第8話 つきかけた命
文字数 2,119文字
騒動に眼を覚ました蛮勇国イルブイの女大将ヒルダ・ヌルメラは山肌の広がった山道に設けた夜営地の傍 に縛 り拘束されているはずの魔女ミルヤミ・キルシが立ち両腕広げ叫んでいるのを気づいて慌 てふためいた。
傍 で寝ているアイリ・ライハラを起こそうとした矢先にその騎士団長が苦しそうな声上げて飛び起きた。
その刹那 、アイリの群青の髪が頭頂部から下に向けて一気に黒くなったのを眼にしてヒルダは焚き火が燃え尽きかかり暗くなった錯覚かと眼を瞬 いてアイリに声をかけようとした。
矢先に、アイリ・ライハラがさらに変化したように見えてヒルダは息を呑んだ。
小さくなり少女の姿になってしまったように見えて女大将は声を裏返させて問うた。
「あ、アイリ殿────そ、そのお姿は!? 本当にアイリ・ライハラ殿なのですか!?」
だが少女に見えるアイリは上半身を起こしたまま呆然と胸に両手を当てたまま動こうとせず応えもしない。
「どうしたんですかアイリ殿────キルシから何かされたのですか────!!?」
再度問いかけながらヒルダはアイリをまじまじと見つめアイリが小さくなったのが見間違いでないと青ざめた。
半身起こして少女になったまま呆然とするのが本当にアイリなのかと顔強ばらせたヒルダは思いながらキルシ立つ方で爆炎が広がり2人の騎士が叫 びながら山道から崖下に落ちていったので振り向いた。
ヒルダは自分の半月刀 を引き抜き立ち上がるとアイリを気にしながら魔女の方へと構え上げた。
怪我をしてなかった騎士ら4人から取り囲まれ魔女ミルヤミ・キルシは不敵な笑いを溢 し片腕を前に立つ2人の騎士らへ振り向けると樽ほどの氷の塊 が突如として現れその騎士らにぶつかり男らは山肌に飛ばされ地面に落ちると剣 を地について立ち上がろうとした。
ダメだ。アイリはすぐには戦えないと判断したヒルダはキルシへ向け半月刀 を振り上げ駆けだした。
次々に悲鳴が起きるのが聞こえていた。
アイリ・ライハラは甲冑 の胸当 の上から手を当て幼子の時から胸に息づいていた感触が消え失せたことに混乱していた。
胸当 とチェインメイルの下で胸に息づく拳 ほどの広さをしている青いものがなくなってしまったと知りなぜだと問い続けた。
飛ばされてきた女大将ヒルダが背中からぶつかりアイリは笑い声上げる魔女の方へ振り向いた。その魔女が腕振り上げアイリを指さし指摘した。
「アイリ・ライハラ! もはや貴様はただのでくの坊だ!」
困惑しながらアイリは鞘 に収まった長剣 をつかみ立ち上がろうとして剣 の重さに顔を強ばらせた。
なぜこんなに重いのだとアイリはつかんだ剣 に視線を振り向けた。
まるで自分が子供で大人使う得物 を持ち上げようとしているとアイリは一瞬思った。
それだけではなかった。自身の重さにアイリは視線を下げ身につけている大きすぎる青い甲冑 を見つめ驚いた。
自分の甲冑 なのにこの大きさは何なのだと混乱し続けた。
身体が縮んでしまった!!!
少女に戻ってしまった!!!
