第12話 営(いとな)み
文字数 1,644文字
食べ終わって口の焼けるような痛みが治まっても、腹の奥から燃えるような熱気が体中にひろがり寒い季節なのに身体が火照って仕方なかったのでアイリとヘルカは噴水の縁に腰かけて火照 りを冷ましていた。
「ヘルカ、お前あんな強烈なもの食ったことあるか」
アイリに問われ汗浮かべる女騎士が顔を振った。
「イルベ連合ってちょっとヤバい国じゃねぇのか?」
「はぁはぁ、アイリ、シチューに間違って一瓶コショー入れてもあそこまで痛くはないですよ、はあはあ」
こいつそんなことしたことあるのかとアイリは背の高い姉さんを汗顔で見つめながら革袋の水をがぶ飲みした。
アイリはイルミ・ランタサルに食べさせてみたいと思った。
いや! 絶対食べさせる!!
ニヤついているとヘルカが尋ねた。
「統括官 に夜襲しかけるのか?」
「う──ん、無理かな。統括官 が夜どこにいるかわからんし、第一イルベ連合の建物すらチンプンカンプンでどこに何が建っているかさえわかんないんだぞ。日中に尋 ねたずね行くしかないだろう」
「じゃあ泊まるところを明るいうちに探そう」
そうヘルカが提案し2人は腰を上げた。
水を飲みながらぶらぶらと歩いていると、警邏 の近衛兵が4人人ごみの先に見えてきて背の高いヘルカが気づいてアイリに小声で教えた。
「アイリ、警邏 だ。20馬身ほど先」
とっさにアイリは女騎士の腕をつかんで道沿いの露天商の土産物屋の前に立った。
「へい、いらっしゃい」
年老いた男の主人だった。
「この友に腕輪を探している」
そうアイリがヘルカの腕をひっぱり適当にいうと主人が棚を指さした。
「こちらなどいかがです」
綺麗な銀細工の腕輪が10種類ほど、あとは真鍮や銅の安っぽいものが20種類ほど置いてあった。
「それ見せて」
アイリは薔薇 をリレーフにした銀細工の腕輪を指さし店主はそれを布でつかみアイリに手渡した。
「ほれヘルカ腕通してみろよ」
少女に言われるままにヘルカは利き腕に通して上腕にぴったりだとアイリに見せた。
「親父、これもらうよ。幾ら?」
「それは値打ちもので4万デリ(今の10万円ほど)しますが、よろしいので?」
「お、おいアイリ! こんな高価なものを!」
アイリは金貨4枚を店主に渡すと主 は深々と礼をした。その寸秒アイリ達の後ろを警邏 兵が通り過ぎて行った。
「なあ、親父、近くに宿屋はないか?」
「ございます。この通りを真っ直ぐ行くと十字路があり右に折れたらすぐに宿屋がございます」
アイリは店主に礼を言いヘルカを引っ張って歩き始めた。
「こんな高価なものをもらうどおりはないぞ」
「不満か? 店に返そうか? いつも助けてくれる礼だよ」
アイリが振り向くと女騎士が鼻の下を伸ばしていた。
「なあヘルカ、俺が里帰りしたのはお前に相応 しい男を探しにいったからだ」
説明するだけしてアイリは探るようにヘルカを見た。
女騎士はうなだれていた。
いつものように騎士道がどうのと言わない。
「迷惑だったか?」
ヘルカ・ホスティラはぼそりと呟 いた。
「イルミ・ランタサル王妃 が嫁ぐ前に男を決めるわけには────」
お前そこまでくるんくるんに義理立てするんかい!?
