第4話 お前がやれよ
文字数 1,756文字
「ハイ、ハイ、ハイ!」
18人集めた騎士の中から手を上げたのは6人ほどだった。その中の1人をアイリ・ライハラは指さした。
「タランチュラ団って暗殺に蜘蛛 を使う連中です」
「知ってます」
素っ気なく応えたアイリは挙手 した別な1人を指さした。
「追い込まれると毒蜘蛛 を投げつけます」
く、蜘蛛 を投げつけるだぁ!?
顔を引き攣 らせた騎士団長は、震える指で別な騎士を指さした。
「マントの下に100匹以上の毒蜘蛛 を隠し持っています」
ひぃいい──100匹! いや、もうこの時点で誰かに任せようとアイリは思って別な騎士を指さした。
「武術ではとるに足らない連中ですが、夜遅くベッドに蜘蛛 を遣わせるのには長けています」
ひええぇ、おっかない! おちおち寝てられない!
「それじゃあタランチュラ団討伐 の指揮をウルスラ・ヴァルティアに──」
アイリ・ライハラがマカイ姉妹の妹を指さしテレーゼ・マカイが自分を指さし小首傾げた。
「ちょっと待て! 騎士団に属さない剣士に指揮を任せるなどあってはならない」
女参謀長のヘルカ・ホスティラが異を唱えた。
「それじゃあ指揮をヘルカに──」
任を押しつけられたとばかりにアイリは安堵 してヘルカに背を向けると女参謀長がとんでもない事を言い始めた。
「暗殺団討伐 という重要な国策事案に騎士団長が加わらないという事は考えられない」
え! おい待てぇ!
アイリは振り返りヘルカ・ホスティラを上げた利き腕で指さした。
「ば、馬鹿を言うな! 後輩育成の為にも、だぁなぁ」
「指揮するライハナ殿を見ることこそ大事であろう」
な、何があろう だぁ! 黙って聞いていた異端審問官のヘッレヴィ・キュトラが口を差し挟んだのでアイリは顎 を落とした。
「お、俺は、し、知らんからなぁ!」
蜘蛛 操る暗殺教団なんぞ相手にできるかぁ!
女参謀長が歩きよって来るとアイリの首に腕を回し耳元に囁いた。
「往生際が悪いぞ、騎士団長 」
アイリは蜘蛛 が這い上がってくるのを想像し鳥肌立った。
「お前、何を興奮して震えてるんだ?」
ヘルカ・ホスティラに問われアイリはキッと睨 み返した。
「まあ、アイリが指揮するなら手伝わんでもないぞ」
ウルスラ・ヴァルティア──テレーゼ・マカイが声をかけにきてアイリは唇を震わせた。
ど、どいつもこいつも! とアイリ・ライハラは唇をへの字にして突き出した。その顔を見てヘルカ・ホスティラが指摘した。
「お前、面白い顔するな」
くっ! 人の苦労も知らずに!
「指揮するだけだぞ──指揮するだけ」
「馬鹿言えよ。先陣切って突っ込むのが騎士団長だろう」
告げた相手にアイリが顔を向けるとテレーゼ・マカイがまじめ顔で見ていた。
「やだ! やらない! 指揮も誰かやれ!」
我がままを言い続けるアイリに女参謀長ヘルカ・ホスティラが説き伏せようとした。
「お前が行かなくて誰が行く?」
への字に曲げた唇を震わせてアイリが小さく頷 くとヘルカが頭をなでた。
「でタランチュラ団の何がいかんのだ?」
「蜘蛛 が──嫌いだ」
数人の声が重なった。
「えっ?」
「安心しろアイリ・ライハラ。ここにいる誰しもが蜘蛛 は嫌いだ。好きな奴はいないぞ」
「ほんとか!?」
ヘルカ・ホスティラの説明にアイリは食いついた。
「私も嫌いだ。特に大きい奴はな」
テレーゼ・マカイの言い分にアイリは力強く頷 いた。
「だから頼んだぞ」
え!? アイリ・ライハラは釈然としない顔をしてヘルカらを見つめた。
こいつらは蜘蛛 に触りたくないんだ。
え────っ、それを押しつけるなんて。
──♦♦♦──
跳び起きると自室のベッドで息をゼイゼイついていた。
ひどい夢だった。
よりにもよって蜘蛛 を押しつけるなんて。
窓から朝日が差し込んでいた。
もう少ししたら王妃 イルミ・ランタサルに聞きに行くつもりだった。
タランチュラ団を討伐 させられるのか気が重かった。
いやあれは夢だと自分に言い聞かせた。イルミがあんな恐ろしい事を押しつけるわけはない。押しつけられてもはねつける強さが必要だとアイリは思った。
ダンジョンで襲ってきたあの黄色と黒の大蜘蛛 。あれから余計に蜘蛛 嫌いになった。
あれを倒す。倒せば嫌いなのを克服できる────できねぇよ!
