第8話 銀翼
文字数 1,801文字
「いいか、テレーゼ! 銀眼の相手は俺がする。お前は何としても1柱、できれば2つ天使を解放しろ! いいな!!」
アイリはそう命じて氷柱から離れると螺旋階段 の下り口へ向かい歩いて長剣 を引き抜いた。
「聞き捨てならないなミエリッキ・キルシ。家捜しだなんて。人質解放だよ」
「青よ、天上人 2体と組めば我 を倒せると?」
見抜かれてるとアイリは奥歯を強く噛みしめた。
「いいことを教えてやるよ銀眼────主に刃向かい唾 するなら怒りの鉄槌 を受けるぞ。俺らみたく優しくねぇ────から」
銀眼が鼻を鳴らした。
へぇええ、値踏みしやがった。こいつなりに力持つものを警戒するんだとアイリは片唇を吊り上げた。
「教えよう青よ。主など人の信仰心がなければ力失う。だが我 が失望の領土を広げれば、人の信仰心なぞ藻屑 と消えようぞ」
引っかかった! こいつ思ったより賢くねぇぞ!
「銀眼、教えてやるよ────人々が信仰心なくすのはずっと先かもしれねぇが、今はこのイズイ大陸の殆 どが信仰心で溢 れてるさ」
それを耳にしても銀眼の魔女は薄ら笑いを浮かべていた。
「青よ────お前は今と少し先までしか見えぬが、我 はそのずっと先にもいるのだよ」
それはここで天使と俺にボコられても生き残る宣言かぁ!?
「いや、貴様はこの場で今日、今、亡ぶから先には伝承も残らねぇ」
アイリ・ライハラは今にも銀眼の魔女へ剣 振りかざし突っ込みたかった。それだけこいつには腹立ちを覚えるのだ。
「青よ。貴様は先の語り部ではない。今からお前は────────」
そう言って銀眼の魔女は最後の段から足を下ろし、両腕を左右に振り下ろした。その瞬間、ミエリッキ・キルシの両手に氷の長剣 2口 が握られた。
「────死ぬのだから」
アイリ・ライハラは長剣 を両手で回転させ身の後ろに回し隠すと左手を前に伸ばし人さし指で白髪の女を差し招いた。
「あぁ、お前を殺してやるよ──ミエリッキ・キルシ!!!」
アイリ・ライハラが全力で駆けだした直後、銀眼の魔女はそれを上回り爆速で姿をかき消した。残像も残さない一瞬の加速にアイリは激しくぶれる視野に銀眼の魔女の姿を少しでもとらえよう眼を游 がせた。
いきなり氷床 に氷飛沫 が立ち上がりそれがアイリ・ライハラの直前から急激に曲がるとテレーゼ・マカイの方へ伸びた。
わざと氷を掻き削ってやがる!
「逃げろテレーゼ!!」
そうアイリ・ライハラが叫 ぶとテレーゼは天使の氷柱を回り込み反対側へ逃げだした。
あまりにもの勢いで銀眼の魔女は氷柱を抉 り部屋の逆の壁にぶつかり止まった。
まずい! テレーゼに貪欲になってる!
銀眼の魔女が回り込んでゆこうとするとテレーゼはうまく氷柱を陰に逃げてくる。
それでもすぐに見つかりそうな勢いで銀眼の魔女が回り込んできた。
ドカンと加速しアイリ・ライハラは回り込んでくる銀眼の魔女を直撃した。
天使の氷柱そばで打ち合ってはいけない。氷柱が砕けてしまう。だがアイリ・ライハラはテレーゼを守る方を優先していた。
テレーゼは眼の前で傘のように広がった火花に後退 さった。アイリの金属の刃 はわかる。だが銀眼の氷の剣 がなぜ火花放つのだ!?