不意にアイリ・ライハラは幼少の時に父に聞いた話を思いだした。
胸に息ずく群青の宝石の理由を問い詰めた幼いわたしに、父クラウス・ライハラは、まだ幼過ぎてアイリ自身が覚えていなかったある日の話を打ち明けた。
父は娘アイリ・ライハラの延命を願ったのだ。
あの幼い時にクラウスはいつものようにわたしを連れダンジョンに下りたと切りだした。
娘に剣技 見せ魔物の倒し方をいつものように教える父はつい力み過ぎていた。
200階層よりも深く下りなかったクラウスは初めて冥界に近いと云われる最下層にまで足を踏み入れた。
それまでの上層とは異なり、最下層は複雑に入り組み初めての父クラウスは帰り道を見失ってしまった。
さまよい続けて何昼夜たったか──携行食や水もつきて父は絶望に取り憑かれたと幼少のアイリに話して聞かせた。
何階層すらわからなくなった奥深い地下の闇で魔法すら切らして弱り切った父とわたしはその大鍾乳洞にたどり着いた。
その赤水晶が天井から多数下がる大きな洞 の片隅に仄 かに青く耀 く大きな塊 があった。
神の戦剣 と云われる巨大な雷竜──ノッチス・ルッチス・ベネトスが弱りきりうずくまっていた。
揺れる油ランプの灯りの下で巻物が広げられていた。
デアチ国首都のファントマ城で退屈しのぎに王妃 イルミ・ランタサルは侍女 長に古城の奥に仕舞い込まれている古い巻物を幾つか持って来させ居間で夜更かしをして読みふけっていた。
イルミは魔女征伐 に向かわせたアイリ・ライハラと40騎の騎士らの活躍に胸ときめかせていたが、皆 の心配もしていたので寝つけず夜更かしの毎日を過ごしていた。
いないと心配になり、いると神経逆なでる青髪の少女がどうしているのだろうかと気にかかる。
イルミは自分で空になったティーカップに保温カヴァーに包まれたポッドから紅茶を注ぎ飲もうとカップを持ち上げた。
いきなりティーカップの握り手が折れ外れカーペットに紅茶を広げてしまった。
眉根よせ折れた握り手を見つめ王妃 イルミ・ランタサルは不吉な思いを抱いた。
考え過ぎだと思っても、よもやアイリ・ライハラの身に何かがと不安が膨れ上がった。
その
矢先に、アイリ・ライハラがさらに変化したように見えてヒルダは息を呑んだ。
小さくなり少女の姿になってしまったように見えて女大将は声を裏返させて問うた。
「あ、アイリ殿────そ、そのお姿は!? 本当にアイリ・ライハラ殿なのですか!?」
だが少女に見えるアイリは上半身を起こしたまま呆然と胸に両手を当てたまま動こうとせず応えもしない。
「どうしたんですかアイリ殿────キルシから何かされたのですか────!!?」
再度問いかけながらヒルダはアイリをまじまじと見つめアイリが小さくなったのが見間違いでないと青ざめた。
半身起こして少女になったまま呆然とするのが本当にアイリなのかと顔強ばらせたヒルダは思いながらキルシ立つ方で爆炎が広がり2人の騎士が
ヒルダは自分の
怪我をしてなかった騎士ら4人から取り囲まれ魔女ミルヤミ・キルシは不敵な笑いを
ダメだ。アイリはすぐには戦えないと判断したヒルダはキルシへ向け
次々に悲鳴が起きるのが聞こえていた。
アイリ・ライハラは
飛ばされてきた女大将ヒルダが背中からぶつかりアイリは笑い声上げる魔女の方へ振り向いた。その魔女が腕振り上げアイリを指さし指摘した。
「アイリ・ライハラ! もはや貴様はただのでくの坊だ!」
困惑しながらアイリは
なぜこんなに重いのだとアイリはつかんだ
まるで自分が子供で大人使う
それだけではなかった。自身の重さにアイリは視線を下げ身につけている大きすぎる青い
自分の
身体が縮んでしまった!!!
少女に戻ってしまった!!!
不意にアイリ・ライハラは幼少の時に父に聞いた話を思いだした。
胸に息ずく群青の宝石の理由を問い詰めた幼いわたしに、父クラウス・ライハラは、まだ幼過ぎてアイリ自身が覚えていなかったある日の話を打ち明けた。
父は娘アイリ・ライハラの延命を願ったのだ。
あの幼い時にクラウスはいつものようにわたしを連れダンジョンに下りたと切りだした。
娘に
200階層よりも深く下りなかったクラウスは初めて冥界に近いと云われる最下層にまで足を踏み入れた。
それまでの上層とは異なり、最下層は複雑に入り組み初めての父クラウスは帰り道を見失ってしまった。
さまよい続けて何昼夜たったか──携行食や水もつきて父は絶望に取り憑かれたと幼少のアイリに話して聞かせた。
何階層すらわからなくなった奥深い地下の闇で魔法すら切らして弱り切った父とわたしはその大鍾乳洞にたどり着いた。
その赤水晶が天井から多数下がる大きな
神の
揺れる油ランプの灯りの下で巻物が広げられていた。
デアチ国首都のファントマ城で退屈しのぎに
イルミは魔女
いないと心配になり、いると神経逆なでる青髪の少女がどうしているのだろうかと気にかかる。
イルミは自分で空になったティーカップに保温カヴァーに包まれたポッドから紅茶を注ぎ飲もうとカップを持ち上げた。
いきなりティーカップの握り手が折れ外れカーペットに紅茶を広げてしまった。
眉根よせ折れた握り手を見つめ
考え過ぎだと思っても、よもやアイリ・ライハラの身に何かがと不安が膨れ上がった。