第3話 黒い悪魔
文字数 1,942文字
ただならぬ雰囲気に腕に覚えのあるものは次々に剣 のハンドルに手をかけ抜刀 しようとした。
その矢先、起きだして最初に剣 を抜き構えた騎士がいきなり倒してバリケードにしている荷馬車まで飛ばされた。
激しくぶつかり息を吐きだしたその騎士は地面に落ちるなりすぐに片膝 をつき立ち上がり剣 を構えなおした。
その合間にリクハルド・ラハナトス騎士団長と女騎士ヘルカ・ホスティラの後残りの騎士も剣 を引き抜いた。次々に武器を構える中、アイリ・ライハラだけがハンドルをつかみこそしているが、長剣 を抜かずに注意深く辺りの様子を探った。その最中、次に飛ばされたのは騎士団長と女騎士だった。
風の唸 りが2人を飛ばしたように少女には見えた。
そしてまた、別な1人が荷馬車の合間から外へ弾かれ闇から呻 き声だけが聞こえいたが、それがいきなり叫び声に変わり、それが家の合間を抜け裏の森へと小さくなる。
騎士団長と女騎士が追おうと荷馬車の合間に詰め寄った。
「行くな! あんた達だと殺 られる!! イルミ王女を全力で守れ! 掠 われた奴を私が取り戻す!!」
そう怒鳴りつけ少女が2人を押しのけ駆けだした。
背後からイルミ王女の傍 にいるイルミ・ランタサルが声を張り上げた。
「アイリ! ここは心配いりません!! 御武運を!!」
その声を聞き終わる前にアイリ・ライハラは夜の闇に呑まれた森へと入り込んだ。
夜眼はかなり利くとばかりに、真っ黒な幹を幾つも躱 して気配を追う。騎士のそれを感じながらどうして魔物の方を掌握できないと少女は苛ついた。
引き摺 られていく騎士の落ち枝だを折る音が目印になり急激追いすがった。
いきなり眼の前の地面に黒い影を見つけ近寄ると掠 われた騎士が気絶して横たわっていた。
敵は近くだ!
アイリは抜かぬ長剣 を握りしめ全神経を集中し漆黒の森の奥へ大きく開いた瞳を振り向けた。
なんとなく少女は理解していた。
抜いた刃 が呼び水になっている!
抜刀 すればそれが一度のチャンスとなる。
闇に向け瞳を閉じると、息を殺し全神経で会敵を待ち構えた。
いきなり風が唸 り身を退 けた直後、横の幹2本がへし折れる音が広がった。
熱い息を感じた。
近くにいる!
ゆっくりと瞼 を開き、踏みだせば刃 の切っ先が届きそうな近くに身の丈で倍もある岩があるように少女には見えた。
その岩が激しく揺れ左右に腕を突き出し吼 えた!
岩が急激に近づいてくる!
だが逃せば次はどこから襲われるかわかったものではなかった。身体の横に振り下げた長剣 が確実に捉える一瞬を待つ。
怪物の腕と踏み込みが勝っていたら────それが意識の中に膨れ上がった。一撃に賭ける!
