第19話 重くない
文字数 1,821文字
手のひらをぐるぐるされたぐらいで目を回すわけがない。
ヘッレヴィ・キュトラは横にいるアイリ・ライハラがどうするのだと気にしながら椅子の足を構え上げ暗殺者 に向かって行った。
刹那 、異端審問官は己 の髪が舞い上がったので横目で少女を見ると1人の男の首を蟹挟 みにして数回転し殺し屋を振り回すと倒し込んで男の利き腕に足を絡 ませ両腕で引っ張り腕を折ってしまった。
そうして跳び起きる様に立ち上がるともう1人の暗殺者 に向かい合い両手のひらをぐるぐると回し始めた。
「さあ! お前も目を回したら寝技に持ち込んであげますよ──い──ひひひっ」
この小娘、やっぱり魔女じゃないのか!? と、ヘッレヴィ・キュトラは両手の椅子の足をやたらと振り回し殺し屋らを遠ざけたもののふと思った。
確かにアイリ・ライハラはとんでもない敏捷 さだが異端審問官は自分にもできるかもと安易に考えた。
変なプライドが鎌首 をもたげる。
あんな小娘にできて文武才能ある我 にできぬはずがない!
異端審問官はわざと椅子の足を振り回すの止め暗殺者 を誘い込んだ。その隙 に2人の殺し屋らが左右から刃物 を突きだそうと踏み込んできた。
刹那 、ヘッレヴィ・キュトラは近い方の男がナイフを突きだして来ると半身身体を傾けその刃物 を躱 し男の少し出た膝 に跳び上がり靴を乗せた。
ばきっ────と凄い音がしたその瞬間、殺し屋の足が折れ膝 が逆向きに曲がるとその男は呻 き倒れてしまった。
ヘッレヴィ・キュトラは乗せた足が一気に石畳 に落ちてうずくまった暗殺者 の頭にぶつかりそうになり椅子の足握った手で男の頭を突っぱね堪 えると、横で手のひらを回すのを止めた少女が点にした眼でじっと見つめているのに気づいた。
「ば、馬鹿者! わ、我 はそんなに重くない! こいつの足が────足が軟弱だったんだ!」
うう、首に駆け上がれないどころか、我 の体重が重いみたくこの男どもに思われたではないか! と異端審問官は顔を赤らめた。
呆気に取られた少女へ殺し屋が隙 を突きナイフを振り出し突っ込むのをキュトラ審問官は眼にして怒鳴った。
「あ、アイリ! 前を見ろ!」
少女が刺されると女異端審問官が顔を引き攣 らせた寸秒、彼女はとんでもないものを眼にした。
アイリにナイフを突き出した暗殺者 が迫ると振り向いた少女はその手首を意図も容易 くつかみ男の前に出た膝 に片足を乗せ易々 と肩に両足を掛け首を挟み込むと飛びついた勢いで盛大に回転した。2回転半回りふらついた殺し屋を倒し込むとまた同じ様に利き腕に両足を絡 め両手で折ってしまった。
な、なんでそう易々 と相手に駆け登れるの!?
最後に残った殺し屋はよそ見して隙 だらけの異端審問官へ突っ込むのを躊躇 した。下手に誘いに乗り足を出すと蹴り折られると思っていた。
アイリが跳び起きてその最後の暗殺者 に向かって手のひらをぐるぐる回し始めると、ヘッレヴィ・キュトラも椅子の足を男の顔に向けて突きだしぐるぐると回しだした。
こいつらイカレてと思った殺し屋は小娘の方が危険だと本能で悟 り任務もあり異端審問官へとナイフ突きだし踏みだそうとした瞬間、踏みとどまってしまった。
女異端審問官が、さあ乗せろと言わんがばかりに右足を上げている!
いきなり男はローブの重ね合わせた衿 の隙間 に素手を差し入れた拳 大の黒い玉を取り出すと女達の前の石畳 に投げつけた。
ぼん! と爆発し一瞬で路地を黒煙が覆い広がり少女と異端審問官が咳き込んでいると徐々に煙りが風に流され始めた。
眼の前が見えるとアイリとキュトラの前にいた煙幕弾を投げ出した暗殺者 の姿はなくそれどころかを足や腕を折られ呻 いていた男らも姿を消していた。
「しまった!捕 らえれば誰の差し金か口を割らせ────」
無念さを語る女異端審問官は無言で少女が路地の先を指差しているのに気づき振り向いた。
たかだか馬車 10数台分の先に無事だった暗殺者 が足を折った仲間に肩を貸し、腕を折られた男らがその左右によれよれと急ぎ足で逃げようとしていた。
「よし! 行けヘッレヴィ・キュトラ! 無事な奴の足を折ってよし!」
そうアイリ・ライハラが男らに聞こえよがしに言うと女異端審問官は顔を赤くして怒鳴った。
「ば、馬鹿者! わ、我 はそんなに重くないと言っただろうがぁ! あいつの足が────足が軟弱だったんだ!」
「そういうことにしといてやる! 行け!」
釈然 とせずにヘッレヴィ・キュトラは男らを追いかけ始めた。
ヘッレヴィ・キュトラは横にいるアイリ・ライハラがどうするのだと気にしながら椅子の足を構え上げ
そうして跳び起きる様に立ち上がるともう1人の
「さあ! お前も目を回したら寝技に持ち込んであげますよ──い──ひひひっ」
この小娘、やっぱり魔女じゃないのか!? と、ヘッレヴィ・キュトラは両手の椅子の足をやたらと振り回し殺し屋らを遠ざけたもののふと思った。
確かにアイリ・ライハラはとんでもない
変なプライドが
あんな小娘にできて文武才能ある
異端審問官はわざと椅子の足を振り回すの止め
ばきっ────と凄い音がしたその瞬間、殺し屋の足が折れ
ヘッレヴィ・キュトラは乗せた足が一気に
「ば、馬鹿者! わ、
うう、首に駆け上がれないどころか、
呆気に取られた少女へ殺し屋が
「あ、アイリ! 前を見ろ!」
少女が刺されると女異端審問官が顔を引き
アイリにナイフを突き出した
な、なんでそう
最後に残った殺し屋はよそ見して
アイリが跳び起きてその最後の
こいつらイカレてと思った殺し屋は小娘の方が危険だと本能で
女異端審問官が、さあ乗せろと言わんがばかりに右足を上げている!
いきなり男はローブの重ね合わせた
ぼん! と爆発し一瞬で路地を黒煙が覆い広がり少女と異端審問官が咳き込んでいると徐々に煙りが風に流され始めた。
眼の前が見えるとアイリとキュトラの前にいた煙幕弾を投げ出した
「しまった!
無念さを語る女異端審問官は無言で少女が路地の先を指差しているのに気づき振り向いた。
たかだか
「よし! 行けヘッレヴィ・キュトラ! 無事な奴の足を折ってよし!」
そうアイリ・ライハラが男らに聞こえよがしに言うと女異端審問官は顔を赤くして怒鳴った。
「ば、馬鹿者! わ、
「そういうことにしといてやる! 行け!」