テレーゼは轟音の津波に足を取られよろめいた。
何度も打ち響くアイリ・ライハラの剣技 が流れを変えるたびに霞 んで見える。
アイリ・ライハラの足かせになってはいけないとテレーゼはもう一つの天使の氷柱へ目指し駆けだした。
爆風を感じ駆けながら半身振り向いたテレーゼは己 を狙う銀眼の魔女の刃 に意識をとらわれた。
その太刀筋 の下からアイリ・ライハラ打ち上げる刃 が蜉蝣 のように残像で見えテレーゼはもう1つの氷柱の裏へ回り込んだ。
状況を転じるには天使を解放するしかないとテレーゼは思った。
氷柱全体を細かく打ち砕けば天使は死なないと思った。その手段はテレーゼ・マカイの十八番。
腹の底から絞りきった呪いの叫聲 ────凄まじい超音波が天使の氷柱全体に網の目のような罅 を走らせ────────瀑布のように粉々に砕け散った氷が飛び散りマカイの妹はしくじったと思った。矢先、テレーゼの目前を大振りの大剣 が立ち上がって銀眼の魔女に1撃を打ち込んだ。
テレーゼが見上げた一閃 。
飛び散った何万という銀の羽根を撒き散らし大天使が翼開いた。
この日を迎えるためにアイリ・ライハラに冥府 から引き戻されたのだとテレーゼ・マカイは運命を思い知った。
アイリはそう命じて氷柱から離れると
「聞き捨てならないなミエリッキ・キルシ。家捜しだなんて。人質解放だよ」
「青よ、
見抜かれてるとアイリは奥歯を強く噛みしめた。
「いいことを教えてやるよ銀眼────主に刃向かい
銀眼が鼻を鳴らした。
へぇええ、値踏みしやがった。こいつなりに力持つものを警戒するんだとアイリは片唇を吊り上げた。
「教えよう青よ。主など人の信仰心がなければ力失う。だが
引っかかった! こいつ思ったより賢くねぇぞ!
「銀眼、教えてやるよ────人々が信仰心なくすのはずっと先かもしれねぇが、今はこのイズイ大陸の
それを耳にしても銀眼の魔女は薄ら笑いを浮かべていた。
「青よ────お前は今と少し先までしか見えぬが、
それはここで天使と俺にボコられても生き残る宣言かぁ!?
「いや、貴様はこの場で今日、今、亡ぶから先には伝承も残らねぇ」
アイリ・ライハラは今にも銀眼の魔女へ
「青よ。貴様は先の語り部ではない。今からお前は────────」
そう言って銀眼の魔女は最後の段から足を下ろし、両腕を左右に振り下ろした。その瞬間、ミエリッキ・キルシの両手に氷の
「────死ぬのだから」
アイリ・ライハラは
「あぁ、お前を殺してやるよ──ミエリッキ・キルシ!!!」
アイリ・ライハラが全力で駆けだした直後、銀眼の魔女はそれを上回り爆速で姿をかき消した。残像も残さない一瞬の加速にアイリは激しくぶれる視野に銀眼の魔女の姿を少しでもとらえよう眼を
いきなり
わざと氷を掻き削ってやがる!
「逃げろテレーゼ!!」
そうアイリ・ライハラが
あまりにもの勢いで銀眼の魔女は氷柱を
まずい! テレーゼに貪欲になってる!
銀眼の魔女が回り込んでゆこうとするとテレーゼはうまく氷柱を陰に逃げてくる。
それでもすぐに見つかりそうな勢いで銀眼の魔女が回り込んできた。
ドカンと加速しアイリ・ライハラは回り込んでくる銀眼の魔女を直撃した。
天使の氷柱そばで打ち合ってはいけない。氷柱が砕けてしまう。だがアイリ・ライハラはテレーゼを守る方を優先していた。
テレーゼは眼の前で傘のように広がった火花に
テレーゼは轟音の津波に足を取られよろめいた。
何度も打ち響くアイリ・ライハラの
アイリ・ライハラの足かせになってはいけないとテレーゼはもう一つの天使の氷柱へ目指し駆けだした。
爆風を感じ駆けながら半身振り向いたテレーゼは
その
状況を転じるには天使を解放するしかないとテレーゼは思った。
氷柱全体を細かく打ち砕けば天使は死なないと思った。その手段はテレーゼ・マカイの十八番。
腹の底から絞りきった呪いの
テレーゼが見上げた
飛び散った何万という銀の羽根を撒き散らし大天使が翼開いた。
この日を迎えるためにアイリ・ライハラに