「シックス・ステップ!!」
自分に宣言しアイリ・ライハラは己の枷 を久しく使っていなかったレベルで解放した。
暗闇に蒼 い稲妻が走り爆轟と旋風が巻き上がると、木々の幹が幾つもぶつかる音が乱れ広がりその中に怪物の絶唱が響き渡り岩が横倒しになった。
確実な手応えと、消えた気配に少女の緊張が切れた。
急速に音が闇に吸い込まれ静粛 が戻ると、アイリは長剣 を一振りして刃 の血を弾き飛ばし鞘 に差し戻した。
いきなり少女は振り向き木々の間を抜け倒れている騎士の元へ行くと襟首 をつかみ引き摺 りながら元来た方へ黙々と歩き始めた。
見えてきた家の壁に通りで焚 かれている炎の明かりが揺れ動いていた。その民家の合間を抜けると、まずラハナトス騎士団長が顔を振り向け、女騎士ヘルカとイラ・ヤルヴァが視線を上げ最後に王女イルミ・ランタサルが笑顔で出迎えた。
「こいつ気を失ってるから──」
そう言って少女が皆 の前に騎士を放りだすと、イルミ王女がたまらず彼女に尋ねた。
「アイリ、さっきの咆哮 は!? 倒したのですね!?」
「森に転がってる。ライモ近衛兵長よりずっと大きいぞ」
少女が気を失った騎士が介抱されるのを見ながら焚き火から離れた地面に腰を下ろすとイラが声をかけた。
「御師匠 、すごい血飛沫 を──」
アイリが自分の服を見下ろすといたるところに血の染みが広がっており少女は顔をしかめた。その血生臭さにも関わらずイルミ王女が歩き寄ると少女を抱きしめた。
「ありがとうアイリ──私 の騎士を連れ戻してくれて」
抱いて放さない王女にジタバタする少女へ松明 を手にした騎士団長が尋ねた。
「アイリ、その怪物が倒れているのはどの辺りだ?」
イルミ王女の胸から顔を背け少女が家の合間へ腕を上げ指さした。
「そこの間から城の噴水広場3つ分森に真っ直ぐ入ったとこ。何しに行くの?」
「確かめてくる」
そう言ってラハナトス騎士団長が森へ歩いて行くのを皆 は見送った。
一時間後、皆 は熊鍋に舌鼓 を打ったがアイリ・ライハラは誰にも言えなかった。
この熊、村人を残らず喰ったんだぞ!
その矢先、起きだして最初に
激しくぶつかり息を吐きだしたその騎士は地面に落ちるなりすぐに
その合間にリクハルド・ラハナトス騎士団長と女騎士ヘルカ・ホスティラの後残りの騎士も
風の
そしてまた、別な1人が荷馬車の合間から外へ弾かれ闇から
騎士団長と女騎士が追おうと荷馬車の合間に詰め寄った。
「行くな! あんた達だと
そう怒鳴りつけ少女が2人を押しのけ駆けだした。
背後からイルミ王女の
「アイリ! ここは心配いりません!! 御武運を!!」
その声を聞き終わる前にアイリ・ライハラは夜の闇に呑まれた森へと入り込んだ。
夜眼はかなり利くとばかりに、真っ黒な幹を幾つも
引き
いきなり眼の前の地面に黒い影を見つけ近寄ると
敵は近くだ!
アイリは抜かぬ
なんとなく少女は理解していた。
抜いた
闇に向け瞳を閉じると、息を殺し全神経で会敵を待ち構えた。
いきなり風が
熱い息を感じた。
近くにいる!
ゆっくりと
その岩が激しく揺れ左右に腕を突き出し
岩が急激に近づいてくる!
だが逃せば次はどこから襲われるかわかったものではなかった。身体の横に振り下げた
怪物の腕と踏み込みが勝っていたら────それが意識の中に膨れ上がった。一撃に賭ける!
「シックス・ステップ!!」
自分に宣言しアイリ・ライハラは己の
暗闇に
確実な手応えと、消えた気配に少女の緊張が切れた。
急速に音が闇に吸い込まれ
いきなり少女は振り向き木々の間を抜け倒れている騎士の元へ行くと
見えてきた家の壁に通りで
「こいつ気を失ってるから──」
そう言って少女が
「アイリ、さっきの
「森に転がってる。ライモ近衛兵長よりずっと大きいぞ」
少女が気を失った騎士が介抱されるのを見ながら焚き火から離れた地面に腰を下ろすとイラが声をかけた。
「
アイリが自分の服を見下ろすといたるところに血の染みが広がっており少女は顔をしかめた。その血生臭さにも関わらずイルミ王女が歩き寄ると少女を抱きしめた。
「ありがとうアイリ──
抱いて放さない王女にジタバタする少女へ
「アイリ、その怪物が倒れているのはどの辺りだ?」
イルミ王女の胸から顔を背け少女が家の合間へ腕を上げ指さした。
「そこの間から城の噴水広場3つ分森に真っ直ぐ入ったとこ。何しに行くの?」
「確かめてくる」
そう言ってラハナトス騎士団長が森へ歩いて行くのを
一時間後、
この熊、村人を残らず喰ったんだぞ!