宿屋に着き客間に案内されるあいだ互いに何も声をかけなかった。
宿人が下がり部屋に2人残されると同時に口を開いた。
「そこまで忠義を────」
「貴君こそノッチという────」
アイリはため息ついた。
「先に言えよ」
「お子様と言いながら貴君はノッチ・ライハラなる剣豪をよく見つけたではないか」
「あぁ、あれか────あれなぁ」
天上人だの青竜だの説明してもなぁとアイリは苦笑いした。
「笑えるほど夫婦というものは楽しいのだ、な」
女騎士に言われアイリは頭 振った。
「ほら、アイリ──夜なんか君から迫るのか?」
アイリは両腕振り上げ後退 さりした。お、男なんてと言いながらこいつ滅茶苦茶きょうみ深々じゃねぇか!
「俺──お子さま、だ、ぞ────」
「いや、夜の営 みを言わせるなら我 よりも大人だ」
こ、こいつ本性はこれか! アイリは呆れ返った。
「ヘルカ、お前あんな強烈なもの食ったことあるか」
アイリに問われ汗浮かべる女騎士が顔を振った。
「イルベ連合ってちょっとヤバい国じゃねぇのか?」
「はぁはぁ、アイリ、シチューに間違って一瓶コショー入れてもあそこまで痛くはないですよ、はあはあ」
こいつそんなことしたことあるのかとアイリは背の高い姉さんを汗顔で見つめながら革袋の水をがぶ飲みした。
アイリはイルミ・ランタサルに食べさせてみたいと思った。
いや! 絶対食べさせる!!
ニヤついているとヘルカが尋ねた。
「
「う──ん、無理かな。
「じゃあ泊まるところを明るいうちに探そう」
そうヘルカが提案し2人は腰を上げた。
水を飲みながらぶらぶらと歩いていると、
「アイリ、
とっさにアイリは女騎士の腕をつかんで道沿いの露天商の土産物屋の前に立った。
「へい、いらっしゃい」
年老いた男の主人だった。
「この友に腕輪を探している」
そうアイリがヘルカの腕をひっぱり適当にいうと主人が棚を指さした。
「こちらなどいかがです」
綺麗な銀細工の腕輪が10種類ほど、あとは真鍮や銅の安っぽいものが20種類ほど置いてあった。
「それ見せて」
アイリは
「ほれヘルカ腕通してみろよ」
少女に言われるままにヘルカは利き腕に通して上腕にぴったりだとアイリに見せた。
「親父、これもらうよ。幾ら?」
「それは値打ちもので4万デリ(今の10万円ほど)しますが、よろしいので?」
「お、おいアイリ! こんな高価なものを!」
アイリは金貨4枚を店主に渡すと
「なあ、親父、近くに宿屋はないか?」
「ございます。この通りを真っ直ぐ行くと十字路があり右に折れたらすぐに宿屋がございます」
アイリは店主に礼を言いヘルカを引っ張って歩き始めた。
「こんな高価なものをもらうどおりはないぞ」
「不満か? 店に返そうか? いつも助けてくれる礼だよ」
アイリが振り向くと女騎士が鼻の下を伸ばしていた。
「なあヘルカ、俺が里帰りしたのはお前に
説明するだけしてアイリは探るようにヘルカを見た。
女騎士はうなだれていた。
いつものように騎士道がどうのと言わない。
「迷惑だったか?」
ヘルカ・ホスティラはぼそりと
「イルミ・ランタサル
お前そこまでくるんくるんに義理立てするんかい!?
宿屋に着き客間に案内されるあいだ互いに何も声をかけなかった。
宿人が下がり部屋に2人残されると同時に口を開いた。
「そこまで忠義を────」
「貴君こそノッチという────」
アイリはため息ついた。
「先に言えよ」
「お子様と言いながら貴君はノッチ・ライハラなる剣豪をよく見つけたではないか」
「あぁ、あれか────あれなぁ」
天上人だの青竜だの説明してもなぁとアイリは苦笑いした。
「笑えるほど夫婦というものは楽しいのだ、な」
女騎士に言われアイリは
「ほら、アイリ──夜なんか君から迫るのか?」
アイリは両腕振り上げ
「俺──お子さま、だ、ぞ────」
「いや、夜の
こ、こいつ本性はこれか! アイリは呆れ返った。