第30話 どうしましょう
文字数 2,480文字
腹に突き立った
段上にうつ伏せに倒れた包帯ぐるみの魔女もぴくりと動かない。
「どうすんの、あんたら?」
アイリ・ライハラが問うと
その顔々に
「どうするの、あんたらは? やり合うなら相手するよ」
数人が
まだ騎士や兵士がごまんといる。
その中央に荷馬車に立つイルミ・ランタサルが見上げ仕切りに手を振り上げていた。
「あぁ面倒くさい女だぁ」
アイリはそう告げ玉座に突き立った
まさかここまでの事を成し遂げるなど、城外で強盗に襲われた時には思いもしなかった。
群青の髪の少女がノーブル国を────
列強国に名を轟かせている剣竜騎士団トップクラス数名を
もうこれ以上望むものはない。
そう王女が思った矢先に荷馬車の近くに派手な砂埃が舞い上がり罵声が聞こえた。
「痛ぇてててぇ」
その砂煙の間からひっくり返った青髪の少女が頭を押さえて振り向きイルミ王女が吐き捨てた。
「
アイリは下唇を突き出し言い返した。
「なにぃ!?」
少女は荷馬車へ歩み寄り車輪を蹴り飛ばし自分のつま先を押さえこんだ。
「痛ぇぇ!」
「これこれ
痛がるアイリへ王女が荷の上から手招きすると少女は気づいて顔を振り向けた。
「だぁれが
「アイリ、これで終わりじゃなくてよ」
そう告げ王女が高見座下の内壁に開いた大穴の方を指さし振り向いた少女は
女騎士ヘルカ・ホスティラを先頭に出て行ったノーブル国の騎士達が
アイリはその女騎士の有り様を眼にした瞬間両手を振り上げどん引きした。
髪はボサボサ、
「あははははぁ! アイリ・ライハラ! 見よ
そう言い放ち残念な女が左手を振り上げた。
髪をつかんでぶら下げるは、王冠を載せた生首。
後ろにいる元騎士団長リクハルド・ラハナトスや他の騎士4人も同じ様にボロボロ。
「アイリ・ライハラ! 見ろ、見てくれ! こいつを!」
しきりに明るい声をかけてくる女騎士を少女は唇を震わせ指さし問いただした。
「おい、ヘルカ────右肩の上に
「あぁあ!? これかぁ!? ハンドルグリップが遠すぎて抜くに抜けん!」
いいや、そうじゃないだろ! アイリは女騎士が痛がる素振りもみせない事の方が一番気がかりだった。上半身と同じ長さの
「これ、
アイリ・ライハラは顔を引き
「だから
イルミ王女が顔を下げぼそりと
「この大国、どうしましょう?」
アイリ・ライハラは真顔の王女へ腕を振り上げ指さし怒鳴った。
「デアチ国をどうするだぁ!? どうするもなにもヘルカ・ホスティラが王の生首つかんでんだぁろうがぁ! おまえ後先考えねぇのか!」
がっちゃんがっちゃんと音が広がりだして少女が肩をすくめた。
恐るおそるアイリ・ライハラとイルミ・ランタサルやヘルカ・ホスティラらが振り向いた。
内壁を取り囲む騎士や兵士らが握りしめた
少女は頭を抱え座り込んでしまった。
荷馬車の上でイルミ王女が声高に何かを宣言しているのが遠くに聞こえていた。
こんな軍事大国をノーブル国が併合したら、騎士団の団員が覚えきれないほどに増える。
あぁ────どうしよう!?
大変な事になっちまったぞ、親父!
しゃがみこんで頭抱えるアイリ・ライハラを上空からイラ・ヤルヴァは見つめ微笑み思った。
やっぱり御師匠を天国へ引っ張るのは止めておこう。地上にいる方がずっと生き生きして面白い────それにいつでも会いに来られるんだし。
──── 月日が過ぎた1年後 ────
「100騎はいます」
1人の騎士が群青の
「どうする? あれは進軍して来る本隊の
赤い
「知らん! お前の騎士団だ。き、騎士団
こいつまた咬みやがった。218回目だぞ! 小柄な騎士団長は眉根を寄せ
「いいか、全員倒すんじゃないぞ。数人残して本隊へ帰し進軍を思い
いきなり赤い
「なっ!? なにしやがるんだぁ!」
「いけぇ! 斬り込み隊
大声で送り出しヘルカ・ホスティラは
女騎士は自分らがたどり着く頃には敵兵士が1桁になっていると知っていた。
うちの騎士団
永らくお読み下さりありがとうございました。
物語はまだまだ続きます。
群青のアイリ─Ultramarine Airi─ 第2部で(ФωФ)ノ