第3話 討伐隊(とうばつたい)
文字数 1,712文字
40騎の騎馬騎士を引き連れ馬に乗ったアイリ・ライハラと女剣士ウルスラ・ヴァルティアを名乗るテレーゼ・マカイと腹の出たおっさん第2騎士マティアス・サンカラが先導していた。ウルスラが斜め前にいるアイリに尋 ねた。
「アイリ、この人数で裏 の魔女のキルシをなんとかできるのか?」
「できん」
ぼそりと言い返した騎士団長の態度にウルスラは顔を強ばらせ謁見 の間 に王妃 に呼び集められたことを思い返した。
玉座についたイルミ・ランタサルは赤いカーペットに片膝 をついて頭 垂れる面々に向かい告げた。
「イルブイの西の地、未踏の山麓 の洞穴に大陸1悪辣 な魔女アーウェルサ・パイトニサムが潜んでいるのがわかりました」
騎士数名がざわつきだした。
「国民とノーブル国に仇 なす魔女の討伐 を命じます」
「王妃 様────」
腹の出たおっさん第2騎士マティアス・サンカラがイルミに声をかけた。
「何でしょうサンカラ?」
「わてが行かなくとも討伐 できましょうに」
面倒くさいと言い出しかねない口調でマティアスが訴えた。
「いいえ。このメンバーは決定です。貴男 が参加するのは織り込み済みなのです」
理由を言わぬところが小賢 しいとマティアスは思ったが、ゴネようがなかった。
「アイリ──参謀ヘルカ・ホスティラがなぜ参加せず私が選ばれたのだ?」
女剣士ウルスラ・ヴァルティアを名乗るテレーゼ・マカイが隣で頭 垂れる騎士団長に小声で問いかけた。
「ああ、あいつこの間、利き手の骨折ってな。無理だよ」
「いいですか、皆 のもの。吉報を待ちます」
そう告げイルミ・ランタサルは玉座から立ち上がり謁見 の間 を後にした。
騎士らは次々に立ち上がりアイリ・ライハラも立ち上がると背伸びをして皆 に告げた。
「この中の数名はキルシの魔法で命落としたことがあるはずだ。魔女は強い。覚悟を決めかかるぞ」
一斉に姿勢を正した中、腹の出たおっさん第2騎士マティアス・サンカラだけが肩を落とした。
「なぁ、騎士団長──わしだけ先に帰っていいか?」
後ろをついて来る腹の出た騎士に言われアイリは眼を寄せた。
「だめだマティアス。あんた第2騎士なんだよ。責任果たせよ」
半身振り向いて横顔でアイリが告げるとマティアスがため息ついてぼやいた。
「は────っ、めんどくさぁ」
前に向き直ったアイリは顳顬 に青筋浮かべ唇をねじ曲げた。
めんどくさいのは俺の方だ。魔女征伐 だけじゃなくてこんなおっさんの子守までしなきゃならないとアイリは思った。
「アイリ、諦 めなさい。マティアスは前からあんな調子です。それでもいつも戦場で生き残るので第1騎士に登りつめた」
アイリはこのおっさんにまだ1度も手を触れたことがなかった。いつも絶妙のタイミングで肩すかしを食らうのだ。何か得体の知れぬものがあるとアイリは心許したことがなかった。
「なぁウルスラ。こいつら皆 洞窟 の入口に待たせといて、2人でキルシを倒しに入らないか?」
女剣士ウルスラ・ヴァルティアが短く笑った。
「あははっ、私も短気だが、アイリお前さんもそうとうだな。申し出は嬉しく思うぞ」
アイリは背を丸めため息をついた。
「はぁぁぁぁ、めんどくせぇ」
イルブイの西の地、未踏のドレイク山の山麓 洞穴に逃げ込んだアーウェルサ・パイトニサム裏 の魔女のキルシは、力を回復させ新たな魔法の開発に勤 しんでいた。
思い返せば青髪の騎士アイリ・ライハラに大怪我を負わされなくした記憶も取り戻していた。
怨 み晴らすにはあの青髪の騎士アイリ・ライハラと王妃 イルミ・ランタサルを亡きものにせんと準備するために蛮族の地にある奥深い山脈の洞窟 に逃げ込んだ。
闇の王サタンの力を借りて復讐を果たす腹積もりが、一向にサタンが呼びかけに応じず。キルシは仕方なくサタンに次ぐ君主ベルゼビュートに呼びかけた。
魔法陣 に立てた数十本の蝋燭 の炎を吹き消し陣の中央に紫紺の煙りが渦を巻いて立ち上った。その渦の底から腕を伸ばし悪魔が這い上がってきた。
「わしを呼びつけたのはお前か────」
蠅 の頭部をしたベルゼビュートが裏 の魔女のキルシに問いかけた。
「呪い殺したい奴が2人いる」
アーウェルサ・パイトニサムがそう切り出し、続けて2人の名を告げた。
「アイリ、この人数で
「できん」
ぼそりと言い返した騎士団長の態度にウルスラは顔を強ばらせ
玉座についたイルミ・ランタサルは赤いカーペットに
「イルブイの西の地、未踏の
騎士数名がざわつきだした。
「国民とノーブル国に
「
腹の出たおっさん第2騎士マティアス・サンカラがイルミに声をかけた。
「何でしょうサンカラ?」
「わてが行かなくとも
面倒くさいと言い出しかねない口調でマティアスが訴えた。
「いいえ。このメンバーは決定です。
理由を言わぬところが
「アイリ──参謀ヘルカ・ホスティラがなぜ参加せず私が選ばれたのだ?」
女剣士ウルスラ・ヴァルティアを名乗るテレーゼ・マカイが隣で
「ああ、あいつこの間、利き手の骨折ってな。無理だよ」
「いいですか、
そう告げイルミ・ランタサルは玉座から立ち上がり
騎士らは次々に立ち上がりアイリ・ライハラも立ち上がると背伸びをして
「この中の数名はキルシの魔法で命落としたことがあるはずだ。魔女は強い。覚悟を決めかかるぞ」
一斉に姿勢を正した中、腹の出たおっさん第2騎士マティアス・サンカラだけが肩を落とした。
「なぁ、騎士団長──わしだけ先に帰っていいか?」
後ろをついて来る腹の出た騎士に言われアイリは眼を寄せた。
「だめだマティアス。あんた第2騎士なんだよ。責任果たせよ」
半身振り向いて横顔でアイリが告げるとマティアスがため息ついてぼやいた。
「は────っ、めんどくさぁ」
前に向き直ったアイリは
めんどくさいのは俺の方だ。魔女
「アイリ、
アイリはこのおっさんにまだ1度も手を触れたことがなかった。いつも絶妙のタイミングで肩すかしを食らうのだ。何か得体の知れぬものがあるとアイリは心許したことがなかった。
「なぁウルスラ。こいつら
女剣士ウルスラ・ヴァルティアが短く笑った。
「あははっ、私も短気だが、アイリお前さんもそうとうだな。申し出は嬉しく思うぞ」
アイリは背を丸めため息をついた。
「はぁぁぁぁ、めんどくせぇ」
イルブイの西の地、未踏のドレイク山の
思い返せば青髪の騎士アイリ・ライハラに大怪我を負わされなくした記憶も取り戻していた。
闇の王サタンの力を借りて復讐を果たす腹積もりが、一向にサタンが呼びかけに応じず。キルシは仕方なくサタンに次ぐ君主ベルゼビュートに呼びかけた。
「わしを呼びつけたのはお前か────」
「呪い殺したい奴が2人いる」
アーウェルサ・パイトニサムがそう切り出し、続けて2人の名を告げた。