あぁどうすんだぁ。
天井から小さな蜘蛛 が糸を伸ばしてベッドの上に下りてきた。
18人集めた騎士の中から手を上げたのは6人ほどだった。その中の1人をアイリ・ライハラは指さした。
「タランチュラ団って暗殺に
「知ってます」
素っ気なく応えたアイリは
「追い込まれると
く、
顔を引き
「マントの下に100匹以上の
ひぃいい──100匹! いや、もうこの時点で誰かに任せようとアイリは思って別な騎士を指さした。
「武術ではとるに足らない連中ですが、夜遅くベッドに
ひええぇ、おっかない! おちおち寝てられない!
「それじゃあタランチュラ団
アイリ・ライハラがマカイ姉妹の妹を指さしテレーゼ・マカイが自分を指さし小首傾げた。
「ちょっと待て! 騎士団に属さない剣士に指揮を任せるなどあってはならない」
女参謀長のヘルカ・ホスティラが異を唱えた。
「それじゃあ指揮をヘルカに──」
任を押しつけられたとばかりにアイリは
「暗殺団
え! おい待てぇ!
アイリは振り返りヘルカ・ホスティラを上げた利き腕で指さした。
「ば、馬鹿を言うな! 後輩育成の為にも、だぁなぁ」
「指揮するライハナ殿を見ることこそ大事であろう」
な、何が
「お、俺は、し、知らんからなぁ!」
女参謀長が歩きよって来るとアイリの首に腕を回し耳元に囁いた。
「往生際が悪いぞ、
アイリは
「お前、何を興奮して震えてるんだ?」
ヘルカ・ホスティラに問われアイリはキッと
「まあ、アイリが指揮するなら手伝わんでもないぞ」
ウルスラ・ヴァルティア──テレーゼ・マカイが声をかけにきてアイリは唇を震わせた。
ど、どいつもこいつも! とアイリ・ライハラは唇をへの字にして突き出した。その顔を見てヘルカ・ホスティラが指摘した。
「お前、面白い顔するな」
くっ! 人の苦労も知らずに!
「指揮するだけだぞ──指揮するだけ」
「馬鹿言えよ。先陣切って突っ込むのが騎士団長だろう」
告げた相手にアイリが顔を向けるとテレーゼ・マカイがまじめ顔で見ていた。
「やだ! やらない! 指揮も誰かやれ!」
我がままを言い続けるアイリに女参謀長ヘルカ・ホスティラが説き伏せようとした。
「お前が行かなくて誰が行く?」
への字に曲げた唇を震わせてアイリが小さく
「でタランチュラ団の何がいかんのだ?」
「
数人の声が重なった。
「えっ?」
「安心しろアイリ・ライハラ。ここにいる誰しもが
「ほんとか!?」
ヘルカ・ホスティラの説明にアイリは食いついた。
「私も嫌いだ。特に大きい奴はな」
テレーゼ・マカイの言い分にアイリは力強く
「だから頼んだぞ」
え!? アイリ・ライハラは釈然としない顔をしてヘルカらを見つめた。
こいつらは
え────っ、それを押しつけるなんて。
──♦♦♦──
跳び起きると自室のベッドで息をゼイゼイついていた。
ひどい夢だった。
よりにもよって
窓から朝日が差し込んでいた。
もう少ししたら
タランチュラ団を
いやあれは夢だと自分に言い聞かせた。イルミがあんな恐ろしい事を押しつけるわけはない。押しつけられてもはねつける強さが必要だとアイリは思った。
ダンジョンで襲ってきたあの黄色と黒の
あれを倒す。倒せば嫌いなのを克服できる────できねぇよ!
あぁどうすんだぁ。
天井から小さな