不規則な揺れになった。
「ほらみろ!」
そう小声で言うなりアイリはヒルダの兜 を殴りつけた。それをひょいと躱 した女大将はアイリをさらに言い含めようと口を開いた。
「みてご覧なさいアイリ殿ぉ! ま、魔女キルシは思考が追いつかずに腹を立ててるのですよ。あと1押しすれば頭抱えてうずくまります。そこを駆けて行って1刀両断にすれば討伐 は終わりますって!」
アイリは一瞬それが正しく思えヒルダが突き出し揺らす鞘 先の黄色い布を見つめた。
いや、そんなことがあるものかとアイリは我に返った。
「お前がしてるのは、あいつを興奮させているだけだ。牛に赤旗、魔女に黄色旗振れば突っ込んでくるぞ!」
アイリに指摘され女大将は闘牛士は赤旗を牛に見せつけ興奮させるという伝承 を思いだした。だが闘魔女士なんて聞いたことはないぞと騎士団長の指摘の誤りをヒルダは諭 し始めた。
「いくらアイリ殿が命の恩人だからと私 めを無知のように言いくるめようとしてはなりませぬ。我が国イルブイでは黄色い布になんの意味もござらぬ!」
即座にアイリはツッコミを入れた。
「魔女キルシはイルブイの民 じゃねぇだろうがぁ」
うっ、それは一理あるとヒルダは眼が点になった。
「いいや、アイリ殿! 物事勢いが大事。やり始めたら初志完徹。もっと振って魔女キルシを困惑させるのです!」
身を乗り出し腕をさらに振り始めたヒルダ・ヌルメラの腕にアイリはしがみついて止めようとした。
岩陰から身を乗りだしてまで鞘 握る腕を振る甲冑 姿の女兵士と青い兜 を被った騎士の顔を見て、1人はこの国の総大将ヒルダ・ヌルメラで、もう1人が宿敵アイリ・ライハラだと気づいたさめた目で見つめる魔女キルシはぼやいた。
「こいつら──何しに────来たんだぁ!?」
直後、魔女キルシは早口で詠唱 すると爆裂魔法を岩陰へ放った。
アイリ・ライハラが顔を
「アイリ殿、ここは魔女キルシの思いもしない行動に出て
アイリは眉根寄せた。こいつが石を当てるからと投げさせたら、小石どころか大岩を外しやがったから面倒なことになってるじゃん。
気乗りしない面もちのアイリが疑り深い眼差しでヒルダを見つめたので、女大将はもう一押しと腰袋から顔が余裕で隠れる大きさの黄色い布を取り出しアイリへ突き出し力説した。
「アイリ殿、ほんとに妙案です! これを使いあの
そんな布1枚でどうするんだとアイリは
「お任せあれ!」
ヒルダはそう言い切り、素早く腰ベルトから
こ、降参する気か!?
だがあれはなんだ!? 白旗を振るのならわかるが、黄色い布だぞ!? その間抜けのような色にキルシは小馬鹿にされているような気がし始め声を荒げた。
「ふざけてるのか、きさまら! そこに隠れているのはわかったから、さっさと出てこい!」
一瞬、黄色い旗が揺れ動かなくなった。
「馬鹿やろう魔女を怒らせてどうするんだぁ!?」
アイリはヒルダの腕に跳びつき黄色い旗を引っ込めさせようとした。そこは蛮族きっての総大将──腕力には自信があると必死に
「そうではないアイリ殿! キルシはまだ意味を理解しておらぬだけ。もっとアピールすれば本当に混乱します!」
アイリの顔に
さっきよりも勢いよく振られる
さしずめ白旗が降参。赤旗なら突撃。緑旗なら休戦ぐらいだろう。だが黄色い旗はどういう意味があるのだとキルシは一生懸命に考えた。
────やはり、馬鹿にされてるように思える。
「隠れているお前らぁ!
直後、振られている黄色い旗が不規則な揺れになった。
「ほらみろ!」
そう小声で言うなりアイリはヒルダの
「みてご覧なさいアイリ殿ぉ! ま、魔女キルシは思考が追いつかずに腹を立ててるのですよ。あと1押しすれば頭抱えてうずくまります。そこを駆けて行って1刀両断にすれば
アイリは一瞬それが正しく思えヒルダが突き出し揺らす
いや、そんなことがあるものかとアイリは我に返った。
「お前がしてるのは、あいつを興奮させているだけだ。牛に赤旗、魔女に黄色旗振れば突っ込んでくるぞ!」
アイリに指摘され女大将は闘牛士は赤旗を牛に見せつけ興奮させるという
「いくらアイリ殿が命の恩人だからと
即座にアイリはツッコミを入れた。
「魔女キルシはイルブイの
うっ、それは一理あるとヒルダは眼が点になった。
「いいや、アイリ殿! 物事勢いが大事。やり始めたら初志完徹。もっと振って魔女キルシを困惑させるのです!」
身を乗り出し腕をさらに振り始めたヒルダ・ヌルメラの腕にアイリはしがみついて止めようとした。
岩陰から身を乗りだしてまで
「こいつら──何しに────来たんだぁ!?」
直後、魔女キルシは早口で