第2話 修羅場(しゅらば)
文字数 1,614文字
「王妃 様、アフレッド・ホンラッド様がお越しになられています」
侍女 がドア越しに声をかけイルミ・ランタサルは眉根を寄せた。
「追い返しなさい」
「ええ!? よろしいんですか!?」
「いいのよ。献上品を突き返して追い返しなさい」
「畏 まりました」
「えぇ! そんなぁご無体なぁ! イルミ様ぁ! 街で言いふらしますよ。献上品を取るだけとって会いもしないって──本気です」
だみ声が聞こえ侍女 が押し止めようと外が騒がしくなった。
イルミは壁に立てかけてある槍 をむんずとつかむとドアを蹴り開けて見えた顔に刃口 を突き出した。アフレッドはその武器をひょいと躱 し顔を突き出した。
「熱烈なご歓迎、ありがとうございます!」
イルミ・ランタサルはそれを無視して睨 みつけさっと槍 を引いてその男の顳顬 を狙 って刃口 を振り回した。
男がひょいと躱 そうとした方へイルミはぶんと槍 を振り切った。それを仰 け反 ってアフレッドは躱 しニコッと笑顔を見せた。
ああ、むかつく。手八丁のくせしてどうして私に言い寄るんだ、とイルミ・ランタサルは槍 の尻をカーペットに突くと片手を腰に当て男を蔑 んで睨 みすえた。
「何度来られても迷惑としか思いません」
「まんざらでも」
着崩れた服裾を引っ張ってしゃんとしながらアフレッドが言い返した。
「いいえ、これっぽっちも」
アフレッドの脇を室内に入ってきた侍女 にイルミは槍 を渡し男に問いただした。
「だいたい貴男は女とみれば10歳ほどの少女から70の老婆にまで声をかけているそうじゃないですか」
アフレッドは真顔で頭 振った。
「挨拶ですよぅ。ご挨拶」
「────」
王妃 は眼を細めて鼻を鳴らした。
「貴男は挨拶するのに貢 ぎ物を一々渡すのか?」
「王妃 様、イルミ・ランタサル様ぁだけですよ」
その甘ったらしい言い方が嫌いだった。いいや嫌いなのはその顔立ち。整った顔なのに鼻の下が妙に長い助平 そうな顔が嫌だった。イルミは両手を叩き合わせ侍女 ヘリヤを招き呼んだ。
「ヘリヤ、騎士団長を呼んで」
2人いる侍女 の1人が畏まりましたと告げお辞儀して出入り口から出て行った。
騎士団長と聞いてアフレッドの顔色が青ざめた。
「どうしたの。唇噛んで」
「ど────ど──もしません!」
「貴男は、女騎士達にも声をかけているそうじゃないですか」
ぶんぶんとアフレッドは顔を振ったがそれで止めるイルミ・ランタサルではなかった。
「くどい、汚い、節操のない、その様な人には人並みの幸せはないんですよ」
「そんなぁ。ただ私の愛情を────」
「お黙り! 誰にでも派生する愛情なんていりません。だいたい物で気を引こうなど、私 を安くみてくれたものです」
アフレッドは頭 振ってポケットから小箱を取り出すと両手で差し出し蓋を開いた。
「今日、お持ちしたのは光り輝くダイヤモンドの指輪です。愛の結晶です」
イルミは一瞥 するとプイと顔を背けた。
「そんな宝石1つで私 の気を引こうとは安く見られたものです。死の苦痛は愛をも凌駕します。それをこれから証明しましょうか」
話しの雲行きが怪しくなったとアフレッドは落ち着かなげな面もちになった。
「イルミ、何の用だぁ?」
アイリ・ライハラがノックもせずに扉を開いた。
「ああ、アイリ。手を貸してくれますか」
「あっ! お前!」
アイリはアフレッドに気づいて指差し素っ頓狂 な声を上げた。
「やぁ、アイリ。こんなとこで会うなんて奇遇だね」
「奇遇じゃねぇよ。てめぇ、俺だけじゃなくてイルミに手ぇ出しに来たな」
「アイリ・ライハラ、そのアフレッド・ホンラッドを成敗してしまいなさい」
えっ、とアイリは眼を丸くし指摘した。
「痴話喧嘩 のもつれか!?」
イルミ・ランタサルはあたふたして説明した。
「ちぃ、痴話喧嘩!? ち、違います! そのものが口にする愛が死にも劣ると思い知らせます」
女騎士団長は片口角を吊り上げ長剣 を引き抜いた。
なっ、なんでこうなったとアフレッド・ホンラッドは部屋の隅に後退 さった。
「追い返しなさい」
「ええ!? よろしいんですか!?」
「いいのよ。献上品を突き返して追い返しなさい」
「
「えぇ! そんなぁご無体なぁ! イルミ様ぁ! 街で言いふらしますよ。献上品を取るだけとって会いもしないって──本気です」
だみ声が聞こえ
イルミは壁に立てかけてある
「熱烈なご歓迎、ありがとうございます!」
イルミ・ランタサルはそれを無視して
男がひょいと
ああ、むかつく。手八丁のくせしてどうして私に言い寄るんだ、とイルミ・ランタサルは
「何度来られても迷惑としか思いません」
「まんざらでも」
着崩れた服裾を引っ張ってしゃんとしながらアフレッドが言い返した。
「いいえ、これっぽっちも」
アフレッドの脇を室内に入ってきた
「だいたい貴男は女とみれば10歳ほどの少女から70の老婆にまで声をかけているそうじゃないですか」
アフレッドは真顔で
「挨拶ですよぅ。ご挨拶」
「────」
「貴男は挨拶するのに
「
その甘ったらしい言い方が嫌いだった。いいや嫌いなのはその顔立ち。整った顔なのに鼻の下が妙に長い
「ヘリヤ、騎士団長を呼んで」
2人いる
騎士団長と聞いてアフレッドの顔色が青ざめた。
「どうしたの。唇噛んで」
「ど────ど──もしません!」
「貴男は、女騎士達にも声をかけているそうじゃないですか」
ぶんぶんとアフレッドは顔を振ったがそれで止めるイルミ・ランタサルではなかった。
「くどい、汚い、節操のない、その様な人には人並みの幸せはないんですよ」
「そんなぁ。ただ私の愛情を────」
「お黙り! 誰にでも派生する愛情なんていりません。だいたい物で気を引こうなど、
アフレッドは
「今日、お持ちしたのは光り輝くダイヤモンドの指輪です。愛の結晶です」
イルミは
「そんな宝石1つで
話しの雲行きが怪しくなったとアフレッドは落ち着かなげな面もちになった。
「イルミ、何の用だぁ?」
アイリ・ライハラがノックもせずに扉を開いた。
「ああ、アイリ。手を貸してくれますか」
「あっ! お前!」
アイリはアフレッドに気づいて指差し素っ
「やぁ、アイリ。こんなとこで会うなんて奇遇だね」
「奇遇じゃねぇよ。てめぇ、俺だけじゃなくてイルミに手ぇ出しに来たな」
「アイリ・ライハラ、そのアフレッド・ホンラッドを成敗してしまいなさい」
えっ、とアイリは眼を丸くし指摘した。
「
イルミ・ランタサルはあたふたして説明した。
「ちぃ、痴話喧嘩!? ち、違います! そのものが口にする愛が死にも劣ると思い知らせます」
女騎士団長は片口角を吊り上げ
なっ、なんでこうなったとアフレッド・ホンラッドは部屋の隅に